不動産売却のノウハウ
「親が住んでいた家を相続した」「親が老人ホームに入るので実家が空き家になる」など、さまざまな理由で引き継いだ実家を売るべきか悩んでいる人もいるでしょう。「長年住んだ実家を自分の手で売ってしまうのは罪悪感からできない」と、頭を抱えている人もいるかもしれません。
なぜ、実家の売却で罪悪感を覚えてしまうのか、空き家となる実家をそのまま保有するリスク、実家を売る際に知っておきたい注意点を解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年12月11日
実家を売ると「後悔するのではないか」と考える人もいるでしょう。理由は親の代、またはその前から大切にしてきた家を自分の代でなくしてしまうことへの罪悪感や、幼い頃から慣れ親しんだ家を失うことに対する寂しさを感じやすいためです。
とはいえ、家も数ある「物」のひとつです。洋服やバッグ、雑貨だけでなく、家具や電化製品さえ必要なくなれば捨てるのは日常的なことでしょう。家は気軽に購入できるものではないため、日用品のように簡単に手放すのは難しいかもしれません。しかし使わないものをいつまでも持ち続けるのは、得策とはいえないでしょう。まして家はそのまま放置しておくと、自分や家族だけでなく、周囲に迷惑をかけてしまう原因にさえなり得ることは、知っておく必要があります。
愛着のある実家を手放すことは、そう簡単に決断できるものではありません。「親が大切にしていた家」となれば罪悪感が生まれるのも当然です。しかし家を保有し続けるにはさまざまなリスクがあります。ここでは、誰も住まない実家を保有し続けるリスクについて解説します。
実家を売らずにそのまま保有したとして、メンテナンスもせず放置すれば、老朽化により倒壊のリスクが高まります。もし倒壊して近隣の家や人に被害を与えてしまうと、民法717条の規定により保有者が損害賠償をしなければいけません。
そうならないためには修繕や定期的なメンテナンスが必要ですが、膨大な費用がかかります。誰も住まない家にお金をかけて修繕し、維持するのは建設的とはいえないでしょう。しかし人が住んでおらず、風の通らない家は劣化が早まります。想像より早く倒壊する可能性も否定できない点は、理解しておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「民法第七百十七条 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」
庭の草木などが生い茂り、明らかに空き家と分かるような状態になると、不法投棄や放火などの対象になりかねません。不審者が侵入して潜伏場所として利用されたり、子どもたちが面白半分で集まって、秘密基地のように使ったりすることも考えられます。
普段から住んでいない家の様子を頻繁に見に行くのは大変です。かといって放置したままにすれば、大切な実家が犯罪や事故などの現場になってしまうリスクがあるのです。
実家のメンテナンスをせずに放置していると、建物の劣化に加えて敷地内の草木が生い茂り景観を損ねることがあります。整備された住居と比べると、荒れた家屋は「怖い」「気味が悪い」などと思われやすく、近隣住民からの苦情につながる原因です。
つまり実家をメンテナンスもせず放置すれば、老朽化した建物や草木などで迷惑をかけ、近隣住民との関係性が悪化するリスクがあります。
実家を売るべきかどうかで迷っているなら、感情的な問題と現実的なリスクを比較し、状況を整理するのがおすすめです。ここでは実家を売るべきか、考えをまとめるためのポイントを解説します。
実家を維持するためには、以下のような費用がかかります。
固定資産税や都市計画税は、土地や家屋を所有している以上必要になる費用です。庭木の剪定や除草は自分でも可能ですが、会社に委託するとなれば費用がかかります。
壁や屋根、軒樋(のきどい)など、破損した部分は修繕が必要です。そもそも古い建物であれば、壊れないよう早めのメンテナンスや、建物の状態によっては大がかりなリフォームが必要になる可能性もあります。
火災や地震保険は任意ですが、普段から住んでいない以上、放火などの心配もあるので、念のために入っておくなら保険料も必要です。これらを何年も費用を捻出し続けられるのかは、よく考えておく必要があるでしょう。
上述したように、実家を維持し続けるためには家屋のメンテナンスをしたり、庭木や草などの手入れをしたりしなければいけません。家屋は窓を開けて風を通し、定期的に掃除をする必要があるでしょう。庭木や草の手入れは頻繁にしなければ、近隣住民からの苦情に直結します。
自分で定期的に通えないなら会社に一任する方法もありますが、そうなれば費用がかかります。自分で手入れができるか、または費用を捻出できるか、じっくり検討する必要があるでしょう。
実家をいきなり売るのが心情的に難しいなら、ほかの活用方法がないか検討してみましょう。たとえば賃貸に出せば、人に住んでもらえるため建物の劣化が早まるのを防げます。
定期的な家賃収入が入るので、そのお金でメンテナンスもできるでしょう。賃貸もさまざまな種類があります。個人に家として利用してもらうだけでなく、民泊経営を考えている人や、店舗として利用できる物件を探している人に貸し出すのも選択肢です。
実家をどうしても売れないなら、自分が住むという手もあります。常時住まなくても、週末だけ別荘のように使用するなどすれば、自然と手入れができ、長く維持しやすくなるでしょう。ただしいずれにしてもメンテナンスなどには少なからず費用がかかるため、資金のシミュレーションをしっかり行うことは大切です。
納得して実家を売っても、後から「やっぱり売るんじゃなかった」と後悔や罪悪感を持ってしまうことはあります。そのような事態を防ぐために、注意しておくべき点を紹介します。
実家を売るとなると、さまざまな準備や手続きが必要です。物件の相場を調べたり、売買活動を行ったり、内見の希望があれば立ち会いも必要になるでしょう。不動産会社に依頼すればこうした手間を一任できますが、任せっぱなしによるリスクもあります。
任せっぱなしにしたことで、不動産会社の担当者が積極的に動いてくれず、相場より安い価格や納得のいかない条件で売却が決まってしまう可能性があります。また、買主もなかなか決まらず、売るまでが長引く可能性も否定できません。できるだけ売却活動に関わり、密に連絡を取り売却状況を確認することが大切です。
実家を売るなら、実家があるエリアやその近郊で実績が豊富な不動産会社を選びましょう。地域の特性や相場を考慮した査定や、土地勘を生かした営業活動をしてくれる可能性があるため、納得のいく売却につながるはずです。
積み上げてきた実績があれば、売却に関する疑問や不安にも答えてもらいやすいでしょう。大切な実家を納得のいく形で売るためにも、実績のある不動産会社を選ぶことが大切です。