
工場を解体する費用相場を解説。補助金や費用を抑えるポイントも紹介

目次
工場解体の費用は、規模や構造、立地条件などによって大きく異なります。解体工事の見積もりを取る前に、工場解体費用の相場や内訳を把握しておくことが重要です。
工場解体に利用できる補助金や費用を抑えるポイントなどについても紹介します。
工場解体の費用相場はどれくらい?
工場の解体にはどのような費用がかかるのでしょうか。
工場の解体費用の相場と解体費用が変わる条件などについて紹介します。
工場解体にかかる一般的な費用
まず、一般的な工場の解体費用を紹介します。
ここで紹介するのは一つの目安であり、実際には建物の構造や大きさ、立地条件などによって異なるため、注意してください。
坪単価別の費用相場
坪単価の費用は次のようになっていることが多いようです。
広さ | 費用 |
---|---|
10坪未満 | 4.5万円~5万円 |
10~20坪 | 3万円~4.5万円 |
20~40坪 | 2.5万円~4万円 |
50~70坪 | 2万円~5万円 |
70坪以上 | 2.5万円~3万円 |
構造別の費用相場
また、構造別にみた坪単価は次のようになっています。
構造 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 3万円~4万円 |
軽量鉄骨造 | 3.5万円~5.5万円 |
重量鉄骨造 | 4.5万円~5.5万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 6万円~8万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 5万円~9万円 |
工場解体の費用に影響を与える要因
解体費用に影響を与える要因としては、以下の点が挙げられます。
- 工場の構造(鉄骨、RC造など)
- 工場の高さと面積(大きさ)
- 建物の状態
- 土台の有無
- アスベスト含有の有無
- 土壌汚染
その他にも、残置物の有無や立地条件等も解体費用に影響を与えます。
具体的な見積もりを取る際には、解体業者に現地調査を依頼し、詳細な見積もりを出してもらうことが重要です。もう少し詳しくみてみましょう。
工場の構造(鉄骨、RC造など)
構造は費用相場に次のような影響を与えます。
- 木造は解体が比較的容易で、廃材の処分も簡単なため、他の構造に比べて費用が低く抑えられます。
- 軽量鉄骨造は木造より解体に手間がかかるため費用が木造より高くなります。
- 重量鉄骨造の場合は、より頑丈な構造のため、軽量鉄骨造よりも解体費用が高くなる傾向があります。
- 鉄筋コンクリート造 (RC造)の場合は、重機が必要で、解体にかかる手間や時間が多く、費用が高くなります。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造 (SRC造)の場合は、大型の重機や特殊な技術が必要で、工期も長く、人件費がかかるため、最も費用が高くなる傾向があります。
工場の高さと面積
工場解体の費用に影響を与える要因として、工場の高さや面積は重要な要素です。
工場の高さが増すと、解体作業にはより多くの安全対策や特殊な機械が必要になります。
高い建物は、解体作業中の落下リスクが高まるため、作業員の安全確保のための追加の手間やコストがかかります。また、高所作業車などの特殊な機械の使用が必要になることもあり、これらは費用を増加させる要因となります。
工場の面積が広い場合、解体にかかる総費用は増加しますが、1坪あたりの単価は面積が広いほど低くなる傾向があります。
これは、大規模な解体作業ではコストが分散されるためです。しかし、小規模な工場では、1坪あたりの単価が高くなる傾向があります。
たとえば、10坪未満の工場では、1坪あたり約4.5万円~5万円が相場であり、70坪以上の工場では、1坪あたり約2.5万円~3万円が相場となることが一般的です。
アスベストや有害物質の有無
アスベストは、かつて断熱材や耐火材、吸音材として広く使用されていたため、特に古い建物に含まれている可能性が高いです。
アスベストが含まれている場合、特別な安全対策と除去作業が必要になります。
これには、専門の技術者による作業や特殊な機器の使用が含まれ、費用が大幅に増加します。アスベストの除去費用は、1㎡あたり10,000円〜85,000円程度が相場とされています。
また、アスベスト以外にも、解体工事で発生する可能性のある有害物質には水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル)などがあります。
これらの物質の処理には、適切な方法での処分が法律で定められており、それに従った処理が必要です。これにより、解体費用が増加する可能性があります。
有害物質の処理には、建築基準法、労働安全衛生法、大気汚染防止法などの関連法規に従う必要があります。
これらの法律は、アスベストやPCBの適切な処理方法を定めており、違反すると罰則が科せられることがあります。安全対策としては、防護服の着用や特定の工法での解体が必要となり、これらのコストも解体費用に含まれます。
土壌汚染
土壌汚染がある場合、以下のような影響があります。
