実家の売却は買取が最適？
買取がおすすめのケースと注意点

実家の売却は買取と仲介どちらを選ぶべきか

一般的に実家を売却する方法には、

• 不動産会社による買取
• 仲介による一般売却

という2つの方法があります。どちらも実家を売却する手段という点では同じです。違いは契約の相手方である「買主」が異なることです。

買取とは、不動産会社が直接その家を買い取る方法です。この場合の買主は不動産会社になります。仲介とは、不動産会社に依頼するなどしてその家がほしい人に売却する方法です。この場合の買主は購入希望の個人になり、不動産会社は購入希望者を探して取引を仲介する立場になります。

どちらを選んだほうが得なのかは状況によって異なるので、それぞれのメリット・デメリットを知っておきましょう。

実家を売却するメリット

実家を相続した時の選択肢として「売却する」か「売らない」のどちらかになると思います。しかし、実家に住むなどのはっきりした目的がない場合は売却することをおすすめします。実家を売却するメリットは以下の通りです。

1. 維持費を削減できる
2. 管理の手間がかからない
3. 「特定空き家」に指定されるリスクを回避できる
4. 現金化できる

維持費を削減できる

誰も住んでいなくても、相続人は固定資産税を払い続ける必要があります。これがじわじわと家計を圧迫してしまいます。

また、維持管理をするにもそれなりのコストがかかります（例：遠方から通う交通費や空き家管理サービスを利用した場合はその費用。修繕が必要な場合は修繕費など）。売却することでこれらの負担が一切かからなくなります。

管理の手間がかからない

空き家管理サービスなどを利用しない場合は、それなりの手間と時間がかかります。家は人が住まない状態で放置すると急速に劣化するので、少なくとも1カ月に一度は実家に出向いて換気を行い、こもっている湿気を逃がさないといけません。

また、建物の状態の確認、庭木が伸びて近隣に迷惑をかけていないか、害虫が発生していないかなどをチェックし、必要な対策を行います。最後に家中の水道管に水を通す作業が必要です。売却することで、これらのわずらわしい負担から解放されます。

「特定空き家」に指定されるリスクを回避できる

現在実家が建っている土地は、住宅用地として固定資産税の軽減措置が適用されています。しかし、市区町村から適切な管理が行われていない「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税の軽減措置が受けられなくなったり罰則が科されたりする可能性があります。売却することでこうしたリスクを防げます。

参考：空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を！ | 政府広報オンライン

現金化できる

実家を売却することで、まとまった一時所得を得られます。相続時は何かと物入りな時期でもあります。現金化することで相続税の支払いにも充てられますし、転居が必要なら引っ越し費用にもできるでしょう。

実家を買取で売却したほうがいい人

実家の売却で買取が適しているのは次のケースです。

• 早急な現金化が必要な場合
  相続税の支払いやその他の事情があり、急ぎで現金が必要な場合は買取が向いています。
• 買い手が見つかりにくい物件の場合
  立地条件や築年数などの問題で仲介では買い手が見つかりにくい場合、買取なら取引がスムーズに進む可能性が高いです。

実家を買取で売却するメリット

買取を選ぶメリットは以下の通りです。

• スピーディーな売却が可能
  買取は不動産会社が直接買い取るため、仲介よりもはるかに短期間で売却が完了します。
• 現状のままで売却できる
  家の中に修繕が必要な箇所があっても現状のままで買い取ってもらえるので、手間やコストがかかりません。

実家を買取で売却するデメリット

いっぽう、買取にはデメリットもあります。

• 売却価格が低くなる
  買取価格は市場価格で売れた場合よりも安くなります。不動産会社は市場価格より低い金額で買取り、費用をかけて必要なリフォームまたは建替えを行い、市場価格で販売するためです。したがって、高く売ることを優先したい人には不向きです。
• 売却金額を自由に設定できない
  不動産会社からの金額の提示に基づいて売るか売らないかを判断するため、自身で金額を決めることはできません。
• 選べる会社が限られる
  すべての不動産会社が買取を行っているわけではありません。買取に対応している会社の数は少ないので、実家のエリアによっては見つけるのが大変なことがあります。
• 買取を断られることもある
  どんな物件でも買い取ってもらえるわけではありません。転売できる見込みが薄いと判断された場合は、断られる可能性もあります。

