不動産購入のノウハウ
新築住宅ではなく、中古住宅を購入してリフォームを検討する方が増えていますが、補助金制度などを利用して、お得に中古住宅の購入+リフォームを行うことは可能なのでしょうか。
中古住宅の購入のみで利用できる国の補助金制度はありませんが、リフォームではさまざまな補助金制度が利用できます。
利用できる補助金制度をまとめるので、自身が利用できるかどうかをしっかり確認してください。
不動産購入 リフォーム・リノベーション2023年8月25日
既存住宅を環境に配慮した高品質の住宅にリフォームする場合、国や地方自治体から補助金を受け取れる場合があります。補助金の内容と適用される条件、補助額について解説します。
こどもエコすまい支援事業とは、ZEHレベルの基準を満たす新築住宅もしくはリフォームに対して補助金を出す支援事業です。ZEHとは、生活で消費するエネルギーよりも、太陽光発電などを利用して生み出すエネルギーが上回る住宅のことです。
名称に「こども」とついていますが、リフォームに関しては子育て世帯に限らず、幅広い世帯が支援の対象となっています。
支援事業に登録した「こどもエコすまい支援事業者」と工事請負契約を結び、対象となるリフォーム工事を行うことが支給条件です。対象となる工事、条件、支給額は以下のとおりです。
改修工事 | 補助額 | ||
---|---|---|---|
A | ①開口部の断熱改修 |
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3,000~4万5,000円 |
②外壁、屋根・天井又は床の断熱改修 | 外壁、屋根・天井または床(基礎断熱)の部位ごとに、一定の使用量以上の断熱材を利用して断熱改修を行う | 2万7,000~15万1,000円 | |
③エコ住宅設備の設置 |
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5,000~6万4,000円 | |
B | ④子育て対応改修 |
|
1万1,000~8万9,000円 |
⑤防災性向上改修 |
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6,000~3万7,000円 上記の金額に施工箇所(枚数)を乗算して算出 |
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⑥バリアフリー改修 |
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5,000~2万8,000円 | |
⑦空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置 | 1万9,000~2万5,000円/台 | ||
⑧リフォーム瑕疵保険等への加入 | 7,000円/契約 |
※一部設備を除き、指定された型番の製品のみが対象となります。
※補助額は施工面積、改修後の省エネ性能、設置した設備などによって異なります。
※Bの工事は、原則としてAと同時に行った場合のみ対象となります。
※原則として補助申請額が合計5万円以上で補助対象となります。
参考:国土交通省「こどもエコすまい支援事業」
エネルギー消費効率の改善と脱酸素化に貢献する高性能建材を用いた断熱改修を行った場合、所定の補助金が支給されます。住宅全体を対象とした「トータル断熱」と日常生活の中心となる居室を対象とした「居間だけ断熱」の2つがあります。
それぞれの内容、補助対象、補助金は以下のとおりです。
【1】トータル断熱
補助対象となる製品 | 補助率 | 補助金額の上限 | |
---|---|---|---|
戸建住宅 | 高性能建材(断熱材、窓、ガラス+玄関ドア) 【上記に加えて】
|
補助対象経費の1/3以内 | 1住戸あたり120万円(玄関ドア5万円を含む)+蓄電システム:20万円蓄熱設備:20万円熱交換型換気設備など:5万円 |
集合住宅(個別) | 高性能建材(断熱材、窓、ガラス+玄関ドア) 【上記に加えて】 熱交換型換気設備など |
1住戸当たり15万円(玄関ドアも改修する場合は1住戸あたり20万円)+熱交換型換気設備など:5万円 | |
集合住宅(全体) | 高性能建材(断熱材、窓、ガラス+玄関ドア+共用部LED) | 1住戸当たり15万円(玄関ドアも改修する場合は1住戸あたり20万円)※上記上限額にLED補助額を含む |
※省エネ効果15%以上が見込まれる改修率を満たす高性能建材を用いることが条件
【2】居間だけ断熱
補助対象となる製品 | 補助率 | 補助金額の上限 | |
---|---|---|---|
戸建住宅 | 高性能建材(窓+玄関ドア) 【上記に加えて】
|
補助対象経費の1/3以内 | 1住戸あたり120万円(玄関ドア5万円を含む)+蓄電システム:20万円蓄熱設備:20万円熱交換型換気設備など:5万円 |
集合住宅(個別) | 高性能建材(窓+玄関ドア) 【上記に加えて】 熱交換型換気設備など |
1住戸当たり15万円(玄関ドアも改修する場合は1住戸あたり20万円)+熱交換型換気設備等:5万円 | |
集合住宅(全体) | 高性能建材(窓+玄関ドア+共用部LED) | 1住戸当たり15万円(玄関ドアも改修する場合は1住戸あたり20万円)※上記上限額にLED補助額を含む |
