不動産売却のノウハウ

売れそうにないマンションでも所有権の放棄はできません。売れないマンションを放置すると、資産価値が下がり、ますます買い手がつきにくくなるため、早めに処分方法を検討したほうがよいでしょう。
売れないマンションを処分する主な対処法や買い手がつかない原因、その対策を解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2025年12月3日
「使わない」「売れない」「相続しても困る」と感じているマンションの処分方法について、法律上の基本から実際の対処法まで順を追って解説します。
「使わないし売れないなら、いっそ放棄したい」と思う人もいるでしょう。しかし、現在の日本の法律では、マンションの所有権を自由に放棄することはできません。
2023年4月から「相続土地国庫帰属制度」という、相続した土地を国に引き渡せる制度が始まりましたが、これは建物がない土地のみが対象です。
マンションや建物付きの不動産は、この制度を使って放棄することはできません。放棄できない以上、きちんとした形で所有権を移転する必要があります。放置せず、早めに処分方法を検討しましょう。
参考:相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」 政府広報オンライン
売れないマンションを放置すると、次の3つのリスクが生じます。
マンションを所有している限り、月々の管理費・修繕積立金の支出が発生します。
築年数が経過すると、管理費・修繕積立金が値上がりすることも。さらに、固定資産税も毎年課税され続けます。
築年数の経過とともに市場価値が下がり、買い手がますますつきにくくなる悪循環に陥ります。
所有者が亡くなると、マンションは相続人に引き継がれ、維持費や税金の負担も一緒に相続されます。
相続人が複数いる場合、「誰が売却の手続きをするのか?」「費用は誰が負担するのか?」で揉める可能性があります。
売却が難しいマンションでも、状況に合った方法を選べば処分できる可能性があります。まずは「なぜ売れないのか」を見極めることが重要です。
ここでは、売れない原因の確認から売るための具体的な対策まで、順に解説します。
売れないときに考えられる原因は、以下の通りです。
マンションがなかなか売れない場合は、知人や友人にお金をもらわずに譲るという方法もあります。代金を受け取らずにマンションの名義だけを相手に移す場合、法律上は「贈与」として扱われます。
ただし、マンションをもらった人は、管理費や修繕積立金、固定資産税などの費用も引き継ぐことになります。
後から「そんな話は聞いていない」といったトラブルにならないよう、事前に十分説明しましょう。また、譲るときには「譲渡契約書」を作っておくのがおすすめです。
書面に残しておけば、言った・言わないの行き違いを防げます。
どうしても売却困難と思われるマンションを相続する予定なら、相続放棄という方法もあります。相続放棄とは、マンションを含むすべての財産を受け継がないようにする手続きのことです。
ただし、注意したいのは、売れないマンションだけを相続放棄することはできないという点です。相続放棄すると、マンションだけでなく預貯金などのプラスの財産も一切受け取れません。
そのため、相続する財産全体をよく確認してから判断してください。

なかなかマンションが売れず問い合わせすらも来ないときは、どうすればよいでしょうか。
ここでは、買い手がつかない原因と具体的な対処法を紹介します。
マンションの売却は、売り出してすぐに買い手が見つかるとは限りません。
とはいえ、売却活動を始めてから3か月以上経っても問い合わせが少ない・内覧に至らないという場合は、売れにくい状況に入っていると判断したほうがよいでしょう。
通常、中古マンションの売却には3か月もの期間がかかるとされています。3か月以上経っている場合、不動産会社と相談しながら価格や売り出し方を見直す必要があります。
売却を始めて3か月以上経っても買い手が現れない場合は、価格が相場より高すぎる可能性があります。
最近の物件探しは、ポータルサイトで希望の条件を絞り込んで探すスタイルが一般的になっていることから、相場から外れた物件は検索結果に表示されないこともあります。
