不動産売却のノウハウ

一般的に不動産の売り出し価格は、不動産会社での査定をもとに、最終的には売主が決めます。
不動産の売却価格の決め方を詳しく解説します。
不動産売却 基礎知識2025年12月3日
不動産の売却価格の決め方としては、不動産会社やポータルサイトで査定を行い、ある程度目安となる相場を把握した後、最終的には売主が売却価格を決めます。
不動産を適切なタイミングと価格で売却することが重要になりますが、ここでは不動産の売却価格を決めるポイントとして、下記の3点をおさえるとよいでしょう。
それぞれのポイントについて、詳しくみていきましょう。
不動産の売却価格は最終的には売主が決めますが、所有している不動産を効率よく売り出すためには専門家である不動産会社やポータルサイトを活用して、査定してもらうことがおすすめです。
不動産会社やポータルサイトは売却したい不動産と同条件の不動産がどのくらいで売り出されているのかを把握しており、相場を理解するためには参考にしたほうがよいでしょう。
なぜなら、不動産は高額な金額をやり取りする取引であり、安く売れば損も大きく、高いと売れにくくなるため、売り出し価格の適正さが重要になるからです。
また売り出し価格と契約で実際に決まる成約価格では大きく乖離が生じることがあり、マンションであれば50万円程度、戸建てであれば売り出し価格より2割ほど少ない価格で成約になるのが現状です。よって、査定価格を参考にすることで適切なタイミングと価格で売却できるでしょう。
不動産会社を通じて査定を行ってもらうことももちろんですが、それだけでは所有している不動産の相場が把握できません。特に不動産会社1社だけでは査定するポイントなどに偏りがある可能性もあり、採用すべきか判断できないでしょう。
自分で相場を調べる方法として、ポータルサイトで類似物件を参考にするのがおすすめです。過去に同条件の不動産がどのくらいで売却されているのかを把握できるので、希望売却価格や最低売却価格を決定できます。相場を把握できると、不動産会社などで提示された査定額が適正な価格なのかどうかを判断できるようになります。
不動産を売却する上では、住宅ローンの残債がどのくらいあるのかを確認することが重要です。所有する不動産を売却するタイミングで住宅ローンの残債を一括で完済しなければならないためです。
住宅ローンを完済するためには、残債よりも多い価格で売却できると問題ありませんが、残債よりも少ない価格で売却した場合は残った価格を売主の資産から補填する、または他の金融機関で不足分を新たに借入するなどの対応が必要です。
ゆえに、所有している不動産を売却する前に住宅ローンの残債がどのくらいなのかを年末に金融機関から届く住宅ローンの残高証明書、または借入している金融機関に直接問い合わせするなどして確認しましょう。

不動産の売却価格を自分で計算するには、土地の売却価格を路線価から計算する方法と固定資産税評価額から計算する方法があります。そもそも土地の評価方法は下記の4つです。
| 路線価方式 | 路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額のことで、千円単位で表示しています。路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。主に路線価が定められている土地で用いられています。 |
|---|---|
| 倍率方式 | 路線価が定められていない土地で用いられる評価方法で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出します。固定資産税評価額は毎年自治体から送付される固定資産税通知書に記載されています。 |
| 公示地価 | 地価公示法に基づいて国土交通省が発表している1㎡あたりの標準価格です。全国2万6,000地点ある標準地を2名以上の不動産鑑定士が鑑定・評価して土地の価格が決められます。 |
| 基準地価 | 都道府県が主体となって、全国2万地点以上ある基準地を1名以上の不動産鑑定士が鑑定・評価して土地の価格が決められます。 |
路線価方式と倍率方式の計算方法について詳しくみていきましょう。
参考:国税庁 土地家屋の評価
土地の売却価格を路線価から計算する場合は、下記の計算方法になります。
路線価×奥行価格補正率×土地の面積(㎡)=土地の評価額
路線価は国税庁ホームページの路線価図・評価倍率法から誰でも閲覧できます。なお、毎年7月1日にその年の最新の路線価図が公開されています。路線価は1㎡あたりの価額を千円単位で表記しており、右隣に借地権割合の記号があります。
