不動産売却のノウハウ
自宅を住み替える際には、通常、住まいの売却と新居の購入をほぼ同時期に進めなければなりません。
住まいの売却を先行させる場合と新居の購入を先行させる場合には、そもそもどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、売却先行の場合と購入先行の場合のメリット・デメリットを解説します。また、住み替え時に利用できるローンや融資、売却の工夫なども紹介するので、ご参考になれば幸いです。
2018年2月14日
2022年4月14日
進学や転勤など、住み替えを検討する理由は人それぞれです。住み替えを検討する理由として代表的なものを紹介します。
2022年2月に全国宅地建物取引業協会連合会と全国宅地建物取引業保証協会が発表した「不動産の⽇アンケート」では、日本全国の20歳以上の男女に対し、住まいに関するさまざまな質問をしています。
2021年度では、「住み替えを検討・実施された理由(重視された点)は何ですか?」という質問に対して、以下のような回答結果でした。
順位 | 項目 | 割合(%) |
---|---|---|
1 | 最寄りの駅からの距離 | 32.4 |
2 | ローンや賃料等、住宅費を抑えること | 27.4 |
3 | 通勤の利便性 | 23.7 |
4 | 働き⽅や環境の変化 | 21.8 |
5 | 周辺に商業施設が充実していること | 14.0 |
6 | ⼦育て環境 | 13.9 |
7 | リビングの広さ | 13.4 |
8 | 個室数の多さ | 12.5 |
9 | 周辺に公園や緑地があること | 9.3 |
10 | 書斎・テレワークスペースの確保 | 8.0 |
日本ではコロナ禍以降テレワークが推進されたこともあり、「書斎・テレワークの確保」が10位にランクインしました。
しかし、いまだに上位は駅チカや通勤利便に関するものであり、利便性を求める需要は根強いことが分かります。
その他、商業施設や公園、緑地など、周辺環境に関する理由も多いようです。
一般的に、住み替えは進学や転勤、出産などといったライフステージの変化をきっかけに行います。ファミリー世帯では、6位の「子育て環境」を求めて郊外の戸建てを選ぶ方が多いのではないでしょうか。
老後の住み替えでは、また違う要素が加わります。
若い頃は子供部屋や駐車場などの需要が高く、家のサイズも必然的に大きくなりがちです。
しかし、年齢を重ねるにつれ、子供部屋や車を持て余すようになります。必要な家のサイズは小さくなり、使わない部屋が増えるでしょう。周辺環境についても、大きな病院や商業施設に近い立地に魅力を感じるようになります。
結果として、郊外の一戸建てを志向するような方も、次第に利便性の高い駅近のマンションへと住み替えることがあるようです。
住まいを選ぶ際には、長期的なライフステージの変化も見据えて選ぶようにしましょう。
住み替える際の新居の購入・住まいの売却には、2つのパターンが考えられます。
それぞれメリットとデメリットがあるので、
住み替えをおこなうご事情や資金面などを考慮しながら十分に検討の上、計画を立てることが必要です。
売却先行型では、今住んでいる住まいの売却を先に進め、その後に新居の購入を行います。
今の住まいを先に売却するメリットとしては、住み替えの資金計画を立てやすいことがあげられます。
先に売却手続きを完了できれば、その売却代金を購入資金に充当することができます。そのため、
住み替え先の住宅ローンの融資金額や必要経費などの資金計画を、購入前に明確にできます。
また、購入先をまだ決めていないため、「いつまでに売らないといけない」と売却を急ぐ必要がありません。売却価格やその他の条件面についても妥協することなく、余裕を持って売却活動を進めることができるでしょう。
売却先行型のデメリットとしては、現在の住まいの売却を先におこなうため、売却物件の引渡し日までに住み替え先の住まいを探す必要があることです。
売却物件の引渡し日までに、住み替え先の住まいが見つからない場合や、建築中などで新居への転居ができない場合があります。その際、売却物件の引渡し後、一旦仮住まいをしなければならず、余分な引っ越しの手間や仮住まいの家賃がかかってしまうことがあります。
さらには、売却物件の引渡しのタイミングに合わせることを優先し、新居の購入を急いでしまうケースがあります。
ご希望条件を大幅に妥協してしまうことも考えられますので、注意が必要です。
購入先行型では、新居の不動産購入を先に進め、その後に今住んでいる住まいを売却します。
住まいの購入を先に行うメリットとしては、いつまでに新居を決めなければならないという制約がないため、納得がいくまでご希望条件にて購入先をじっくりと探せることです。
