不動産売却のノウハウ
相続発生時には、さまざまな手続きが必要です。お通夜や葬儀だけでなく、保険、年金の喪失手続き、相続財産の分配、相続税の納税などがあります。
その中で、不動産の相続には行政が定めた期限がないものが多く、放置している人が多数います。そのため、土地を売却することになったり、住宅を建て替えたりする際に苦労することになる人が後を絶ちません。
本記事では、不動産相続はいつまでに何をすればよいのかをご説明します。
2021年12月13日
不動産の相続には、法律上の期限がありません。相続開始後に5年、10年以上経ってからでも、相続手続きが可能です。
しかし、後々大変になる可能性が高いため、相続開始後は早期に手続きするべきでしょう。
不動産の相続には、以下のような手続きが必要です。
下記3つには、期限が設けられていません。
遺言は民法で定められた法律行為です。遺言書に相続財産の遺産分割が記載されているのであれば、原則として遺言に従います。
遺言書がない場合、遺産分割協書の作成が必要です。それをもとに、相続財産を分けます。
遺産分割協議書は、相続財産の分配割合を明記した書類です。相続人同士で協議した内容をもとに、作成します。
また、相続登記しなければ、法律上、売買の当事者以外の第三者に対してその権利を取得したことを主張できません。相続人から分けられた不動産を、法務局で登記します。
相続登記をすることで、はじめて不動産を活用できます。
相続税の申告には、期限が設けられており、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」です。相続の開始は亡くなった日を指します。また、納税期限も同様です。
これらは原則として期限の延長はできません。
ただし、次の項目に該当する場合は、期限の延長が可能です。
期間を延長した場合、減税制度は使用可能ですが、無申告課税や延滞税を納める必要があるため、注意しましょう。
相続放棄とは、相続人が、資産の相続を放棄する事です。相続開始を知ってから3カ月以内に手続きする必要があります。
しかし、相続放棄の期間の延長も可能です。
延長するためには、以下のような理由が必要です。
相当な理由がない場合は、3カ月以内に手続きしましょう。
不動産相続手続きの以下のような流れで行います。
ここでは「遺産分割協議書の作成日数」「名義変更手続き日数」について説明します。
遺産分割協議作成にかかる期間は、約1~2カ月程度です。
相続税の納税は、相続発生時から10カ月以内とされています。そのため、逆算すると、遅くても8カ月以内に遺産分割協議書の作成を開始しなければなりません。
基本的には、司法書士、税理士、弁護士、行政書士など専門家に依頼しますが、自分で行う事も可能です。
ご自身で行う場合はインターネット上でひな形などが掲載されているので、確認してみましょう。
懸念として挙げられるのは、遺産分割協議書の作成がまとまらないケースがあることです。財産分与の仕方が納得いかないなど、相続人同士で争い、裁判になることも多々あります。
つまり、遺産分割協議書の作成は簡単ではありません。どのような事態が起こるのか分からないのが遺産分割協議です。
本来は作成期間2カ月間と短いですが、相続発生時からすぐに対応する必要があります。
遺産分割協議書により、相続する不動産が決まった後は、不動産の名義変更が必要です。
名義変更は法務局で対応しますが、細かく専門的な作業が必要なので、司法書士に委託するケースがほとんどです。司法書士は相続人から必要書類を預かれば、約2週間程度で名義変更の登記を完了します。
ご自身でも行う事ができますが、書類の作成、戸籍謄本の解読ができなければ、難しいでしょう。専門のプロに任せた方が効率的です。
不動産の相続手続きをしないまま放置してしまうと、以下のようなリスクがあります。
そのため、不動産を相続したら、手続きは必須です。
相続手続きしない場合、大きなデメリットとして、減税制度が利用できなくなります。
被相続人が亡くなった後、相続税は10カ月以内に納税する義務があります。その際に、配偶者控除では、配偶者は1億6,000万円の相続分まで相続税が控除されます。非常に節税効果が高いです。
相続手続きをしていないと、控除制度が利用できなくなるため、必ず相続手続きはしましょう。
多くの方が相続税はかからないと思いがちですが、納税者は増加傾向にあります。
また、明治時代に始まった相続税制度の納税額も増え続けています。不動産の価値が上がり、相続税の控除額が減少しているためです。
財務省の「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」によると、2018年には、1,362,470名が亡くなっており、約116,341件が相続税の課税対象です。また、平均納税額は約1,814万円です。
不動産の売却や建て替えをしたい時、その不動産が被相続人の名義のままであれば、遺産分割協議書が必要です。
事前に作成していれば問題ありません。しかし、相続発生してから5年後、10年後に遺産分割協議書を作成して、土地を有効活用したいと考える方もいます。
その際、相続人の中に、認知症の症状があるなどの意思能力がない人がいた場合、後見人を設定する必要があります。
後見人は弁護士や司法書士などに依頼して、裁判所で選任します。費用としては約20万円程度、日数は4カ月~半年もの期間を要します。
また、被相続人の孫の代になると手続きは複雑になります。被相続人に複数の子供がいれば孫の数も多くなります。
孫の親世代が相続放棄をした場合は、孫は相続人に該当しません。
しかし、孫の親が、相続手続きを放置し、遺産分割協議をせずに亡くなった場合は、孫が相続する権利を得ます。つまり、孫世代が多くいれば、相続人の人数もその分増えます。そのため、遺産分割協議を行うのに、時間を要します。
また、相続人が多くいるケースだけでなく、相続人が亡くなっていることや、所在がわからないケースもあります。
このように、相続手続きを放置していると、不動産が活用できるようになるまで時間がかかってしまいます。
被相続人の不動産の売却は、所有者または相続人全員の同意が必須条件です。
不動産を売却しようと思っても、相続人が見つからない、所有者が見つからないなどの理由で難しい場合があります。
2019年に、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が施工され、行政機関側で土地の所有者を探したり、土地を管理できる代理人を選任できるなどが可能となりました。そのため、相続登記していない所有者不明の不動産売却は円滑になりました。
しかし、それまでの手続きは、労力と期間を費やします。
そのため、まずは相続手続きのこともあわせて、不動産会社などの専門業者に相談してみましょう。