不動産購入のノウハウ
マンション価格が、2023年現在も上昇を続けています。マンションを売却する方にはよいタイミングかもしれません。しかし購入したい方にとっては、今買うべきか、待つべきか、中古や戸建てを購入するほうがよいのか、判断に迷うでしょう。
新築マンションの価格が高い理由と、中古や戸建てとの価格推移の比較、買ってもよいマンションの条件について解説します。
不動産購入 中古住宅2024年6月7日
新築マンション価格の高騰が止まらず、2022年にはバブル期の1990年を超え、過去最高額を更新しました。
2023年に入っても上昇を続ける新築マンションの価格が、どれくらい値上がりしたのか、また高騰の要因についても解説します。
不動産経済研究所のデータによると、2023年8月の首都圏の新築マンション平均価格は7,195万円、前年同月比で17.9%の上昇です。
近畿圏では、平均価格が4,345万円で前年同月比1.2%の上昇です。神戸市部だけで見ると、平均価格が6,090万円で、前年同月比35.2%もの上昇を見せています。
長期でのマンション価格推移を見ても、2008年のリーマンショック以後は継続的に上昇しています。国土交通省の不動産価格指数(マンション)によれば、2010年を100とした場合のマンションの価格指数が、2015年で約140、2023年6月で約190と、上昇幅は多大です。
2020年以降のコロナショックによる経済危機でも、マンションの価格上昇は止まりませんでした。いったい何がマンション価格を高騰させているのでしょうか。
※2020年度~2022年度は暫定値
参照:株式会社不動産研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2023年8月」
参照:株式会社不動産研究所「近畿圏新築分譲マンション市場動向2023年8月」
参照:国土交通省「不動産価格指数」
マンション価格高騰の要因の1つ目は、国と日銀による超低金利政策です。
2008年リーマンショックからの経済立て直しのために、政府と日銀はアベノミクス「3本の矢」の1本目の矢として、2013年に大規模な金融緩和政策を実施しました。そして2016年にはマイナス金利政策をスタートさせています。
金融緩和による景気回復と住宅ローン金利の低下により、実質的な購入可能価格が上がったことで、新築マンションの需要が高まりを見せました。
一連の金融緩和政策により、1990年のバブル期に8%を超えていた変動金利型住宅ローンの金利が、直近10年間は2.475%で横ばいの状態が続いています。それにともない、マンションなどの不動産を購入する動きが依然活発です。
マンション価格高騰の2つ目の要因は、昨今の歴史的な円安にあります。
円安が進んだ結果、日本人にとっては高嶺の花であるマンションが、海外では割安物件と映っています。近年は東京23区の物件を中心に、外国人投資家による買いが増加したことで、マンション価格全体を押し上げているのです。
実際に中国や香港、台湾などの不動産投資家の間では、日本のマンションが「安くて利回りの高い物件」といわれ、人気が高まっています。
今後の円相場については、日米金利差やエネルギー価格、インバウンド消費などの要素に左右され、経済専門家でも先読みが難しい状況です。
価格高騰の3つ目の要因は、資材費をはじめとする建築費の高騰です。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻で、欧州諸国を中心とした経済制裁を実施しました。これに対しロシアは木材・金属・原油などの輸出をストップしたことで、世界的に建築資材やエネルギーの価格上昇を招きました。
さらに国内では建設業の人手不足により、工事の人件費も上昇しています。2024年には建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用されるため、より多くの人手が必要となり、人件費がさらに上昇する見込みです。
新築マンションの価格が高騰し続ける現在、新築マンションの購入を諦め、中古マンションや戸建ての購入を検討する方も多いでしょう。
ここでは、中古マンションと戸建住宅の価格推移を、新築マンションと比較し解説します。
中古マンションの価格推移を見てみましょう。
中古マンションの平均価格推移
首都圏平均価格 | 近畿圏平均価格 | |
---|---|---|
2012年 | 2,500万円 | 1,675万円 |
2014年 | 2,724万円 | 1,820万円 |
2016年 | 3,049万円 | 2,011万円 |
2018年 | 3,333万円 | 2,184万円 |
2020年 | 3,599万円 | 2,337万円 |
2022年 | 4,276万円 | 2,695万円 |
参照:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」
参照:近畿圏不動産流通機構「2022年度近畿圏年刊市況レポート中古マンション」
首都圏の中古マンションの価格は、2012年の2,500万円から、2022年で4,276万円へと上昇しています。新築マンションほどではありませんが、価格が高騰傾向です。
