遊休資産をわかりやすく解説|放置するリスクと不動産の活用・売却の判断基準も紹介

目次

工場や店舗を閉じたあとの土地、相続したまま使い道が決まらない建物など、使われないまま保有している資産は、収益を生まないのに税金や管理の負担だけが毎年かかり続けます。遊休資産の基本から放置するリスク、不動産の活用・売却の判断基準まで、公的なデータや制度を交えて整理します。

遊休資産とは

遊休資産とは、企業や個人が保有しているものの、現在は事業や生活などに利用されていない資産のことです。将来の利用予定がある資産も、すでに使い道を失った資産も含まれ、会計や税務では、実際に使われているかどうかによって扱いが変わります。対象の範囲、似た言葉との違い、生まれる背景の順に、基本を押さえておきましょう。

遊休資産に該当するもの

遊休資産は不動産だけを指す言葉ではありません。事業のために取得した幅広い資産が対象で、共通するのは、取得目的どおりに使われず、収益の獲得に利用されていない点です。代表的な例は次のとおりです。

区分 具体例
不動産 閉鎖した工場・店舗・事務所、空いたままの社宅や寮、更地のままの事業用地
設備・機械 生産ラインから外れた機械装置、使っていない検査機器
車両・器具備品 稼働していない社用車、使われなくなった什器
無形資産など 使われなくなったソフトウェア、利用予定のない権利

一時的に稼働を休止している資産と、使用予定がなく稼働できる状態にもない資産とでは、税務上の減価償却の扱いが異なる場合があります。休止中も必要な維持補修を行い、いつでも稼働できる状態かどうかが判断のポイントです。

(出典:国税庁「法人税基本通達 第7章 第1節 第1款 減価償却資産(7-1-3 稼働休止資産)」)

遊休資産と遊休不動産の違い

遊休資産が機械や車両まで含む広い言葉であるのに対し、遊休不動産は遊休資産のうち土地や建物にあたるものを指します。

違いは言葉の範囲だけではありません。機械や車両は、売却や廃棄で比較的短期間に整理できます。不動産は買い手探しや解体の判断が必要で、処分に時間がかかります。しかも持っているだけで固定資産税が毎年発生し、建物が傷めば近隣の安全や景観にも影響します。

空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)は、居住その他の使用がなされていないことが常態となっている建築物とその敷地を空家等として扱います。対象は住宅に限らず、使われなくなった店舗や工場も含まれます。遊休不動産は、法律上も所有者に適切な管理が求められる資産です。

遊休資産が生まれる主な理由

遊休資産が生まれる理由は、大きく3つに分けられます。

1つ目は、事業の縮小・撤退・統合です。拠点の集約や工場の移転で、使わなくなった土地や建物が残ります。2つ目は、設備や建物の陳腐化です。技術の変化や需要の減少で、生産設備や古い店舗が本来の役割を終えます。3つ目は、相続や取得をきっかけに、使い道が決まらないまま時間が経つケースです。国土交通省の税制改正要望では、空き家が発生する最大の要因として相続が挙げられています。

遊休不動産の全体像を示す公的統計は見当たりませんが、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」からは、使われない不動産の増加がうかがえます。

項目(2023年) 全国の数値
空き家数 900万2千戸(過去最多)
空き家率 13.8%(過去最高)
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 385万6千戸(総住宅数の5.9%)
同空き家の2018年からの増加数 36万9千戸

賃貸や売却の募集もしておらず、別荘などでもない空き家は、空き家全体の42.8%を占めています。工場や店舗などの非住宅は含まれていないため、使われない不動産の実数はこれより多いと考えられます。

遊休資産を保有し続けるリスク

使っていない資産でも、保有している限りコストとリスクは発生し続けます。税金や会計上の負担のように数字に表れるものから、老朽化や事故のように気づきにくいものまで、順に見ていきます。

固定資産税などの保有コスト

保有コストには、毎年の税金のほか、会計上の費用や損失も含まれます。主なものとして、固定資産税、減価償却、減損処理の3つを紹介します。

固定資産税の負担

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課される税金で、資産を使っているかどうかは問われません。土地については、住宅が建っている敷地に限り、課税標準を軽くする住宅用地の特例があります。

区分 対象 課税標準
小規模住宅用地 住宅1戸あたり200㎡までの部分 評価額の6分の1
一般住宅用地 200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで) 評価額の3分の1

