不動産売却のノウハウ
不動産を相続したなら名義変更をするはずです。名義変更をしなければ、様々な問題が生じます。2024年には相続登記(名義変更)が義務化されることになっていますが、それまでであっても名義変更をしないことはおすすめできません。
では、名義変更はどのように行えばいいのでしょうか。名義変更の必要性や名義変更の実務上のやりとり、その費用について紹介します。また、不動産を名義変更する際に起きるトラブルと解決策もあわせて紹介します。
2022年3月31日
現在、相続した不動産の名義変更は任意となっていますが、名義変更をしないとさまざまな問題が発生します。そこで、どのような問題が起きるのかについて紹介します。
不動産を売却できるのは所有者のみです。相続不動産の売却をするにはまず、名義変更する必要があります。名義変更がされていないと、相続人であっても売却することができません。
不動産を相続した場合、住宅がまだ使えるようであれば、貸し出して家賃収入を得ることが可能です。また、更地にして土地を貸したり、マンションやアパートを建てて賃貸経営することも可能です。
しかし、名義変更をしていないと、不動産を活用できません。
活用できない不動産は空き家となりどんどん老朽化が進みます。地震や台風で倒壊する恐れもありますし、放火されることもあります。
空き家は近隣住民にも迷惑をかけてしまいます。空き家になるのであれば、早めに名義変更をして売却することをおすすめします。
複数の相続人がいる場合には要注意です。相続の手続きをせずに相続人が亡くなってしまった場合に、次の世代に相続しようとすると手続きが大変複雑です。
たとえば、不動産を所有している父親が亡くなったとします。父親には子供が3人いたため、相続人はその3人です。しかし、名義変更をしないまま、相続人が1人亡くなりました。その相続人に子供が、3人いたとします。その子供が不動産を相続しようとすると、兄弟3人の他に親の兄弟2人の合意も得なくてはいけません。
このようなケースで何十年も名義変更されていない不動産であれば、関係者が数十人になってしまう場合もあります。専門家に頼めばしっかりと調査してもらえますが、時間と費用がかかってしまいます。
子孫の相続トラブルを避けるためにも、早めの名義変更をおすすめします。
空き家問題の対策として、2024年(令和6年)4月1日より相続登記を義務化する法律が施行されます。この相続登記の義務化は、施行前の相続にも適用され、怠ると10万円以下の過料が科せられます。
放置しておくと、相続人が増えることになり、解決が困難になることもあります。早めの名義変更をおすすめします。
ここでは、名義変更の手順や必要な書類と費用について紹介します。
名義変更の主な流れは下記のとおりです。
必要な書類と費用は下表のとおりです。相続する状況によっては不要な書類や自治体によって費用が異なるものもあります。
必要書類 | 必要費用 |
---|---|
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式 | 1通450~750円 |
被相続人の戸籍附票 | 1通300円 |
相続人の全員の戸籍 | 1通450円 |
新たに登記名義人となる相続人の戸籍附票 | 1通300円 |
固定資産評価証明書 | 1通300円 |
収入印紙 | 登録免許税分 |
レターパック | 510円 |
印鑑証明書 | 1通300円 |
相続放棄申述受理証明書 | 1通150円 |
登録免許税は固定資産評価額の約0.4%です。固定資産評価額は、上表の固定資産評価証明書で確認できます。建物2,000万円、土地2,000万円の評価額であれば、4,000万円の0.4%で、16万円が登録免許税の金額です。
自分でも名義変更はできます。ただし、それなりの時間と労力が必要です。途中で断念して、結局専門家に頼むということも少なくありません。
途中までやっていたとしても、最初から依頼した時と同じ費用が発生することが多いので、時間と労力が無駄になってしまいます。
それでも自分でやりたいと思った人は、登録免許税と必要書類の発行金額を用意すれば名義変更が可能です。場合によっては、役所や他の相続人と打ち合わせをするための交通費も必要です。
もし、司法書士に一式を任せた場合は、上記実費の他に6万円から10万円程度の報酬を支払う必要があります。ただし、相続が複雑になってしまうと予想以上に費用が膨らむ可能性があります。
司法書士の報酬は、以前一律でしたが、現在は各事務所によって報酬が異なります。依頼する前に見積もりを取ることをおすすめします。
名義変更には、相続人全員の同意が必要なため、トラブルが起きることがあります。ここでは、よく起きるトラブルについて紹介します。
不動産を複数持っている場合は、評価額をもとにして分割することが可能かもしれません。
しかし、不動産が1つしかなく、他に資産がない場合は相続人の間でトラブルになりやすいという声もあります。
その場合は、不動産を売却して現金で分割する方法もあれば、共有分割という方法もあります。共有分割は長男が/1/2、次男が1/2などで不動産の持分を共有するなどします。
この共有分割は特に注意が必要です。共有する不動産を売却する時に、全員の同意が必要になってくるからです。また、共有保有者からさらにその子どもなどに相続させることになれば、共有者が増えるため、ますます複雑になります。
このような理由から、「共有分割は次の世代への問題先送り」という指摘をする専門家も少なくありません。
代々引き継がれてきた不動産の場合、先代が名義変更をしていない可能性があります。当時は相続人全員が同意をして事実上、親が引き継いだのかもしれませんが、名義変更がされていないと、正式に相続したことになっていません。
当時の相続人が亡くなっていて子供がいる場合には、その子供が相続人になります。その結果、相続人の全員から遺産分割協議書に署名・捺印をもらわなければいけません。
交流がある相続人であれば問題ないかもしれません。しかし、ある日知らない人から、署名・捺印をお願いされても、即答できないこともあります。また、相続の権利を主張された場合に面倒です。
そうならないためにも、早めに相続する不動産の登記を確認しておきましょう。
不動産の価値が高い場合、相続税を現金で支払わなくてはいけません。相続税以上に現金の相続があればよいのですが、ない場合には貯蓄から支払う必要があります。自分が実家に住んでいる場合は、相続税のために家を売ることも難しいです。
相続税の支払いは亡くなった翌日から10カ月が期限です。相続税の支払いをどうするかは、あらかじめ考えておく必要があります。生命保険や退職金の有無も確認しておいた方が良いでしょう。
相続人の中には、思い出のある実家を売却したくないと思う人もいます。その場合、売却するためには相続人全員の同意が必要なため、売却ができません。
しかし、相続人が持ち家に住んでいると、実家は空き家になってしまいます。空き家では、老朽化が進み周囲に悪影響を与えるだけではなく、犯罪に利用される可能性もあります。また、固定資産税やメンテナンス費用もかかってきます。
売却したくない場合には、このようなリスクがあることを理解しましょう。売却しない場合には、相続人が定期的に管理したり、管理会社に依頼する必要があります。また、貸し出して住民に管理してもらうという選択肢もあります。
不動産の相続は複雑な処理が多く、自分ひとりで全てをこなすのは困難です。なんとか、途中までやってみたけどトラブルになり、専門家に相談するという人も少なくありません。
また、不動産の相続は高額な財産を受け継ぐことになるため、名義変更をすればよいという事務的な処理の問題だけではなく、親族間の相続トラブルに発展する場合もあります。トラブルが発展して裁判などになってしまっては、親族間の関係も悪くなり、相続財産以上の負担になる場合もあります。
そのようなことがないように、早い段階でプロに相談することをおすすめします。