住み替えをする事情に比較的余裕がある場合はよいでしょう。
また、先に住まいを購入できれば、現在の住まいからすぐに新居へ引っ越すことができるため、転居の手間は最小限で済みます。
購入先行型のデメリットとして特に気をつけたいのが、現在のお住まいの売却資金を住み替え先の購入資金に充当する計画の場合です。その場合、購入物件の残金決済日までに、現在の住まいの売却手続きを完了させる必要があります。
また、そのような場合には、売却金額が確定していないため購入物件の資金計画が立て難いということも考慮しなければなりません。
さらに、現在のお住まいの売却資金を購入資金に充当しないケースでも注意が必要です。
売却をおこなう物件に住宅ローンの残債がある場合には、住宅ローンの支払いが二重になってしまうことも想定しておかなければなりません。
売却資金を、住み替え先の購入資金に充当するケースの流れを確認してみましょう。
まず、現在の住まいの売却依頼を不動産仲介会社におこない、同時期に住み替え先の物件探しも開始します。
売却物件の買主が見つかったら、契約条件を調整後、不動産売買契約の締結により売却手続きをおこないます。
次に、住み替え先の住まいについては、ご希望の物件が見つかったら不動産売買契約の締結により購入手続きをおこないます。
その際、売却物件と購入した物件(新居)の代金をほぼ同時期に残金決済をおこなうことで、売却資金と購入資金を連動させることが必要となります。そのため、売却と購入のスケジュール管理が重要です。
不動産売買契約においては、残金の支払いと物件の引渡しは、同時におこなうことを原則としています。
しかし、売却資金と購入資金を連動させる住み替えの場合には、売却物件の残金決済と購入物件の残金決済を同時におこなうことは、限りなく不可能に近いです。
そのため、一般的には、売却物件の不動産売買契約において、残金決済の後に物件を引渡す(残金決済後、5日から1週間程度が一般的)という「引渡し猶予」の特約を設けます。それにより、購入資金との連動が可能となり、引っ越しをスムーズに進めることができます。
また、購入希望物件が見つからなかった場合には、現在の住まいの売却手続きを完了させた上で、一旦仮住まいをした後、新居を購入しなければならないことも想定しておかなければなりません。
購入資金が十分で、売却資金を新居の購入資金に充当しないケースの流れを確認してみましょう。
まず、住み替え先の物件探しを開始します。ご希望条件の物件が見つかったら、新居の不動産売買契約を締結し、残金決済と物件引渡しを受けます。
現在のお住まいから住み替え先の新居へ引越しを終えたら、以前のお住まいの売却を不動産仲介会社に依頼をおこないます。
そして、買主が見つかり不動産売買契約の締結をおこなった後、残金決済と引渡しを行います。
このケースでは、新居の物件探しに注力できることが大きなメリットと言えます。しかし、売却資金と購入資金を連動しないため、余裕を持った資金計画が必要となります。
なお、購入先行型においては、新居の不動産売買契約を締結した段階で、残金決済時期や物件の引渡し時期が予測できます。
そのため、その時期から現在のお住まいの売却を不動産仲介会社に依頼し、売却活動を開始されるお客様もいらっしゃいます。
住み替えをおこなう場合には、売却先行型と購入先行型のメリット・デメリットを踏まえて、最終的に売却と購入のどちらを先に行うかを判断しなければなりません。
お客様ご自身の住み替えのご事情が、次のどちらにより合っているかを考慮の上、不動産仲介会社に相談して検討するとよいでしょう。
売却資金を購入資金に充当する住み替え計画の場合には、売却先行型を選択することが一般的です。
また、以下のような場合は、売却を先行して売却金額が確定した上で、住み替え先の新居を探されることが有利であると言えるでしょう。
しかし、売却先行型で、仮住まいを想定しない住み替えの場合には、住み替え先の物件探しの期間が限定されてしまうため注意が必要です。
購入資金が十分ある場合には、希望の物件が見つかれば購入を先行する購入先行型がおすすめです。
また、以下のような場合でも、購入を先行させることが得策であると言えるでしょう。
そのほか、現在のお住まいが比較的良い条件の不動産で、売却手続きがスムーズに進められることが想定できる場合には、購入を先行させてもよいでしょう。
不動産仲介会社はさまざまなご事情のお客様の住み替えをお手伝いしています。
どちらを先行させるべきか、わかりにくいという場合は、一度相談をしてみることもおすすめです。
現在の住まいに住宅ローンが残っている場合でも、状況によっては住み替えが可能です。
売却代金で住宅ローンを完済できるか否かが大きなポイントです。