土壌汚染調査
解体前には、土壌汚染の有無を確認するための調査が必要です。
この調査には、地歴調査、表層調査、詳細調査などがあり、それぞれに費用が発生します。たとえば、表層調査の費用目安は900㎡あたり15~20万円、詳細調査は100㎡あたり30~60万円が一般的です。
汚染土壌の除去
土壌汚染が確認された場合、汚染土壌を除去する必要があります。除去方法には、掘削除却や原位置浄化などがあり、これらの作業には高額な費用がかかります。一般的には、1㎥あたり5万円程度が除去費用の目安とされています。
法規制と対策
土壌汚染対策法に基づき、汚染土壌の適切な処理が義務付けられています。法的な要件を満たすための対策や、汚染土壌の処理には専門の業者を必要とし、これに伴う追加費用が発生します。
土地の利用制限
土壌汚染がある場合、土地の利用に制限が生じることがあります。
たとえば、住宅地としての利用が制限されるなど、土地の価値に影響を与える可能性があります。解体費用とは直接関係しないのですが、工場解体後に土地の売却などを考えている場合には重要になるので注意しましょう。
工場解体の補助金・助成金
工場の解体費用の相場や相場に与える要因についてわかったところで、工場解体にあたり利用できる補助金や助成金はどのようなものがあるのか気になるところです。
補助金や助成金は、事業の拡大や新規事業の立ち上げ、環境対策などを支援するためのもので、具体的な支給条件や申請方法は各補助金や自治体によって異なります。
適切な補助金を活用することで、工場解体の費用負担を軽減し、事業の成長や環境対策につなげることが可能です。
中堅・中小企業大規模成長投資補助金
2024年に新たに創設されたこの補助金は、生産工程の抜本的改革やCO₂削減、生産性向上に資する製造工場の大規模な設備投資に対して補助を行います。補助上限額は50億円で、補助率は1/3です。
中堅・中小企業大規模成長投資補助金は、工場解体に直接利用することはできませんが、工場等の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助を行うものです。
この補助金は、中堅・中小企業が人手不足に対応した省力化や労働生産性の向上、事業規模の拡大を図るための投資を支援することを目的としています。
具体的には、以下のような条件を満たす事業に対して補助が行われます。
- 投資額が10億円以上の場合
- 補助事業終了後3年間の賃上げ率が、直近5年間の最低賃金の伸び率以上であること
補助金の利用は、新たな工場の建設や既存工場の設備更新など、生産性向上に資する形での投資に限られており、解体にかかる費用には適用されません。
ただし、解体を含む再開発プロジェクトの一環として、新しい設備投資や拠点新設が行われる場合には、その部分について補助金の対象となる可能性があります。
詳細な補助金の内容や申請方法については、経済産業省の公式ウェブサイトや中堅・中小成長投資補助金事務局のホームページで確認することができます。また、申請に際しては、事業計画の詳細な内容や補助金の適用条件を十分に理解し、適切な手続きを行うことが重要です。
参考:中堅・中小成長投資補助金
事業再構築補助金
新型コロナウイルスの影響を受けた企業が業態転換や新分野展開を促すための補助金で、脱炭素化の取り組みを支援する「グリーン成長枠」などがあります。
事業再構築補助金は、工場解体にも利用可能ですが、いくつかの条件があります。
具体的には、以下のような点に注意が必要です。
補助対象経費
解体費用は補助経費の建物費として認められており、補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費が補助対象になります。
事業計画の一部
解体費用のみの事業計画では支援対象とはなりません。
事業拡大や再構築に関連する投資計画を持つ必要があり、たとえば、解体した土地に新しい事務所や施設を建設する計画がある場合、その全体の計画の一部として解体費用が補助される可能性が高まります。
新築の制限
新築にかかる経費は限定的にしか認められません。
新築が事業の実施に本当に必要不可欠で、かつ、代替手段が存在しない場合にのみ、新築の経費が補助対象となることが考えられます。
これらの条件を満たす場合、事業再構築補助金を工場解体に活用することができます。詳細な補助金の内容や申請方法については、経済産業省の公式ウェブサイトや事業再構築補助金事務局のホームページで確認することができます。
また、申請に際しては、事業計画の詳細な内容や補助金の適用条件を十分に理解し、適切な手続きを行うことが重要です。
参考:事業再構築補助金
ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者の設備投資や技術革新を支援するための補助金で、製造業の生産性向上や販路拡大などを目的としています。
ものづくり補助金は、工場解体に直接利用することは原則として想定されていませんが、工場解体が新しい設備投資や生産プロセスの改善、事業の再構築などの一環として行われる場合、間接的に利用することが可能です。
具体的には、以下のようなケースで利用できる可能性があります。
新しい設備の導入