(出典:東京都「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」)

この特例があるため、古い家が建ったままの土地は、更地よりも税負担が軽く済みます。取り壊して更地にしたり、駐車場など住宅以外の用途にしたりすると特例が外れ、土地の税額が上がります。解体するときは、そのあとの税負担まで見込んでおく必要があります。

放置した空き家には、税負担を重くする仕組みもあります。令和5年(2023年)6月に公布され、同年12月に施行された改正空家法では、放置すれば特定空家等になるおそれがある管理不全空家等も、市区町村長から勧告を受けると、敷地の固定資産税の住宅用地特例が解除されることになりました。特定空家等とは、倒壊の危険がある、衛生上有害となるおそれがある、著しく景観を損なっているといった状態の空き家です。特例が外れると、土地の税負担が増えます。どの程度増えるかは土地ごとに異なります。

(出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」)

なお、住宅用地特例は住宅の敷地にだけ認められます。工場や店舗が建っていた土地には、もともとこの特例がありません。

遊休資産の減価償却

建物や設備は時間の経過とともに価値が下がるため、取得価額を耐用年数にわたって費用に振り分けます。これが減価償却です。遊休資産となった後も、資産の状態や適用する会計基準によっては、減価償却費の計上が続くことがあります。

ただし、税務上の減価償却費を損金に算入できるかどうかは別の判断です。

建物の法定耐用年数は、構造と用途によって決まっています。

構造・用途 法定耐用年数
木造・事務所用 24年
木造・店舗用または住宅用 22年
木造・工場用または倉庫用(一般用) 15年
鉄筋コンクリート造・事務所用 50年
鉄筋コンクリート造・住宅用 47年
鉄筋コンクリート造・工場用または倉庫用(一般用) 38年
金属造(骨格材の肉厚4mm超)・事務所用 38年
金属造(骨格材の肉厚4mm超)・店舗用または住宅用 34年

(出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)

土地は時間が経っても価値が減らないものとして扱われ、減価償却の対象になりません。使っていない土地は、償却による費用処理もないまま、固定資産税だけが続きます。

税務上の減価償却の対象は、事業の用に供している資産です。事業の用に供していない状態が続く資産の償却費は、原則として損金に算入できません。ただし、前述の稼働休止資産にあたる場合は、減価償却資産として扱われます。扱いは資産の状況によって変わるため、判断に迷う場合は税理士などの専門家に確認しましょう。

減損処理が必要になるケース

減損処理とは、固定資産の収益性が下がり、投資額を回収できる見込みがなくなったときに、帳簿価額を回収可能な金額まで減らし、その差額を損失として計上する会計処理です。企業会計審議会が定めた「固定資産の減損に係る会計基準」にもとづくもので、主に上場企業などが対象になります。

処理は3段階で進みます。まず、減損の兆候があるかを確認します。兆候があれば、将来の割引前キャッシュ・フローの合計と帳簿価額を比べ、減損損失を認識するかを判定します。認識する場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減らします。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち高いほうです。

兆候の例として、基準では次のような事象が示されています。

  • 営業活動から生じる損益やキャッシュ・フローが継続してマイナスになっている
  • 事業の廃止・再編成など、使用範囲や使用方法が著しく変化した
  • 経営環境が著しく悪化した
  • 市場価格が著しく下落した

事業をやめて資産が使われなくなった状態は、使用範囲や使用方法の著しい変化にあたる可能性があります。使用計画のない遊休資産は、ほかの資産と切り離して個別に判定するのが一般的です。使う見込みがなく、売却しても帳簿価額を下回る場合は、減損損失の計上が必要になることがあります。

維持・管理にかかる負担

使っていない不動産でも、建物と敷地の状態を保つ手入れは欠かせません。草木の手入れ、清掃、郵便物の整理、換気や通水、施錠の確認、定期的な見回りなどが必要で、火災保険や賠償責任保険の保険料、傷んだ箇所の修繕費もかかります。管理会社に委託すれば手間は減りますが、委託費用が生じます。

遠方の物件や複数の拠点にまたがる物件では、移動の時間や交通費、担当者の工数といった見えにくいコストも積み上がります。

法律面でも、所有者には責任があります。空家法は所有者等に、空家等の適切な管理に努めることを求めています。令和5年の改正では、国や自治体の空家等に関する施策に協力する努力義務も加わりました。