実家を仲介で売却したほうがいい人

仲介が適しているのは以下のケースです。

なるべく高く売りたい

買取では下取り価格になってしまうところですが、仲介なら相場価格での売却が可能です。

時間に余裕がある

売却を急ぐ特別な事情がないなら、仲介で買い手を探すほうが高値で売却できます。

実家を仲介で売却するメリット

仲介を選ぶメリットは以下の通りです。

高く売れる

不動産会社が広範囲で営業活動を行うため、多くの購入希望者に物件情報が届きます。そのため、より高値で取引できる可能性が高いです。

価格を自分で設定できる

不動産会社が算出した査定金額と希望金額を照らし合わせて、取引金額を自身で納得して決められます。「まずは相場より少し高い金額でチャレンジしよう」「早めに売りたいから、少しお得感のある金額にしよう」など、柔軟な設定が可能です。

住みながら売却を進められる

売却するまでの期間に余裕があるため、住み替えを考えている場合は売却と物件探しを同時に進められます。

実家を仲介で売却するデメリット

仲介のデメリットは以下の通りです。

売却までに時間がかかる

購入希望者が現れるのを待つ時間のほか、購入希望者が住宅ローンを利用する場合は審査にかかる時間も必要です。売却完了までの一般的な目安は3カ月〜6カ月です。

一刻でも早く売りたい人には仲介は不向きです。

しかし仲介のほうが買取より高く売れるため、特別な事情がなければ、ほとんどの人は仲介を選びます。

販売期間が未確定

仲介の場合、不動産会社の仕事は購入希望者を探してくれることです。したがって購入希望者が現れないと売却はできず、いつ売れるかは未確定です。

確実に売却するためには、プロである不動産会社と相談して値下げすべき時は値下げしてみると、すんなり決まることがあります。

また、仲介と買取をミックスした「買取保証」という方法もあります。買取保証とは、期間を決めて仲介での売却にチャレンジし、期間内に売れなかった場合は買取で売却する方法です。

まずは仲介にチャレンジして高額売却を狙い、結果として不調に終わったとしても買取で確実に売却が完了します。

仲介手数料が必要

契約を成立させるまでの一連の仕事の対価として、不動産会社に手数料を払う必要があります。売却価格が1,000万円だった場合の仲介手数料は、

1,000万円×3.3%+6万6,000円=39万6,000円

となります（消費税率10％の場合）。しかし、買取と仲介では手元に残る金額が大きく変わるため、手数料を考慮しても仲介で売ったほうが得になる場合が多いです。

実家の買取や仲介で注意するべきポイントと対策

次に、実家を売却する時に注意するべきポイントを解説します。後悔することのないように確認しておきましょう。

実家の売却で後悔するケース

実家の売却で後悔しやすいケースは以下の通りです。

不動産会社を適当に選んだ

不動産会社を「知名度の高い会社だから」「一番近所にある会社だから」といった理由で選んだ結果、満足のいく取引にならないケースがあります。

不動産会社によって専門性や経験に違いが出ます。知識の乏しい不動産会社に依頼すると、買い手を見つけるのに時間がかかってしまうこともあり得ます。

売却の流れを把握していなかった

「必要な書類が見つからずにあわてた」「税金や費用がかかることを知らなかった」など、物事がスムーズに進まないために疲れはててしまうケースがあります。

実家の手入れを怠り、契約に悪影響

メンテナンスをおろそかにしていたことで物件の価値が下がってしまうほか、内見時の印象が悪くなり成約に結びつかないケースが見られます。

実家の売却での後悔を防ぐコツ

実家の売却で後悔しないためのコツを知っておきましょう。

売却の流れを把握しておく

売却はどのように進んでいくのか、流れを把握しておきましょう。大体のスケジュールがわかっているだけでも気持ちが楽になります。

相続で実家を売却する場合は、買取・仲介にかかわらず先に相続手続きをすませておく必要があります。

相続手続きの流れは以下の通りです。

1. 遺言書の有無を確認する
   遺言書があれば、相続は原則として遺言書の内容に沿って行います。
2. 相続人を確定する
   財産を相続する権利のある人を確定します。
3. 遺産分割協議をする
   相続人同士で話し合い、遺産をどう分割するかを決定します。
4. 相続登記をする
   相続登記は2024年4月1日より義務化されているので、忘れずに行いましょう。
   また、登記手続きの際には登録免許税がかかります（固定資産税の評価額×0.4%）。
5. 相続税を申告・納付する
   期限内（相続の開始があった日の翌日から10カ月以内）に申告・納付を行います。ただし、遺産にかかわる基礎控除額は大きいため、実際には課税されないことも多いです。遺産にかかわる基礎控除額は、
   