解体された工場の敷地に新しい設備を導入するための投資計画がある場合、その設備投資に関連する費用として間接的に補助金を活用できる可能性があります。
生産プロセスの改善
工場解体後に新しい生産ラインを構築し、生産プロセスを改善する計画がある場合、その改善に必要な設備投資に補助金を利用できるかもしれません。
事業の再構築
工場解体が事業の再構築計画の一部である場合、新しい事業計画に必要な設備投資や施設建設に補助金を活用することが考えられます。
ものづくり補助金の詳細や申請方法については、経済産業省の公式ウェブサイトや、ものづくり補助金事務局のホームページで確認することができます。
また、申請に際しては、事業計画の詳細な内容や補助金の適用条件を十分に理解し、適切な手続きを行うことが重要です。
参考:ものづくり補助金
自治体の補助金
解体工事に関しては、自治体によって様々な補助金や助成金が設けられています。
たとえば、東京都荒川区には、老朽化した工場を区内で建替える際に、工事期間中の賃貸工場の家賃の一部を補助する「工場建替え家賃補助」があります。
これは、工場を建て替える間に利用する賃貸工場の賃料などの補助対象経費の3分の1、上限月額10万円までを最大で12カ月補助するというものです。
参考:荒川区「工場建替え家賃補助」
他にも、鹿児島県曽於市では、「危険廃屋解体撤去補助金」が設けられており、工事経費が30万円以上の工事で、同市内の解体業者等が行う工事が対象として、解体工事費の30%、最大で40万円を補助するというものです。
参考:曽於市「危険廃屋解体撤去補助金」
解体する工場がある自治体のHP等を調べて、どのような補助金や助成金があるのかを調べておくことをおすすめします。
工場解体の費用を抑えるポイント
工場の解体費用について、費用の相場や補助金などについて理解したうえで、解体費用をなるべく低く抑える工夫も必要です。
ここでは、解体費用を低く抑えるポイントについてみてみましょう。
- 複数の業者から見積もりを取る
- 解体工事の解体業者の閑散期に依頼する
- 残置物の撤去を自分たちで行う
- 工場の売却も視野に入れる
複数の業者から見積もりを取る
工場解体の費用を抑えるために複数の業者から見積もりを取ることは非常に有効な方法です。
複数の業者に見積もりを依頼することで、業者間の価格競争が促進され、より良い条件での契約が可能になります。また、異なる業者が提供するサービス内容や解体方法を比較することができ、自分のニーズに最も合った業者を選ぶことができます。
また、複数の見積もりを持っていることは、価格交渉の際の強力な材料となるでしょう。
加えて、工場解体は専門性が高いため、複数社から見積もりを取る過程で、予期しない追加費用や隠れたコストが明らかになることがあります。
見積もりを取る際には、解体工事の範囲や条件を明確にし、各業者に同じ条件で見積もりを依頼することが重要です。
また、最安値の業者だけでなく、サービスの質や業者の評判も考慮に入れて選定することが望ましいです。見積もりを比較することで、工場解体の費用を適切に抑えつつ、安全で質の高いサービスを受けることができます。
解体工事の解体業者の閑散期に依頼する
解体業者の閑散期は一般的に4月〜5月や6月〜9月、12月〜1月が該当するとされています。閑散期に工場解体を依頼することで、価格交渉やスケジュールなどを柔軟に対応してもらえる可能性があります。
また、繁忙期には廃棄物の処理費用や重機のリース費用が高騰することがありますが、閑散期にはこれらのコストが抑えられるため、追加費用などを削減できる場合もあります。
ただし、地域や業者によって異なる場合があるため、具体的な閑散期は直接業者に問い合わせることをおすすめします。
また、天候や季節による影響も考慮し、工事の計画を立てる際には、業者と十分なコミュニケーションを取ることが重要です。閑散期をうまく利用することで、工場解体の費用を効果的に抑えることができるでしょう。
残置物の撤去を自分たちで行う
工場に残っている残置物の撤去は解体工事の費用の一部を占め、自分たちで撤去を行うことで、その分の費用を節約することができます。
また、撤去した残置物の中には、再利用や販売が可能なものもあります。廃棄費用を削減するだけでなく、売却による収入を得られる可能性もあります。
撤去作業を自分たちで行うことを前提に解体業者と交渉することで、解体費用の削減を見込むことができます。
ただし、廃棄物のなかには適切に処理することを法律で取り決められているものや安全管理など、十分に注意する必要があります。また、専門的な知識が必要な場合は、専門業者に相談することも重要です。
工場の売却も視野に入れる
工場の解体費用捻出に苦心したり、コスト削減に苦慮したりしている場合は、いっそ売却してしまうのもひとつの選択肢です。
工場の売却実績が豊富な不動産会社に依頼することで、スムーズに売却をすることができるでしょう。
工場の売却は、解体費用を抑えるだけでなく、企業の資産を有効活用する機会を提供します。
ただし、売却には時間がかかることや、市場の状況によっては思うような価格で売れないリスクもあるため、慎重に検討することが求められます。
まずは不動産会社に相談することをおすすめします。