このようなときは、周辺の似た条件の成約価格を参考にしながら、価格を見直してみましょう。不動産会社と相談して適切な金額で売り出すことで、再び買い手の目に留まりやすくなります。
近隣に似た条件のマンションが複数戸売りに出ていると、買い手が他の物件に流れてしまうことがあります。
特に、築年数や価格帯が近い物件が多いと違いがわかりづらく、「この物件に決めよう」という決定打に欠けてしまいがちです。
こうした状況のときは、自分のマンションを他と差別化する工夫が必要です。たとえば、「LDKが15畳以上」「ウォークインクローゼット付き」「ペット可」「ルーフバルコニーあり」など、SUUMOの「こだわり条件」にあてはまる強みがないかチェックしてみましょう。
自分では気づかないポイントもあるため、不動産会社と一緒に強みを整理するのも効果的です。
また、売り出す時期も重要です。ファミリー層をターゲットにする場合は、入学や進学に合わせた引越し需要が高まる1〜3月に売却活動を集中させると、買い手が見つかりやすくなります。
「きれいにすれば売れやすくなるかもしれない」と、リフォームやリノベーションを検討する人もいますが、これには注意が必要です。
リフォームにかかった費用を売却価格に上乗せすることで、逆に売れにくくなることがあるからです。
また、リフォーム内容が買い手の好みに合わない可能性もあります。
売却前に大がかりなリフォームを実施するよりも、まずはハウスクリーニングを入れたり目立つ部分だけを簡単に補修したりしたほうが、費用対効果の面でもおすすめです。
マンションがなかなか売れない原因に、不動産会社の対応が影響していることもあります。
たとえば、写真や紹介文に工夫が足りなかったり、通り一遍の営業しかしてくれなかったりすると、物件の良さが買い手に伝わりません。
こうした事態を防ぐためには、優秀な不動産会社を選ぶことが大切です。会社選びに失敗しないためには、次の3つのポイントに注目してみましょう。
マンションの売却では、「仲介」と「買取」のどちらを選ぶか迷う人も多いでしょう。
結論を言うと、どちらも依頼できる不動産会社がおすすめです。
仲介は、不動産会社が買い手を探してくれる方法で、相場に近い価格で売れる可能性があります。ただし、買い手が見つからない場合は売却が実現しません。
一方、買取の場合は不動産会社が直接買い取ってくれるため、確実に現金化できるのがメリットです。ただし、売却価格は一般的に仲介よりも低くなります。
「買取保証」を提供する不動産会社もあります。買取保証とは、まずは相場価格での売却にチャレンジし、一定期間内に売れなかった場合に不動産会社が買い取ってくれる仕組みのことです。
売却期間の目途が立つため、「売れなかったらどうしよう」という不安を軽減できます。
売れにくいマンションを所有している場合は、こうした柔軟な対応が可能な不動産会社を選ぶとよいでしょう。
ここでは、マンションを売却する際の一般的な流れを、所有者別に紹介します。
自分や配偶者など、自分が関係する名義のマンションを売る場合の基本的な流れは以下の通りです。
この段階で、残り半分の仲介手数料や司法書士報酬を支払います(地域や会社によって違いがあります)。
親の状況によって、売却に必要な手続きや注意点が異なります。
以下、親の状況別に解説します。
親が元気で判断もしっかりしているものの、移動が難しいなどの場合は、子が「代理人」として売却を進められます。
その場合のおおまかな流れは、次の通りです。
委任状の書き方や必要書類の取り揃え方を丁寧に教えてくれる不動産会社もあります。親に負担をかけずに進めるためにも、早めに相談しておくと安心です。
親が認知症などにより意思表示が難しい場合は、「成年後見制度」を使ってマンションを売却することが可能です。
この制度は親の利益を守るためのものであり、売却したほうが親にとって利益があると家庭裁判所が判断したときにのみ許可が出ます。
売却までの主な流れは、以下の通りです。
参考:
法務省|成年後見制度・成年後見登記制度
大阪家庭裁判所|居住用不動産処分許可の申立てについて
親が亡くなった場合は、相続手続きを済ませなければマンションを売却できません。
おおまかな流れは、以下の通りです。
参考:法務局|登記申請手続のご案内 (相続登記①/遺産分割協議編)
親の状態によって、必要な手続きや売却の進め方が大きく変わります。不明な点があれば、早めに不動産会社に相談するのがおすすめです。