後世に継承すべき
良質な古民家が、
いま、行き場を失っている。

私たち小田急不動産は、これまで小田急沿線の街とのつながりを深め、そこに住まう方の人生に長く寄り添ってきました。「この街を愛し、ここにしかない人生の景色を描く。」というミッションは、その想いを言葉にしたもの。この街で、その人にしかない暮らしのストーリーを描くことで、感動を生み出していく。それが私たちの使命です。

そんな私たちにとって、見過ごせない課題があります。それは、日本全国に眠る「古民家」の課題です。古民家の中には、その土地で伐採された良質な古材が使われている家がほとんどです。そして長い年月をかけることで、新材にはない強度や魅力を増していきます。しかし一方で、人口減少など社会構造の変化により、家を継承することが難しくなってきていることも事実です。いま、放置されてしまっている古民家が、全国各地に増えています。修理するにも、手間や多額の費用がかかってしまう。壊そうとしても、歴史や想いが詰まっている大切な資産を壊せない。そんなジレンマにより、後世に継ぐべき良質な古民家が行き場を失っています。

豊かな自然環境を活かし、
新たな暮らしの
選択肢をつくる。

日本各地に眠る古民家という資産を、次の誰かにつなぐことができないか。街に深く寄り添ってきた私たちだからこそ、住まいづくりの新しい価値を生み出せないか。私たちはそう考えました。小田急沿線の街には、海と川、そして山という豊かな自然環境があります。多様な自然環境があるということは、多様なライフスタイルに応えられるということ。自分の望む場所で、自分らしく暮らしたい。そう願うさまざまな人の、理想の生活に応えられる基盤があると信じています。

小田急沿線に建てる住まいに、日本各地に眠る古民家の一部を移築する。それは、エリアの制約から離れ、良質な資源を次の世代に受け継ぐということ。そして同時に、“古き良き日本の暮らし”を継いでいくことにもなります。特に古材は、人と時間が語り継いできた唯一無二の資産です。「ここにしかない人生の景色を描く。」という暮らし方が、ここにはあります。

自然豊かな小田急沿線で、後世に継承すべき良質な古民家と、
“古き良き日本の暮らし”を次の世代へ。
それが私たちが「KATARITSUGI」に込めた想いです。

日本各地に眠る古民家から、語り継ぐべき古材をこの街へ。

語り継がれる街の想い新潟県・阿賀町

高橋 眞也Shinya Takahashi

阿賀まちづくり株式会社代表。元阿賀町議会議員。「未来の子供達のために阿賀町で持続可能な循環型社会を実現する」を掲げ、古民家を中心にまちづくりに関するさまざまな活動を行っている。

ふるさとが教えてくれた、
暮らしの豊かさ

私は阿賀町の津川というところに生まれ、中学生まで地元で育ちました。一度は県外や海外に出ていたのですが、帰省するたびに地元の良さにあらためて気づくことが多くありました。自然豊かな景色や、季節のものを食べられることは、実は豊かな生活だったのだと思うようになったのです。一方で、町を訪れるたびに、だんだんと寂れていく様子も気になり始めました。商店街は次々と閉まり、子どもたちの姿も少なくなっていく。そんな町の景色を見て、自分ができることをやろうと阿賀町のまちづくりに関する活動を始めました。他の地域でも言われるように、この阿賀町でも少子高齢化による空き家問題が起こっています。家の継ぎ手が減っている中で、どう維持するのか。もし解体したとしても、誰が土地を管理するのか。上手に利活用ができればいいのですが、人口が減っている町の中だけで解決するのは難しい現状があります。

古材がきっかけとなり、
人と町をつないでいく

だからこそ、このプロジェクトは新しい選択肢になると思っています。家主の方からすれば、自分が育った家や縁のある古民家が、ただ壊されるだけでなく、次の世代や別の地域で使っていただける嬉しさがある。さらに、受け継いだ方が「これは新潟県の阿賀町というところから来た古材なんだ」と知ってもらえれば、それが阿賀町の関係人口になっていく。その先に、今度はこの阿賀町に遊びに来ていただいたりなど、新しい交流のきっかけにもなればいいと思っています。また、古材は大切に扱っていただければ、その先の200年も300年も使っていただける。もし家に住む人がいなくなっても、さらにその次の世代にも渡していける可能性がある。そうやってこの町から物語がずっとつながっていくというのは、とてもロマンがあると感じています。

語り継がれる技術の想い作り手

大沼 勝志Katsushi Onuma

自然派ライフ住宅設計株式会社代表。一級建築士事務所、一般建設業許可として、戸建リノベや新築を手掛けている。またセミナー講師としても活動し、住教育の啓蒙活動も行っている。

古材を活用することで、
技術を受け継ぐ

古材を活用して家を建てることは、建築業界や大工という観点からも意義のあるものだと思っています。現在の建築業界では合理化が進んでいて、多くの作業がプレカットによって均一化されていたり、技術力よりもスピードが優先されていたりします。その結果、大工が本来持っている技術を発揮できる場が減少しており、増築や特定の箇所のみの修理ができる大工が減ってしまっています。だからこそ、古材を使った建築は、若手の大工に技術を伝える機会にもつながります。大工が高齢化している中で、貴重な技術を次世代につないでいく機会になるので、このプロジェクトはありがたいと感じています。

古材の強さと心地よさが、
“帰りたくなる家”をつくる

古材を受け継ぐメリットはいくつもあります。一つは、強度という点。特に阿賀町のような豪雪地帯では建材の強度が重要であり、モデルハウスで使われているような古材は今では入手困難なものです。そして家づくりの考え方にも違いがあります。古材で使われているような自然乾燥(AD材)の木材は、100年以上かけて強度を増し、最終的に安定していきます。つまり、建てたときに完成するという現代の建築の考え方ではなく、100年200年先を見越して家づくりをしていくのです。また古材を使うことで、日本人のDNAに根付いた心地よさを提供できると思っています。家は単なる箱ではなく、人が暮らす場所です。安心感や過ごしやすさ、心のゆとりこそ“帰りたくなる家”であると考えており、伝統的な素材を活かした住まいは、そうした豊かな暮らしを生み出していけると思っています。