不動産売却のノウハウ
「ようやくマイホーム(持ち家)を手に入れたのに転勤の辞令が出てしまった…」
転勤は会社に勤めるならば避けられない宿命ともいえるものですが、持ち家を購入直後とはあまりにも厳しいタイミングです。こうなった時、世の中の会社員はどうしているのでしょうか。
まず考えなければならないことは、単身で赴任をするか、家族同伴で赴任するかではないでしょうか。その上で、家族同伴で赴任すると選択した場合には、時間がない中、マイホームをどうしたらよいか悩んでしまいますよね。
今回は、急な転勤によるマイホーム(持ち家)の取扱いや選択肢となる賃貸、空き家、売却のそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。
2020年4月2日
2022年4月14日
東急住宅リース株式会社が2020年1月にインターネットで集計したアンケート調査結果をもとに、転勤の実態を紹介します。
このアンケートは、転勤を経験した既婚男性の会社員500名と、夫の転勤に伴い一緒に引っ越しをした経験のある既婚女性500名に対して行われました。
転勤が決まっても「家族と一緒に暮らしたい」と考える方は多いですが、現実はそうもいかないことが多いようです。
「もし転勤するなら、家族も一緒に引っ越しをすることが現実的に望ましいと思うか」という質問に対して、「はい」と答えた既婚男性会社員は63%、夫の転勤に伴い引っ越しをした経験のある既婚女性は78%でした。
しかし、転勤を経験した既婚男性会社員のうち、家族と一緒に引っ越しをしたのはわずか35%です。
特に、高校生の子どもを持つ場合が26%と最も低いです。部活動や受験で忙しい中高生の子どもを持つ世帯は、単身赴任になりやすいと考えられます。
家族と一緒に転勤する場合、問題となるのが「現在の持ち家をどうするか」という点です。
実際、転勤前の住居が持ち家だった人(47名)に対して、「転勤時に苦労したこと」について聞いてみると、半数以上の55%が「住宅の対処(住まなくなった持ち家をどうするか)」 を挙げました。
転勤時に補任手当や家賃補助などの各種補助制度があるかは、会社によりさまざまです。そういった補助制度がない場合、新しい住居の家賃と持ち家のローンで二重苦になる場合もあります。
そういったことから、持ち家の対処法は重要といえます。
転勤が決まった人は、実際に持ち家をどうしているのでしょうか。
転勤前に持ち家に住んでいた人134名に「持ち家をどうしたか」というアンケートを取った結果は以下のとおりです。
順位 | 回答 | 割合(%) |
---|---|---|
1 | 賃貸物件として第三者に貸した | 34 |
2 | 空き家の状態で保有した | 31 |
3 | 売却した | 20 |
4 | 親戚など身内に貸した | 15 |
「売却した」が20%ということから、持ち家を手放したくない人が多いようです。
「空き家の状態で保有」が2位と高順位ですが、空き家にすると建物の老朽化は早まります。だれも住んでいない建物は風通しが悪いため、空気が淀み、湿気やほこりがたまります。カビや害虫が発生しやすく、建物の寿命を一気に縮める原因となります。
家賃収入を得ながら、期間が終わればまた住むことができる「賃貸」を選ぶ方が多いのは、納得の結果といえるでしょう。
しかし、転勤の期間が長期になってしまう場合や、高い価格で売却できるという場合は売却するのも手です。ご自身と物件の状況に合わせて、最適な選択を行いましょう。
家族は引続き持ち家に居住し、単身で赴任することを選択する場合には、当然持ち家と赴任先の2つの住まいが必要です。その場合のメリットやデメリット、注意点を確認しておきましょう。
家族が持ち家に引続き住むことのメリットの1つとして考えられるのは、お子様がいらっしゃるご家族の場合には、転園や転校が不要ということです。
家族同伴で赴任先へ引っ越す場合には、当然お子様は、転園や転校をしなければいけません。お子様の生活環境や人間関係を変えずに済むことは、家族が持ち家に引続き住む場合の最大のメリットと言えるでしょう。
また、金銭面においては、住宅ローン控除(減税)が継続して受けられることがメリットとして挙げられます。
マイホームを購入する場合、買主様の多くが住宅ローンを利用します。住宅ローン控除(減税)は、原則的に、住宅ローンの契約者ご本人が居住することが必要です。しかし、転勤の場合で家族が持ち家に引続き住み続ける場合には、例外的に住宅ローン控除(減税)を継続して適用を受けることが可能です。
家族が持ち家に引続き居住し、転勤先にご自身のみで赴く場合には、通常、その多くが赴任先で賃貸物件を借りて生活することとなります。
