不動産売却のノウハウ

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借地権の建て替えの承諾料の相場を解説。
地主とのトラブルを避けるポイントとは

借地権の建て替えには地主の承諾が必要です。

借地権に関わる問題は貸主と借主との話し合いによって決定しますが、非常に複雑なのでトラブルも多くなります。

現在の一般借地権の存続期間は50年以上とされています。一方で、住宅の建て替え時期は木造住宅で20~30年が相場とされており、存続期間中に建て替えを経験することになります。

今回は、存続期間中の、建て替えの際に必要となる地主への承諾料について解説します。

2022年1月6日

目次

借地権の建て替えには地主の承諾が必要?

借地権のついた土地上の建物は、地主の承諾があれば建て替え可能です。ただ、地主から直接返事をもらわなくとも、承諾とみなされるケースがあります。

承諾を得る際のポイントや、承諾料の相場を解説します。

地主へ通知後2カ月以内に異議申立てがなければ承諾となる

地主に対して「建て替えたい」と通知し、2カ月以内に異議申し立てがなかった場合は、承諾したとみなされます(借地借家法 第七条)。

建て替えに伴い、既存の借地権が20年延長します。延長の開始日は、承諾があった日もしくは建物が築造された日のいずれか早いほうです。

しかし、こちらが該当するのは、借地契約の更新前です。存続期間の更新後は対象外です。

借地契約更新後に建て替え工事をする場合は地主の許可が必須

借地権には契約期間(存続期間)があります。期間満了時に更新手続きを行えば、契約が継続され、引き続き土地の利用が可能です。

更新を行った後の土地の場合、建て替えをするには地主から必ず許可を得なければなりません。

借地権の建て替えの際、地主への承諾料も必要?

建て替えの承諾を得られたら、地主へ承諾料を支払うのが一般的です。しかし、契約書に記載がなければ支払いの義務はありません。

承諾料の金額や料率は法律で明確に定められているわけではありません。借主と地主の話し合いにより決定するのが通常です。

契約時に交わした「土地賃貸借契約書」に建て替えの承諾料について記載されていれば、そちらの金額が適用されます。

借地権の建て替えの際、地主への承諾料の相場は?

特に取り決めがない場合、承諾料の相場は更地価格の3~5%程度です。更地価格とは、その土地の時価を指します。仮に更地価格が3,000万円の場合は、承諾料は90~150万円です。

3,000万円×3~5%=90~150万円

ただ、非堅固(ひけんこ)な建物から堅固な建物へ新築する場合、承諾料が上乗せされる場合があるので注意しましょう。

代表的な非堅固建物は、木造や軽量鉄骨造です。それに対して堅固な建物とは、鉄筋コンクリートや重量鉄骨造などの頑丈な建物を指します。

条件変更承諾料の相場は、更地価格の10%程度が一般的です。仮に更地価格が3,000万円の場合は、約300万円です。

3,000万円×10%=300万円

堅固な建物への建て替えは、耐用年数や延べ床面積が増えるなど、借主のメリットが大きく増えます。地主にも利益を還元する必要があるため、通常の承諾料よりも高額になりやすいです。

また、住宅から業務用物件・賃貸物件への建て替えなど、建物を使う目的を変更する場合も条件変更とみなされます。

建て替え承諾料が不要な場合もある

一般的に承諾料は必要ですが、裁判所から許可がおりるなど承諾料が不要なケースもあります。

地主への承諾料が不要なケースとはどういったものなのでしょうか。

まずは契約書の確認

地主の承諾なしで、借地上の建物を建て替えられるケースがあります。それは土地賃貸借契約書に「増改築禁止特約」の記載がなく、なおかつ借地権の更新前の物件です。

増改築禁止特約とは「建物を増築したり建て替えたりする場合は、地主の承諾が必要」という取り決めです。

契約書にこの特約が記載されていないなら、地主の承諾を得る必要はありません。それに伴い、承諾料の支払いも不要です。地主に連絡する前に、契約書を確認してみましょう。

ただ、地主に対して何の連絡もなしに建て替えすると、あとでトラブルに発展する可能性があります。

契約満了時に地主が更新に異議を申し立て、正当な事由として認められれば更新は行われません(借地借家法 第五・六条)。

最悪の場合、せっかく建てた家に住めなくなってしまう可能性もあるため、「なぜ建て替えるのか」「どんな建物にするのか」など事前に連絡を入れておいたほうが安心です。

裁判所の許可制度がある

地主に建て替えの承諾を依頼しても、スムーズに応じてもらえないこともあるでしょう。ただ、「地主が建て替えを承諾してくれない=絶対に建て替えができない」とは限りません。

