不動産売却のノウハウ
空き家となった実家の売却は、適切な手順を踏まずに進めるとトラブルに発展するケースがあります。
空き家の実家を売却する流れや注意点を解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年12月11日
空き家となった実家の売却は多くの人にとって初めての経験であり、適切な手順を踏まずに進めると後々トラブルに発展する可能性もあります。
以下は、空き家の実家を売却する際の基本的な流れです。
それぞれ詳しく解説します。
空き家の実家を売却する際、最初に行うのは遺言書の確認です。遺言書が存在する場合、その内容に従って相続手続きを進める必要があります。遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するのかを決めます。
また、売却を検討しているなら、全ての相続人が売却に同意しているかの確認も重要です。意見の相違があると、後々トラブルの原因となり得るので、慎重に進めましょう。
遺産分割協議が完了したら、相続登記を行います。相続登記とは、不動産の所有者名義を被相続人(故人)から相続人に変更する手続きで、相続登記をしないと売却できません。
不動産の所有者でないと、売却手続きを行えないからです。また、遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割などがあります。
例えば現物分割は、遺産をそのまま相続人に分ける方法で、賃貸に出しやすいのが利点です。一方で換価分割は遺産を売却して得た現金を分割する方法で、公平性を保ちやすくなります。
空き家を売却せずに保有し続けた場合、以下のような活用方法があります。
それぞれのメリットとデメリットが以下です。
活用方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
賃貸 | ● 家賃収入を得られる ● 建物の老朽化を防ぐ |
● 賃貸管理の手間 ● 修繕・管理費用の発生 ● 入居者トラブルのリスク ● 立地によっては需要がない |
民泊 | ● 収入を得られる ● 都内や観光地の付近なら需要がある |
● 近隣トラブルのリスク ● 管理の手間と費用 ● 場所によっては現実的でない |
土地活用 | ● 賃貸経営より初期費用が少ない ● 維持管理の負担が軽減 |
● 固定資産税が高くなる場合がある ● 解体費用の負担 ● 建物利用の選択肢がなくなる |
セカンドハウス | ● 税制上の特例が受けられる ● 将来の選択肢として残せる |
● 維持管理費用の負担 ● 利用頻度が低いと無駄 |
いずれの活用方法でも、継続的な管理費や税金の負担があります。賃貸や民泊、セカンドハウスとして活用する場合は、時間が経つと劣化が進み売りにくくなります。
このように、空き家を売却せずに保有する選択肢もありますが、デメリットが多いのが実情です。
実家にまつわるエピソードについての調査でも、半数の人が「実家が空き家になったら売却する」と回答しています。
出典:【思い出いっぱいの実家が空き家になったら】5割の人が売却!?実家にまつわるエピソードについて、200名に大調査
また、相続税の申告期限から3年以内に売却しないと、相続税の取得費加算の特例のような節税の制度が適用されないので損をする可能性もあります。
実家の売却を決めたら、次は不動産会社から査定を受けましょう。査定を受ければ、実家の現在の市場価値を把握できます。
ただし空き家が長く続くなどで建物の劣化が進んでいると、査定額が低くなる可能性があるので注意してください。
実家の査定は2〜3社に依頼しましょう。1社では適正価格か判断できません。各社の対応の違いも比較できます。
査定に納得したら不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約には3種類あり、違いは以下です。
一般媒介契約 | 複数の不動産会社に依頼でき、自分でも買主を探せる。 |
---|---|
専任媒介契約 | 1社のみと契約し、売主自身も買主を探せる。 |
専属専任媒介契約 | 1社のみと契約し、売主自身は買主を探せない。 |
契約形態によって、販売活動の範囲や報告義務などが異なるので、自身の状況や希望に合わせて最適な契約を選びましょう。
媒介契約を結んだあとは、不動産会社が本格的な販売活動を開始します。
売主には、内覧時にいい印象を与えられるよう物件を清潔に保つことなどが求められます。
購入希望者が現れ条件がまとまったら、売買契約を締結します。
契約時には以下の点に注意しましょう。
契約後に売買代金の決済が完了すれば、物件の引き渡しを行います。
引き渡し時には鍵の受け渡しや所有権移転登記などが行われます。
また住宅ローンが残っていれば完済し、抵当権の抹消登記が必要です。
物件の売却により利益が出た場合、翌年の確定申告が必要になります。
また利益が出ていなくても、損失の繰越控除などの特例を利用するなら確定申告をしなければいけません。
利益が出ているのに確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティがあるので注意しましょう。
売却前の片付けは、買主にいい印象を与えるために重要です。
不要な家具や家財道具が残っていると、部屋が狭く見えたり汚れた印象を与えたりします。
査定額にも悪影響を及ぼす場合もあるので、早めに着手しましょう。
築年数が古く建物の状態が悪い場合、解体を検討する価値があります。
更地にするメリットとデメリットは以下です。
メリット | デメリット |
