不動産売却のノウハウ

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不動産の相続分の譲渡には税金がかかる?
いつまでにどのような手順で行う必要がある?

遺産の相続は、複雑な手続きやほかの相続人との話し合いが必要です。

また、場合によっては遺産を放棄したり、ほかの人へ譲りたいという人もいるはずです。

望んでいない相続から身を引きたい場合、自らの相続分をほかの人に渡すことができることができます。
これを「相続分の譲渡」といいます。

しかし、譲渡財産の相続税の取り扱いについては注意すべき点があり、場合によっては譲渡したにも関わらず相続税を支払わなければならないケースもあります。

そこで今回は、相続分の譲渡について、メリットやデメリット、それにかかる税金について詳しく説明します。最後には具体的な手順も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

2022年2月10日

目次

相続分の譲渡について

まずは、相続分の譲渡とはどういうものなのか、整理してみてみましょう。

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、法律に則った自らの相続分(法定相続分)をほかの人へ譲り渡すことです。

譲渡する相手は、共同相続人に対してでも、無関係の第三者に対してでも、だれでも構いません。

譲渡された人は譲受人として、ほかの共同相続人と同じ権利を行使できるようになります。具体的には、相続人同士の遺産分割協議に参加し、被相続人の遺産を相続できます。

一方、相続権を譲渡した譲渡人は、それらの権利を失い、それ以降当該相続に関しては関係のないこととなります。

メリット

相続分を譲渡することで、譲渡人は以下のメリットを受けることができます。

相続の手続きをしなくて済む・相続争いにまきこまれない

相続をするためには以下のような、さまざまな手続きが必要です。

  • 共同相続人との遺産についてどのように分割するか協議する
  • 役所から書類を入手する
  • 不動産を相続する場合は登記のために法務局に足を運ぶ

また、家族関係が希薄で、相続について相続人同士で話し合うことを避けたい人も少なくありません。そういった方にとって、面倒な相続に関わる必要がなくなる相続譲渡は大きなメリットといえます

有償譲渡ならお金が手に入る

譲渡は有償でも無償でも行うことができます。

有償で譲渡すれば、相続を待たずに現金を手に入れることが可能です。

遺産はすぐに売却できるものばかりではありません。不動産や金、家財などの現物資産は、現金化するのに時間を要する場合や、どれくらいで売れるのか分からない場合があります。

相続して持て余すくらいならば、価値のわかる第三者に譲渡し自らは現金を得るという選択肢は検討の余地があるはずです。

デメリット

一方、相続分を譲渡することにはデメリットもあります。

まったくの他人へ譲渡すると相続トラブルになりやすい

法律上は、第三者にも相続分の遺産を譲渡することが可能です。しかし、まったくの他人に譲渡をしてしまうと、残された家族と譲受人との間で遺産分割協議がうまくいかないケースがあります。

ほかの共同相続人のことを考えるならば、相続トラブルの可能性もふまえて譲渡先を選ぶできでしょう。

譲受人に負債を相続させてしまう可能性がある

相続で受け継ぐものは、資産だけではありません。もしも無くなった被相続人が借金などの負債を抱えていた場合、相続人はプラスの資産とマイナスの負債とその両方を受け継ぎます。

これは、譲渡を受けた譲受人にとっても同じです。もしこのことを知らずに譲渡してしまった場合、譲受人は借金を返済する義務まで相続してしまいます。

そのため、譲渡する前に、遺産の詳細をしっかりと確認しましょう。

相続放棄との違い

相続分の譲渡と似た方法として、「相続放棄」があります。どちらも、相続する権利を自らからなくすという点は変わりません。

しかし、相続放棄の場合は、初めからその相続人がいないものとしてその人の相続分がほかの法定相続人に割り振られます。一方、相続分の譲渡の場合は、その相手先を選ぶことができるというという違いがあります。

相続分の譲渡にはどのような税金がかかる?

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相続分の譲渡については、譲受人がだれか、有償か無償かによってだれがどの税金を納めなければならないかが変わります。

発生する可能性のある税金

相続分の譲渡によって、以下の税金が発生する可能性があります。

  • 相続税
    遺産の相続を受けた相続人が、その受益分に対して納める税金。非課税枠が定められており、遺産が非課税枠より少ない場合は発生しない。
  • 贈与税
    だれかから権利や物をもらった人が、その受益分に対して納める税金。年間110万円までは非課税となるため、その金額を下回る場合は発生しない。
  • 譲渡所得税
    だれかに権利や物を譲渡してその対価を得た人が、その受益分に対して納める税金。

譲渡人と譲受人の2つの立場に分けて、どのパターンにどの税金が発生するか、以下より順番に解説していきます。

譲渡人にかかる税金

相続分の譲渡を行う譲渡人にかかる税金をパターン別にまとめました。

譲受人/対価の有無 無償の場合 有償の場合
共同相続人 なし 譲渡で得た金額の分だけ相続税が発生
第三者 譲渡人に対し、譲受人が相続した遺産の分だけ相続税が発生
  • ・無償の場合と同様に、相続税が発生
  • ・譲渡の対価として得た利益の分だけ譲渡所得税も発生