建物の老朽化

人が使わない建物は、使っている建物より傷みが早く進みます。換気や通水がないと湿気がこもり、雨漏りを放置すれば木部が腐ります。給排水設備や電気設備も、動かさないまま時間が経つと不具合が出ます。傷みが進むほど修繕費が膨らみ、活用や売却のハードルも上がります。

「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年の全国の一戸建ての空き家352万3千戸のうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は285万1千戸で、80.9%を占めています。こうした住宅は利用されない期間が長くなる可能性があり、所有者による適切な維持管理が重要です。

老朽化が進んで管理不全空家等や特定空家等に該当すると、自治体から指導を受けることがあり、勧告を受ければ固定資産税の特例も外れます。老朽化は建物の問題にとどまらず、税負担や法的な責任にも直結します。

資産価値の低下

建物の価値は、時間の経過とともに下がり、手入れが行き届かなければそのペースは速まります。土地の価値も、立地によって行方が分かれます。

国土交通省の令和8年都道府県地価調査によると、2026年の全国平均の地価変動率は、住宅地が1.0%、商業地が2.9%、工業地が3.3%の上昇となりました。

ただし、これは全国平均で、地域別に見ると状況は大きく異なります。全国の地価が上がっていても、保有する土地の価値が保たれるとは限りません。人口が減っている地域や周辺の需要が弱い立地では、持ち続けるうちに土地も建物も価値が目減りするおそれがあります。

不法侵入や事故などの管理リスク

人の出入りがない建物は、不法侵入、不法投棄、放火などのトラブルに遭いやすく、人目が少ないため発見も遅れがちです。

台風や地震で屋根材が飛んだり外壁やブロック塀が崩れたりして、通行人にけがをさせる事故も起こりえます。民法では、土地の工作物の設置または保存に欠陥があって他人に損害が生じた場合、占有者や所有者が賠償責任を負うと定められています。使っていなくても、責任はなくなりません。

遊休不動産の主な活用・処分方法

遊休不動産の使い道は、収益化、建て替えや用途変更、自社利用、売却に大きく分けられます。

方法 向いているケース 主な注意点
賃貸 賃貸需要がある立地で、建物の状態がよい 改修費用と、空室になる可能性
駐車場・資材置き場 建物が不要で、すぐに収益化したい 収益が固定資産税を下回ることがある
建て替え・用途変更 立地がよく、需要に合う用途がある 初期投資が大きく、法令上の手続きが必要
自社での再利用 自社に必要な拠点や倉庫がある 改修費用と、使用計画の具体性
売却 使う予定も収益化の見込みもない 売却費用や譲渡に伴う税負担

それぞれの特徴と選ぶポイントを見ていきましょう。

賃貸による収益化

建物の状態がよく周辺に賃貸需要があるなら、貸し出して賃料収入を得る方法があります。住宅のほか、店舗、事務所、倉庫としても貸し出せます。

賃貸物件がすでに多く余っている地域では、貸し出しても入居者が決まらないおそれがあります。募集前に、周辺の賃料相場や空室状況を調べておく必要があります。

将来、自社で使う可能性が残っている場合は、契約期間をあらかじめ定める定期借家契約も選択肢です。適切に契約し、必要な終了通知を行えば、原則として期間満了で賃貸借を終了できます。

駐車場や資材置き場としての活用

建物が不要な土地は、駐車場や資材置き場として貸す方法があります。初期投資が小さく、将来売却や別の活用に切り替えやすい点が利点です。

注意したいのは、収益と固定資産税の関係です。住宅が建っていた土地を更地にして駐車場にすると、住宅用地特例が外れて税額が上がります。駐車場収入が、上昇後の税金と管理費を下回れば、持っているだけで赤字になります。更地にする前に、収支のシミュレーションが欠かせません。

建て替え・用途変更

建物が老朽化している場合や、現在の用途では需要が見込めない場合は、建て替えや用途変更で価値を引き上げる方法もあります。事務所をシェアオフィスに、古い社宅を賃貸住宅に、倉庫を店舗にといった転換です。

