不動産購入のノウハウ
築年数の古い家には、現代の住宅にはない趣やあたたかみがあります。
しかし、老朽化や設備の不便さが気になり、そのままでは住みにくいことも多いでしょう。そこで注目されているのが「古民家再生・リノベーション」です。
古民家再生のメリットや進め方、注意点を詳しく解説します。
不動産購入 リフォーム・リノベーション2025年4月18日
古民家とは、日本の伝統的な建築工法で建てられた住宅を指し、明確な定義はありませんが、一般的には築50年以上の建物が古民家とされています。古民家には以下のような特徴があります。
また、古民家には地域などによって、以下のようなさまざまなタイプがあります。
このように、古民家はそれぞれに独特の趣を持ち、文化財としての価値も高いため、最近ではリノベーションによって再利用されるケースが増えています。
古民家再生は古民家の伝統的な建築の良さを生かしながら、現代の暮らしに合った住まいへと改修することを指します。老朽化した部分を修繕し、耐震補強や断熱性能を向上させ、快適で住みやすい家に生まれ変わらせます。
例えば、築100年以上の古民家を再生する場合、昔ながらの太い梁や柱を残しつつ、キッチンや浴室を最新設備にします。単なる修繕ではなく、古民家のもつ歴史を守りながら、暮らしやすさを追求するのが特徴です。
古民家を現代の暮らしに合った形に再生しながら、歴史や伝統を受け継ぎ、長く住み続けられる住まいにする方法として注目されています。
リノベーションは既存の建物を大規模に改修し、快適な住まいへと生まれ変わらせることを指します。間取りの大幅な変更や設備を刷新し、自分好みの家にしたり、家族の増減に合わせて住みやすくしたりします。
例えば、古民家では6畳〜8畳の部屋で区切られているケースが多いですが、リノベーションによって壁を取り払い、数部屋をつなげて広々したリビングに生まれ変わらせることが可能です。
配管の位置を変えることも可能なため、キッチンやお風呂などの水回りの位置を変更でき、より快適な空間に生まれ変わります。
住む人のライフスタイルに合わせてカスタマイズできるため、新築以上の満足度を得られることもあります。
最近では、古い建材の良さを生かしたり、費用を抑えたりするために古民家などの中古住宅を購入してリノベーションする選択肢も増えています。
リフォームとリノベーションは似た言葉ですが、目的や工事の規模が異なります。リノベーションは「既存の建物を生まれ変わらせて、より家の価値を高める」のに対し、リフォームは老朽化した部分の修繕や設備の交換がメインです。
例えば、古くなったキッチンを新しいものに入れ替える、壁紙を張り替えるといった小規模な工事がリフォームです。一方、リノベーションは建物全体に手を加え、性能やデザインを大きく向上させることを目的としています。
リノベーションでは、間取りを変更して収納スペースを増やしたり、断熱性能を向上させたりなど大規模な工事も行います。リフォームとリノベーションのどちらを選ぶかは、古民家の状態や住む人のニーズ、予算などによって異なります。
古民家再生は文化的価値を守るだけでなく、経済的にも多くのメリットがあります。実際に新築の家を購入するのに比べて費用を抑えられたり、税金が抑えられたりするメリットもあるのです。
また、歴史があり、希少価値の高い古民家を生まれ変わらせることで、歴史や伝統を次世代に引き継ぐことができる魅力もあります。
ここでは、古民家を再生する5つのメリットについて解説します。
古民家は、歴史的な建築様式や自然素材を生かした造りが特徴で、現代の住宅にはない独特の落ち着いた雰囲気を持っています。太い梁や柱、土間や縁側といった伝統的なつくりが、日本古来の落ち着ける雰囲気を醸し出します。
例えば、築100年以上の古民家では、職人の手仕事による細やかな装飾や、経年変化による木材の風合いが、新しい家にはない魅力を生み出しています。鉄など金属の釘を使わない「木組み」や「組子細工(くみこざいく)」は、古民家ならではの手法といえるでしょう。
古民家の多くは、現代の住宅よりも天井が高く、間取りも広々としています。特に、伝統的な日本家屋はふすまで区切られた空間のため、ふすまを開けたり外したりすれば、仕切りが少なく、開放的な空間となります。
30畳以上の大広間や、吹き抜けのある家も多く、家族や友人とゆったりと過ごせる環境が整っています。
また、土間スペースを有効活用すれば、趣味の作業場やカフェスペースとしての利用も可能です。広々とした空間は、現代のコンパクトな住宅では味わえない贅沢な空間の使い方を実現できます。
古民家には、無垢(むく)材や漆喰(しっくい)、畳などの天然素材が多く使用されています。漆喰や珪藻土(けいそうど)は、調湿効果や空気浄化作用、消臭効果があります。
無垢材の床は湿度が高いときに水分を吸収し、乾燥時には放出するため、夏も冬も年間を通じて快適な湿度に調整できます。
