不動産売却のノウハウ
相続した不動産などを売却する際、物件に残った遺品をどのように取り扱うか、また整理が手間と感じてしまい、なかなか売却が進まないケースがあります。
遺品の整理は早めに行いましょう。遺品整理を早めに行った方がいい理由や費用感などについて解説します。
不動産売却 費用・税金2025年7月22日
相続した不動産を売却するためには、遺品の整理は早めに行うと良いでしょう。遺品整理は相続人が行うのが主流ですが、遺品整理専門の会社を活用するのも方法の一つです。
ここでは、遺品整理を行う理由や遺品整理のやり方などを詳しくみていきましょう。
相続人は遺品整理ができる権利があります。
相続人が遺品整理を行う理由としては、主に下記の2点が挙げられます。
相続を進めていくうえで、被相続人の相続財産を把握する必要があります。あらかじめ相続人が全ての相続財産を把握しているケースは稀で、大抵は被相続人が亡くなって遺品整理を進めているうちに出てくることが多いです。
その中には土地の権利書など重要書類が出てくることもあり、不動産を売却するうえでは大切な書類が遺品整理で見つかることも度々あります。よって、遺品整理は相続人が行うようにしましょう。
遺言が残されているケースは、指定された人が財産を受け継ぐ権利を持ちます。ない場合は、法定相続人が財産を相続します。
優先順位 | 被相続人からみた関係性 |
---|---|
常に相続人 | 配偶者 |
第1順位 | 子ども |
第2順位 | 親 |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
そもそも相続人とは、亡くなった方(被相続人)の配偶者や子どもなどが該当します。配偶者は相続人となるのはもちろん、被相続人の子ども、親、兄弟の順で相続人になり得ます。配偶者や子どもがいると親や兄弟は相続人にはなりませんが、それらがいなければ親、親もいなければ兄弟が相続人になります。
遺品整理する際、相続放棄に関する注意点がいくつかあります。まず、相続で受け取った不動産にある遺品整理は、90日以内にまとめましょう。相続放棄を行う場合は、相続の開始があったことを知った日から90日以内に家庭裁判所に申し出が必要です。
それまでに相続財産を把握して、相続人間で相談したうえで相続放棄するか否かを決めます。遺品整理が進まないと、相続財産全体を把握できません。
相続財産が全て揃わなければ遺産分割や相続税の算出ができないため、遺品整理は相続発生後、すぐに始めたほうが良いでしょう。また、相続放棄を検討している相続人は遺品整理に関わることができません。
相続放棄した相続人は相続財産を持ち出すことができないからです。相続放棄は借金などの負の資産の権利はもちろん、遺品整理で出てきた資産価値のあるものも放棄することになります。ただし、写真などそのもの自体に資産価値がないものについては相続放棄をしていても受け取れます。
早めに遺品整理することで資産価値が下がる前に遺品を売却できる点や、重要書類が見つかりやすい点などのメリットがあるため、相続が開始した際には早めに行いましょう。
遺品整理のやり方としては、相続人が行うか遺品整理専門の会社に依頼するか、どちらか選択することができます。
相続人が遺品整理を行うメリットとしては、自分たちのタイミングで進められます。また、他人に遺品をみられたり、遺品を紛失したりすることがありません。最低限の費用で済ませられる点もメリットです。
相続人が遺品整理を行うデメリットとしては、慣れない作業を行うため、時間や手間がかかります。また、亡くなって間もないタイミングで進めていく場合は気持ちの整理がつかず、遺品整理がなかなか進まないこともあります。その場合は早期に遺品整理を進めていくのは難しいでしょう。
費用を抑えて遺品整理を進めたい場合や、自身の都合に合わせて遺品整理を行いたい場合は相続人が遺品整理を行うと良いでしょう。
一方、遺品整理専門の会社に依頼するメリットとしては、遠方に住んでいても早期に遺品整理を進められます。また、専門の会社が行うため、遺すべき遺品を仕分けしてくれたり、不用品を処分してくれたりとスムーズに進めてくれます。
加えて、遺品整理だけでなく、清掃や不動産の売却や解体まで請け負ってくれる会社もあるため、遺品整理後も柔軟に対応してもらえるでしょう。
