貸しビル業の年収はいくら?ビルオーナーの収支や税金について解説貸しビル業の年収はいくら?ビルオーナーの収支や税金について解説

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都市部の景観を形作る高層ビル群。その多くは、個人や企業が所有し賃貸する「貸しビル」です。一見すると莫大な収入源に思える貸しビル業ですが、実際のところ、ビルオーナーの収入はどれほどなのでしょうか。

貸しビル業の実態に迫り、年収の目安から収支のバランス、さらには税務上の注意点まで、ビルオーナーの財務事情を解説していきます。

 

貸しビル業の年収はどれくらい?

貸しビル業の年収はどれくらいなのか気になる方もいらっしゃることでしょう。貸しビル業の平均年収と内訳について紹介します。

 

平均年収

貸しビル業の年収に関する統計データはないものの、国税庁が発表した「申告所得税標本調査」によると、令和2年度分の不動産所得者の平均所得金額は「540万円」でした。

不動産所得者には、アパートやマンションなどの賃貸収入も含まれているため、貸しビル業に限った平均所得金額ではありません。

しかし、貸しビル業は、テナントや事務所などから賃料を得られるため、居住用不動産投資を行っている方より年収が高いケースが多いです。そのため、実際に居住用不動産には一切投資せず、貸しビル業だけに特化して投資されている方も多いです。

ビルディンググループが発表した「全国6大都市圏オフィスビル市況調査(2024年1月度調査レポート)」では、全国6大都市圏にあるオフィスの推定成約賃料を1坪あたりで発表しています。

この坪賃料をもとに、延べ床100坪程度の小規模ビルを所有している場合の賃料収入の試算は下記の通りです。

 

地域 推定成約賃料
(坪単価)
月間賃料収入 年間賃料収入
東京 21,931円 2,193,100円 26,317,200円
名古屋 14,132円 1,413,200円 16,958,400円
大阪 13,162円 1,316,200円 15,794,400円
福岡 15,956円 1,595,600円 19,147,200円
札幌 11,430円 1,143,000円 13,716,000円
仙台 12,078円 1,207,800円 14,493,600円

いずれの地域でも、年間の賃料収入が1,000万円を超えている結果となりましたが、あくまでも都市の平均賃料から求めている数値であるため、物件の要因やスペックごとに異なっている点に注意しましょう。

そして何より空室を加味していない満室前提な部分に注意が必要です。

 

年収の内訳

貸しビル業の収入には、「家賃収入」と「その他の収入」が挙げられます。

ここでは2つの収入について紹介します。

 

家賃収入

貸しビル業は、テナントや事務所として居住空間を貸し出し、家賃収入を得ることができます。

家賃は、賃貸借契約書に明記された金額が毎月借主から支払われます。一般的に、家賃は借りている期間に下がることは少ないうえ、賃貸マンションと比べて賃貸期間が長くなる傾向にあるため、安定した収入が得られる特徴があります。

一方で、空室が発生してしまうと、家賃収入も下落してしまうため、常に入居してもらうような工夫が必要です。

 

その他の収入

家賃収入の他にも、貸しビルによっては以下の収入が得られるケースがあります。

  • 駐車場収入
  • 広告看板収入
  • 自動販売機設置料金

貸しビルの地下などに駐車場があれば、借主に貸し出して駐車場収入を得ることができます。

また、屋上などに広告看板などを掲載した場合は広告看板収入を得ることができ、なおかつ敷地内や建物内に自動販売機設置を設置すれば、飲料会社などから設置料をもらうことも可能です。

上記の他にも、共益費や礼金など、建物を貸し出すことで支払われる収入もあるため、貸しビル業で収入を得る際はトータルの収入を考慮しておくことが大切です。

 

貸しビル業の収支構造

ビルの年間収入のイメージ画像

ここでは貸しビル業の収入構造について紹介します。

 

収入項目

先程も紹介した通り、家賃収入やその他の収入などが収入に含まれます。また、借主から支払われる共益費や礼金なども該当します。

敷金に関しては、預り金として負債の部に計上して処理します。

とはいえ、「敷金を返還しない」「原状回復費用は敷金から充てる」という契約内容であれば、返還しないと確定しているため、収入として計上することになるため注意が必要です。

 

支出項目

当然ながら収入以外にも月々支払う項目や、1年に1度支払う費用があります。

ここでは「固定費」と「変動費」に分けて紹介します。

 

固定費

固定費とは支払金額が大きく変動しない支出項目を指します。

主に以下の項目が該当し、支払頻度も支出項目によって異なります。

 