参考:公益財団法人「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」
住宅エコリフォーム推進事業とは、中古住宅をZEHレベルの高い省エネ性能へリフォームする際に国から補助金を受け取れる制度です。
部分リフォームでも申請可能で、開口部(窓やドア)2ヶ所以上・補助申請額計5万円以上から対象、また改修後に耐震性が確保されることが条件です。補助額は改修費用の40%(上限35万)となります。
参考:国土交通省「住宅エコリフォーム推進事業」
長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、既存住宅の性能向上・子育てしやすい環境の整備に役立つリフォームに対し、補助対象費用の1/3が補助金として支給されるという事業です。
補助を受けるためにはインスペクション(住宅診断)を行い、維持保全計画・履歴を作成すること、工事後に耐震性と劣化対策、省エネルギーが確保されることが条件となります。
対象となる改修工事の種類は以下のとおりです。
「こどもエコすまい支援事業」や「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」などと比較すると対象となる改修工事の幅が広いのが特徴です。
参考:「長期優良住宅化リフォーム推進事業」
上記でご紹介した国の制度以外にも、自治体による補助金制度もあります。たとえば、神奈川県では「神奈川県既存住宅省エネ改修事業費補助金」として、既存住宅の窓などの省エネ改修工事に係る経費の一部について補助を行っています。
神奈川県の耐震性能を確保した住宅を対象に、窓、壁、天井、床において省エネ改修工事を行った場合、補助対象経費の1/3または15万円のいずれか低い額が補助金として支給されます。
他にもバリアフリー化、耐震化、同居対応など、所定のリフォームに対し補助金を支給する制度が各自治体にありますので、確認してみるとよいでしょう。
補助金制度以外にも、減税制度を利用できることがあります。主な制度の条件や控除額をご紹介します。
住宅ローン控除(減税)とは、所定の省エネ基準に適合する住宅の新築・取得もしくは増改築を行った際、年末のローン残高の0.7%が所得税(所得税から控除しきれない場合は翌年の住民税から一部控除)から一定年数控除されるという制度です。
リフォーム工事における適用条件は以下のとおりです。
借入限度額 | 控除期間 | |
---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 3,000万円 | 10年間 |
ZEH水準省エネ住宅 | ||
省エネ基準適合住宅 | ||
その他の住宅 | 2,000万円 |
上記の条件を満たしたうえで工事を行い、以下の書類のうちどちらか1つを提出して認可されれば、住宅ローン控除を利用できます。
参考:国税庁「住宅ローン減税」
住宅特定改修特別税額控除は、所得税を対象とした減税制度です。所定の断熱リフォーム(一般省エネ改修工事)を行なった場合、一定の金額をその所得税から控除できるというものです。
控除を受けるためには、工事から半年以内、なおかつ令和5年末までに住むこと、所得金額や住宅の床面積、工事費用など一定の要件を満たしていることが条件です。住宅ローン減税と異なり、ローンを組んでいなくても利用できます。
参考:国税庁「住宅特定改修特別税額控除」
補助金や減税制度を利用する際の注意点を紹介します。受けられると思っていた補助金や減税制度が受けられないということがないようにしっかり確認しておきましょう。
補助金や減税制度には予算や期限が定められています。
たとえば、上記でご紹介した「住宅エコリフォーム推進事業」には予算があり、予算を超えると受付を締め切っています。
また、「住宅特定改修特別税額控除」は工事をしてから半年以内に住むことが条件となっています。補助金や減税制度を利用してリフォームを行う場合は早めに計画を立てましょう
補助金や減税の対象となる工事内容や設備は、制度によって異なります。
たとえば、「こどもエコすまい支援事業」では、指定された業者に依頼し、指定された設備を使用することが条件となっています。また、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」ではインスペクションを受けることが必須となっています。
上述したように、このような制度は予算に達し次第終了となりますので、条件を早めに確認し、正しく申請できるよう努めましょう。
家のリフォームを行えば必ず補助金や減税制度の対象となるとは限りません。
たとえば、「自分が住む家であること」を条件としているもの、賃貸物件は対象であるものの、オフィスや店舗は対象外となっているものなど、制度によって対象となる物件は異なっています。
制度を利用して中古住宅をリフォームし、賃貸や民泊、シェアハウスなどに利用しようと考えている方は、その制度が本当に使えるのか、しっかり確認する必要があります。また、耐震基準を満たしていない物件は制度の対象とならないことが多いため注意が必要です。
中古住宅の購入をするときやリフォームをするときは、事業者に早い段階で補助金や利用できる減税制度について確認しておきましょう。
不動産売却に必要な基礎的な知識をご紹介します。