近畿圏でも、2012年の1,675万円に対し、2022年で2,659万円と、こちらも上昇を続けています。
首都圏・近畿ともに、中古マンションの価格が10年間で1,000万円以上の上昇です。新築マンションの価格が高騰したために、築浅物件を中心とした中古マンションの需要が高まり、価格を押し上げているようです。
続いて、中古戸建住宅の価格推移を見てみましょう。
中古戸建住宅の平均価格推移
首都圏平均価格 | 近畿圏平均価格 | |
---|---|---|
2012年 | 2,917万円 | 1,841万円 |
2014年 | 2,917万円 | 1,823万円 |
2016年 | 3,030万円 | 1,834万円 |
2018年 | 3,142万円 | 1,894万円 |
2020年 | 3,110万円 | 1,867万円 |
2022年 | 3,753万円 | 2,066万円 |
参照:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」
参照:近畿圏不動産流通機構「2022年度近畿圏年刊市況レポート中古マンション」
2022年までは上昇傾向だった中古戸建ですが、「月例速報MarketWatchサマリーレポート2023年8月度首都圏」によると、2023年8月の成約価格は3,725万円で、前年同月比1.4%の下落となっています。長期の不動産価格指数で見ると、戸建住宅においては2020年までほぼ横ばい、その後は値上がり傾向でしたが、2023年に入り小幅な下落を見せています。
戸建て物件の価格は新築・中古マンションの価格変動と比べると落ち着いているので、生活の利便性やリセールバリューがよければ、購入を検討してもよいかもしれません。ただ、駅近物件の多いマンションとは異なり、戸建ては郊外に多く、立地の利便性に欠ける物件が多い傾向です。
マンション価格が高騰している昨今ですが、中には手が届きそうな物件もあるかもしれません。たとえば、一般的には人気がなく低価格の物件でも、自分にとっては住みやすい可能性もあるため、こうしたお値打ち物件を探してみる価値はあるでしょう。
ここで、マンション購入を検討するうえで、買ってもよいと判断できる条件を解説します。
適正な物件価格の目安は、自身の年収倍率の6倍以内といわれています。住宅ローンの借入金額でいうと、返済負担率(収入に占める返済額の割合)が25〜30%以内が、無理なく返済できる目安です。
1人暮らしであれば1DKや1LDK、2人なら1LDKから2LDKでよいですが、4人家族だと3LDK以上は必要になるでしょう。2人暮らしでは将来子どもができた場合も考え、ゆとりのある2LDKで検討することをおすすめします。
購入を検討する際には、家族が増えるなど、少し先のライフスタイルを見越して、間取りを検討するとよいでしょう。
物件の資産価値を決める要素は、生活や交通の利便性などの立地条件や、物件そのものの魅力などです。物件の価値は周辺環境の変化によっても変わり、再開発計画があるエリアでは今後の需要が増すことが予想されるため、物件の価値が高まることが一般的です。
また、一般に築年数が古くなるほど物件価格は下がりますが、築20年前後で価格がほぼ下げ止まり、資産価値が減りにくくなります。資産価値が今後上がるか維持できそうなマンションであれば、購入する価値があるといえます。。
日本は地震や台風など、自然災害の多い国のため、立地や建物が災害に強いことが望まれます。物件選びのポイントは、ハザードマップでエリアの災害リスクを確認すること、建物の耐震基準を確認することです。
なお、耐震基準は、1981年6月を境に旧基準と新基準に分かれています。旧耐震基準は「震度5強程度」の揺れで建物が倒壊しない基準であるのに対し、新基準は「震度6強〜7程度」の揺れで倒壊しない基準です。新基準で建築された物件を選べば、住むにも安心で、資産価値も比較的保てます。
内覧時に、エントランスや駐車場など、共用部分の管理状況をチェックすることが重要です。
共用部分の掃除や整備が行き届いている物件は、将来的な資産価値が保たれやすいため、購入してもよいといえます。逆に清掃や整備が疎かになっている物件は、経年劣化が進み、将来売却が必要になっても売れにくくなってしまいます。
長期修繕計画や修繕積立金、駐車場などの管理体制は「重要事項調査報告書」で確認できます。重要事項調査報告書は仲介会社を通じて取得できるため、事前に取り寄せてもらい確認しましょう。
マンションの価格はエリアや築年数、管理状態など、さまざまな要素で決まります。
住まいに求める条件は人それぞれのため、他者に人気がなく価格が安くても、自分にとっては好条件の物件が見つかる場合もあります。また、場合によっては中古マンションや戸建てを検討したほうがよいケースもあるでしょう。
希望条件を満たす物件を1人で探すのは難しいです。マンションや戸建ての購入を検討されている方は、ぜひ信頼できる不動産会社に一度相談されることをおすすめします。希望条件のヒアリングを経て、適切なアドバイスを受けることが可能です。
不動産売却に必要な基礎的な知識をご紹介します。