不動産売却のノウハウ
不動産を売却するとき、残置物が原因でトラブルに発展するケースが多いことをご存じですか。「残置物」とは、売却時に不動産内に残された家具や家電、不要品などのことです。これらが原因で買主との間に誤解が生じたり、追加費用を請求されたりする事態に発展することがあります。
不動産売却時に残置物が引き起こすトラブル事例を紹介するとともに、円満に売却を進めるための具体的な対策を解説します。「残置物の処理をどうすればいい?」「トラブルを未然に防ぐには?」と悩む方は、参考にしてください。
不動産売却 費用・税金2025年4月18日
残置物とは、売主(元住人)が退去時に勝手に置いていった家具や家電、日用品のことです。冷蔵庫や洗濯機、タンスやソファなど処分しきれずに、さまざまなものが残されることがあります。
売主は基本的に残置物を処分してから引き渡さなければなりませんが、賃貸に出していた不動産の場合は、元住人の所有物なので勝手に処分できないことがあります。まずは元住人に連絡を取り、処分して良いか確認しなければならないのです。
さらに、元住人に連絡が取れない場合は、法的手続きを踏む必要があります。
売却を円満に進めるために、残置物の対応は慎重に行うことが大切です。また、不動産売買では購入希望者が内覧に来ますが、残置物が多いと生活感があってごちゃごちゃとして見え、購入を見送るケースがよくあります。
残置物は買主とのトラブルのもとになることも多いため、できる限り処分してから売却するのが理想的です。
まずは、残置物にはどのようなものがあるのか、どのように対応すべきなのか、確認していきましょう。
付帯設備とは、家に直接取り付けられている設備のことです。たとえば、カーテンレールや照明器具、エアコンなどがこれにあたります。
付帯設備は、そのまま残しても問題ないことがほとんどです。むしろ、買主にとっては、照明器具などの付帯設備がそのまま残っているほうが便利です。
特にエアコンは新たに取り付けるには高価で、取り付け工事を依頼しなければならないので、そのまま残すことで売却価格が少し高くなることもあります。
ただし、付帯設備が古すぎたり故障したりしているものは、逆に不動産の価値を下げるので注意が必要です。
洗濯機や冷蔵庫、テレビなどの家電が残置物として物件に残されている場合は、家電の状態によって売却への影響が異なります。比較的新しくきれいで状態の良い家電なら、「家具家電付き」として、売却に有利になることもあります。
特に単身者向けのアパートや、賃貸用の不動産では「家具家電付き」がプラスと捉えられることが多いでしょう。
しかし、古い家電や故障している家電が残されている場合は、むしろ処分費用を加味して、売却価格が低くなってしまうこともあります。
ソファやタンス、ダイニングテーブルなどの大型家具も、家電と同じく家具の品質によって対応が異なります。高級感があり状態が良く、部屋の雰囲気に合っている家具なら、売却価格がプラスになることもあります。
特に、部屋に合わせてつくられたオーダーメイドの家具は、不動産の購入者にとってもポジティブに捉えられる可能性があります。傷みや汚れがひどい家具は、物件全体のイメージも悪くなるため、処分してから売却するほうが良いでしょう。
日用品や生活雑貨は、基本的に残さないほうが良い残置物です。日用品とは食器や調理器具、タオルなど、日常的に使うアイテムです。生活雑貨は主に洗剤や石けん、文房具などの消耗品を指します。
残置物として売主が使っていた日用品や消耗品などを置いたままにしていると、雑多で生活感が感じられてマイナスなイメージになってしまいます。
新築の不動産やモデルルームの場合は、食器や調理器具などの日用品が華やかな雰囲気を演出することもありますが、かなりまれなケースです。
不動産の売却時に、残置物が原因でトラブルになってしまうことはよくあります。個別に取り決めをしない限り、残置物はあくまで売主に所有権があります。
残置物の所有権をめぐって起きやすいトラブルを3つ紹介します。
不動産の売買が成立しても、物件の中に残された売主の私物の所有権が、自動的に買主に移るわけではありません。
残置物がある状態で不動産を売買するときは、売主と買主の間で残置物について「売主は残置物の所有権を破棄する」など、取り決めをしておかなければならないのです。
取り決めをしていない場合は、残置物の所有権が売主にあるため、許可なく処分すると損害賠償請求をされる可能性があります。
特に競売や任意売却の場合には、残置物を処分したり運び出したりする費用が捻出できず、残置物が残ったまま売買されることが多いため注意が必要です。