たとえば、「204E」の路線価は204千円×50%で102千円です。奥行価格補正率とは、その土地の形状等に応じて補正するもので、たとえば同じ路線価と面積であっても、間口が狭い土地や奥行が短い土地もあります。その場合は奥行価格補正率を用いて減額調整します。
奥行価格補正率は国税庁ホームページの財産評価基本通達の付表1にて一覧になっています。路線価が102千円、奥行価格補正率が0.97、面積が100㎡だった場合の土地の価格は下記の通りです。
102千円×0.97×100㎡=989万4,000円
土地の売却価格を固定資産税評価額から計算する場合は、下記の計算方法になります。
固定資産税評価額×倍率=土地の評価額
固定資産税評価額は、毎年自治体から送付される固定資産税通知書などで確認できます。倍率については、国税庁ホームページの路線価図・評価倍率法から路線価図を選択後、「この市区町村の評価倍率法を見る」から対象の地域の倍率が調べられます。
たとえば、固定資産税評価額が530万円で、倍率が1.1倍だった場合、下記の通りです。
530万円×1.1=583万円
戸建や建物の相場を調べる場合は、レインズや不動産会社のホームページから条件を入力して調べられます。また、不動産売却時に実際に取引される価格として実勢価格があります。路線価は実勢価格の80%、固定資産税評価額は実勢価格の70%を目安に設定されます。
よって、実際売却される価格はあらかじめ相場を確認する際に用いられる路線価や固定資産税評価額よりも高くなると考えてよいでしょう。
ここまで、不動産を売却するためには適切な相場を把握した上で売却価格を決めることが重要であると分かりました。しかし、できるだけ高額で売却したいのが売主の希望ではないでしょうか。
不動産の売却価格を高くするためには下記のようなポイントがあります。
それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
不動産の価値は売り出すタイミングで変動します。そのため、高額で売れるタイミングを見極めることが重要です。住宅の需要が高まる時期として、新年度や新生活が始まる前の2〜3月がおすすめです。
また、不動産市場の価格は常に変動するため、地価が上昇している局面であれば購入時よりも高額で売却できる可能性があります。現状、地価公示価格が上昇しているため売り出すタイミングにさしかかっているといえるでしょう。
不動産自体の価値を高めることも、不動産の売却価格を高くするためのポイントの1つです。仮に築年数が古い不動産であっても、水回りの設備を新調して機能を向上させたり、リフォームやクリーニングをしてきれいにしたりするなどで価値を高めることが可能です。
また、費用を大幅にカットして価値を高めるなら自ら清掃したり、部屋を整理整頓してスッキリさせたりするのもよいでしょう。
基本的には不動産の売却金額を決める際には、段階的に価格を下げないようにしましょう。最初から相場よりも高い価格設定で売り出すと、なかなか成約できない上に不動産の価値が時間の経過とともに減少してしまいます。
すると、段階的に価格を下げることになり、買い手が付かない状態が続くと結果的に相場よりも安く成約してしまう可能性もあります。ただし、住宅ローンの残債があり、相場で売り出すとオーバーローンになってしまう場合は高めに売り出して段階的に価格を下げるのもよいでしょう。
また、売り出す際にはあらかじめ最低売却価格を決めておくことがおすすめです。買い手や不動産会社との価格の交渉段階で値引きを要求される場面もあります。その際に最低売却価格を決めておくと、利益を下回るような交渉は避けられるでしょう。
不動産の売却価格を高くするポイントとして、不動産会社を見極めることも重要です。物件があるエリアの売買に精通している不動産会社がおすすめです。
また、不動産会社によって得意とする物件があり、戸建て住宅の取り扱いが多いところやマンションに特化しているなどさまざまです。そのため、不動産会社を選ぶ際には複数の会社に査定を依頼したり、これまでの売買実績や担当者の信頼性もチェックしたりするとよいでしょう。
なお、不動産を売り出してから3カ月経っても売れない場合、不動産会社の変更も選択肢の1つです。一般媒介契約であれば、複数の不動産会社に売却活動を依頼できます。加えて、買取と売却どちらがよいか悩んでいる場合は相談できる不動産会社を選びましょう。