また、漆喰の壁には防カビ・消臭効果があり、シックハウス症候群の原因となる化学物質を含まないため、アレルギーのある人にも適した住まいとなります。
築年数の経過している古民家は、固定資産税評価額が低く設定されるため、新築住宅と比較して税負担が軽減されるケースが多いです。一般的に、木造住宅の固定資産税は新築から20〜25年ほどで、評価額が下限である0.2%まで下がります。
例えば、新築時に固定資産税評価額が2,000万円の場合、税率1.4%で年間28万円の税負担が発生します。一方、築25年以上の古民家では、評価額が500万円以下となることが多く、税額も10万円未満に抑えられる傾向があります。
さらに、地方公共団体(自治体)によっては古民家再生を支援する税制優遇措置が用意されている場合もあります。また、環境保全の取り組みで、断熱リフォームなどに対し補助制度を設けている地方公共団体や国での取り組みもあります。
参考:環境省「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(先進的窓リノベ2025事業)について」
既存の建物を再生して活用することで、新たな木材などの資源の消費を抑え、建て替えなどに比べて廃棄物を減らすことにもつながります。
木造住宅を解体すると、大量の廃材が発生し、その処分にはコストがかかるだけでなく、環境への負担も大きくなります。一方、古民家再生では、既存の木材や建具を生かしてリノベーションを行うため、新たな資材の使用を最小限に抑えられます。
また、リノベーションによって古民家の断熱性能を向上させることで、冷暖房によるエネルギー消費を抑え、環境に優しい暮らしができます。
古民家を再生することで、持続可能な住まいの実現につながることから、最近では古民家再生が注目されています。
古民家の再生では、通常の新築工事とは違った注意点もあります。特に、築年数が経過しているため基礎や柱などの躯体(くたい)の状態や配管などの状態のチェックは、欠かせません。
ここでは、古民家再生の流れと注意点について解説します。
古民家の再生を始める前に、古民家の現状を詳しく調査しなければなりません。古民家鑑定士や建築士などの専門家による建物診断を受け、基礎や柱、屋根などの耐久性を確認します。
専門家は、次のような観点でチェックします。
また、古民家では設計図がないことも多いため、この段階で設計図を作成する必要もあります。調査の結果、追加の補強や躯体など大幅な修繕の必要がある場合、予算が大幅に増加するおそれもあるでしょう。
調査の結果をもとに、どのようにリノベーションするか計画します。住まいの目的に合わせて設計し、予算とリノベーションのバランスを取りながらプランを作成します。
古民家再生の計画を立てる際のポイントは次の3点です。
古民家の再生では、調査時にはわからなかった劣化などが、工事を進めるとともに出てくることもよくあります。そのため計画を立てる際は、予算に余裕をもっておく必要があります。
予算オーバーを防ぐため、優先順位を明確にしておくことが大切です。
実際に古民家をリフォームした方の中には、工事の終盤で浴室ドアが経年劣化で故障していることが判明した事例もあります。そのケースでは、現在のドアの規格と異なるサイズだったため、交換に7万円かかったとのことです。
行政の補助制度を活用できる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
再生プランができたら、計画に基づいて実際の工事を進めます。解体、補強、内装工事などの順で施工が行われます。
それぞれの工事では、次のような工事を行います。
各工事内容の概要
解体工事 |
● 不要な部分を撤去し、構造部分の確認をする ● 基本的には、「半解体」して、リノベーションを進める |
補強工事 |
● 耐震補強や断熱工事を実施する ● 不同沈下や土台が傷んでいる場合は、基礎工事から行うこともある |
再生工事 | 水回り設備や造作、壁工事や建具の調整など、古民家再生のための工事をして、住みやすく整える |
古民家は築年数が古い建物のため、予想外の問題が発生することが多く、施工中に追加工事が必要になる場合もあります。資金的にも余裕をもつことが大切ですが、スケジュールにも余裕をもたせましょう。
工事が完了したら、仕上がりを確認し、問題がなければ引き渡します。これからも長く快適に暮らすために、最終チェックをしっかり行いましょう。
最終チェックの際、次のような項目をチェックしていきます。
古民家に限らず、住宅は定期的な点検やメンテナンスが必要です。引き渡し後のメンテナンスの計画も立てておきましょう。
また、施工後のアフターサービスを充実させている会社を選ぶことで、安心して長く住み続けられます。湿気対策、木部のケアなど、古民家特有の維持管理の方法も相談しておきましょう。
不動産売却に必要な基礎的な知識をご紹介します。