
ビルの建て替え築年数の目安は何年?建て替え時の注意点やポイントも解説

目次
ビルの建て替えはどのくらいの周期で行われるのでしょうか。また、建て替えを検討する際に押さえておくべきポイントとは何でしょうか。
ビルの建て替え時期の目安となる築年数や、建て替えを実施する際の重要な注意点について詳しく解説します。
ビルを建て替える時期の目安とは
ビルを建て替える時期の目安について紹介します。
ビルの一般的な寿命と建て替え時期の目安
ビルの一般的な寿命は、100年以上とも言われておりますが、築50年〜60年前後で建て替えされるケースが多いです。
実際は、ロングライフビル推進協会が発表した「賃貸事務所ビルの寿命に関する意識調査」を確認すると、以下の画像の通り、築50年〜60年ほどが寿命であると考えている方も多いことがわかります。

ロングライフビル推進協会「賃貸事務所ビルの寿命に関する意識調査」より
もちろん上記のグラフは意識アンケートであり、実際は建物の状況を見て建て替えを検討するため、年数で決めていないのが実情です。
たとえば、築100年以上のビルであっても、定期的なメンテナンスを行っており、今でも使われている建物も存在します。
1911年に竣工した「横浜三井物産ビル」が現存しており、現在でもさまざまな企業のオフィステナントとしても活躍しています。
そのため、築50年〜60年前後とはいわれているものの、建物の状況から建て替えを検討するようにしましょう。
建物の構造や用途による建て替え時期の違い
ビルが築50年〜60年前後で建て替えされるケースが多い理由としては、建物は構造や用途によって法定耐用年数が関係してきます。
法定耐用年数とは、法律で定められた固定資産の減価償却の期間のことです。
金融機関が融資する期間の目安や固定資産税額の算出などに用いられる他、建物の建て替え時期の目安として用いられることもあります。
法定耐用年数 | 木造 | 軽量鉄骨造(骨格材肉厚が3mm以下の場合) | 重量鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 |
---|---|---|---|---|
店舗・住居用 | 22年 | 19年 | 34年 | 47年 |
事務所用のもの | 24年 | 22年 | 38年 | 50年 |
飲食店用 | 20年 | 19年 | 31年 | 41年(木造内装部分面積が延べ床面積の30%以上を超える場合は34年) |
上記の表の通り、鉄筋コンクリートのビルの法定耐用年数は、41年〜50年と定められています。
しかし、実際、法定耐用年数を経過したからといって建物が利用できなくなるわけではありません。
木造の住宅も20年前後ですが、築30年や40年を過ぎた建物でも十分居住できます。
そのため、法定耐用年数はひとつの目安程度としている方も多いですが、「法定耐用年数が切れたら建て替えを検討する時期」という見解もあります。
建て替え時期を判断するためのポイント
では、実際に築年数に問わず、どのようなケースになれば建物の建て替えを健闘したらよいのでしょうか。
ここでは建て替えを判断するためのポイントを3つ紹介します。
建物の劣化状況や不具合の把握
建物の劣化状況が大きく、設備などに不具合が生じた場合、建て替えを検討するタイミングです。
建物の劣化は、目に見える箇所と見えない箇所の2種類あります。
たとえば、「蛇口の水量が低下した」「サビなどが混ざった水が出てくる」などの場合、水道管に不具合が生じていることがわかります。
また、コンクリートに亀裂が多く見受けられるなど、地震などによる影響は、目に見える箇所です。これらの要素から目に見えない構造躯体の劣化を想定して、建て替えを検討するケースも多いです。
建物の修繕履歴と修繕コストの確認
老朽化したビルは定期的な修繕が必要となりますが、築年数が経つにつれて修繕の頻度は増える傾向にあります。
その都度修繕コストがかかるのであれば、新築に建て替え、家賃収益を上げる方が得策となるケースもあります。
明らかに修繕履歴が多く、ランニングコストがかかるのであれば、修繕より建て替えの方が相対的に利益が高まる場合も多いです。
維持管理費用が高額となり始めたタイミングが、ひとつの検討時期にもなるでしょう。
周辺環境の変化と建物の陳腐化の確認
周辺環境が変化し、建物の陳腐化が始まったタイミングは建て替えを検討するタイミングのひとつでもあります。
陳腐化とは、当初より希少価値が下がってしまうことです。周辺に新しいビルが建築され、多くの企業がその物件に入居し始めると、古いビルの希少価値が下がり、人気を失ってしまいます。
その結果ビルから退去されたり、家賃の値下げ交渉をされる可能性も高いです。
