
中古ビル購入における注意点を解説。物件選びや融資、ビル経営時のポイントとは

目次
不動産投資の一つの選択肢として、中古ビルの購入が注目を集めています。新築に比べて低コストで取得でき、立地によっては高い収益性も期待できるため、魅力的な投資先となり得ます。
しかし、中古物件ならではのリスクや課題もあり、慎重な検討が必要です。
中古ビル購入における重要なポイントを、物件選びから融資、そしてリスクに至るまでを解説します。
中古ビル購入前の重要チェックポイント
ここでは、中古ビル購入前の重要チェックポイントを4点紹介します。
立地・ロケーションの評価
中古ビルを購入する際は、金融機関や取引先との距離、従業員の通勤のしやすさなど、業務効率を考えるうえで立地が重要です。
また、テナントであれば、お客様が来店しやすい場所や人が多く集まるエリアなどが重要視されます。
中古ビルを含めた不動産は、立地によって価格が比例するといっても過言ではありません。
駅近物件やオフィス街などの人が集まるエリアは、相場価格が高く、中古ビルであっても高額になる可能性も高いです。
その分、ビジネス面で大きな利益につながる可能性も高いため、価格とのバランスを考慮して立地を選定していきましょう。
建物の構造と耐震性能
建物の構造と耐震性能も中古ビルを購入するうえで重要なポイントです。
一般的に、中古ビルは鉄筋コンクリート造の建物が多いですが、築年数50年や60年などと、老朽化している場合、耐震性能も低下している可能性があります。
万が一倒壊すると、大事故にもつながりかねないため、購入前に、耐震診断などを専門業者に依頼して調査してもらう必要があります。
修繕計画と修繕履歴の確認
ビルでは一般的に、中期・長期の修繕計画に基づいて、大規模な修繕工事や設備の更新・交換が行われます。
そのため、中古ビルを購入する前に、「当該物件はいつ修繕したのか」の履歴を確認することが大切です。修繕履歴がなければ、建物が劣化している可能性も高まり、購入後に大規模修繕することにもなりかねません。
また、購入後の修繕計画もしっかり立てることが大切です。ビルの修繕は、数百万円〜数千万円と高額な費用がかかるため、計画性をもって積み立てる必要があります。
例えば、10年後の大規模修繕に備えて1,000万円を貯める場合、年間100万円ずつ積み立てていく必要があります。
中古ビルから得られる収入から積み立てていくため、赤字にならないか事前にシミュレーションしておきましょう。
テナントの状況と将来性
既存のテナントの状況と、将来性を確認し、収益が出る物件であるのかを確認しましょう。中古ビルを購入しても、利益が出なければ損失が生じるだけとなり、負の遺産にもなりかねません。
現在のテナントの賃貸借契約期間や賃料などを確認し、今後も長く借りてもらえるテナントであるかをチェックします。仮に空室が生まれても、次のテナントをすぐに誘致できるのかを確認しておきましょう。
中古ビル購入における資金計画と融資の注意点
ここでは、中古ビル購入における資金計画と融資の注意点を紹介します。
必要資金の算出
中古ビルを購入する際は、物件以外にも諸費用がかかるため、トータルの必要資金を算出しておくことが大切です。
主な諸費用は以下の3つがかかります。
諸費用 | 金額 |
---|---|
仲介手数料 | (売買価格×3%+6万円)×消費税 |
契約印紙代 | 売買代金によって異なる(200円~48万円) |
所有権移転登記費用 | 数十万円~数百万円 |
諸費用は、購入する物件価格に比例して高額になる傾向にあります。
中古ビルの場合、数千万円~数億円の金額になるケースも多いため、あらかじめ計算しておきましょう。
融資の種類と特徴
中古ビルを購入する際の融資は、「民間の金融機関」や「日本政策金融公庫」を利用できます。
民間の金融機関であれば、これまでの取引から相談に乗ってくれるケースも多いです。日本政策金融公庫は、政府公認の政策金融機関のひとつです。民間の金融機関の取り組みの補完を目的としているため、融資額が不足した場合などに相談できます。