そのため、持ち家の住宅ローンの支払いと赴任先の賃貸物件の支払いが必要となり、経済的な負担が大きくなります。特に、勤務する会社にて家賃補助や単身赴任手当などの諸手当が少ない場合には、赴任期間が長期になればなるほど経済的な負担が大きくなっていきます。
そのため、転勤にあたっての諸手当の有無や支給額をまずは確認し、単身赴任をしても住宅ローンの支払いが余裕をもって続けることができるかを試算してみましょう。
また、転勤先に単身で赴任をする場合には、残念ながら今までのように毎日家族とは会うことができません。物理的にも精神的にも家族と離れ離れとなってしまうため、家族と過ごす時間を特に大切にしている方にとっては、大きなストレスとなってしまうことが考えられます。
さらに、ご家族と離れ離れになるということは、ご自身だけが我慢すればよいというものではなく、ご家族も思いは同様でしょう。ご家族に寂しい思いをさせることがないよう、家族の気持ちを大切にしながら決断することが大切です。
転勤先が海外の場合には、原則、住宅ローン控除(減税)制度の適用を受けることができません。この制度は、その適用を受ける年の12月31日に契約者が日本に住んでいることが適用要件となるからです。
しかし、平成28年4月1日以降にマイホームを取得した場合の方は、海外転勤の場合でも一定要件を満たすことで住宅ローン控除(減税)の適用を受けることが可能です。事前によく確認しておきましょう。
また、忘れがちなのが金融機関への連絡です。住宅ローンは、契約者ご本人が居住していることを条件に融資を受けていることが、通常です。住宅ローンの借入先である金融機関に早めに連絡をおこないましょう。
ご家族も同伴して、赴任すると決断した場合、転勤期間中のマイホーム(持ち家)の取扱いはどうしたらよいのでしょうか。
概ね次の3つの選択肢が考えられます。
この3つの選択肢を検討する上で、それぞれどのような状況の場合に得策か、また、それぞれにどのようなメリットやデメリット、注意点があるのか詳しく見ていきましょう。
転勤の期間が比較的短期・中期で帰任できることが想定される場合や、将来持ち家に必ず戻る必要性がある場合には、持ち家を賃貸物件として貸し出すことが得策でしょう。
持ち家を賃貸物件として貸し出すことで、毎月家賃収入を得ることが可能です。住宅ローンが残っている場合でも、月々の住宅ローンの返済額の一部に家賃収入を充当できます。そのため、経済的な負担が軽くなるでしょう。
また、賃貸の場合では、持ち家をご自身の財産として保有を継続できるため、赴任先から戻ってきた時には再度、居住することが可能です。
住宅ローン控除(減税)は、先述したとおり原則的に住宅ローンの契約者ご本人が居住していることで適用を受けられる制度です。持ち家を賃貸物件として貸し出すということは、住宅ローンの契約者が居住していないことになります。そのため、当然住宅ローン控除(減税)の適用も受けられなくなります。
また、賃貸物件として貸し出す場合には、貸し出す際の持ち家のリニューアル工事費用や入居者募集の費用が必要です。借主様が見つかった後は、入居者の管理委託費用や物件の維持管理費用、修繕費用が発生するため、定常的に費用の支出を見込んでおきましょう。
さらに、持ち家を賃貸物件として貸し出すということは、賃料を対価に借主様に持ち家を使用させる権利を渡すということを意味します。借主様が通常の生活をおくっていたとしても当然、建物へのキズや汚れは避けられないでしょう。
国土交通省が策定している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の考え方では、通常使用によってできたキズや汚れについては、借主様が修繕を負担する必要はないと解されています。そのため、賃貸物件として貸し出した当時の状態で戻ってくるものとは期待せず、再度ご自身が居住する場合には、大なり小なりのリフォーム費用が必要となることを理解しておきましょう。
賃貸物件として貸し出す場合には、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の2種類の契約形態のどちらかを選択の上、借主様と賃貸借契約を締結することが必要です。
普通賃貸借契約では、一般的に2年間の契約期間を設定します。その契約期間の満了が到来した際に、借主様側に賃貸借契約の継続意向(引続き入居希望)があれば、新たに2年間の契約期間で更新が可能となる契約形態です。
一方、定期賃貸借契約は、普通賃貸借契約のように契約期間の更新という考えがそもそもありません。そのため、当初○年と定めた契約期間が経過すると賃貸借契約が終了します。もし借主様が引続きその賃貸物件を借りたいという意向があったとしても、退去しなければならない契約形態です。
