不動産購入のノウハウ
空き家をリノベーションして利用することには、さまざまなメリットがあります。リノベーションして貸し出すことで空き家問題解決の一助となりますし、自ら居住することで同等の条件で新しく家を建てるよりも、大きなコスト削減が期待できます。
では、空き家のリノベーションにはどのくらいの費用が必要なのでしょうか。お得にリノベーションする方法とあわせて解説します。
不動産購入 リフォーム・リノベーション2023年8月25日
空き家を購入してリノベーションすると、新築購入よりも安い価格でこだわりに合った家を手に入れられます。しかし、家の状態や工事内容によっては新築よりも高くついてしまうこともあるため注意が必要です。
まずは空き家のリノベーションにかかる費用相場をご紹介します(あくまで相場であり、実際の費用は家の規模や工事内容、設備のグレードなどによって大きく異なります)。
フルリノベーションの費用は空き家の規模や築年数によっても異なりますが、500〜2,000万円程度が相場です。家の劣化が激しかったり、耐震基準を満たしていなかったりする場合はそこから修繕する必要があるため、さらに費用がかさみます。
家の状態がよい場合は300万円程度でリノベーションできるケースもあります。今流行の古民家リノベーションも、古い状態を残しつつ施工を行うため、費用を安く抑えることが可能です。
リノベーションの費用は施工事業者によって大きく異なるため、可能な限り複数社から見積もりを取り、比較して相場をつかんでおきましょう。
フルリノベーションには多額の費用がかかります。予算オーバーが心配な場合は、とくにこだわりたい箇所だけリノベーションするのもひとつの手です。施工部分別のリノベーション費用相場は以下のとおりです。
箇所 | 費用相場(円) |
---|---|
キッチン | 50万~150万 |
浴室 | 50万~150万 |
トイレ | 10万~50万 |
洗面所 | 10万~80万 |
リビング | 20万~150万 |
寝室 | 50万~80万 |
玄関 | 30万~50万 |
クロス張替え | 800~1,000(/㎡単価) |
床の張替え | 15万~50万(※フローリング) |
畳の張替え | 5万(※6畳あたり) |
外壁 | 50万~400万 |
屋根 | 50万~400万 |
ガレージ | 50万~100万 |
ベランダ | 20万~50万 |
庭 | 100万~150万 |
耐震補強 | 50万~300万 |
シロアリ対策 | 30~300万 |
リノベーションにかかる費用は工事費だけではありません。空き家購入からリノベーション、引っ越して実際に住むまでにはさまざまな費用がかかります。その費用も考慮して計画を立てないと、予算オーバーになってしまうおそれがあります。
リノベーション費用をローンでまかなう場合は保証料や事務手数料、印紙代といった諸費用がかかります。相場としては借入額の2〜3%前後です。たとえば、空き家購入費用+リノベーション費用で2,000万円借り入れる場合、諸費用は40〜60万円程度になります。
設計費は工事費に含まれているケースもありますが、別になっていることもあります。工事費が安い代わりに設計費を高く取る施工業者もいるため注意が必要です。見積書にはしっかり目をとおし、設計費がいくらか、また別途支払いの必要があるかを確認しましょう。
大規模な修繕や増改築を行った場合、「建築確認申請」を行い、建物が建築基準法や都市計画法に適合しているか審査を受ける必要があります。実際の手続きは工事を行った事業者に任せられますが、手続き費用が必要になります。建物の規模や構造、検査機関によっても異なりますが、15〜50万円程度かかると考えておくとよいでしょう。
こだわると高額になりがちなリノベーションですが、やはり少しでも安く抑えたいものです。空き家リノベーションをお得にするためのコツをいくつかご紹介します。
住既存の住宅を良質なものにリフォーム・リノベーションする場合、国や地方自治体から補助金・助成金を受けられるケースがあります。
代表的なものが「住宅エコリフォーム推進事業」です。これは住宅をZEH※レベルの高い省エネ性能に改修することを目的として、特定の事業者に依頼して工事を行った場合、設計費・工事費の40%(補助限度額35万円)が補助されるというものです。
また、「こどもエコすまい支援事業」では、所定の省エネ改修を特定事業者に依頼することで、最大60万円の補助金を受け取れます(リフォームの場合は子育て家庭でなくても申請可能)。
