本日はお招きいただきありがとうございます。今日は対談ではありますが、最初はインプットも兼ねて、私が普段研修でお話ししている内容をご説明させてください。
ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします。
まず、働く現場で起こっていることをお話しします。私はいつも働く人を樹に例えていまして、枝葉が個人のスキルで、幹が大もとの力。根っこを仕事観や価値観として、私は根っこを作る研修を主に行っています。
企業はどうしても、花や実の業務成果を効率的に求めがちです。一方で幹や根っこはほったらかしで、結果、枝葉もあまり振るわない、という状態になってしまう。また、樹が育つには、陽の光である目的や志も浴びさせないといけません。今回、御社は太陽となる理念をつくられたと伺って、根っこからしっかり手を入れたのかなと思いました。
研修の際「忙しい」という話をよく伺います。ただ、忙しさと成長は、実はつながっていません。忙しいだけの会社は存続しない。『怠惰な多忙』という言葉がありまして、多忙だけれど、自身を成長させることには怠惰であるということ。これは、現代のビジネス現場にも言えることだと思います。
ノーベル経済学者のハーバード・A・サイモンは、定型の処理的な仕事で成果を上げれば、答えのない創造的なリスクを負う仕事は誰もしたがらないと言います。組織が、定型のものにばかりに流れ、魂がやりたがっている仕事は駆逐されていくという。
時間管理のマトリックスという有名な図があります。忙しさの中身として『重要かつ緊急』の第一領域の仕事で日々が埋まり、数年経っても成長はなかったという話もあります。一方で『重要だけど緊急でない』第二領域の仕事は、自己開発や自己研鑽、人が育つ仕組みを作っていくことです。御社の理念策定の取り組みも、第二領域に着手したからこそ、できたことだと思いました。
村山さん、ご説明ありがとうございます。今のお話は、私自身のこれまでの歩みや現在の仲介営業部の状況を考えても、とても共感できるお話でした。
少し、私についてお話をさせてください。私は新卒で入社後、約11年間の仲介営業部での仕事を皮切りに、30年以上当社でキャリアを築いてきました。実は、この仲介営業部で理念策定の取り組みが行われた頃、私は他部署におり、プロジェクトに直接関わることはありませんでした。
当時の仲介営業部は、高い目標に向けて頑張ってはいましたが、毎年未達が続き、収支も赤字が続く状況。外から見ても仲介の難しさはなかなか厳しいものがあると感じていました。そんな中で『何のために仕事をするのか』という旗を立てるため、全店舗から21名のメンバーが集まり『小田急のミライプロジェクト』として、現場の言葉で理念を作り上げたと聞いています。

私自身の経験からも、「大きな目的」を持つことの大切さには、強く共感するところがあります。
というのも私自身、不動産仲介の営業として働いていた頃、ノルマや目標に日々追われるばかりで、心理的にかなり苦しさを感じていた時代がありました。そこから抜け出すきっかけになったのが、まさに「大きな目的」を持ったことだったのです。
当時は、敷地の境界を曖昧にしたまま売買することも多く、後々トラブルに発展するケースが絶えませんでした。境界を明確にするには、売主様・買主様だけでなく、お隣の住民の方との細かい調整も欠かせないため、適当に済ませる仲介会社も多かった。でも、お客様の気持ちになって考えると、問題が放置されたまま取引が進むのはあり得ないと、強く思う瞬間があったのです。
そこからどれだけ忙しい中でも、地道に調整を続けていくことに決めました。すると少しずつ、関わる方に感謝していただけるようになった。その時、「自分の仕事は、人を幸せにする仕事なんだ」と気づきました。まさに日々の仕事に、大きな目的ができ、苦しい時期を抜け出すきっかけとなりました。
そう思ってからは、お客様の幸せのために自ら働きかけるように変わりました。すると不思議なことに、お客様からのご紹介も増え、目標やノルマに追われてばかりだった仕事が、自分の手でコントロールできるものへと変わったのです。
私の話は一例ではありますが、このような経験があったからこそ、現場ではたらく一人ひとりが理念という「大きな目的」を目指すことには、大きな意義があると考えています。
なるほど。お話にあったように、目標はあくまで目指す数字であり、目的は最終的な意味。目的の方が、包括的で上位の概念なんですね。目的から「やる意味がある」と思えれば、内発的動機から目標に向かっていけます。けれど、目標が目的化すると、いつまでこの目標を追いかけるんだろう、と疲弊してしまう。私も「坂の上に太陽(=大いなる目的)を昇らせていますか」という話をしています。
