不動産売却のノウハウ
不動産の売却では司法書士が行う登記費用は、買主・売主どちらが負担するという決まりはありません。ただし売主と買主それぞれ負担する登記費用があります。
不動産の売却時に司法書士の費用相場はいくらぐらいなのか、買主・売主どちらが負担するのかなどについて解説します。
不動産売却 費用・税金2024年12月11日
不動産売却にあたり司法書士に必要な手続きを依頼する場合は、どのくらい費用がかかるのでしょうか。
そもそも司法書士の費用について買主・売主どちらが負担するのか、そして不動産売却の買主と売主それぞれが負担する費用相場などについて詳しく解説します。
不動産の売買が行われた際に、一般的には登記の手続きを司法書士に依頼します。司法書士が行った登記費用については、買主・売主どちらが負担しなければならないかなどは法律上定められていません。
ただし、慣行として所有権移転費用については基本的に買主が負担します。理由として、不動産売買の契約書の雛形で明記されている点や不動産を購入し登記する人が登記権利者とされ、権利者が費用負担すべきとされている点が挙げられます。
買主が負担する司法書士費用の内容と相場については、下記の通りです。
登記種別 | 登記する内容 | 司法書士の費用 |
---|---|---|
所有者移転登記 | 不動産の所有権移転を記載 | 約30,000円〜100,000円 +登録免許税 (固定資産税評価額×税率) |
抵当権設定登記 | 抵当権設定を記載 | 約20,000円〜60,000円 +登録免許税 (住宅ローン借入額×0.4%) |
買主が負担する司法書士費用として、所有権移転登記や抵当権設定登記があります。
所有権移転登記とは、不動産の所有権が移転したことを登記簿に記載する手続きです。不動産を購入したときに、購入物件が自分の持ち物であることを公的に示すために必要です。
また、住宅ローンを利用して不動産を購入すると、抵当権設定登記も必要です。抵当権は、住宅ローン契約者が返済できなくなった場合に金融機関が不動産を売って借入金を回収する権利です。基本的に住宅ローン契約時には抵当権を設定しなければ借入できません。
そして、登録免許税は売買や相続の登記、抵当権設定の登記などを行う際に支払う税金です。不動産の売買で発生した価格に対して一定の税率で算出され、納付しなくてはなりません。
例えば土地の固定資産税評価額が1,500万円、住宅ローン借入額が3,000万円だった場合、発生する登記免許税は下記の通りです。
所有者移転登記 1,500万円×2%=300,000円
抵当権設定登記 3,000万円×0.4%=120,000円
※参考:法務局 登録免許税の計算
※参考:国税庁 登録免許税の税額表
所有者移転登記の登録免許税は2026年3月31日までに登記を受ける場合、軽減措置がとられています。抵当権設定登記の軽減措置の適用期限は2027年3月31日までとなります。
売主が負担する司法書士費用の内容と相場については、下記の通りです。
登記種別 | 登記する内容 | 司法書士の費用 |
---|---|---|
抵当権抹消登記 | 抵当権の抹消を記載 | 約10,000円〜30,000円 +登録免許税 (1筆あたり1,000円) |
登記名義人住所・氏名変更登記 | 登記者の住所・氏名の変更を記載 | 約15,000円〜 +登録免許税 (不動産の数×1,000円) |
売主が負担する司法書士費用として、抵当権抹消登記や登記名義人住所・氏名変更登記があります。抵当権抹消登記とは、住宅ローンの完済後設定していた抵当権を抹消する手続きです。
また、相続などで不動産の所有者が変わった場合、登記名義人住所・氏名変更登記が必要です。
抵当権抹消登記は司法書士費用が設定時よりも少ない金額で手続きできます。登記免許税は1筆あたり1,000円ですから、土地と建物で2筆となり、1件あたり2,000円です。
そして、登記名義人住所・指名変更は変更内容によって費用が異なります。
司法書士の費用については、もともと報酬基準が定められていましたが、平成15年の自由化に伴い、各司法書士が報酬を定めるようになりました。
そのため、同じ依頼内容であっても司法書士によって費用にバラつきがあります。また、地域によっても費用に差が生じています。