補助金や助成金は「住宅省エネ2023キャンペーン【公式】」にて確認ができます。
また、地方自治体によってはリフォーム・リノベーションに支援制度を設けているところもあります。対象となる工事内容や支援方法は地方自治体によって異なりますので、お住まいの地方自治体に確認してみてください。
なお、これらの補助金や支援制度は基本的に住居を対象としています。投資用や民泊、シェアハウスには適用されないケースが多いため注意が必要です。
※ZEH(ゼッチ):「NetZeroEnergyHouse」の略称。省エネルギーと再生エネルギー導入の両立により年間の一次エネルギー消費量を0にすることを目指した住宅。
リノベーションを行う空き家が持ち家であり、火災保険に加入していて台風などの被害を受けている場合は、保険金を利用してリノベーションを安くできる場合があります。
もちろん、火災保険でリノベーションそのものをできるわけではありませんが、同時に工事を行うことでコストを削減することは可能です。
たとえば、台風の被害により屋根が破損して雨漏りをしている場合、火災保険で補修工事ができます。その際には足場が設けられるため、それを利用してリノベーションも行えば足場設置費用の分だけコスト減につながります。
ただし、災害から3年が経過すると保険金の申請はできません。また、損害額が免責額を下回る場合も適用外となります。
できる範囲でDIYをするとリノベーション費用を安く抑えられます。ただ、高所作業や電気工事といった専門知識がないと危険な場所は、無理に行わないようにしましょう。
DIYでおすすめのリノベーション箇所は壁です。簡単に張替えができるクロスや、自分で塗装できる壁材などがあり、種類も豊富です。壁は家の中でも面積が大きく、リノベーションすると家のイメージを一気に変えられます。
また、作り付けの家具をつける、蛇口や照明の傘を替えるといったプチリノベーションも自分で行えます。自分で手をかければ愛着も湧きますし、コストダウンと楽しみを兼ねて、DIYに挑戦してみるのもよいでしょう。
空き家の状態によってはリノベーションができず、建て替えを余儀なくされる場合があります。そのような事態を避けるためにも、空き家の状態はしっかり確認しておきましょう。とくに重要なチェックポイントと確認方法をご紹介します。
築古物件でとくに注意したいのが耐震基準です。1981年5月31日以前に建てられた物件は、現在の耐震基準(新耐震基準)を満たしていないおそれがあります。
耐震基準を満たしていない物件は金融審査に通りにくい、耐震補強工事が必要になりリノベーション費用が高額になるといったデメリットがあります。耐震基準を満たしているかどうかを確認するためには、「建築確認日」のチェックが必要です。建築確認日が1981年6月1日以降の場合は、新耐震基準を満たしているといえるでしょう。
耐震基準を満たしている場合は耐震基準適合証明書を発行してもらえるため、住宅ローン控除を利用できます。
空き家を購入してリノベーションを行う場合は、必ず内覧を申し込み、実際に家の中をチェックしましょう。とくに注目したいのは以下の箇所です。
気になるポイントは写真を撮ったり、図面に書き込んだりしてしっかり記録しておきましょう。また、リノベーション事業者に同行してもらうと、専門家の目から判断してもらえます。ただし、不動産会社によっては、提携していない事業者の内覧同行を嫌がるところもあります。空き家購入からリノベーションまでをワンストップで依頼できるリノベ事業者を選ぶと内覧がスムーズに進むでしょう。
一見きれいに見える空き家でも、シロアリ被害により土台が悪くなっていたり、壁や柱の傷みが激しくなっていたりすることがあります。あまりにも状態が悪いと建て直しを余儀なくされることもあり、古い家を撤去する分、新築より費用がかさんでしまうことにもなりかねません。
とくに長期間放置されていた空き家は思ったより劣化が進んでいることも多いので注意が必要です。物件の瑕疵については売買契約書に記載されていますので、購入前に自身が望むリノベーションができるかどうかを判断することが重要です。契約書の見方がわからない場合は、事業者に相談しましょう。
このように、リノベーションは工事費が高額になるうえ、専門的な知識が必要になります。まずは事業者に問い合わせて、予算や物件選定、工事内容について相談することが重要です。
不動産売却に必要な基礎的な知識をご紹介します。