不動産売却のノウハウ
借地権を売買する際、相場はいくらぐらいになるのでしょうか。
今回は、借地権の価格相場に関する解説と上手な売却方法について紹介します。
2021年9月21日
借地権とは人から土地を借りる権利のことです。
土地を自分で持つ所有権と区別されますが、所有権と同じように売買することは可能です。
しかし、実は、借地権には明確な取引相場というものがありません。
なぜかというと、借地権を売却するには地主の承諾が必要になるためです。
地主が承諾しなければ売却することができず、売買価格も地主によって変わります。
明確な取引相場はありませんが、目安を算出することはできます。
ここでは、借地権売却の相場についての考え方を紹介します。
借地権には明確な取引相場はありませんが、相続税や固定資産税の評価額は算出することができるため、多くの場合その金額を参考にしています。
算出のためには「自用地評価額」と「借地権割合」を調べる必要があります。
自用地評価額とは、更地の状態での所有権の土地の評価額のことです。
通常はこれをもとに、固定資産税や相続税などが課税されます。
借地権割合とは、土地の権利のうち借地が何割を占めるかを示す数字です。
土地の権利を地主が持つ底地の権利と借地人が借りる借地の権利に分けて、土地ごとに国税局が借地権の割合を設定しています。
借地権割合は、30%~90%まで10%刻みで設定されており、割合が高いほど利用価値が高くなります。
借地権の評価額は以下の式で計算できます。
自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合)=借地権評価額
これを自用地評価額3,000万円、借地権割合が60%の土地に当てはめて計算してみましょう。
3,000万円-(3,000万円×60%)=1,200万円
この計算はあくまで相続税などの課税評価額であり、1つの目安です。
実際の売り出し価格は借地人である売主が底地権を持つ地主の承諾を得て設定し、購入希望者との交渉によって売買価格を決定します。
借地権にはいくつか種類がありますが、住宅の取引においては、1992年に成立した借地借家法に基づく契約か、それともそれ以前の旧借地法に基づく契約かによって区別されます。
改正前の借地権である「旧法借地権」と、改正後の借地借家法に基づく「定期借地権」の大きな違いを下の表にまとめました。
種類 | 存続 期間 |
契約の 更新 |
再建築 による 期間の 延長 |
建物の 買取 請求 |
---|---|---|---|---|
旧法 借地権 |
木造 ー20年 鉄骨・RC ー30年 |
できる | できる | できる |
定期 借地権 |
構造に 関わらず 50年 以上 |
できない | できない | できない |
旧法借地権では借地人の権利が強く、地主は契約の更新や期間の延長、借地人からの建物の買取請求を正当な理由なく拒否できないと規定されていました。
しかし、半永久的に契約が更新されてしまうと土地の所有権を持つ地主がいつまでも自分の土地を活用したり売却したりできないというデメリットがありました。
そのため、改正後の借地借家法に基づく「定期借地権」では、存続期間を50年以上と長期契約にする代わりに、地主が契約更新や買取請求を拒否できるように規定されました。
期間満了後には、建物を取り壊し、更地にして地主に返還する必要があります。
現在一般的に取引されている住宅の借地権はほとんどが「定期借地権」となっていますが、借地借家法にはこの他にも、旧法借地権と同じく期間延長や建物の買取請求を認める「普通借地権」、「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付借地権」、「一時使用目的の借地権」があります。
売却相場を考えるにあたっては、契約の更新や延長、建物の買取請求が可能な旧法借地権や普通借地権の方が購入者が利用期間を決めることができるため、売買価格を高く設定できる可能性が高いです。
定期借地権の場合は期間満了後に建物を取り壊して更地で返還する必要があります。
そのため、借地上の建物がどれくらいの耐久性があるか、建て替えるとすれば残存期間がどれくらいかによって、借地の価値が大きく変わる可能性があります。
借地権のマンションにも旧法借地権と定期借地権のものがあります。
旧法借地権では期間満了後も契約の更新することも多くなりますが、定期借地権のマンションでは期間を満了した時に多額の建物解体費が必要です。
そのため、新築時から管理組合が将来必要になる建物解体費を積み立てていることが一般的です。
売却相場は所有権のマンションよりも安くなりますが、都心の一等地などにも多くあり、立地条件の良いものは比較的スムーズに取引されています。
