一棟ビルはいくらで買える? 東名阪エリア相場や利回り・リスクを徹底解説

目次

不動産投資のなかでも高い収益性と安定性で注目されているのが一棟ビルです。

アパートやマンションといった不動産と比べると、賃料単価と利回りが高く、効率的な投資回収が期待できます。しかし、一棟ビルは価格が高額なため、立地条件や物件の状態を十分に精査し、慎重に投資判断を行うことが求められます。

一棟ビルを安定して経営するためにも、相場価格や利回りの目安、投資の際の注意点について確認しておきましょう。

 

東名阪エリアにおける一棟ビルの相場価格

以下の表は、株式会社オフィス企画の「全国6大都市圏 オフィスビル市場調査(2024年1月度調査レポート)」と日本不動産研究所の「第50回 不動産投資家調査(2024年4月現在)」をもとに算出した、東名阪エリアの平均成約賃料※と期待利回りです。

※基準階床面積100坪~300坪の事務所ビルの空室1坪あたりの単価(共益費込、税抜)

 

エリア 平均成約賃料(円) 期待利回り(%)
東京 21,931円 3.6
名古屋 14,132円 4.4
大阪 13,162円 4.1

上記のデータを基に、収益還元法(直接還元法)を用いて各エリアの一棟ビルの相場価格を算出すると以下のようになります。

 

エリア 100坪当たりの相場価格(円)
東京 約7億3,100万
名古屋 約3億8,500万
大阪 約3億8,500万

ただし、東京、名古屋、大阪の各都市圏内でも、地域ごとに平均成約賃料が異なります。これに伴い、一棟ビルの相場価格も地域によって大きく変動します。そこで、より正確な投資判断のために、以下では各都市圏内の代表的なエリアごとの相場価格について詳しく解説していきます。

 

東京エリアの相場価格

東京エリア全体における一棟ビルの相場価格は、100坪あたり約7億3,100万円です。

ただし、東京は区によって金額に大きな差があります。

 

エリア 平均成約賃料(円) 相場価格(円)
千代田区 大手町・丸の内・有楽町エリア 24,500~41,500 8億1,600万~13億8,300万
神田・秋葉原・お茶の水エリア 18,000~28,500 6億~9億5,000万
市ヶ谷・飯田橋・九段・麹町エリア 18,500~27,000 6億1600万~9億
霞が関・永田町・内幸町エリア 19,500~29,500 6億5000万~9億8,300万
中央区 銀座エリア 23,500~26,500 7億8,300万~8億8,300万
日本橋・八重洲・京橋エリア 22,500~39,000 7億5,000万~13億
三越前エリア 15,500~23,500 5億1,600万~7億8,300万
人形町・小伝馬町・東日本橋エリア 15,000~22,500 5億~7億5,000万
茅場町・築地エリア 16,000~20,500 5億3,300万~6億8,300万
勝どき・晴海エリア 14,500~18,000 4億8,300万~6億
港区 新橋・汐留・虎ノ門エリア 19,000~29,000 6億3,300万~9億6,600万
浜松町・田町エリア 17,000~26,000 5億6,600万~8億6,600万
赤坂・青山・六本木エリア 19,500~32,500 6億5,000万~10億8,300万
品川駅前エリア 16,000~36,000 5億3,300万~12億
新宿区 西新宿・初台・笹塚エリア 19,500~28,500 6億5,000万~9億5,000万
新宿東口エリア 20,000~28,500 6億6,600万~9億5,000万
四谷エリア 18,000~30,500 6億~10億1,600万
渋谷区 渋谷・原宿エリア 26,500~32,000 8億8,300万~10億6,600万
恵比寿・広尾エリア 23,500~30,000 7億8,300万~10億
品川区 大崎エリア 12,000~24,500 4億~8億1,600万
五反田エリア 12,500~21,000 4億1,600万~7億
天王洲・品川シーサイドエリア 15,000~15,500 5億~5億1600万
江東区 豊洲エリア 19,000 6億3,300万
亀戸・錦糸町エリア 11,500~18,000 3億8,300万~6億
東陽町・木場・門前仲町エリア 12,500~15,000 4億1,600万~5億
豊島区・台東区 池袋エリア 21,000~24,500 7億~8億1600万
上野エリア 14,500~25,500 4億8300万~8億5000万