譲渡人がほかの共同相続人に譲渡する場合、それは遺産分割協議の中でほかの相続人に利益が移されたという認識になります。そのため、譲渡人は有償でない限り、相続税を支払うことはありません。

しかし、第三者に譲渡する場合、譲渡人は相続税を課税された上で相続分を譲渡したという認識になります。そのため、有償無償に関わらず相続税を負担する必要があります。

譲受人にかかる税金

次に、相続分の譲渡を受ける側である譲受人にかかる税金をパターン別にまとめました。

譲受人/対価の有無 無償の場合 有償の場合
共同相続人
  • ・ほかの遺産と同様に、相続税が発生
  • ・無償で譲り受けたことに対して贈与税がかかることはない
無償の場合と同様に、相続税が発生
(しかし、譲渡で支払った金額の分だけ、相続税の対象となる相続財産は減ったものとして相続税を計算できる)
第三者 相続分の譲渡を受けたことについて贈与税が発生 適正な金額で譲渡された場合は贈与税はかからない
(実際の価値より低い金額で譲渡された場合は、その乖離分贈与を受けたものとして贈与税が発生)

譲受人が共同相続人の場合、分割協議の結果自らの相続分が増えただけという認識になります。そのため、譲渡を受けたことに対しての贈与税を支払う必要はありません。

一方、第三者の場合は遺産を相続する権利を贈与されたという認識になります。無償の場合や低すぎる金額で譲渡された場合は、その利益に対して贈与税を支払う必要があります。

相続分の譲渡をする方法

法律上、物やお金、権利などの譲渡は口頭の合意だけでも成立させられます。

しかし、法務局などの第三者に合意があったことの証明を求められる場合があるため、なるべく書面に残しておくのが望ましいでしょう。

相続分の譲渡で必要なことは。「相続分譲渡証明書」の作成と「相続分譲渡通知書」による相続人への通知の2つだけです。

必要書類

譲渡の事実を第三者に証明するために、「相続分譲渡証明書」を作成しましょう。

以下にひな形をご用意しましたので、よろしければ参考にしてください。

相続分譲渡証明書

相続人〇〇太郎は、以下の被相続人の相続に関して、相続分の全部を▲▲次郎(住所 東京都〇〇区〇丁目〇)に無償で譲渡したことをここに証明します。

被相続人:□□三郎
生年月日:〇〇年〇月〇日 
死亡日:〇〇年〇月〇日
最後の本籍地:東京都〇〇区〇丁目〇

令和〇年〇月●日
住所 埼玉県〇〇市〇丁目〇
相続人 〇〇太郎 実印

通知

譲渡証明書の作成が完了した後は、共同相続人に対してその旨を通知しましょう。

譲渡するにあたって共同相続人の同意を得る必要はありません。しかし、相続を円滑に進めるため、共同相続人に対して譲渡した旨と相手先を通知する必要があります。

この通知に関しても、以下にひな型を用意しましたので、よろしければ参考にしてください。

相続分譲渡通知書

住所 埼玉県〇〇市〇丁目〇
〇〇花子様

私〇〇太郎は、以下の被相続人□□三郎の相続に関して、相続分の全部を▲▲次郎(住所 東京都〇〇区〇丁目〇)に譲渡しましたので、この旨通知いたします。

令和〇年〇月●日
住所 埼玉県〇〇市〇丁目〇
相続人 〇〇太郎

いつまでにする必要がある?

相続分の譲渡は、遺産分割が完了するまでに行わなければなりません。

遺産分割が終わった後は、現金や不動産の所有権などの具体的な権利を相続することが決まっています。譲渡の対象についても相続分ではなく、それらの具体的な物や権利になります。

そのため、遺産分割協議や調停で遺産分割の内容が決まるまでに譲渡を済ませておく必要があります。

不動産の場合

相続する遺産が不動産の場合でも、上記でご説明したものと同じ手順で相続分の譲渡は完了します。

ただし、一点注意することとして、相続分譲渡証明書は必ず作成しておきましょう。

譲受人が不動産の所有権移転登記をする際に、法務局から譲渡を受けたことの証明としてこの証明書が必要なためです。

とはいっても、証明書の作成など遺産の相続は、複雑な手続きや法律が多いため、一般の人がすべて自分で解決することは難しいでしょう。弁護士や司法書士などのプロにまずは相談することから始めるのがよいでしょう。

また、不動産であれば、譲渡するのではなく一度相続してから売却するのもひとつの選択肢です。まずは、相続する予定のある不動産の価値がいくらなのか知るためにも、不動産会社に相談してみましょう。その際は、親身に相談に乗ってくれる信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。

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