すでに売買契約を済ませ、売主に残置物の所有権が移っている場合も、残置物の処分は注意して行わなければなりません。
たとえば、買主が残置物の処分のために不用品回収業者に依頼し、残置物を引き取ってもらうことがあります。不用品回収業者に、売主が後日引き取りに来る予定だったもの以外の引き取りを依頼していましたが、誤って持ち帰り処分してしまった、などのトラブルがよく起こるのです。
残置物が家に大量にある場合は、必要なものと不要なものを分けておくことが大変ですが、荷物をわかりやすく区別し、後日売主が引き取りに来るものは写真を撮って残しておくなどの対応が必要です。
エアコンや照明器具などの付帯設備についても、売主と買主の認識にずれが生じやすい残置物です。特にエアコンは、買主にとっても残しておいてほしい、と要望されることが多い設備です。
しかし、内覧時には設置されていたエアコンが引き渡し時には取り外されていたり、売主が好意で残したエアコンがすぐに故障してしまったりするなど、トラブルのもとになる可能性もあります。
エアコンなどの付帯設備について、年式や状態を買主と一緒に確認し、故障しても責任は負わないことを契約書に書いておきましょう。
取り決めをしていない場合、売買契約後に買主から「すぐに故障したから修理費用を支払ってほしい」と言われてしまうなど、「契約不適合責任」を問われる可能性があります。
契約不適合責任とは、あらかじめ決めた取引の内容に対して、契約内容を満たさない状態であったときに、売主側が不足分を負担しなければならない責任のことです。
売りたい不動産が任意売却や競売物件の場合や、相続で取得したがなかなか片付けできない場合など、やむをえず残置物が残ったまま売却するケースもあります。
ここでは、残置物がある不動産を円満に売却するコツを5つ紹介します。
やはり残置物は少ないほうが、購入希望者が内覧に来たときの印象は良くなります。残置物を処分する方法には、次のようなものがあります。
かけられる手間や時間にもよりますが、粗大ゴミとして自分で処分したり、リサイクルショップで引き取ってもらったりすることが、もっとも費用をかけずに残置物を処分できる方法です。
一般的に不用品回収業者は、2トントラック1台で3万円前後の費用がかかります。
残置物を残したまま売買する場合は、残置物の所有権も一緒に買主に移ることや、売主がいつまでにどの私物を引き取りに来るのか、などを明確にしておきましょう。
また、エアコンなどの付帯設備や冷蔵庫、洗濯機などの家電をそのまま引き渡すときは、事前に動作確認を売主と買主が立ち会って行い、契約書に記載しておくことが大切です。
たとえば、エアコンの電源を入れて冷房・暖房両方の動作を確認し、リモコンも正常に機能しているか確認しましょう。また、買主には「エアコンは購入後8年経過しているので、今後故障の可能性がある」など、状態を正直に説明しておくと良いでしょう。
残置物については売主と買主がお互いに理解して、納得していることが大切です。残置物の所有権が誰にあるのか、買主が処分しても良いのか、売主はどこまで残置物に責任を持つのか、などを契約書に具体的に記載します。
「現状渡し」や「買主の判断で処分可能」などの言葉は、お互いの認識が曖昧になります。残置物についての取り決めは曖昧にせず、契約書に次のようにはっきりと記載しましょう。
以上のように具体的に明記しておけば、売主は残置物に対する責任の範囲を決められ、買主はどこまで処分して良いかを判断できるので、トラブルを避けられます。
通常の不動産売買では、不動産会社が購入希望者を見つけ、仲介して不動産売買を行います。しかし、不動産「買取」では、いったん不動産会社が売主から不動産を買い取ります。
不動産会社はこれくらいの金額なら売れるだろう、と想定される金額から残置物の処分費用を差し引いた金額で売主から不動産を買い取ります。不動産会社が不動産を購入後に、不用品回収業者に依頼し、残置物がない状態で購入希望者を見つけることがほとんどです。
残置物の処分を不動産会社に一任でき、購入希望者がまだいない状態でもひとまず売却を進められるので、残置物がある状態でもトラブルなく不動産を売却できます。
一方で、売却価格が低めになる傾向があります。
残置物がある状態で不動産を売却するときは、不動産会社にまずは相談してみましょう。相談の際には、次のように質問してみてください。
不動産会社は売買経験が豊富なため、トラブルになりやすい事例や、残置物があるときの売買への影響などよく知ったうえで相談にのってくれます。
また、不動産買取についての提案もしてくれる可能性があります。そのためには、複数の不動産会社に相談し、信頼できる担当者を見つけることが大切です。