岡崎 竜Ryo Okazaki

宮崎県内で飲食店を営む経営者。数年前に新潟県上越市の空き家を利用し、宮崎県にて住まいづくりを行なった。趣味は、歴史のあるアンティークな家具や建具の収集。

住み続けても、価値が下がらない家を建てたかった。

私は元々、アパートに住んでいました。そんな中で初めて家を建てようと考えた時に、“価値が上がっていくような家”を作りたいと思ったんです。普通であれば新築の住宅は、年を重ねるごとに価値が下がっていくものだと思います。でも、せっかく建てるのであれば、価値が上がっていく家を建てたい。住宅は「生きた証」みたいなものだと思っているので、財産として残していきたいという気持ちがあったんです。実はこれまで、趣味で古い建具や古材をコレクションしていました。いつか使えるかなと思って、アンティークな蔵の扉や照明器具などを集めて保管していたんです。そんな時に、古民家移築再生に携わる方を紹介していただいたことで、古材を使った家づくりが選択肢に加わりました。この形であれば “価値が上がっていく家”という想いを叶えられるのではないか。そんな想いから、古民家移築再生を検討し始めました。

こだわりの建具を軸に、自分だけの家を建てる。

使用する古材については、実際に家を建ててくださる方が新潟まで足を運び、古民家を回って探していただきました。いくつか状態のいいものをピックアップしてもらって、それを写真で見ながら相談して決めた形です。あくまで写真でしたが、これまで見たことない柱の大きさや太さだったので驚きました。一般的に九州は暖かい地域のため、木の成長が早いので木目が詰まっていないんです。一方で、寒い地域の木材は木目が詰まっていて、密度が高くて丈夫。この家で使っているものは新潟県の上越市にあった築170年の空き家のもので、大工の方にもすごく質の高いものだと言われました。

家づくりについては、集めていた建具や照明器具を再利用することが軸にありました。かつてお店で使っていた蔵の扉や、自分が集めたアンティーク家具などをどう活かすか、という観点で家づくりを考えていきました。通常の家づくりとは順番が逆なので、施工は大変だったと思います。まず私が持っている建具や古材の寸法に合わせて、家を建てていく必要がありました。昔の建具は規格外のものばかりなので、柱や梁を動かすことができず、はめ込みに苦労したと聞きました。ただ大工の方は「技術が生かせる仕事だから楽しい」と喜んでくれたので、ありがたかったですね。

専門店で購入した、推定100年物の蔵戸。欅の一枚板が持つ重厚感が、アプローチ空間で圧倒的な存在感を放っています。
キッチン背面の古建具。この建具の裏にはロフト部屋へ続く階段やキッチン収納、冷蔵庫が収納されています。この古建具の存在によりキッチン廻りから生活感が薄まり、古民家らしさに磨きをかけています。
リビング天井の吹抜け空間では、雪深い上越市から来た欅や松の堅牢な小屋組と、施主様セレクトの古建具やシャンデリアがマッチしています。

日本全国、同じものがない。それが唯一無二の価値になる。

まだ住み始めて5年ほどですが、長く住んでいるような感覚があります。現代の技術でつくられていますが、古材に囲まれているので“守られている”ような安心があり、とても居心地がいいですね。建具や古材から歴史を感じられるんで、アパートに住んでいた時とは全然違う感覚です。よく友人から「呼んでくれ」と言われたり、最近だと息子の部活仲間が10人くらい泊まりに来たりもします(笑)。人を呼びたくなるような、自慢の家ですね。

古民家移築再生は“価値”を重視する方が向いていると思います。新築ももちろんいいですが、古材を使った家にはさまざまな価値が詰まっています。住めば住むほど、その良さが分かってくる、というのも魅力の一つです。なにより最大の価値は、やはり“財産になる”こと。全国を探しても、この家と同じ家は一つとしてありません。同じ形で作ることはできないからこそ、唯一無二の価値がある。さらに、古材は時間が経つほどに味がでてくるので、価値が下がらないんです。もし今後、息子がこの家を継いでくれたら、また新しく改装してデザインを変えることもできます。古材がしっかりしているので、リメイクもできる。そうした未来への資産になること。それが古材を使った住まいの魅力だと思います。

住まいの写真