融資審査のポイント
どちらの金融機関で融資するにせよ、中古ビルの「立地」「収益性」「築年数」などと、購入者の「属性」が考慮されます。
金融機関は、融資した金額をしっかり返済してくれるのかを基準に審査します。万が一返済が滞った時は、融資した物件を差し押さえ、売却して融資額と相殺する流れです。
そのため、物件を売却しても融資額を回収できるかを立地で考慮し、月々しっかり返済できるのかを収益性で考慮します。
また将来的に大規模修繕しても十分余剰金が生じるのか、借入期間を何人にするのかを築年数などから判断されます。なおかつ購入者が過去に滞納していたり、事業が黒字になっているのかなど、属性についても審査の対象となるため、事前に確認しておきましょう。
返済計画の立て方
金融機関の融資を利用して中古ビルを購入した場合、毎月返済計画を立てていかなければいけません。
基本的には、毎月中古ビルから得るテナント収入などから借入れ返済していきますが、その他にもかかる費用に備えておく必要があります。
毎月支払うもの | 1年に1度支払うもの | 将来的に支払うもの |
---|---|---|
借入返済 |
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上記の他にも、購入したビルによってかかる費用はたくさんあります。それらの費用を全て算出し、返済計画を組み立てるようにしましょう。
中古ビル購入におけるリスクと対策
中古ビルを購入する際、事前にリスクと対策を理解しておかなければいけません。
ここでは中古ビル購入に伴うリスクと対策方法を紹介します。
空室リスクへの対応
中古ビルを購入する際は、空室リスクを考慮しておかなければいけません。特に築年数が古くなるにつれて、空室率は高まる傾向にあります。
購入時は満室であっても、数年後には空室になるケースも多々あります。当然ながら空室が多くなると、収益は低下してしまうため、融資の返済もできなくなるリスクが高まります。
そのため、空室が発生した際、どのように次の入居者を確保するのかを事前に検討しておいた方が良いでしょう。
資産価値下落リスクの軽減策
中古ビルを含めた建物は、年々資産価値が下落する可能性が高いです。築年数が古くなるにつれて、修繕箇所が多くなるうえ、見栄えの劣化や構造部の劣化が発生します。
そのため、将来的に売却する際、購入時より安くなることが一般的です。少しでも高値で売却するためには、ビルのメンテナンスを行って、景観を良くしたり、建物の劣化を防ぐためのリフォームが必要です。
当然ながらこれらの作業にはコストが発生するため、採算を考慮したうえで行うようにしましょう。
災害リスクと保険の活用
将来的に発生する自然災害に備えて、火災保険や地震保険にはしっかり加入しておきましょう。
日本では、首都直下型地震や南海トラフ地震などが30年以内に70%の確率で発生すると内閣府は発表しています。

引用:内閣府 地震災害 : 防災情報のページ
特に中古ビルは老朽化していることもあり、倒壊や火災の危険性は高まります。これらに対処すべく、火災保険や地震保険の補償内容を確認し、しっかり加入しておかなければいけません。
万が一倒壊しても、金融機関の返済は無くならないため、しっかり保険の内容を確認しておきましょう。
中古ビル購入は実績豊富な不動産会社に相談
中古ビル購入は実績豊富な不動産会社に相談しておきましょう。
独断で購入してしまうと、「思っていたより修繕費がかかる」「すぐに退去されて収益が低下した」という失敗にもつながりかねません。
実績ある不動産会社へ相談すれば、物件の収益性や立地、修繕計画など、さまざまな視点から優良物件であるかを見極めてくれます。
中古ビルは、購入してから失敗したと後悔しても取り返しがつきません。購入前の入口が非常に重要となるため、実績豊富な不動産会社に相談してから購入を検討することをおすすめします。