不動産売却のノウハウ
不動産の売却で多いトラブルには不動産会社や買主に問題があるケース、売主に問題があるケースが存在します。
不動産売却時によく起こるトラブルとその回避策、トラブルが発生したときの相談先について詳しく解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2025年4月18日
不動産の売却で起こりやすいトラブルは、次の3つのケースに分けられます。
1つずつ解説していきます。
不動産会社との間でよく起きるトラブル事例は以下のとおりです。
不動産を売却しようとするとき、一般的には不動産会社と「(専属)専任媒介契約」を結んで仲介を依頼します。
依頼を受けた不動産会社は、契約を成立させるために様々なルートから見込み客を探すものですが「熱心にやってくれる様子が見られない」「不自然なほど進捗(しんちょく)がない」といった場合、売主と買主の両方から仲介手数料を得ようとして物件情報を外部に出していない可能性があります。
物件を見たほかの不動産会社が買主を紹介して契約した場合、依頼された不動産会社は仲介手数料を売主からしか得られません。しかし、自社で買主を見つけてきた場合は、仲介手数料を売主と買主から得られるのです。
このトラブルを解決するためには、「レインズ」とよばれる不動産会社間の情報ネットワークシステムに物件を登録しているかどうか、状況を確認することが有効です。専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合、売却物件のレインズへの登録が必須義務だからです。
登録したことを証明する書面をまだ受け取っていない場合は請求しましょう(書面を売主に渡すことも不動産会社に義務づけられています)。登録書面を受け取っている場合、書面にログイン用のIDとパスワードが記載されていますので、ログインして適切に公開されているかどうか確認してください。
書面を請求しても応じてくれなかったり、レインズに登録はあっても「申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」などと虚偽の記載をしていたりする場合は、媒介契約の更新はしないほうが賢明です。
参考:国土交通省|PDF宅地や建物の(専属)専任媒介契約を締結したらレインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう
仲介手数料は不動産会社の仲介により売買契約が成立したときに、不動産会社に支払う報酬です。
仲介手数料の上限額は法律で定められており、不動産会社がこれ以上の金額を要求したり売主から依頼していない「広告費」「コンサルタント費」などを別途請求したりする行為は法律違反にあたります。
仲介手数料に関するトラブルを予防するためには、媒介契約を結ぶ前に仲介手数料についての説明を受けることが重要です。仲介手数料の上限額を知った上で金額や支払い時期について説明を受け、納得してから媒介契約を結びましょう。
次に、買主との間で起こりやすいトラブル事例を解説します。
買主側が契約後しばらくして「もっとよい物件が見つかった」「親族の反対にあった」などの理由で契約解除を申し出てきた場合は、契約時に預かった手付金を没収します。
買主の自己都合での契約解除であることから手付金を返金しないのは当たり前なのですが、買主側の理解不足からトラブルが起きることがあります。
手付金に関するトラブルを防ぐには、重要事項説明書と売買契約書の手付金についての記載に不備がないようにしておくことです。
最終的には契約書面に書かれているとおりの結果になるので、売主側の落ち度を指摘されることがないように契約書に記載ミスがないかどうかは確認しておきましょう。
住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンを受けられなかった場合に売買契約の解除を認める特約のことです。
買主が金融機関から住宅ローンの融資を受けられなかった場合は契約が白紙に戻るため、受け取り済みの手付金も返金する必要があります。
しかし、住宅ローン特約の条件に当てはまっていない場合は契約を白紙解除する義務はありません。
住宅ローン特約に関するトラブルを防ぐには、言葉の解釈違いによる認識のずれが起きないように条件を「具体的に・はっきり」書いておくことです。
契約書に
などの条件が明記されていることを確認しましょう。
売主自身の認識不足が原因でトラブルが起きることもあります。
よくある事例は以下のとおりです。
物件の引渡しが済んだ後で「水道からお湯が出ないときがあるので、給湯器を修理してほしい」といった連絡が来ることがあります。
売主は買主に契約の内容に適合したものを引き渡す義務があるため、不具合があることを買主に伝えていなかった場合は売主の責任で修理をしなくてはなりません(契約不適合責任と言います)。
もし修理・交換に応じなければ、代金の減額請求や損害賠償請求を受けてしまいます。
こうしたトラブルを防ぐためには、契約書や契約書の付属書類(「設備表」「告知書」「物件状況確認書」など)に不具合の内容を具体的に記載しておきましょう。
