
CRE戦略とは。意味や目的、CRE戦略の実践方法を解説

目次
不動産は多くの企業にとって重要な経営資源です。しかし、その活用方法によっては大きな負担にもなり得ます。そこで注目を集めているのが「CRE戦略」です。
Corporate Real Estate(企業不動産)の頭文字をとったCRE戦略とは、企業が保有する不動産を経営戦略と連携させて最適に活用する取り組みのこと。CRE戦略の意味や目的、そして実践方法について詳しく解説していきます。
CRE(企業不動産)戦略とは
まず、CRE(企業不動産)戦略について紹介します。
CRE戦略の意図
CRE(企業不動産)戦略とは、Corporate Real Estateの頭文字をとった造語で、企業不動産と言う意味です。
CRE戦略は、2008年4月に国土交通省が公表した「CRE戦略を実践するためのガイドライン」において、企業不動産について企業価値向上の観点から経営戦略視点に立って、見直しを行い、不動産投資効率を向上させる考え方のことを指します。
一言で表すと、CRE戦略とは、「不動産を効果的に活用することで、企業の価値向上を図る経営戦略」という意味です。
CRE戦略方法
企業不動産には、事業を行うために必要となるオフィスや工場、倉庫などの不動産のほか、保養所や社宅、福利厚生施設、遊休地などもこれにあたります。
CRE戦略では、具体的に、現在企業で所有している不動産を見直しし、必要な資産と第三者に貸し出す資産などに分けたりします。
余剰となったオフィスや工場、商業施設などを賃貸物件として貸し出したり、売却したり、遊休地の活用として賃貸住宅や高齢者施設などを建築する方法もあります。
使用しない不動産を保有していても、固定資産税などの税金だけを支払うだけの負の遺産となってしまいます。
それらの不動産を活用することで長期的に安定収入を確保する方法などが経営戦略として挙げられます。
CRE戦略の特徴
2010年には「CRE戦略実践のためのガイドライン」(2010年改訂版)(全3章)が公表されました。
公表内容によると、CRE戦略の特徴として以下の4点が明記されています。
- 不動産を単なる財産ではなく企業価値を最大限向上させるための(経営)資源として捉え、企業価値にとって最適な選択を行おうということ
- 不動産に係わる経営形態そのものについても見直しを行い、必要な場合には組織や会社自体の再編も行うこと
- ITを最大限活用していこうということ
- 従来の管財的視点と異なり全社的視点に立った「ガバナンス」、「マネジメント」を重視すること
これらの特徴を生かし、CRE戦略が成功すると、企業のとってはコスト削減やキャッシュフローの改善、経営リスクの軽減や、コーポレート・ブランドの確率などにつながる期待ができます。
企業にとっては会社の利益と企業価値の上昇につながり、社会的な観点からも土地活用の促進や地域経済の再生、地価安定などにつながる可能性があります。
CRE戦略の重要性
CRE戦略を上手く活用することで、ヒト・モノ・カネ・情報といわれる経営資源を豊かにすることができ、企業価値の向上につながります。
CRE戦略には以下の4つの効果があるため、ひとつずつ紹介します。
コスト削減
所有している不動産の見直しを行うことで、管理費・修繕費・固定資産税などのコスト削減につながります。また、業務を外注する人件費も抑えられます。
拠点や支店、工場などを統廃合させることにより、業務の生産性を向上させるテクノロジーや、スペースシェアリングを活用することでワークスペースの削減にも期待できます。
不動産をただ処分してコストを削減するのではなく、従業員や物流を考慮した立地で不動産を活用すれば、さまざまな点でのコスト削減につながります。
キャッシュフロー改善
コスト削減を行うことで、必然と支出額を抑えられ、キャッシュフローの改善につながります。
企業が所有している不動産の中には、企業活動に使われていない、もしくは適切な活用もされていない遊休不動産と呼ばれるものがあるでしょう。
それらの不動産を売却するのか、しっかり有効活用するのかを、費用対効果を考慮して選択することで、大きなキャッシュフローの改善になります。
リスク分散・軽減
不動産の管理が行き届いていない物件は、経営にまでリスクを与える恐れがあります。
収益が生まない負の財産になっているだけではなく、各都市部や地域の自治体によって景観に関する規制が増えてきたことから、適切な対処が求められます。
しかし、景観に関する規制を無視して状態のままにすると、企業への社会的信用度が下がり、経営にも影響を与えてしまう可能性もあります。これらの不動産を適切に処分・管理することで、リスク分散と軽減につながります。
ブランディング強化
どこに本社、支店、工場などを構えるのかによってブランディング強化にもつながります。
以前は東京や大阪など都心部に本社を構えることが企業イメージの向上につながると考える方も多かったのですが、近年では、環境や社会に配慮した立地も企業ブランディングに繋がると考えられています。
その地域のシンボルとなる不動産であれば、親しみやすさや認知度の向上にもつながります。
CRE戦略の実践方法
ここではCRE戦略の実践方法を紹介します。
CREマネジメントサイクル
CREマネジメントサイクルは、リサーチ、プランニング、プラクティス、レビュー、アクトの5つのフェーズで成り立っており、CRE戦略のフレームワークを構築するための重要なプロセスとされています。
ここではフェーズごとの内容について詳しく紹介します。
リサーチ:現状分析と課題抽出
CRE戦略を実行する前に、現状分析と課題抽出を行います。
通常、擬態的なアクションプランと実行体制の構築であるCREフレームワークの構築と、不動産に関する経済的・物理的状況やリスクなどの情報整理であるCRE情報の棚卸の作業を実施します。
プランニング:戦略立案
プランニングではCRE関連情報に関して分析を行い、経営層が意思決定できる判断支援レポートを作成します。
判断支援サポートでは以下の4つの結果を取りまとめる作業を行います。
- ポジショニング分析
- 個別不動産分析
- CRE最適化シミュレーションの実行
- CRE最適化施策後の財務影響分析
プラクティス:実行
プラクティスではプランニングでまとめた最終レポートをもとに、アクションプランを作成してCRE最適化を実行します。
実行施策は「継続所有・使用(賃貸/賃借/アウトソース)」、「購入」「売却」の3種類あります。
レビュー・アクト:評価と改善
レビューでは、モニリングの結果とフィードバックし、アクト(改善)を施すことでCREマネイジメントは完成します。
CREマネジメントサイクルで実施した結果は、1度だけで大きな成果や改善効果が得られるとは限りません。そのため、何度も改善を繰り返して実行することが大切です。
CRE戦略はパートナー選びが重要
CRE戦略はパートナー選びが重要です。
各パートナーによって得意としている分野が異なるため、企業側の方針に合わせたパートナーを選ぶようにしましょう。
- 不動産デベロッパー・・・主に更地の購入がメイン
- リース会社・・・セール&リースバック取引がメイン
- 不動産ファンド・・・賃貸用不動産の購入がメイン
- 一般事業会社・・・賃貸用不動産の購入と撤退する不動産の賃借がメイン
- 不動産仲介会社・CREアドバイザリー会社・・・幅広いネットワークから上記のパートナーからどれがベストかをアドバイスしてくれる
CRE戦略は、自社だけで行おうとしても時間と労力を費やすうえ、確実に成功するとは限りません。
そのため成功を実現させるためには、パートナーの存在は不可欠になるため、自社の方針を慎重に検討して決めましょう。