更新後の物件には、裁判所の許可制度があります(借地借家法 第十八条)。こちらは、「借主が申し立てれば、地主の承諾に代わって裁判所が再築の許可を与える」という内容です。

しかし、どのようなケースでも再築の許可が下りる訳ではなく、やむを得ない事情があると裁判所が認めたときです。建物の状況や、地主の事情を踏まえて判断されます。

また、裁判所は許可を与える際、当事者間の利益の公平性を保つために必要があるときは、借主へ承諾料の支払いを命じることもあります。

地主の許可があれば承諾料は不要

承諾料の金額は法律で義務付けられているものではなく、借主と地主の話し合いで決まります。

そのため、もし地主から「承諾料はいらない」との申し出が合った場合、承諾料の支払いは不要です。しかし多くの契約書には承諾料・条件変更承諾料についての特約が記載されています。

契約書に記載されていないからといって支払いを拒否すると、トラブルにつながる恐れがあるので気をつけましょう。人間関係が悪くなると、建て替えや譲渡の承諾に応じてもらえない可能性があります。

承諾を得ても建て替え不可の場合も?

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地主から承諾を得られても、建て替えられないケースがあります。既存不適格建築物もしくは接道条件を満たしていない物件です。

既存不適格建築物

既存不適格建築物とは、建築当初は合法的に造られた建物だったのにも関わらず、改正が重ねられた現在の法律に適合しなくなった物件です。

違法建築物ではないため、住んでいても問題ありません。ただし、同じ建物への建て替えが難しいところがデメリットです。

既存不適格物件の多くは、容積率や建ぺい率が現在の基準を上回っています。そのため同じ広さ・高さの物件を建築できず、規模を縮小せざるを得ません。

また現在の法令に適合させると、想像以上に建築費用が増えてしまう可能性もあります。「現在の規模を維持したい」「予算がオーバーしてしまった」などを理由に、建て替えを断念することもあるでしょう。

接道義務を満たしていない物件

建築基準法の第43条では「横員4m以上の道路に、敷地(土地)が2m以上接していなければならない」と定められています。これを接道義務といい、基準を満たしていない場合は建て替えられません。

この規定で問題になりやすいのが、旗竿地(はたざおち)と呼ばれる形状です。旗竿地は道路から敷地までの距離が離れており、細い通路を通って敷地に向かいます。

古い住宅の場合は、道路との接地面が2mの満たない、または2m接しているけれど道路の横員が4m未満というケースがあります。

この場合の対策として挙げられるのは、隣地の買い取りやセットバックという方法です。

隣地の買い取りは、接地面が2mに満たないときの対策です。隣地の持ち主と相談し、土地の一部を買い取ることで幅を増やします。ただ、隣地の持ち主から買い取りに応じてもらえなかった場合は、建て替えが難しいでしょう。

セットバックは、道路の横員が4m未満のときに行われます。道路の中心線から2mの位置まで敷地を後退させる方法です。

隣地の買い取りとセットバック、どちらの方法でも敷地に手を加えることになります。借地である以上、必ず地主へ確認してから行うようにしましょう。

借地権を売却するという選択肢も

建て替えが難しい場合は、借地権を売却するのも選択肢のひとつです。

借地権の売却は、不動産会社に依頼して第三者へ中古物件として販売(借地権を譲渡)するか、地主に買い取ってもらう方法などがあります。どちらの場合も、地主からの承諾が必要です。

借地権つきの物件は不動産市場で多く流通されています。ただ、土地の所有権を取得できず、地主へ地代の支払いが必要になることから、通常の物件より売却しにくいのが現実です。

地主への売却は、地主次第でスムーズに話が進む可能性があります。もし地主が、将来的に土地の返却を考えていたら、売却に応じてもらえるかもしれません。まずは地主に売却したい旨を相談してみましょう。

第三者へ売却する場合は、不動産会社に仲介をしてもらう必要があります。借地権は専門性を要しますので、実績のある不動産会社への相談をおすすめします。

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