売買により土地1筆と建物1棟(固定資産評価額の合計1,000万円)の所有権移転登記手続きの代理業務を依頼し、売買契約書等の作成や登記申請の代理をした場合に各エリアの司法書士報酬の平均が下記の通りです。
低額者10%の平均 | 全体の平均値 | 高額者10%の平均 | |
---|---|---|---|
北海道地区 | 22,320円 | 42,999円 | 70,527円 |
東北地区 | 27,901円 | 42,585円 | 77,483円 |
関東地区 | 31,105円 | 51,909円 | 83,795円 |
中部地区 | 32,131円 | 51,065円 | 89,414円 |
近畿地区 | 36,042円 | 64,090円 | 114,279円 |
中国地区 | 28,897円 | 48,035円 | 79,344円 |
四国地区 | 30,380円 | 51,369円 | 77,528円 |
九州地区 | 27,672円 | 45,729円 | 74,880円 |
※参考:日本司法書士会連合会「司法書士の報酬と報酬アンケートについて」
全体の平均値をみると最安値の東北地区と最高値の近畿地区とでは21,505円もの差が生じています。
また、事案によっても出張料が発生したり抵当権の設定が別途発生したりなど追加で費用がかかることもあります。
このように、費用相場は地域や依頼内容で変動するため、依頼する司法書士に費用を確認しておくと良いでしょう。
不動産売却で司法書士が行う主な業務は、売却によって生じた名義変更や抵当権・借地権に関する登記などの不動産の権利に関連する登記手続きの代理です。
ここでは、司法書士が必要な理由や依頼できる業務の具体例について詳しくみていきましょう。
日本において不動産の登記申請業務については、司法書士が役目を担っています。
不動産の登記は権利関係を明確にするものであり、司法書士は人・物・意思などの確認を行いながら市民権利の保全に寄与しているといわれています。
そのため、不動産登記の専門家として業務を遂行することで経済の発展にもつながっているといえるでしょう。
このように、不動産売却において権利者が変わるタイミングでは司法書士は欠かせない存在になります。
司法書士は登記業務の専門家であり、登記関連の手続きで司法書士に依頼できない業務はありません。
不動産を売却するにあたって、司法書士に依頼できる業務は具体的に挙げると下記の通りです。
どの業務も司法書士以外でも対応は可能です。しかし、不動産登記の専門家である司法書士に依頼することで得られるメリットがあります。それぞれの業務内容について、司法書士に依頼するメリットにも触れながら詳しくみていきましょう。
不動産の売買契約が締結された後に決済が行われますが、司法書士は不動産決済に立ち会います。
不動産決済日には売主と買主とともに司法書士が立ち会い、持参した書類の不備はないか・売主や買主双方の意思が相違していないか・売買に必要な支払資金が決済できるかなどを確認したうえで資金決済の許可を行います。
確認ができない状態では司法書士が資金決済の許可を行われないため、お金を支払われないといった債務不履行の抑止につながり、安全に不動産を売却することが可能です。
不動産決済の立ち会い費用の相場は約20,000円からといわれています。具体的な費用については、依頼する司法書士にあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
司法書士に依頼できる業務として、不動産売買において必要な書面の収集も代理してもらえます。
不動産売買による登記を行う際は本人確認書類以外にも土地の権利書など必要な書面が数多く、自身で収集するとなると時間がかかるうえ、正確に必要な書面を揃えるために専門的な知識も必要となります。
司法書士に代理することで時間をかける必要がありません。また、状況によっては遠方から取り寄せが必要な書面もスムーズに手続きしてもらえるでしょう。
そして、不動産登記の専門家である司法書士であれば書面も不備なく収集が可能です。
