不動産売却のノウハウ
親や祖父母の老人ホーム入居が決まった際、家族などが住む予定がない場合は不動産を売却したほうがいいでしょう。不動産を売却するメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2025年4月18日
「老人ホームに入居するなら不動産は売却したほうがいいの?」と悩む人は多いと思います。売るか残すか悩むと思いますが、誰も住む予定がなければ売却したほうがよいでしょう。
老人ホーム入居時に不動産を売却したほうがよい理由は以下の4つです。
不動産を売却すれば現金が得られるため、老人ホームの高額な入居一時金や月々の費用に充てることができます。特に年金収入だけで入居費用をまかなうのが難しい場合は、大きな助けになります。
親や祖父母の「貯金が底をついてしまったらどうしよう」という不安を減らしてあげられるのではないでしょうか。
不動産を売却すると所得税が発生しますが「居住用財産の3,000万円の特別控除」を活用することで、大幅に節税が可能です。この控除は、売却益が3,000万円以下であれば所得税がかからなくなる仕組みです。
住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却が完了していることが要件の1つです。したがって、親や祖父母が老人ホームに入居してから時間が経ってしまうと特例は適用されません。
税金面からいえば、早く売却したほうが有利です。
「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」により、空き家の維持管理を怠ったことで倒壊の危険や衛生上の問題があると認定され勧告を受けると、固定資産税が現在の6倍に跳ね上がります。
最悪の場合は行政から強制的に建て壊され、その費用を負担することになります。
費用の問題だけではなく、空き家を放置すると災害による損傷・事故・環境悪化の原因になり、地域の迷惑になってしまいます。売却することで、こうしたリスクや精神的負担を取り除くことができます。
不動産を売らない限り、所有者には固定資産税や都市計画税が課され続けます。しかし、売却することでかからなくなります。老人ホームに入居しながら税金を払い続けるのは大きな負担になるので、固定資産税のことを忘れていないか確認してみてください。
不動産を売却することで生じるデメリットも把握しておきましょう。
親や祖父母の気持ちが老人ホームへの入居に後ろ向きの場合は、不動産をすぐに売却しないほうが安心です。うまくなじめず退去することになれば、家がないと帰る場所がありません。生活に慣れる様子が見られるまでは実家を保持しておきましょう。
また、家を売らない選択肢として「リバースモーゲージ」を利用する方法もあります。リバースモーゲージとは、不動産を担保にして住み続けながら生活資金の融資を受ける仕組みのことです。家を手放さずに生活資金を確保できるため、老人ホームから戻ってくる可能性が高い場合に適しています。
借入金の返済は、親や祖父母が亡くなったときに不動産を売却して清算されますし、生存中に繰上げ返済することも可能です。
参考:国土交通省③住みながら生前などに売却する仕組み(リースバック・リバースモーゲージ)
売却時に親や祖父母が認知症などで「意思能力がない」と判断されると、不動産取引が行えない可能性があります。なぜなら民法の規定により、認知症などで本人に意思能力がなかった場合の契約は無効とされているからです。
後から意思能力がないことを理由に契約を白紙撤回されてしまう可能性があるため、買主側からすると契約するのをためらってしまうのです。
このような場合、法定後見制度を活用することで売却手続きを進めることが可能です。法定後見制度とは、後見人に選ばれた人が本人を代理して契約を行える制度です。家庭裁判所に成年後見制度の申し立てを行い、自身が代理人として取引することで確実に取引ができます。
参考:厚生労働省法定後見制度とは(手続の流れ、費用) | 成年後見はやわかり
立地にもよりますが、築年数が経っている家は想像よりずっと低い価格になることがあります。価格を少しでも上げるために、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
不動産を売却して収入を得たときは、譲渡所得として所得税が発生します。しかし、マイホームの売却なら税制上の優遇措置があるため譲渡所得を大幅に減らすことができます。特例を適用することで、譲渡所得が3,000万円以下の場合の所得税は発生しません。
また、譲渡所得が3,000万円を超えた部分についても優遇措置があり、税額を通常よりも低い税率で計算することができます。
ここでは、自宅を売却するときに活用できる税制の優遇措置を紹介します。
親(祖父母)がマイホームを売却して収入を得たときは、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
課税される譲渡所得=売却益-3,000万円
となるため、売却益が3,000万円以下なら所得税が課税されなくなります。主な適用要件は以下の通りです。
マイホームを売却したときに通常20.315%の税率がかかるところ、6,000万円以下の部分については14.21%で税額を計算できる特例です。つまり、通常より税率が6.105%も低くなります。
居住用財産の3,000万円の特別控除と併用可能なので、3,000万円引いても控除しきれなかったときは忘れずに使ってください。主な適用要件は以下の通りです。
参考:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
確実に特例の適用を受けるために、税理士や税理士と提携している不動産会社と連携するのがおすすめです。
不動産の売却は、家族にとって大きな決断です。専門的な知識も必要になるため、自分たちだけで悩まずに不動産会社に相談したほうがよいでしょう。不動産会社の選び方について具体的に解説します。
空き家相談士や税理士と提携している不動産会社をおすすめします。空き家相談士は空き家の活用・管理・売却など、問題解決のためのスペシャリストです。老人ホームに入居するときの不動産の取り扱いについて、事例をまじえた適切なアドバイスを期待できます。
不動産会社を選ぶときは、以下のポイントをチェックして自分たちに合う会社を見極めてください。
実績は、不動産会社選びにおいて最も重要です。トータルの売却成約実績も大事ですが、実家エリアでの仲介実績をよく確認しましょう。実家と同エリアでの実績が豊富なら、これまでの経験を活かして地域の実情に合った最適なプランを提案してくれる可能性が高いです。
担当者がこちらの要望をしっかり聞いて、要望を反映した対応をしてくれるかどうかも大切です。初回相談のときに、親身になって話を聞いてくれるかどうかを確認しましょう。提案内容がわかりやすいか、こちらの疑問に対して丁寧に説明してくれるかも判断材料になります。
信頼に足る会社であることは、親(祖父母)の大切な不動産を預けるための大前提です。不動産会社の信頼性を確認するため、国土交通省のサイトで行政処分履歴を調べることをおすすめします。履歴は直近5年間の情報が掲載されており、月に1回程度更新されています。詳しくはこちらのサイトをご覧ください。