不具合の事実を伝えた上で契約すれば、その部分の契約不適合責任を問われなくなります。給湯器の例で言うと「給湯器の温度が不安定です」「給湯器の不具合について売主は責任を負いません」と明記しておけば、契約不適合にはあたりません。
契約書に記載漏れが起きないよう、売却する土地・建物について知っていることはすべて不動産会社に伝えましょう。
また、契約不適合責任を負う期間を特約で定めることも可能です。特約で契約不適合責任を負う期間を3カ月と定めて契約した場合は、3カ月を超えると売主の責任は免除されます。
ただし、売主が不具合の事実を知っていながら告げなかった場合は免責にはならないので注意してください。
参考:「不動産取引の手引き」引渡し後に不具合・欠陥が… | 東京都住宅政策本部
売却した建物に雨漏りなどが起きた場合は、住宅としての品質を満たしていない建物を引き渡したことになるため「契約不適合責任」が生じます。
たとえ売主がその事実を知らなかったとしても、責任を免れることはできません。売主の費用で修理をしなければならないのはもちろん、応じなければ損害賠償請求や契約の解除にまで発展することもあります。
このトラブルを防ぐためには、事前に建物状況調査(インスペクション)を実施して隠れた不具合がないか確認することが重要です。
さらに既存住宅売買瑕疵保険に加入することで、売却後に欠陥が発見されたときの補修費用負担をカバーできます。
売却後に不具合が見つかると大きなトラブルに発展しやすく、精神的負担もかかります。スムーズな売却のために、建物状況の調査と既存住宅売買瑕疵保険の加入を検討してください。
参考:国土交通省|建物状況調査(インスペクション)活用の手引き
国土交通省による不動産適正取引推進機構 紛争事例データベースでは、これまでに発生した主な相談事例を確認することができます。
「不動産売却時には、実際にどんなトラブルが起きているのか?」「自分のトラブルと似た事例の結末がどうなったのか知りたい」というときに活用できます。
トラブル事例を項目ごとに整理しているため、求める情報を見つけやすいのが特徴です。
使い方は以下のとおりです。
1. 「トラブル事例項目」のプルダウンメニューから、見たい項目を選択する
2. 「検索」ボタンを押すと、事例の一覧が出てくる
3. 気になる事例をクリックすると、詳細が確認できる
不動産売却でトラブルになってしまったときの相談先について解説します。
まずは、仲介をしてくれた不動産会社へ連絡しましょう。信頼できる会社であれば、買主や買主側の不動産会社と話をしてくれます。
不動産会社の動きが悪い場合は、その不動産会社が所属する団体に相談します。(例:ハトのマークの宅建協会・うさぎのマークの全日本不動産協会など)。
その他、主な相談先は以下のとおりです。
相談先の名称 | 特徴 | 公式サイト |
---|---|---|
仲介を担当した不動産会社 | 取引の経緯を把握している | |
不動産会社の本社問い合わせ窓口 | 全国企業の場合、担当者に不信感がある場合は本社窓口に相談 | |
不動産会社が所属する団体 | 地元企業の場合は所属団体に相談 | |
消費生活センター・国民生活センター | 気軽に相談しやすい | 全国の消費生活センター等_国民生活センター |
法テラス(日本司法支援センター) | 悩みに応じた相談窓口を紹介してくれる | 相談窓口・法制度 | 法テラス |
不動産流通支援センター | 不動産取引全般に関する電話相談可能 | 不動産相談 | 公益財団法人不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター) |
都道府県庁の不動産相談窓口 | 主に不動産会社とのトラブルを相談 | 建設産業・不動産業:都道府県に関する窓口 - 国土交通省 |
不動産適正取引推進機構 | 都道府県や消費生活センターでは解決困難なときに利用 | 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 特定紛争処理事業 |
都道府県の弁護士会 |
トラブル内容が複雑なら弁護士に相談 裁判によらない柔軟な解決を探る方法(ADR)もある |
不動産の売却トラブルを避けるための注意点を解説します。
以下の注意点を押さえておけば、多くのトラブルを未然に防ぐことが可能です。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
不動産売却でトラブルが起きた場合は、契約書に記載されたことをもとに解決が図られます。
買主と契約書を交わす前に契約書を十分読み込み、不明点があれば不動産会社に質問して疑問を解消しておきましょう。
特に、手付金の扱い・契約解除の条件、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)についてはトラブルになりやすいところです。
売主・買主の双方が納得する形で明記されているか、十分な確認が必要です。
弁護士や司法書士と提携している不動産会社に相談するのも有効な方法です。
法律の専門家が関わることで契約書のリーガルチェックが受けられるため、トラブルが起きるリスクを減らすことができます。
また、万が一トラブルが発生しても迅速な対応が可能です。