借地権とは、土地を所有する地主がいてはじめて存在するものです。
そのため、借地権の売却において、地主との関係性が重要です。
借地権には賃借権と地上権の2つがあり、一般的には賃借権となっています。
賃借権の場合、借地人は地主の承諾なしに借地権を第三者へ譲渡(売却)できません。
売却する際は、地主に対して「譲渡承諾料」を支払う必要があります。 譲渡承諾料の相場は借地権価格の1割程度です。
ただし、地主が売却を承諾しないときには、借地権者が裁判所に申し立てて地主の承諾に代わる許可を得ることができるようになりました。
なお、登記をして設定する地上権の場合は、地代を支払う代わりに土地を直接所有するというシステムであるため、自由に売却や転貸ができます。
借地権と底地権の関係は、よくコーヒーのカップとソーサーに例えられます。
コーヒーを飲むことができるカップを持っているのが、建物を建ててその土地を利用することができる借地人です。
単独ではコーヒーを飲むことができないソーサーを持っているのが、地代を徴収する代わりにその土地を利用できない地主です。
コーヒーカップはカップとソーサーをセットで売却した方が、カップのみ、ソーサーのみの単独で売却するよりも高く売ることができます。
土地の権利も同じで、借地権のみ、底地権のみで売却しようとすると、市場価格よりも割安になってしまうのです。
底地権と借地権はセットで完全な所有権になるため、地主と借地人が共同で売却することで、相場で売却しやすくなります。
さらに、土地に借地人が所有する建物が建っている場合は、建物価格を上乗せできます。
今すぐ売却したいわけではないという場合であっても、地主から底地を買い取っておけば完全な所有権となるため、建て替えや売却が自由にできます。
価格調整に難航することが多いものの、上記のカップとソーサーの理論から、一般的には底地は第三者に売却するより借地人に買い取ってもらうのが一番高くなります。
そのため、タイミングや掲示金額によっては交渉がうまくいくこともあります。
地主から底地を買い取るパターンの逆で、地主が借地権を買い取るというケースもあります。
完全な所有権になれば、その土地を活用したり売却したりしやすくなります。
この場合も、第三者に売却するよりも高くなりやすいため、有利と言えます。
このように、借地権を売却する場合は地主の協力が得られるかどうかが大きな鍵です。
借地権は長期間の契約になるため、契約当初の地主が亡くなって相続人に代替わりしていることもあります。
契約当初の地主と土地に対する考えが変わっていたり、底地を相続した新たな地主が遠方に住んでいるということもあるため、交渉次第では共同での売却や底地の買取がうまくいくケースもあります。
借地権の売却は所有権と異なり複雑です。
借地権の種類や、残存期間、地主が法人か個人かなどによって戦略が異なるためです。
ここでは、借地権をスムーズに売却したり、売却価格を下げないためのコツを紹介します。
旧法借地権は契約の更新が認められているため、比較的売却はスムーズです。
しかし、第三者への譲渡を拒否することで契約が満了すれば、地主が自由にその土地を活用できます。
そのため、更新時期が迫っている場合は、地主の承諾を得られないこともあります。
また、借地権の更新時期に借地権を売却できても、購入者は買い取ってすぐに地主に対して更新料を支払う必要があります。そのため、更新時期の借地権は需要が下がる可能性があります。その結果、売却価格を下げることになるため、更新時期での売却は避けた方が良いでしょう。
定期借地権の借地上の建物が中古の場合、住宅ローンが使えないことが多くなります。
所有権のない土地には抵当権が設定できませんし、築年数の古い建物には金融機関の担保評価がつきません。
住宅ローンが使えなければ、購入者がかなり限定されてしまうため、非常に売りにくくなってしまいます。
比較的新しい建物や、マンションなど鉄筋コンクリート造などの強固な建物の場合は残存期間によっては融資がつくこともあります。そのため、売却活動に入る前に金融機関に赴いて担保評価額を確認しておくことで、購入者が検討しやすくなります。
借地権の取り扱いは非常に複雑です。 売却せずにリフォームして賃貸で活用するという選択肢もありますし、売却する場合は地主との交渉や買い主探しも難航します。
借地権の取り扱いに慣れた不動産会社に相談すれば、借地権の活用方法を熟知しているはずですし、地主との共同売却や底地の買取などの交渉もプロが仲介してくれるため、安心です。
「借地権を相続することになった」「親が持っている借地権を売却したい」「借地権で家を建てたけど住み替えたい」という時は、まずは信頼できる不動産会社に相談しましょう。