不動産売却のノウハウ
不動産を取引する際には、通常、売主・買主双方と不動産仲介会社が立会って不動産売買契約の手続きをおこないます。
しかし、さまざまなやむを得ない事情から、契約手続きに立会いができないということもあるでしょう。
契約手続きに立会いができない場合、代理人を選任することで、不動産の契約手続きを所有者本人に代わって、代理人が行うことがあります。
今回は、不動産の売却手続きを代理人に依頼する場合の委任の手続きの流れと、注意すべき内容を中心に解説いたします。
2018年3月26日
不動産の取引の際には、原則として不動産の所有者である売主と買主双方のご本人の立ち会いが必要です。
しかし、どうしても所有者本人の立会いができないような、やむを得ない事情がある場合には、
代理人を選任し、その代理人が売却手続きをおこなうことがあります。
所有者本人が第三者に代理権を付与し、その代理人が不動産売買契約を締結するケースとしては、次のような場合があります。
取引をおこなう不動産が遠方にある場合や、不動産の所有者が海外に在住している場合などで、
不動産売買契約時の立ち合いのスケジュール調整が難しい状況や所有者が高齢により移動が難しいなどの場合には、
あらかじめ代理人を選任し、委任をおこなうことで、売却手続きを進めることがあります。
不動産取引の手続きが完了するまでには、打ち合わせや各種手続きなど、なにかと時間や労力がかかります。
仕事上、はずせない事情がある場合や入院・療養中の方など、契約手続きのために時間を作ることが難しい場合にも、
代理人を選任し、委任をおこなうことで、売却手続きを進めることもあります。
複雑な案件の不動産取引などで、契約手続きに不安がある場合には、稀ではありますが、
不動産取引に詳しい親族や、弁護士や司法書士などの専門家を代理人に選任し、売却手続きを進めることもあります。
遺産相続などにより複数人の所有者がいる不動産の売却の場合においても、
契約手続きや残金決済・引渡し時には、当然に所有者全員が立ち会わなければなりません。
しかし、現実的に全員が集まることは、所有者の人数が多くなればなるほど予定の調整が難しくなるのではないでしょうか。
そのような場合には、相続人の代表者を代理人とすることで、売却手続き時に所有者全員の立ち会いを不要とすることも可能となります。
また、離婚にともなう夫婦共有の不動産売却の場合にも、代理人を選任することで、
元配偶者と顔を合わせることなく売却手続きを進めることが可能となります。
代理人に不動産の売却手続きを依頼する場合には、代理権委任状が必要となります。
この委任状の存在によって、代理人が不動産売買契約における代理権を持つことの証明が可能となります。
また、委任状は、代理人による不動産売買契約における委任をおこなう範囲を明確に規定するという役割も持っています。
なお、不動産売買契約における代理人とは、前述のご事情などで所有者本人が契約手続きができない場合に委任状によって、
第三者に代理権を付与する任意代理人が多くありますが、未成年者や成年被後見人が所有する不動産などの場合には、
代理人の発生根拠が法律の規定に基づく法定代理人ということもあります。
委任状の記載内容には、法的に定められているフォーマットはありませんが、
所有者本人の意向のとおりに売却手続きを進めるためには、どの範囲までを代理人に権限を委任するかについて明確にしておかなければなりません。
そのため、委任状には、代理人を選任する旨のほかにも委任の範囲についても詳細な取決めが必要となります。
委任状には、委任する内容を明確にするために、以下の項目などを記載します。
代理人に売却手続きを委任する場合には、委任状のほか次の公的書類などが必要となります。
不動産売買契約における委任状の作成は、一般的に委任者(所有者本人)の意向を確認した上で、不動産仲介会社が準備をおこないます。
しかし、委任状に署名捺印をおこなう前には、記載事項や委任の範囲などの内容に相違がないかどうか、ご自身で再度確認をする必要があります。
不動産売買契約の手続き後、記載内容に誤りがあることに気づいたとしても、
委任状に基づいておこなわれた契約行為は委任者(所有者本人)ご本人が契約をおこなった場合と同等の効力をもつため注意が必要です。
では、委任状の内容について、次の項目を重点的に確認してみましょう。
売却をおこなう不動産の表示項目について、登記事項証明書や登記済権利証と相違がないか確認をおこないましょう。
代理人に委任する範囲が明確になっているかをまず確認します。
第三者が見ても内容がすぐに理解できるかどうか、また、曖昧な部分がないかどうかもあわせて確認してみましょう。
第三者による委任状への追記を防止するため、委任状の最後は「以上」と締めくくられているかについても確認をおこないましょう。
委任状の項目が空欄になっているものを、一般的に白紙委任状といいます。
不動産仲介会社を通しての不動産売買契約の場合には、通常、白紙委任状で契約行為をおこなうことはありませんが、
白紙委任状は、委任の範囲を定めていないため、のちにトラブルの原因となる可能性がありますので、
空欄項目がないか念のため確認をおこないましょう。
代理人に不動産売却の手続きを委任する場合には、次の内容についても注意しましょう。
不動産売買は高額な取引であるだけでなく、代理人の行為は、法的に委任者(所有者本人)がおこなった契約行為と同等の効力を持ちます。
そのため、代理人の選任にあたっては、細心の注意が必要です。
任意代理人を選任する場合には、特に法的な基準や条件は定められていませんが、
基本的には親族や専門家(弁護士、司法書士)などの信頼のおける人物から選定することがよいでしょう。
代理人は、委任状に記載されている内容(権限)についてのみ、委任者に代わって手続きをおこなうことができます。
もし、委任状での取決めを超える範囲の事項が発生した場合には、その都度、代理人は委任者(所有者本人)に確認をとらなければなりません。
そのような場合に備え、代理人とはすぐに連絡がつく手段を確保しておきましょう。
これまでご紹介してきたように、不動産の取引をおこなう際、
売主・買主双方と不動産仲介会社が立会って不動産売買契約の締結をおこなうことが原則となります。
しかし、複数人の所有者がいる相続不動産の不動産取引の場合や不動産売買手続きのスケジュール調整が難しい場合など、
さまざまなやむを得ないご事情もあるでしょう。
そのような代理人を選定しなければならないと想定される場合には、スムーズに取引を進めるためにもまずは、
信頼できる不動産仲介会社へ相談をすることからはじめてみましょう。
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