不動産売却のノウハウ
生活環境の変化など、様々な理由で住まいを買い替える必要性が出てくるかもしれません。その場合、住宅ローン完済前でも住まいの買い替えは可能なのでしょうか?
ローン完済前の住まいの売却方法や注意点をご紹介します。また、新居のローンを組む際のポイントも併せて確認してみましょう。
2017年7月3日
2022年4月14日
人生は様々な変化が訪れるもの。
一生を過ごす家として購入した住まいも、生活環境の変化や時間の経過によっては、買い替える必要性が出てくることは往々にあるものです。
そんなときに注意したいのが「住宅ローンが残っている場合」です。
住宅ローンが残っている場合でも住まいの買い替えは可能なのでしょうか?
本来、住宅ローンは完済しなければ売却できません。しかし、場合によっては、住宅ローン完済前でも買い替えは可能です。
ローン完済前の買い替えについての基本事項と注意点を確認しておきましょう。
一般的に住まいを購入する場合、住宅ローンを利用することになります。
住宅ローンを利用する際には、「抵当権」と呼ばれる権利を借入先の金融機関が設定しています。
住宅ローン借入者が、万が一ローンを返済できなかった場合に、金融機関がその住宅を売却してローンを返済できるように設定する仕組みのことです。
具体的には、住宅ローンを借りるときに、金融機関が建物や土地を担保とします。そして金融機関が建物や土地に「抵当権」という権利を設定します。
抵当権は、ローンを完済すれば抹消することができます。
抵当権は1つの物件に2重に設定できません。そのためローンを完済して、抹消しなければ、買い手が新規に住宅ローンを組めません。
そのため住まいの売却時には、ローンを完済して抵当権を抹消しておく必要があります。
このように不動産を売却するには「抵当権の抹消」が必要となるため、「売却代金でローンを完済できるかどうか」が大きなポイントとなります。
そこで、売却代金で住宅ローンが完済できる場合とできない場合の2つのパターンを確認しておきましょう。
売却代金で住宅ローンを完済できる場合は、金融機関の抵当権を抹消できます。
その場合、売却代金でローンを返済するように設定します。金融機関が売却代金の中からローンの残額を引き落とし、抵当権を抹消します。
そのため新たな買い手が問題なく抵当権を設定し、住宅を購入できます。
一方で、場合によっては、売却代金がローン残額に届かないということがあるかもしれません。このようなケースを「担保割れ」といいます。
担保割れは、購入時より不動産価値が下がっていた場合や、地価の変動などで起こりますが、決して珍しいケースではありません。
しかし、担保割れだからといって、住まいの買い替えができないわけではありません。買い替えに使えるローンを利用することで、抵当権を抹消できることもあります。
また、つなぎ融資を利用することで、買い替え資金を借りられることもあります。
住宅の売却代金でローンが完済できない場合、下記のような融資やローンを利用することが一般的です。
買い替えをする家の住宅ローンに、担保割れをしたローン残額を上乗せして借りられるローンです。
買い替えローンを利用することで、売却代金が住宅ローン残額に届かなかった場合にも完済できます。
新たに購入する住宅のローンに仮住まいなど、買い替えに必要な諸経費も含めて融資を受けることも可能です。利用するには、審査を受けなければならないなど、一定の利用条件があります。
家を買い替える場合、売却と購入のタイミングが必ずしも一致しないことがあります。
売却が完了する前に、家の購入をする場合は、売却代金を新居の購入に充てることができません。その場合に、利用できるのがつなぎ融資です。
つなぎ融資は、家の売却代金に相当する金額の融資を受けられます。住宅が売却できた場合、売却代金で一括返済します。
つなぎ融資は特定の金融機関で取り扱われています。
また、つなぎ融資だけを別の金融機関で借りるという方法はできません。そのためつなぎ融資を利用できる金融機関であるかどうかも、住宅ローン選びのポイントです。
買い替え先を購入する際、住宅ローンを利用する方がほとんどでしょう。住宅ローンを組める年齢は金融機関により異なりますが、80歳までに返済が完了することを条件としているところがほとんどです。
住宅ローンを組める年齢とローンを組む際の注意点について解説します。
審査に通りやすい年齢は支払い能力が関係しています。住宅ローン自体は20歳から申し込みができますが、若すぎる場合、給与が一定の水準以上であることが少なく、支払い能力を証明できません。
一方、40歳以上の場合は、その時点での支払い能力には問題ないものの、返済期間によっては完済が定年後になってしまうケースがあります。
返済完了までを考えたときに、支払いを見込めるという点で、30〜34歳が審査に通りやすいというわけです。
住宅ローンを申し込む場合、団体信用生命保険への加入が必要です。団体信用生命保険の保証期間は80歳までです。そのため、ほとんどの金融機関で、完済時の年齢を80歳に設定しています。
35年ローンを組む場合、80歳から逆算すると45歳が申し込みの期限になることは理解できるでしょう。しかし、80歳まで返済を続けることは金融機関から見ても不安になります。
そのため、45歳という期限があるものの、現実的には45歳での申し込みも審査が厳しくなることを理解しましょう。