その状況を打破するために、新しいビルへ建て替えするのもひとつの選択肢となります。
建て替えを検討する際の注意点
建て替えを検討する際の注意点について紹介します。
建て替えのコストと資金計画
建て替えには多額のコストがかかります。そのため、しっかりと資金計画を組み、収支がプラスになるような事業でなければ意味がありません。
ここでは建て替えに関わるコストと資金計画について紹介します。
解体費用と新築費用の見積もり
建て替えには、既存ビルの解体費用と新築費用がかかります。
規模によって異なりますが、鉄筋コンクリートの解体費用は、坪5万円〜8万円前後です。さらに高層階のビルとなると、高所作業代が追加としてかかるため、坪10万円近い費用になるケースも多いです。
そのため、数千万円〜数億円規模の解体費用がかかるのが一般的です。
加えて新築する場合、坪100万円〜150万円ほどの費用がかかります。多くのケースで億を超える見積もりとなるでしょう。
資金調達方法の検討
億を超えるビルの工事の資金は、金融機関の融資を利用するのが一般的です。
金利や家賃下落、入居率などから事業性を考慮し、十分返済できる計画であるかを金融機関は審査します。
億になると、個人で借りるのはもちろん、法人でさえ融資が認可されない場合が多いです。昨今、コンクリートの値段が上昇し、多額の新築費用となっています。
その反面、家賃は大きく上昇しているとは言い切れないため、採算が合わない事業性になる可能性も高いです。
そのため、金融機関としても、融資の審査に慎重となる傾向にあります。
建て替え工事期間中の収入減少への対策
ビルの建て替え工事期間中は、家賃収入が得られません。建築する規模によって異なりますが、1年〜2年以上と長い期間です。
ここでは、収入減少に伴って対策しなければいけない事項を2点紹介します。
テナントとの調整と一時的な移転先の確保
既存ビルに入居している企業との調整が必要となります。
調整は「退去してもらい」または「一時的な移転先を確保し、完成後に入居してもらう」の2種類あります。
退去してもらう場合、立ち退き費用を支払わなければいけず、多額の費用がかかるため注意しなければいけません。また一時的な移転先を確保しても、立地や広さなどの問題から同意を得られないケースも多いです。
上記のように、収入減少だけでなく、支出やトラブルに発展するリスクも考慮しておかなければなりません。
工事期間中の収入減少を補填する方法の検討
当然ながら、工事期間中の収入減少を補填する方法を検討する必要があります。他にも多くのビルを所有しており、安定した収入があるから問題ないという方もいらっしゃることでしょう。
しかし、建て替えするビルだけで生計を立てている方は、毎月収入が得られなくなるため、対策を検討する必要があります。
建て替え後の収益性の見通し
ここでは、建て替え後の収益性の見通しで考慮しておくべき事項を2つ紹介します。
新しい建物の設計と用途の検討
建て替えするビルの用途を検討し、正しい設計が求められます。オフィスビルにするのか、マンションにするのかによって、間取りは異なるうえ、得られる家賃収入にも違いが生じます。
それらを決めるのは市場の需要です。企業が多いオフィス街などであれば、テナントが入るビル、駅近でオフィスより居住用の賃貸需要が高ければ、居住用のビルにしなければいけません。
エリアのマーケティングを行い、需要に沿った間取りを検討し、収益の見通しを検討します。
市場調査に基づく賃料設定と稼働率の予測
エリアのマーケティングでは、適切な間取り、賃料、稼働率を調査して設定します。
例えば居住用のビルを建築するとしましょう。駅近であったり、大学が近くにある場合は、1Kなどの単身者向けの間取りの需要が高いです。
しかし平均入居期間が長いファミリー層をターゲットとした間取りでは、安定的に入居者を確保できず、稼働率が低下します。
加えて近隣物件の賃料を調べ、適切な家賃設定が求められます。建築費用が高かったからという理由で、賃料を高額に設定しても、入居者がいなければ本末転倒です。
市場の調査を十分行ってから建て替えを検討すべきでしょう。
建て替えが難しい場合は、売却も検討する
建て替えが難しい場合は、売却を検討するのがおすすめです。先程もお伝えしたとおり、建て替えには多額の資金が必要となり、返済リスクが伴います。
なおかつ入居者がいなければ、収益も赤字となり、最悪の場合は金融機関に差し押さえられてしまいます。
そのようなリスクに不安を抱く方は、売却して現金を得た方が良いでしょう。
さらに修繕費を支払う必要がなくなるうえ、固定資産税なども支払わずに済みます。ランニングコストが0円になるメリットもあるため、売却も一つの選択肢として検討してみましょう。