   3,000万円+600万円×法定相続人の数

   
   で計算できます。つまり、相続人が自身と母親、妹の計3人の場合は、
   

   3,000万円+600万円×3＝4,800万円

   
   だから、相続財産の合計が4,800万円以下の場合は納付税額が0円となります。相続の手続きが済んだのち、売却を行います。

売却の流れは以下の通りです。

買取の場合	仲介の場合
1.必要な書類を準備しておく	1.必要な書類を準備しておく
2.不動産会社に査定を依頼する	2.不動産会社に査定を依頼する
3.不動産会社が物件を調査し、査定金額を出す	3.不動産会社が物件を調査し、査定金額を出す
4.不動産会社との間で売買契約を締結する	4.不動産会社と媒介契約を締結する
5.決済・引渡しを行う	5.買主の募集が始まる
	6.内見希望者の対応をする
	7.価格交渉が入った場合は返答する
	8.買主との間で売買契約を締結する
	9.決済・引渡しを行う

なお、売却に必要な書類には以下のものが挙げられます。

登記済権利証・建築確認済証・検査済証・実印と印鑑証明書・固定資産税都市計画税の納税通知書など

これらを早めに準備しておくと、売却がスムーズに進むでしょう。

実家の売却を託す不動産会社選びのコツ

売却を託すべき不動産会社の選び方について解説します。

【買取・仲介共通】

1. 実家のあるエリアでの取引実績がある会社
   実家のあるエリアでの実績があることで、地域の実情に即した買取や仲介活動を期待できます。
2. 査定価格の根拠を示してくれる
   誠実な不動産会社は査定額の根拠を示してくれます。ほかの不動産会社の査定額より多少安い場合でも、根拠が明確なら期待してよいでしょう。
3. 担当者の人柄
   希望や条件をしっかり聞き取ってくれない担当者では、満足のいく取引が実現しにくいです。よく話を聞いてくれ、質問にていねいに返答してくれる担当者がいる会社を選びましょう。
4. 念のため行政処分履歴を確認
   信頼できる会社を選ぶために、過去に不正なことをしていないかを確認すると安心です。国土交通省のサイトから確認できます。

不動産の売買・管理 宅地建物取引業者 - 国土交通省　ネガティブ情報等検索サイト

【買取の場合】

1. 買取価格が高い会社
   会社によっては100万単位で提示価格が違うこともあります。面倒ですが、複数社から見積もりを取ってください。
2. 残置物があっても、更地にしなくても買い取る会社
   親が長年居住していた実家は老朽化が進んでいたり、物が多くて後片付けに相当な労力がかかったりすることが予想されます。

家がかなり老朽化していてもそのまま買取ってもらえる会社、残置物の処理までまかせられる会社なら、売却のハードルがグッと下がります。

【仲介の場合】

1. 早く好条件で売るためのノウハウ・サービスがある
   水回りのハウスクリーニングサービスや、広告で使う写真をプロのカメラマンが撮影するサービスを提供している会社もあります。こうした会社に依頼すれば好条件で売れやすくなるでしょう。
2. 一定期間内での売却活動を希望する場合、買取保証を利用できる
   仲介で売却する場合「いつまでかかるのだろう？」という、売れない不安がつきまといます。買取保証のサービスを提供している会社なら安心して依頼できます。
3. 査定金額に根拠があり、信用できる
   希望価格を安くしすぎると損をしますし、高すぎても周辺の相場と合っていないため売れ残ってしまい、結局損をします。その地域の実情に即した合理的な金額が、結果としてよい取引につながります。

実家を売却するなら早期に検討を開始したほうがいい

実家を売却すると決めたら、なるべく早く行動開始しましょう。なぜなら、時間が経てば経つほど売却の条件が悪くなるからです。

親の死後に実家の処分をしたくても売れない理由

時間が経つと売れにくくなる理由は次の2つです。

築古すぎると改修費用が高額になるため

築古すぎる建物は、当然買い手が見つかりにくいです。建物の改修に莫大な費用がかかってしまうなら、買取会社も転売で利益を出すことができないため、買取も断られることが予想されます。一日でも早く不動産のプロに相談して、適切な売り出し価格を設定するなどの対策が必要です。

放置すると資産価値がさらに下がる

人が住まなくなった家は劣化が早く、資産価値がどんどん下落します。具体的には、換気しない状態が続くために天井・床・壁が腐食してきます。害虫や害獣も繁殖します。雨漏りやシロアリ被害なども放置されるため、家が倒壊して第三者にケガをさせる恐れもあります。

相続や築年数などの問題で実家の売却は時間がかかる

実家の売却は通常の売却より時間がかかるものです。築年数などの条件の問題もありますし、親族の中で足並みがそろわないこともよくあるからです。しかし、そのままの状態が長引くと固定資産税などの費用だけがかさみ続けてしまいます。売却する気持ちがあれば、早めに行動に移しましょう。