遺品整理専門の会社に依頼するデメリットとしては、コストがかかる点や作業があっという間に終わってしまうため、故人との思い出に浸る時間がない点などが挙げられます。遠方に住んでいて遺品整理の度に足を運ぶのが難しい場合や、素早く遺品整理を済ませたい場合は遺品整理専門の会社に依頼すると良いでしょう。
いざ遺品整理を会社に依頼する場合に気になるのが、費用相場と作業時間ではないでしょうか。遺品整理の費用は遺品の量や作業内容によっても異なりますが、1K~1LDKであれば3万円~15万円程度、2K~2LDKであれば9万円~30万円程度、3K~3LDKであれば15万円~50万円程度、4LDK以上になると20万円~70万円以上が相場です。
遺品の量が多くなるほど高額になり、作業内容には遺品整理だけでなく不用品処分や清掃も含まれることもあります。
費用を安くするコツとしては、複数の会社から見積もりをしてもらい、比較して利用先を選ぶと良いでしょう。会社によって作業内容や単価が異なるため、同じ内容で依頼しても料金が変わる可能性があります。
また、遺品整理を全て会社に任せるのも良いですが、費用を安くするためには相続人でできる部分は自身で行い、会社にその他の部分を依頼するのもおすすめです。
作業内容が縮小し、遺品整理する量が少なくなると費用を抑えられる可能性が高いです。そして、遺品整理にどのくらいの予算で検討しているのかをあらかじめ会社に相談しておくと、予算に合ったプランを提示してもらえるでしょう。
相続で得た不動産を売りたい場合、一般的には仲介を経て売却します。しかし、建物の老朽化が進んでいたり、家の中で亡くなっていたりするとなかなか仲介で売れないこともあります。その場合、不動産会社に買い取ってもらうといった選択肢もあるでしょう。
家具や家電などの残置物がある場合でも、そのまま買い取ってもらえるケースがあります。
不動産会社に買い取ってもらい、転売してもらうことで早期に不動産を売却できます。また、不動産を確実に売却したいのであれば買取がおすすめです。ただし、仲介に比べ売却金額が安くなりやすい点に留意しましょう。
遺品整理時の相続税の計算方法として、下記の手順で計算していきます。
なお、遺品整理時にかかった費用は基礎控除額に含めることができません。基礎控除額に含められるのは、借入金などの債務と葬式費用に限られます。もともと把握していた相続財産とともに全ての相続財産を把握し、計算して相続税額を算出することで相続財産をどのようにするかを相続人間で相談し、決めることになります。
弁護士や税理士などの専門家と提携する不動産会社であれば相続税や不動産の登記などの相談が気軽に受けられるでしょう。
遺品整理を行う際には相続関係でトラブルが発生しやすいです。これらのトラブルを発生させないためにはどのような対策を講ずると良いでしょうか。ここでは、よくみられるトラブルの具体例と対策について解説します。
被相続人が生前に一部の相続人へ財産を引き継いでほしいとの意向を口頭で伝えるケースはよくみられます。しかし、遺言書など文書で残っていない場合は相続人間で揉める原因になり得ます。
そのため、被相続人の意向を知らされた場合は生前のうちに遺言書などの文書で遺してもらうよう促すと良いでしょう。
一部の相続人が遺品を勝手に売却してしまうと、他の相続人とトラブルになってしまいます。たとえば、遺品整理中に見つかった貴金属を売却した場合は、売却金額が相続財産として計算に含まれ、相続人の相続割合に応じて分割されます。
しかし、売却したことを知らせずに売却金額全てを一部の相続人が受け取ってしまうと、利害関係が発生します。遺品整理を進めていく上で相続人が複数人いる場合は、必ず相続人全員で遺品整理に関わるようにしましょう。そして、不用品以外は売却するか相続人間で分割するかを相談してから処分方法を決めていきます。
遺品整理をしていく中で見つかった遺品を相続人同士で相談してそれぞれ分け合ったものの、遺品の価値が変化して受け継いだ相続財産の価格が相続人間で大きな差ができてしまうこともあります。
建物や土地、貴金属や証券など経過年数やその時の情勢などで変化するものについては、全て売却した後の受取金額を分割するのもトラブルを未然に防ぐ方法の一つです。相続関連で分からないところは弁護士や不動産会社に相談すると、明確になるでしょう。