参考:全国6大都市圏 オフィスビル市場調査(2024年1月度調査レポート)│株式会社オフィス企画

細かく見ていくと、平均成約賃料の平均が最も高い地域が大手町・丸の内・有楽町エリアの24,500~41,500円です。期待利回りが3.6%だとすると、100坪あたりの相場価格は約8億1,600~13億8,300万円となります。

大手町・丸の内・有楽町エリアの相場価格が高い主な理由は、高いオフィス需要が挙げられます。このエリアには多くの大企業や金融機関の本社が集中しており、継続的な需要があることあるため、エリアの相場価格を押し上げる要因となっています。

一方で、平均成約賃料の平均が最も低い地域が東陽町・木場・門前仲町エリアの12,500~15,000円です。期待利回りが3.6%だと100坪あたり4億1,600万~5億になります。

東陽町・木場・門前仲町エリアは東京の中心部から少し離れた場所に位置しており、主要なオフィス街と比べると立地的な優位性が低くなっています。大手企業の本社や主要オフィスが集中する大手町・丸の内・有楽町エリアと比較すると、オフィス需要が相対的に低いことが価格に反映されています。

 

名古屋エリアの相場価格

名古屋エリアにおける一棟ビルの相場価格は、100坪あたり約3億8,500万円です。

名古屋エリアの平均成約賃料と相場価格

 

エリア 平均成約賃料(円) 相場価格(円)
名古屋駅周辺エリア 13,500~24,500 4億6,800万~6億6,800万
伏見・丸の内エリア 11,000~16,000 3億~4億3,600万
栄・久屋大通エリア 11,000~15,500 3億~4億2,200万

参考:全国6大都市圏 オフィスビル市場調査(2024年1月度調査レポート)│株式会社オフィス企画

そのなかでも平均成約賃料が最も高いのは、名古屋駅周辺エリアの13,500~24,500円となり、相場価格は約3億6,800~6億6,800万円になります。次いで栄・久屋大通エリアの平均成約賃料は11,000~15,500円で、相場価格は約3億~4億2,200万円です。

平均成約賃料が最も低いのが伏見・丸の内エリアで11,000円~16,000円となり、相場価格は約3億~4億3,600万円となります。

 

大阪エリアの相場価格

大阪エリアにおける一棟ビルの相場価格は、100坪あたり約3億8,500万です。

 

エリア 平均成約賃料(円) 相場価格(円)
中央区 心斎橋・難波エリア 10,500~30,000 3億700万~8億7,800万
淀屋橋・北浜エリア 13,500~19,000 3億9,500万~5億5,600万
本町・堺筋本町エリア 9,500~16,000 2億7,800万~4億6,800万
天満橋・谷町エリア 9,000~17,000 2億6,300万~4億9,700万
北区 北梅田エリア 10,500~24,500 3億700万~7億1,700万
南梅田エリア 11,500~24,500 3億3,600万~7億1,700万
西区・淀川区 肥後橋エリア 8,000~16,500 2億3,400万~4億8,200万
新大阪エリア 9,500~19,000 2億7,800万~5億5,600万

参考:全国6大都市圏 オフィスビル市場調査(2024年1月度調査レポート)│株式会社オフィス企画

平均成約賃料が最も高いのは心斎橋・難波エリアの10,500~30,000円で、相場価格は約3億700~8億7,800万円になります。大阪では、肥後橋エリアの平均成約賃料が最も低く8,000~16,500円で相場価格は2億3,400~4億8,200万円です。

 

一棟ビルの利回り

ビルが密集しているイメージ画像

ここでは、一棟ビルの利回りについて解説します。

ビル経営についてシミュレーションしたいときは、以下のように「初期費用」「年間収入」「年間支出」を参考にしながら、年間収益を算出する手法が主流です。

 

初期費用 ・建築費:2億円

・諸経費:2,000万円

年間収入 2,000万円
年間支出 400万円
年間収益 1,600万円

以下では、一棟ビルにおける特徴を解説しています。

 

利回りが高くなりやすい

一棟ビルは、アパートやマンションと比べて利回りが高くなりやすいのが特徴です。アパート・マンションより大規模な物件として運用されることが多く、運営コストが相対的に低くなるためです。