転勤の期間が大まかに決まっていて、帰任後は必ず持ち家に戻る予定がある場合には、定期賃貸借契約を選択することをおすすめいたします。ただし、定期賃貸借契約は、当初取り決めた賃貸借契約期間をもって契約が終了します。賃貸借契約期間の更新が可能となる普通賃貸借契約よりも賃料水準が下がることを覚えておきましょう。
また、住宅ローンの融資を受けて購入した持ち家を賃貸物件として貸し出す場合には、借入先の金融機関の承諾が必要です。
そもそも住宅ローンは、ご本人やその家族が居住する住居を購入することを目的としたローンです。したがって、住宅ローンの融資を受けた住宅は、原則的に賃貸を目的とした利用はできず、契約違反となってしまいます。
しかし、持ち家から転居をせざるを得ない転勤などの事情の場合には、金融機関によって対応は異なりますが、住宅ローンの返済中でも期間を区切ることで持ち家を賃貸に出すことが認められるケースもあります。事前に借入先の金融機関に相談した上で、賃貸に出すかを判断しましょう。
転勤の期間が短期間で帰任できることが想定され、一旦離れた持ち家に戻る必要性がある場合には、空き家のままにしておくことがよい場合があります。
持ち家を空き家のままにしておくと、賃貸や売買のようにすべての家財を搬出する必要がありません。さらに、必要な家財のみを転勤先に持っていくことが可能です。
賃貸の場合と異なり、思い入れのある持ち家を他者に使用されることがありません。転勤先から出張で数日帰ってくる場合など、ご自身のタイミングでいつでも持ち家を利用できることが大きなメリットであるといえます。
単身赴任をして家族が持ち家に引続き住むケースと同様に、持ち家を空き家のままにしておくケースでは、持ち家の住宅ローンの支払いと赴任先の賃貸物件の支払いを二重におこなうことが必要となるため、経済的な負担が大きくなります。
さらに、都市計画税や固定資産税などの税金、維持管理費(マンションの場合であれば、管理費・修繕積立金。戸建ての場合であれば、庭木の手入れの費用など)、火災保険料など、誰も利用していないにも関わらず負担しなければならない費用がでてきます。
そのため、転勤の期間が長くなればなるほど、空き家のまま保有することは経済的な負担が増していきます。
また、空き家の状態のままでは、玄関、窓、換気扇などを開閉することがないため、建物内に湿気がたまり建物自体の劣化が進行しやすくなります。また、水道を定期的に利用しないことで配管が劣化することもあります。
そのため住もうとした時に、住める状態ではなくなっていることも考えられます。空き家のままにすることを選択した場合は、通気・換気、通水、庭木の確認、郵便物の整理など定期的に巡回してもらえる信頼できる方を見つけることが重要です。
もし、そのような方がいない場合には、ご家族が持ち家に立ち寄り定期的にメンテナンスをおこなうことや、費用はかかりますが、不動産管理会社が提供している「空き家管理サービス」などを利用することも検討しましょう。
なお、住宅ローン控除(減税)は、先述した持ち家を賃貸物件として貸し出すケースと同様に契約者ご本人が居住していないことになります。そのため、住宅ローン控除(減税)制度の適用も受けられません。
思い入れのある大切なマイホーム(持ち家)をそのまま(空き家)の状態にしておきたいという気持ちは、誰もが共通だと思います。しかし、中長期間に亘る転勤や将来その持ち家に戻る可能性が低い場合には、賃貸か売却を選択するようにしましょう。
空き家のまま保有し続けることを選択し、結局そのお住まいに戻らないことになった場合には、不要なリスクと無用な経済的な負担を背負ってしまいます。そのようなケースでは、空き家のまま保有するメリットはほぼないといっても言い過ぎではないでしょう。
その持ち家に戻るかどうか不確かな場合には、安易に空き家のまま保有することを選択せず、ご自身のご事情にあわせて売却か賃貸かを選択することをおすすめします。
転勤の期間が比較的中期・長期に亘ることが想定される場合や将来、持ち家に戻る可能性が低い場合には、売却を選択することが得策でしょう。
持ち家を売却する最大のメリットは、不動産という資産を現金化できることでしょう。持ち家を売却することで、経年による建物価値の減少を回避でき、現在の不動産資産の価値を確定させることが可能です。
また、固定資産税、都市計画税、維持管理費用などが不要なため、経済的な負担が軽くなります。
このように不動産資産を現金化することで、転勤先での新たな住まいや帰任後の住まいの購入資金に充当が可能です。今後のライフプランに合わせた多様な使途に充当が可能となり、自由度がより一層高まります。