不動産売買に関わる登記業務は司法書士の主たる業務の一つです。不動産決済の後に滞りなく不動産登記できるのは、司法書士が権利者それぞれに物や意思の確認を確実に行い、必要な書面を登記までに収集して手続きを行っているからです。
自身で登記手続きすることも可能ですが、司法書士が保有している専門的知識から第三者の立場で不動産売買が成立するかを見極めてくれることによって、安全にかつスムーズに手続きが進められます。
ここまで、司法書士に依頼できる業務について紹介しましたが、反対に依頼できない業務も存在します。司法書士に依頼できない業務についてその理由とともに紹介しましょう。
相続トラブルが発生し、交渉が必要になった場合は司法書士では対応ができません。相続トラブルの交渉には、弁護士が対応することになります。
相続が発生し、相続財産として不動産をどうするかといったケースはよくあります。しかし、相続間で揉めているなどトラブルが発生し、各相続人への交渉が必要になった場合では、司法書士の業務の範ちゅうではありません。
弁護士を通じて解決した内容に従い、移転登記などを司法書士が行うことになります。
相続により不動産の移転が行われる際に、各相続人の相続税の申告などについては司法書士は対応できません。相続税の申告は税理士が対応することになります。
相続税に関しては対象不動産だけでなく、相続財産全体に関して法定相続人がそれぞれ相続税の申告を行うことになります。
司法書士が行えるのは、相続による不動産移転登記や登記名義人住所・氏名変更などの対応です。
不動産売却において司法書士を選ぶ際には、下記のポイントをおさえておきましょう。
不動産売却について専門的な知識や経験があるかについては、確実に登記してもらうためには重要なポイントです。
司法書士を選ぶ際に、これまでどのようなケースを取り扱ってきたのかをあらかじめ確認しておくのも良いでしょう。
司法書士は不動産会社と契約しているケースがよくみられます。そのため、不動産売却において司法書士の前に、良い不動産会社を見つけることが重要です。
良い不動産会社では、不動産売却における登記の経験が豊富な司法書士がついていることが多く、不動産売却の相談から登記手続きまでを一貫して行えるメリットがあります。
では、どのような不動産会社がおすすめなのかについて詳しくみていきましょう。
不動産の売却については、実績豊富な不動産会社がおすすめです。実績が豊富な不動産会社であれば売買が活発に行われているため、売れ残りの心配も少ないでしょう。
また、登記に関してもスムーズに対応してくれる司法書士と提携している可能性が高いです。
そのため、不動産売却に関してどのくらい実績があるのかを、複数社の不動産会社で比較しながら確認してみると良いでしょう。
不動産売却するうえでは、要望を聞いてくれる不動産会社かどうかも重要になるかもしれません。
どのくらいの価格で売却したいのか、建物を活用してほしいのかなど不動産を売却するにあたって売主としてはこうしてほしいといった要望がでてくるでしょう。
売主の要望をしっかり聞き取りしてくれる不動産会社であれば信頼して不動産を売却できます。
不動産売却には、司法書士に支払う費用以外にも仲介手数料、印紙代、譲渡所得税などの費用が発生します。仲介手数料は、売買契約が成立したときに仲介事業者に支払う費用で、国土交通大臣によって上限が定められています。
印紙税は、課税文書を作成した場合に納付する税金です。売買契約で作成した契約書に、契約金額に応じた金額の印紙を貼付することで納付します。例えば1,000万円超5,000万円以下の契約金額では、20,000円の印紙貼付が必要です。
譲渡所得税は土地や建物を売却したときに発生する税金で、売却金額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算します。売却した不動産の所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得として39%の税率になります。
所有期間が5年長の場合、長期譲渡所得として20%の税率です。
また、住宅ローンを利用して購入した不動産を売却する際に、売却金額が残債よりも高額なアンダーローンの場合は、買主売主とローンの担当者と司法書士が同席してローン完済と売却を同時に成立させます。