管理効率が良いため見た目に反して支出を抑えることができ、コストパフォーマンスも良くなります。

また、都市再開発やエリアの活性化に伴い、将来的な収益増が見込まれるエリアであれば、利回りも少しずつ上がっていくでしょう。

「商業施設やオフィス街が近くて便利」「アクセスがよいのでビジネスや集客に便利」という場所であれば更なる効果が期待できます。

 

家賃収入が安定しやすい

一棟ビルの経営は、家賃収入が安定しやすく、長期的な収益の見通しが立てやすいのが特徴です。企業が入居することがほとんどなので、個人向けのアパートやマンションと比べて入れ替わりが少ないためです。

空室期間が発生するのを抑えられるだけでなく、入退去に伴う管理作業も軽減されます。特に商業地域や大規模な駅周辺のエリアでは、退去があっても新たな入居者がすぐに見つかる可能性が高く、家賃収入が途切れるリスクを抑えられます。

また、長期的に安定した家賃収入を得るには、入居を希望する企業の財務状況を事前にチェックすることも大切です。

例えば、過去3年分の決算書の確認、信用調査会社のレポートの取得、業界動向の分析などを行うことで、企業の財務状況や信用度、事業の安定性を把握できます。

これにより、経営基盤が安定している企業を選別しやすくなるため、短期間での退去や入れ替わりが起きにくくなるのです。

 

一棟ビル投資の注意点

最後に、一棟ビルで不動産投資をする際の注意点を解説します。一棟ビルは「管理工数が少ない」「安定した賃料収入がある」「利回りが高くなりやすい」など複数のメリットがありますが、一方でデメリットもあるので注意しましょう。

以下で代表的なデメリットと注意点を紹介するので、事前にご参考ください。

 

修繕履歴と耐震性を確認する

一棟ビルへの投資を検討する際、修繕履歴と耐震性を確認しておきましょう。

大規模修繕が長期間行われていないビルは、購入後すぐに高額な修繕費が発生するおそれがあるためです。初期費用が安く抑えられていても、修繕費が発生することでキャッシュフローの悪化を招くおそれがあります。

同様に、耐震性の確認も重要です。耐震基準への適合や耐震等級を事前にチェックしないと、大規模な耐震工事が必要になります。

また、耐震性が不十分な建物では、実際に地震が発生した場合、建物の損壊や倒壊のリスクが高まります。人命に関わる深刻な問題となるだけでなく、事業の中断や法的責任、修復コストの増大につながることも考えられます。

修繕履歴や耐震性を確認しておけば、今後必要となる工事の時期や規模を予測し、計画的な経営が可能になります。

 

空室による赤字のリスクが高い

一棟ビルは家賃収入が安定しやすい反面、空室が出ると赤字になるリスクが高くなります。

管理効率が良いとはいえ一棟ビル全体にかかるランニングコストは高く、空室が続くとキャッシュフローが悪化しやすいためです。特に近隣エリアでの競合物件の増加や、管理費を値上げするタイミングでは入居者の退去につながりやすいので特に注意が必要です。

また、一棟ビルのテナント構成にも注意が必要です。通常、一棟ビルの中は、複数の企業が入りますが、特定の企業への依存度が高いと、退去時のリスクが大きくなります。

例えば、全フロアのうちの半分を1社が借りている場合、その会社が退去すると一気に空室率が50%に上昇します。すぐに入居する企業が見つからなければ、赤字になるリスクが高いでしょう。

さらに、入居する企業の契約更新時期が集中していると、その時期に複数社が同時に退去するリスクがあります。

そのため、契約更新時期を分散させるなど、リスク管理の戦略が重要になります。

 

一棟ビルの購入は専門の不動産会社が安心

一棟ビルで不動産投資を検討している場合、一棟ビルに強い専門の不動産会社を頼るのがおすすめです。

一口に不動産会社と言っても得意分野は細分化されていて、単身者向けのアパートに強い不動産会社もあれば、一棟ビルを始めとするビジネス向け不動産に強い不動産会社も存在します。

一棟ビルに強い不動産会社であれば、過去のデータを元にしたマーケティング戦略やテナント管理で、空室リスクを低減させる施策を講じてくれるでしょう。また、市場動向や地域特性に精通しており、適切なアドバイスを受けられます。

ビジネス利用の多い一棟ビルにおいては、周辺のビジネス環境やエリア全体の再開発動向に関する調査が欠かせません。自分で全ての情報をリサーチするのは難しく、時間もかかるからこそプロの手を借りて効率よく情報収集していきましょう。

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