建築基準法では、用途や規模によって用途変更の確認申請が必要になります。建て替えには接道条件や用途地域の制限も関わります。空家法の改正では、市区町村が空家等活用促進区域を定めると、区域内の接道規制や用途規制が合理化され、用途変更や建て替えを進めやすくなりました。対象の区域に入るか、自治体の窓口で確認する価値があります。

建て替えや用途変更は投資額が大きくなります。賃料収入などで何年で回収できるかを試算してから判断しましょう。

自社での再利用

自社の事業に使える物件なら、倉庫、事務所、支店、社宅などとして再利用できます。外部から借りている拠点を遊休不動産に移せば、賃借料を減らせます。

判断のポイントは、使用計画の具体性です。使う時期、使う部署、改修の予算が決まっていれば現実的です。いつか使うかもしれないという漠然とした理由で保有を続けると、固定資産税や管理費だけがかさみます。

売却による資産の現金化

使う予定も収益化の見込みもない不動産は、売却して現金化する方法があります。固定資産税や管理の負担がなくなり、売却代金を借入金の返済や新規事業の投資資金などに充てられます。

売却には、古い建物が建ったまま売る方法と、解体して更地で売る方法があります。更地にすると買い手がつきやすくなる場合がある反面、解体費用がかかり、住宅が建っていた土地では固定資産税の特例も外れます。どちらが有利かは物件によって異なるため、解体を決める前に不動産会社へ相談すると判断しやすくなります。

税金面では、法人と個人で扱いが異なります。個人が相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。ただし、2024年1月1日以後の譲渡で、対象の家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上の場合、控除額の上限は2,000万円です。主な要件は次のとおりです。

  • 被相続人が相続の直前まで、その家屋に居住していた
  • 相続の時から売却の時まで、事業・貸付・居住の用に供されていない
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋である(区分所有建築物を除く)
  • 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9年12月31日までに売却する
  • 売却代金が1億円以下である
  • 売却時までに耐震リフォームか取り壊しを行う(2024年1月1日以後の譲渡は、売却の翌年2月15日までに買主が行う場合も対象)

(出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)

要件や期限は変更されることがあるため、利用を考える場合は最新の情報を国税庁や自治体の窓口で確認しましょう。

保有メリットが少ない遊休不動産は売却も検討

活用の見込みが立たないまま保有を続けるほど、コストとリスクは積み上がります。売却を前向きに考えたほうがよい物件には、いくつかの共通点があり、当てはまる項目が多いほど売却の優先度は高くなります。

今後の利用予定がない不動産

自社でも家族でも使う予定がなく、将来の使い道も決まっていない不動産は、売却を検討してもよいでしょう。

使い道が決まらないまま残っている不動産は、決して珍しくありません。「令和5年住宅・土地統計調査」によると、現住居以外に空き家を所有している世帯は141万6千世帯で、主世帯全体の2.5%です。その空き家のうち47.5%は、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く、明確な用途がない空き家でした。

収益化が難しい立地・物件

賃貸や駐車場としての活用を検討しても、収益が見込めない物件があります。周辺に賃貸需要が乏しい、道路に接していないために建て替えが難しい、地価が下がり続けている地域にあるといった物件です。

収益化できるかどうかは、年間の見込み収益から、固定資産税、管理費、修繕費、保険料を差し引いて確かめられます。赤字であれば、持ち続けるほど損失が膨らみます。黒字でも、改修費用の回収に長い年月がかかる場合は、売却して資金を別の用途に回したほうが有利になることもあります。

維持・管理の負担が重い、老朽化が進んで修繕費が見合わない、まとまった資金を確保したいといった事情も、売却を考える動機になります。建物が傷むほど物件の価値は下がりやすく、判断を先送りするほど選べる道が狭まる点には注意が必要です。

遊休資産は放置せず、まずは不動産の価値を確認しよう

遊休資産は、保有しているだけで固定資産税や管理費がかかり、老朽化や資産価値の低下、事故のリスクも抱えます。放置する期間が長いほど、活用や売却の選択肢は狭まります。

活用か売却かを決める前提は、不動産がいまいくらで売れるのかを把握することです。価値がわかれば、保有コストと比べて持ち続ける意味があるのか、賃貸や再利用で収益を上げられるのかを数字で判断できます。不動産会社の査定は、複数社に依頼して比べると相場の見当をつけやすくなります。まずは所有している物件の価値を確認し、活用と売却のどちらが有利かを検討してみてはいかがでしょうか。

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