ほとんどの金融機関では、65〜69歳を申し込み期限、75〜80歳を完済時期としています。そのため、60歳であってもローンの申し込みは可能です。ただし、申し込みができるだけで、審査に通るとは限りません。
住宅ローンを組む際に加入が必要な団体信用生命保険は、借主が死亡した場合に残債がなくなるという保険です。年齢が高ければ死亡するリスクも上がるため、当然審査が厳しくなります。
単純な返済能力だけでなく、団体信用生命保険の審査という点でも、60歳以上の方が住宅ローンの審査に通るのはハードルが高いといえるでしょう。
住宅ローンを組む前に、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
家庭の支出は住宅ローンだけではありません。子どもがいる場合は、教育資金も必要です。幼稚園から大学までの学費はひとり当たり1,000万円を超えます。
子どもの年齢から、どの時期にどれだけの支出があるのかを計算しておきましょう。
ローンの返済は金融機関の審査通りにできるとは限りません。余裕がある時期に繰り上げ返済するといった対策も必要です。
そのためにもキャッシュフローを書き出しておくことが有効です。キャッシュフローを作成することで、繰り上げ返済時期を予測でき、計画的にローンを返済できます。
多くの住宅ローンでは年収に対する返済比率を30〜35%に設定します。しかし、返済比率が35%では、生活費に余裕がなく、旅行や買い物を制限されてしまう可能性があります。
ゆとりのある生活をするためにも、返済比率は15〜20%に収めるとよいでしょう。
買い替え時の住宅ローン審査には借入履歴や収入だけでなく、勤務先や完済年齢、健康状態といった項目も対象です。審査項目を把握し、対策をすることで審査に通る確率が上がります。
借入履歴は個人信用情報とも呼ばれ、住宅ローンの審査にも影響している情報です。審査では、現時点で住宅や自動車、カードなどの借入履歴があるかどうかを確認します。大きな金額が残っていれば、当然審査にも影響します。
しかし、買い替えを検討している場合、住宅ローンが残っている方がほとんどでしょう。売却資金や預貯金での繰り上げ返済が可能であれば問題ありません。それができない場合は買い替えローンになってしまい、審査も厳しくなります。
また、クレジットカードは注意が必要です。金融機関はクレジットカードのキャッシング枠を借金として計算します。複数のクレジットカードを持っている場合、枚数分のキャッシング枠が借金として計算されます。使用していないカードがあれば、審査前に解約しておきましょう。
返済能力を見極めるために、安定した収入があるかどうかが住宅ローンの審査の対象です。
安定した収入の基準は勤務先の信用です。企業に対しても審査があり、金利や担保設定は企業の大きさによって異なるのが一般的です。
超大手企業であれば、金融機関にとってもよい取引先になるため、無担保でも融資します。大手企業の社員や公務員であれば、後ろ盾となる勤務先の信用が大きいため、審査に通りやすいでしょう。
収入の大きさ自体も審査に影響します。たとえ中小企業であっても、収入が高いのであれば問題ありません。
また、勤続年数は3年がひとつの目安です。3年以上勤めていれば、金融機関は収入が今後も継続されると判断します。
ローンを完済できる年齢も審査の対象です。多くの金融機関では完済年齢を80歳に設定しています。
住宅ローンとして有名なフラット35の場合、最長借入期間は35年です。そのため、借入時の年齢も審査の対象です。
ただし、ローン返済期間になるであろう40代後半〜50代は、収入が多い年齢でもあります。繰上返済を計画することで、ローン完済年齢を早めるといった対策も有効です。
住宅ローンを組む場合、団体信用生命保険への加入が義務付けられています。団体信用生命保険は借主が死亡した場合に住宅ローンの残債を返済してくれる保険です。
ただし、団体信用生命保険は生命保険です。借主の健康状態が悪い場合、保険に加入できません。
住宅ローン審査の前に、団体信用生命保険に加入できる健康状態なのかを確認しておきましょう。
どちらのケースにもメリット・デメリットがあります。
資金計画やスケジュールを考慮した上で、どちらかを選ぶことになります。
「売却」先行 | 「購入」先行 | |
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メリット |
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デメリット |
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このように売却が先行する場合も、購入が先行する場合も両方にメリット・デメリットがあります。
そのためどちらを先に行うかは、不動産仲介会社に相談のうえ、決定するとよいでしょう。
住まいの買い替えで最も重要なことは、資金計画です。
売却を先行させるのか、または、購入を先行させるのかは、お客様のそれぞれのご事情でメリット・デメリットは大きく異なってまいります。
まだ買い替えを決めていなくても、まずは買い替えを検討されているご事情を不動産仲介会社に相談するところからはじめてみましょう。
小田急不動産では、訪問査定・簡易査定ともに無料で承っています。お客さまの売却のご事情に応じた最適なご提案をさせていただきます。