
ビルの固定資産税はいくら?計算方法や税金を抑える方法を解説

目次
ビルを所有すると避けて通れないのが、固定資産税の支払いです。ビルの固定資産税は多額になることが多く、少しでも節税を意識した対策が求められます。
ビルの固定資産税がいくらくらいで、どのように計算されるのか、そして税金を抑えるための具体的な方法について詳しく解説します。
ビルの固定資産税はいくら?計算方法
ビルを相続や売買で取得した際の固定資産税の高さに驚かれた方も多いことでしょう。急な相続で取得した方は、特にその金額の高さに驚かれたことと思います。
ではビルを相続もしくは売買で取得した場合、固定資産税はいくらになるのか、その計算方法を見ていきます。
まず固定資産税について簡単に説明します。毎年1月1日時点で、土地や家屋を所有する人が納税義務者です。売買や所有権移転されたタイミングではないので注意しましょう。
固定資産税の計算式は次のとおりです。
固定資産税=課税標準額×1.4%
※都市計画税が含まれるため、税率は地方公共団体自治体により異なります。
※なお東京都は1.4%となっています(2024年時点)。
計算式に登場する課税標準額は、固定資産税評価額を指しています。固定資産税評価額については国が定めた方法にもとづき市区町村が算出しており、1月1日時点の評価額を固定資産税評価基準に基づいて計算し公表します。
固定資産税評価額は、一般的には公示時価の70%程度といわれています。
公示地価が1億円の場合、70%程度が固定資産税評価額となるため7,000万円です。これに1.4%をかけたものが固定資産税です。(今回の例だと、7,000万円×1.4%=98万円です。)
固定資産税評価額は3年に一度評価の見直しがあるので、その点も認識しておいたほうが良いでしょう。
固定資産の評価額の調べ方
では固定資産税の評価額はどのように調べればよいのでしょうか。
もっとも簡単な方法としては、役所から郵送される課税明細書を確認する方法があります。課税明細書には土地の固定資産税評価額と建物の固定資産税評価額がそれぞれ記載されます。
これは毎年地方公共団体(自治体)から郵送されてくるので確認の手間はかかりません。
そのほかに自ら市区町村の役所などに出向き「固定資産評価証明書」を取得する方法や「固定資産税課税台帳」を市区町村の役所で閲覧する方法もあります。
デメリットとしては閲覧料など費用がかかる点です。
固定資産税以外は?ビルの取得と保有にかかる税金
では固定資産税のほかにはどのような税金がかかってくるのでしょうか。ビルを相続した場合や売買で取得した場合を想定し考えていきましょう。
都市計画税
都市計画税は都市計画事業や土地区画整理事業に必要な費用として、土地や家屋に対して課税されているものです。
課税するかどうかはそれぞれの市町村の判断になりますが、日本全体で1/3の市町村が課税しています。
東京23区の場合は東京都へ都税として納税することになり、税率は0.3%です。
登録免許税
登録免許税は不動産の登記のタイミングで発生するものです。ケースとしては所有権移転登記や建物の所有権保存登記、抵当権の設定登記などがあります。
なお登録免許税は、固定資産税評価額×各種利率によって求められます。内容により料率が変わりますが土地の場合は以下のとおりです。
- 売買による所有権移転:2.0%(20/1000)
- 相続・法人の合併・共有物の分割:0.4%(4/1000)
- その他(贈与・交換・競売など):2.0%(20/1000
一方、建物だと土地と利率が変わります。
- 所有権の保存:0.4%(4/1000)
- 売買・競売による所有権移転:2.0%(20/1000)
- 相続・法人の合併による所有権移転:0.4%(4/1000)
- その他の所有権移転(贈与・交換・収用など):2.0%(20/1000)
印紙税
不動産売買契約書やローン借入れの金銭消費貸借契約書は課税文書に該当するため、契約書に記載の金額に応じた印紙税が必要です。
印紙税の場合は、市区町村の役所に納めるのではなく契約書に必要な金額の印紙を貼り消印する必要があります。
消印とは貼り付けた印紙の再利用を防止するために、印章や署名をすることを指します。
不動産取得税
前提として、相続または法人の合併が理由の取得なら、不動産取得税の支払いは不要です。
不動産取得税は、不動産(土地や家屋)を取得したときにかかるものです。注意点は、売買だけではなく贈与や家屋の建築でも対象となる点です。
計算方法は以下のとおりです。
不動産取得税:課税標準額×税率
税率は東京都の場合は以下のとおりです。
土地および家屋(住宅)は3%、非住宅の家屋は4%
(取得日が平成20年4月1日から令和9年3月31日までの場合が上記の税率となります)
税金の負担軽減を期待するビルオーナーは多い
ザイマックス総研の研究調査(2023年10月31日ビルオーナーの実態調査2023)では全国の中小規模ビルを保有し賃貸ビル事業を行う873社から有効回答をもらい、分析を実施しています。
その結果を見るとビルオーナーの「支出の増加」について、2023年は61%が増加傾向と回答し2019年の39%に対して1.5倍以上の上昇率です。
賃貸ビル事業の支出