住宅ローンが残っている、すなわち抵当権がついたままの売却物件では、買主は、住宅ローンを組むことができません。そのため、不動産の売却時(残金決済時期)には残っている住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
売却代金で住宅ローンを完済できる場合には、一般的に住み替えに支障はありません。
しかし、住宅ローンの残債が売却金額を上回るオーバーローンとなってしまった場合にはどうなるのでしょうか。
売却代金とは別に貯蓄などの他の資金があれば、住宅ローンの残債を完済することで抵当権を抹消することは可能です。そのような資金の準備が難しい場合には、「住み替えローン」や「つなぎ融資」も検討してみましょう。
住み替えに利用できるローンや融資を紹介します。
住み替えローンとは、不動産を住み替える際、現在の住宅ローンの残債分を住み替え先の住宅ローンに上乗せして融資を受けられるローンのことをいいます。
住み替えローンは、住み替え先の物件で組む住宅ローンの融資額と合わせて、
仮住まいの費用や住み替えに必要な費用も含めて融資を受けられることが特徴です。
ただし、利用にあたっては、金融機関の審査や一定の利用条件などの制約があるため、確認が必要となります。
つなぎ融資とは、「購入先行型」の場合に、売却代金に相当する金額をあらかじめ金融機関から融資を受ける仕組みのことをいいます。
住まいの売却手続きが完了した後、その売却代金でつなぎ融資の借り入れ金額を一括で返済します。
しかし、つなぎ融資は、取り扱う金融機関が限られていることや、住み替え先の住宅ローンの借り入れも同一の金融機関でなければならないため、事前の確認が必要となります。
住み替え時、現在の住まいが売れなかった場合の対処法をいくつかご紹介します。
現在の住まいが売却できなかったとしても、住み替えることは可能です。
しかし、現在の住まいの住宅ローンを支払いつつ、新居についての費用も発生してしまいます。賃貸の場合は家賃、購入する場合は住宅ローンが重複することとなり、資金的な余裕が必要です。
そういったことから、現在の住まいをより早く売却するため、さまざまな対処を取る必要があります。
内覧があるにも関わらず成約に至っていない場合は、家の見栄えが悪い場合があります。購入希望者がマイナスに感じるようなポイントがないか、売却するご自身の住まいを客観的に観察しましょう。
クロスの剥がれや傷の補修など、少額で実施できるリフォームであれば、実施することで売却が可能となる場合もあります。
また、ハウスクリーニングは数万円でも実施することが可能です。
コストパフォーマンスを考えながら、必要な対処をとりましょう。
内覧自体あまり来ていないようであれば、売却価格が高すぎる可能性があります。周辺相場を調べ、適正な価格に設定し直しましょう。
なお、その際は不動産流通機構が運営している不動産取引情報提供サイト「レインズマーケットインフォメーション」を活用してみましょう。マンション・戸建住宅の成約価格や取引事例を調べることができます。
適切な処置を施しているのにも関わらず売却につながらない場合は、思い切って仲介会社を変更することをおすすめします。
専任媒介契約や専属専任媒介契約の契約期間は3カ月間です。売却活動が不十分だと感じるようなことがあれば、変更してみるのがよいでしょう。
なお、一般媒介契約の場合は、複数の不動産仲介会社への依頼が可能です。その場合は、並行してほかの業者へ声をかけてみましょう。
不動産の売却はタイミングによるものが大きいため、一概にどれだけ売却活動をすれば売れるという期間はありません。
しかし、一般市場で適切に売り出していても買主が見つからない場合は、一般市場の顧客が手を出しづらい物件である可能性があります。
そういった場合は、不動産会社に直接買い取ってもらう、不動産買取を依頼しましょう。
不動産買取は一般市場の売買より価格は下がるものの、購入可能かの判断をすぐもらうことができ、即時に現金化できます。
売却を急いでいる場合は、不動産買取を検討してもよいでしょう。
これまで見てきたように住まいを住み替える際には、売却先行型・購入先行型それぞれに、メリット・デメリットがあります。
そのメリット・デメリットを事前に押さえておくことで、ご自身の住み替えご事情の優先度や資金計画も整理できるでしょう。さらに、不動産仲介会社への住み替え相談や実際の手続きもスムーズに進むことでしょう。
小田急不動産では、住み替えにともなう売却相談(訪問査定・簡易査定)や購入相談を無料で承っています。
お客様のご希望条件や資金計画などをお打ち合わせの上、売却先行型や購入先行型などの住み替えプランをご提案させていただきます。
また、住み替えを決めていなくても、まずはご相談をください。お客さまのご事情に応じた、最適なご提案をさせていただきます。