不動産は、条件が類似する物件はあっても全く同じ条件の不動産は存在しません。同じ地域の一戸建てであっても土地面積や日当たり具合など条件はそれぞれ異なりますし、同じマンション棟であっても階数、間取り、方位などの部屋の条件はすべて変わってきます。
そのため一度、不動産を手放すと全ての条件が同じ不動産を手に入れることは困難です。したがって、将来、転勤先から帰任する際に、必ずその不動産に戻ってくる場合には、売却という選択は避けるべきでしょう。
また、金銭面では、不動産を売却することで、一時的にさまざまな費用負担が発生してきます。具体的には、不動産仲介会社への仲介手数料、抵当権抹消などの登記費用、印紙税、譲渡所得税などが必要となることがありますので、よく確認しておきましょう。
不動産価格は需給関係によって変動しやすく、また経年によっても建物の価値は減価していきます。そのため、売却時期や不動産の条件によっては希望する価格では売却できないこともあります。
初期検討段階であったとしても不動産仲介会社に売却査定を依頼し、提示のあった売却査定価格を元に最終的に判断を出すとよいでしょう。
賃貸するか売却するか、判断するポイントをご紹介します。
転勤の期間が1年以内と短いようであれば、借り手が見つかりづらいため空家で保有することになるでしょう。しかし2年以上になるようであれば、賃貸で貸し出すことをおすすめします。
賃貸のメリットは、家賃収入を得ながら期間が終わればまた住むことができる点です。
また、建物に人が住むことで老朽化を防ぐ効果もあります。空き家の状態では、建物内の湿気やホコリが原因でカビや害虫が発生し、建物の老朽化を早めてしまうおそれがあります。
しかし、入居者が出ていく度に募集や契約締結などの手間がかかり、空室期間が続く場合は転勤先の家賃と持ち家のローンの二重苦になってしまうデメリットもあります。
持ち家を賃貸する場合は、終了期間が決まっている定期建物賃貸借契約にすることが一般的です。普通建物賃貸借契約と異なり、一定の手続きを踏めば契約期間の満了時に物件を手元に戻すことが可能です。
なお、不動産業界では、転勤時に期間限定で持ち家を貸し出すことをリロケーションと呼び、専門の業者も存在します。
転勤の期間が長期になってしまう場合や、高い価格で売却できるという場合は、売却することがおすすめです。
売却のメリットは、管理の手間やコストから解放されることです。家を所有すると、固定資産税や修繕費などのコストがかかります。マンションの場合は、別途管理費などが必要となることもあるでしょう。売却すればそれらのコストから解放され、転勤先での住居の選択肢も広がります。
しかし、売却する際には「売却金額でローンが完済できるか」に注意しなければなりません。
住宅ローンを組んでいる場合、持ち家についている抵当権を抹消するためにローンを完済する必要があります。売却価格が残債を下回った場合、差額については自己資金で補わなければならないため注意しましょう。
突然伝えられた転勤では、短い期間の中で以下2つの要素を検討し、答えを出さなければなりません。
業種にもよりますが、会社に異動は付き物です。持ち家に戻ってくる可能性や転勤の期間がハッキリしていないことも多いです。
賃貸と売却のどちらも選択できるよう、不動産会社に相談して具体的な検討をすることをおすすめします。まずは持ち家がどの程度で売却できるかを知るために、不動産会社に価格査定を依頼してみてはいかがでしょうか。
転勤の辞令が出たら、まず、単身で赴任するか家族同伴で赴任するかのどちらかを決断しなければなりません。その上で、家族同伴で赴任することを決断された場合には、こちらでご紹介した「賃貸にする」、「空き家のままにする」、「売却する」といったマイホーム(持ち家)の取扱いを十分に検討しなければなりません。
しかし、お子様の有無や短期の赴任か長期の赴任かなど、ご自身のおかれている状況や今後のライフプランによっても、どの選択肢が最適であるかは異なります。
また、それぞれにメリット・デメリットがあるので、持ち家の取り扱いにお悩みなら、まずは信頼できる不動産仲介会社に相談することが課題解決の近道となるでしょう。
小田急不動産では、ご所有不動産の売却、また、賃貸の募集から物件管理までを承っております。
持ち家の取扱いをまだ決めていなくても、転勤の辞令が出た早い段階からご相談していただくことをおすすめしております。さまざまな選択肢を事前にご検討をしていただくことで、結果として、ご自身の満足のいく決断につながります。
小田急不動産では、売却査定依頼や賃貸査定依頼も無料で承っています。マイホーム(持ち家)の活用方法についてお悩みであれば、まずはご相談ください。お客様のご事情に応じた最適なご提案をさせていただきます。