引用:ザイマックス総研の研究調査「ビルオーナーの実態調査2023」
また「支出の増加した項目」については、2021年と2023年との比較にはなりますが、修繕費、水光熱費、公租公課の順に支出が増加したという回答となっています。
支出の増加した項目

引用:ザイマックス総研の研究調査「ビルオーナーの実態調査2023」
修繕費に関しては16%の増加となっていますが、人件費や修繕部材、運搬費などの高騰を考えると妥当とも考えられます。
水光熱費は59%の上昇率と高いものの、対策できることは電力会社の変更や節電対策などでしょう。
公租公課については18%の上昇となり、より一層関心が高まったことがうかがえます。これには税金の負担軽減について対応を取りたいが取れていないケースや、そもそも知識として知らなかったケースがあるのかもしれません。
税理士など専門家に相談できる機会がないとなかなか税負担について考えることもなく、軽減措置などをうまく活用できていない可能性もあるでしょう。
物件の取得時に対策が取れなかったとしても、これから見直すことで負担を軽減できるかもしれません。
ビルの固定資産税は抑えられる?
ではビルの固定資産税を抑えるにはどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、軽減措置や減免対象に関して詳しく見ていきましょう。
住居が入ったビルなら固定資産税の減免がある
まずひとつ目はビルに住宅が入っているケースです。
このような場合では住宅用地の特例による軽減措置を適用できます。適用できる場合、固定資産税額や都市計画税が以下のように軽減されます。
固定資産税額や都市計画税の軽減額
住宅用地の面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 |
一般住宅用地(200㎡超) | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 |
ただし、上記は住宅用地に関しての固定資産税の軽減措置です。商業ビルは対象外ですので注意が必要です。
所得税は給与所得や他事業と損益通算ができる
初めの頃や初年度は特に、税金をはじめとした支出が多くなり、赤字になる場合が多いことでしょう。そんなときに考えるべきは、損益通算です。
給与所得や他の事業の所得と損益通算することで課税対象額を少なくでき、それにより所得税の負担を軽くできます。
給与所得などからマイナス分が差し引きされ課税対象を小さくする方法ですが、確定申告を行うことによって税金の還付を受けられることが期待できます。
とはいえ、日頃から収支バランスを確認し、赤字経営にならないようにチェックしておくことが重要ですので、その点は勘違いしないようにしましょう。
固定資産税を滞納してしまったら?
もしも固定資産税を滞納してしまった場合はどのようになるでしょうか。
考えたくはない内容ではありますが、固定資産税を滞納してしまうケースとして、親から相続し多額の支払いが発生したケース、仕事を引退し老後で収入が減少したケースなどが考えられます。
親からの相続の場合、死別などの急なタイミングで発生することがあるため、準備していないと多額の税金を支払うことは難しくなります。たとえ入院していてもそのときに相続する予定のある物件における固定資産税を意識することは、なかなか難しいものです。
また仕事の現役を引退した場合でも、一般的には収入が減少することが想定されます。
このような場合にこれまで難なく支払いができていた固定資産税が支払いできなくなるというケースはよくある話でもあります。あらかじめ想定ができることではあるため、事前に支払い用の金額を用意しておくことが必要です。
そして結果として支払いが難しい際にはどういう方法があるのでしょうか。まずは延滞金を支払う方法があります。延滞金なのでもちろん利息がかかります。
利率に関しては以下のとおりです。
- 納税期限から1カ月が経過するまでは年率7.3%
- 1カ月を経過した場合は年率14.7%
このように高い金利での支払い義務が課せられるため、支払総額としてはさらに重たい負担となってきます。
万が一それでも支払いができない場合は、給与や預貯金が差し押さえられ税金の滞納分に充てられます。それまでには督促状や催告書が届きますので、差し押えという最悪の事態にならないようにすることをおすすめします。
給与や預貯金などでも支払えない場合、競売という方法を取られることもあります。これは物件をオークションに出すという最終手段のようなもので、裁判所の命令にもとづく行政の手続きです。
強制執行のように物件から立ちのきをする必要がありますので、それまでに転居先や新しい生活の準備をする必要が出てきます。
とはいえ支払う能力がない状態で引っ越しの準備をするというのはかなり厳しいことが想定されますので、絶対にそうならないようにすべきです。
このように税金の負担はビルオーナーの悩みの種となっています。
税金の負担が少しでも重たいと感じる、収支バランスに対して不安を感じる、今後の物件運営に不安を感じるなど、少しでも心配事があればぜひ不動産会社に相談してみてください。きっと力になってくれることでしょう。