---|---|
● 購入希望者の幅が広がる ● 管理の負担軽減 |
● 解体費用がかかる ● 固定資産税の軽減措置がなくなる可能性がある |
解体するかは費用対効果をよく検討し、不動産会社とも相談して決めましょう。
空き家を高く売るためのコツとタイミングは以下です。
これらの要素を総合的に判断し、売却を決定しましょう。
また、市場動向は常に変化しているため、不動産会社と密に連絡を取り最適なタイミングを見極めるのも重要です。
空き家の売却は、その対応実務に長けた不動産会社に相談することで、より望ましい結果につなげることができます。取引に不慣れな会社だと機会損失をしたり想定以上の値引きをすることになるかもしれません。
公式サイトなどで仲介実績を確認し、担当者にコンタクトをとって、人となりを確認しましょう。
実家を売却するタイミングによって、手続きや税金などが大きく変わります。
相続の前と後でのメリット、デメリットを理解し最適なタイミングを選びましょう。
空き家の実家を相続後に売却するメリットとデメリットは、以下です。
メリット | デメリット |
---|---|
● 相続税に節税効果が得られる ● 親が最後まで実家に住み続けられる ● 特別控除の特例が使える |
● 相続人全員の同意が必要になる ● 維持管理の負担がかかる |
相続後の実家売却は、節税効果や特例の活用ができるメリットがある一方で、維持管理の負担や相続トラブルの可能性などのデメリットがあります。
相続する前に売却するメリットとデメリットは以下です。
メリット | デメリット |
---|---|
● 現金化により相続トラブルの防止 ● 売却資金を活用できる ● 子どもの負担が減る |
● 相続税が高くなる可能性がある ● 新たな住居を確保する必要がある |
実家の生前売却は、家族の状況や不動産の価値、将来の相続税額などを総合的に考慮して判断する必要があります。
実家の売却タイミングを決めるのは簡単ではありません。
相続前と後でそれぞれメリットとデメリットがあり、家族の状況や税金、物件の状態によって異なります。
最適なタイミングを見極めるには、信頼できる不動産会社に相談するのがおすすめです。
専門家のアドバイスを受けることで、後悔のない売却が実現できます。
実家の売却にはさまざまな費用が発生し、また特定の条件下では税制上の特例が適用される場合があります。
ここからは、売却にかかる主な費用と利用可能な特例について詳しく解説します。
売却にかかる費用は以下の通りです。
■不動産の譲渡に関する印紙税額
仲介手数料 | 不動産会社に支払う報酬。通常、売却価格の3%+6万円。 |
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抵当権抹消費用 | 住宅ローンが残っている場合、抵当権抹消手続きにかかる費用。 |
住宅ローン完済手数料 | 1千円 |
500万円を超え 1千万円以下 | 住宅ローンが残っている場合、完済時に金融機関に支払う手数料。 |
測量費用 | 境界確定が必要な場合に発生する費用。 |
解体費用 | 建物を解体して売却する場合に必要な費用。 |
インスペクション費用 | 建物の状況検査を実施するなら必要になる費用。 |
物件の状況や取引内容によって変動するため、事前に不動産会社に確認しておきましょう。
実家を売却する際には以下のような税金もかかります。
印紙税 | 売買契約書に貼付する収入印紙で、契約金額に応じて決まります。 参考:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置 |
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譲渡所得税 | 売却益に対して課される税金。 参考:土地や建物を売ったとき |
また相続時には、相続財産が一定額を超えると相続税が課税されます。
参考:相続税の税率
税金の計算は複雑なため、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
実家を売却する際に使える主な特例は以下の通りです。
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 | 相続した空き家を売却する際、一定の要件を満たせば最大3,000万円の特別控除を受けられる。 参考:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 |
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居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 | 親が存命中に売却した場合に、一定の要件を満たせば最大3,000万円の特別控除を受けられる。 参考:マイホームを売ったときの特例 |
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 | 相続した財産を譲渡した際に、相続税額の一部を取得費に加算できる。 参考:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
これらの特例を利用すれば、実家売却時の税負担を軽減できる可能性があります。
ただし特例を適用するためには、期限や条件を満たす必要があるので、不動産会社や税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを行いましょう。