支出項目 支出内容 支払頻度
借入返済 金融機関の融資を利用して貸しビルを購入した場合の返済 毎月
固定資産税 土地・建物を所有している方に課せられる税金(3年毎に1度見直し) 1年に1度(4回まで分割可能)
都市計画税 土地・建物を所有している方に課せられる税金((3年毎に1度見直し、一部地域は無税) 1年に1度(4回まで分割可能)
管理手数料 ビルの管理を行う不動産会社へ支払う手数料 毎月

 

変動費

変動費は、支払いするたびに費用が変わる項目です。

主に以下の費用が該当します。

 

支出項目 支出内容 支払頻度
修繕費 建物の劣化部分や破損部分を修繕する費用 その都度
清掃費 物件の内部・外部を清掃する費用 その都度
仲介手数料 新たな借主と契約する際に不動産会社へ支払う手数料 その都度
広告費 新たな借主を募集する際、宣伝してもらう不動産会社へ支払う手数料 その都度
光熱費 共有部の電気代、水道代など 毎月
火災保険料 火災保険の料金 火災保険期間が終了したのち

上記の他にも物件によって変動費がかかる場合があります。支出項目は収入に大きく影響がでるポイントでもあるため、あらかじめシミュレーションしておくことが大切です。

 

貸しビル業の税金と確定申告

貸しビル業を始めるにあたって、固定資産税や都市計画税の他に、所得に応じた所得税が課せられ、確定申告しなければいけません。

ここでは課税対象となる収入と経費と認められる支出について紹介します。

 

課税対象となる収入

課税対象となる収入は以下の表の通りです。

  • 家賃収入
  • 共益費
  • 礼金
  • その他の収入(駐車場代・広告看板代など)

貸しビル業によって得た収入は、すべて所得とみなされるため、所得税の課税対象となります。

上記の収入以外にも収入がある方は、忘れないように注意が必要です。

所得税は、収入に対して経費を差し引いた所得に対して課せられる税金です。つまり、経費の方が大きければ所得税を納税する必要はありません。

次の項では、経費として認められる支出について紹介します。

 

経費として認められる支出

経費として認められる支出には以下の項目が挙げられます。

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 借入利息
  • 管理手数料
  • 修繕費
  • 清掃費
  • 仲介手数料
  • 広告費
  • 光熱費
  • 火災保険料(分割)

先程紹介した支出に関しては、経費として認められます。さらに、貸しビル業を始めとした不動産投資では、実際に支払うことがない「減価償却費」が経費に含まれます。

減価償却費とは不動産などの固定資産の取得価額を耐用年数に応じて分割し、毎年経費として計上することができる費用のことです。

不動産の場合、償却資産に該当するのは「建物」だけで「土地」については該当しないため、土地と建物を同時に購入した場合は建物のみが減価償却の対象です。

計算方法には「定額法」「定率法」「簡便法」の3種類が存在し、建物に付随する設備も経費に含まれます。ただし、計算式が複雑なため、税理士や不動産会社などの専門家に相談して算出してもらった方が良いでしょう。

 

確定申告の手順

所得税を納付するためには、毎年2月16日〜3月15日までの1か月間で行う確定申告をしなければいけません。

仮に、所得より経費の方が大きく、所得税が課せられない場合でも確定申告は必須です。

確定申告は税理士などの専門家に依頼することもできますが、ご自身で必要書類を用意して手続きをすることもできます。

確定申告の流れは以下の通りです。

  1. 申告方法を決める(自身で作成・国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成・税理士へ依頼)
  2. 申告書の作成
  3. 申告書の提出(e-Taxで送信・税務署に持参・税務署に郵送)
  4. 納付(窓口で納付・口座引き落とし・電子納税・クレジットカード・QRコードでコンビニ納付)

申告方法は、自身で作成することも可能ですが、貸しビル業は経費となる項目も多いため、税務署で直接行うか、税理士へ依頼することをおすすめします。

また、申告書を提出する際は、以下の必要書類が必要です。

  • 確定申告書AまたはB
  • 収支内訳書/青色申告決算書
  • 控除証明書(保険料控除明細書、医療費控除の明細書、寄付金の受領証など)
  • 源泉徴収票(給与、年金など)
  • 身分証明書類(マイナンバーカード、通知カードと運転免許証など)

確定申告は、計算を間違えてしまう方も多く、本来納付する金額より少ない金額で申告してしまった場合、延滞税や過少申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。

そのため、税理士などの専門家に一任した方が安心できます。
また、税理士報酬なども経費に含まれるため、所得税を抑えられるメリットもあります。

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