不動産売却のノウハウ
親からの遺産には、金銭だけでなく、土地などの不動産や借金なども含まれています。管理の手間や負担を避けるために、相続放棄をしたいと考える方もいるでしょう。
しかし、相続人が自分だけでなく、兄弟がいた場合、ひとりだけ相続放棄することは可能なのでしょうか。
本記事で、兄弟で親から相続する場合の相続放棄について考えてみましょう。また、手続きの手順や必要書類も紹介します。
2022年4月5日
相続人が兄弟だけの場合、相続には次の3つのパターンがあります。
3つのパターンのうち「兄弟で話しあって相続する」のが一般的ですが、相続しても負担が重い場合は相続放棄も考えられます。
相続放棄する2つのパターンについて、詳しくみていきましょう。
親の遺産を子が数人で相続するには、分割方法について話し合う遺産分割協議を行います。
法定相続では子の人数により均等に分割しますが、遺言書がある場合は遺言書に従います。ただし、遺産には、遺留分といって主張すれば最低限保証される割合があります。遺言書にもとづく分割では遺留分を下回る場合、遺言書のとおりには分割できない場合もあり注意が必要です。
兄弟のどちらかが相続放棄をしたい場合は、自由意思により選択できるので、問題なくできます。
相続放棄をすると、財産と同時に被相続人が保有していた借金などの債務もすべて放棄できます。財産よりも負債が多い場合には、相続放棄を選択することが一般的です。
ただし、放棄はすべての財産になるので「土地は放棄するけど預金は相続したい」などのように、財産を選んで放棄することはできません。
相続人が2人の場合、一方が相続放棄すると、もう一方がすべて相続することになります。相続するほうは、前述したように財産だけでなく、借金などの負債も相続します。
相続するとその評価額に応じて相続税が課税されます。納税できる金銭が用意できない場合は、以下2つの選択肢があります。
相続人である兄弟2人のうち片方が相続放棄すると、もう一方だけが相続登記や相続税の納税など面倒な手続きをする必要があります。しかし、その分だけ財産が増えるのであれば手間も受け入れられるかもしれません。
問題なのは財産よりも負債が多い時や、土地の評価が低く、相続することにメリットを感じられない場合です。
相続により負担が生じる場合は、兄弟全員が相続放棄をするケースがあります。
相続人全員が相続放棄することは可能です。手続きは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。
通常、相続放棄手続きは、放棄する人ごとに行うものです。しかし、兄弟2人だけが相続人である場合のように、同順位の相続人がまとめて放棄する場合は、連名で手続きが可能です。
兄弟が相続放棄し、ほかにだれも相続する人がいない場合、放棄した土地の管理はだれが行うことになるのかが新たな問題として浮上します。
相続放棄したとしても、最終的に土地の所有権が国に帰属するまでには相当な期間がかかります。その間は、相続放棄した相続人に管理責任が残ります。
相続放棄を兄弟の連名で行った場合、兄弟2人ともが管理責任を負います。
遠隔地にある土地などで実際に管理ができないなどの場合、家庭裁判所に申し立てて、相続財産管理人の選任ができます。しかし、責任は継続するので、管理人の費用を負担する必要があります。
また、土地に対する固定資産税の課税がされていると、相続放棄した相続人に納税通知書が届く場合があります。
本来、相続放棄した人には固定資産税の納税義務はありません。しかし、課税権者である市区町村が法定相続人を納税義務者として登録した場合は、納税を免れることができません。この場合には、弁護士など法律の専門家に相談してみましょう。
相続放棄の手続きは比較的簡単にできます。手続きの流れや必要書類などを確認してみましょう。
相続放棄は、相続人となったことを知ってから3カ月以内と期限が決まっています。
相続人となったことを知った日時を客観的に証明するのは難しいので、被相続人が亡くなってから3カ月以内と理解しておくとよいでしょう。
相続放棄は以下の流れで行います。
裁判所から相続放棄申述書受理通知書が届くと、手続きは無事完了です。
相続放棄の申述書を作成し、申し立てが3カ月以内にできない場合は、その期間内に期間延長の申し立てを裁判所に行います。承認されると期間が延長できるため、落ち着いて手続きができます。
裁判所へ提出する申述書に併せて以下の書類が必要です。
なお、印紙と切手の金額は2022年現在の情報に基づきます。
そのほか遺産の調査を行うには、以下のような書類を集めます。
相続放棄手続きは専門家の手を借りずとも、個人ですることも可能です。3カ月間という期限がありますが、期限までに余裕があるのであれば、費用の節約になるので自分でやるのもよいでしょう。
借金がある場合は債権者への通知が必要です。家庭裁判所から債権者への通知はされませんので、自分で通知する必要があります。
債権者が金融業者などであれば司法書士に依頼して、相続放棄手続きと債権者への通知を併せて行ってもらうとよいでしょう。
ここでは、相続放棄以外の方法も考えてみましょう。
相続分の譲渡とは、自分の法定相続分をほかの人に譲渡する方法です。譲渡先は、同じ相続人である兄弟でも、第三者でもかまいません。
しかし、相続人の立場自体を放棄する相続放棄と異なり、譲渡した本人は相続人の立場であることは変わりません。そのため、遺産に借金があり、その債権者から返済を求められた場合は応じる必要があります。
相続分の譲渡は、無償でも有償でもできます。有償で譲渡すれば、面倒な遺産分割協議には参加せずに、金銭だけ受け取ることができます。負債とのバランスによっては、メリットがある方法だといえます。
なお、遺産分割が決定するまでの間であれば、裁判所を通さず、譲渡相手と契約するだけで成立します。
相続放棄後の管理責任などがあり、放棄を諦めることもあります。そのような場合は兄弟で分割相続して、管理責任などの負担を2分の1ずつにする方法があります。
確定測量を行い、確定測量図面を添付した遺産分割協議書に「分筆後に取得する」と記載します。そのうえで分筆登記して、登記完了後に相続登記を行います。
自分の分の土地は売却や活用することが可能です。
不動産を共有名義で相続した場合では、将来的に以下のような不都合が生じ処分に困ることになる可能性があります。
相続した時は特に問題がなくても、将来事情が変わってしまい「共有にしなければよかった」と後悔することも少なくないです。リスクを避けるために、共有はやめて分割してしまうことは有効な方法です。
ただしこの方法は土地の面積がある程度あり、分割しても十分利用できる場合でなければあまり意味がありません。
相続放棄をしたとしても管理責任は、ある程度の期間負わなければなりません。売却してしまえば、収入があるため、負債とのバランスによって負担が少なくなる可能性もあります。
相続放棄を検討するのにはそれなりの理由があるはずですが、売却できればその理由も解消されます。
相続放棄をする前に、土地などの不動産がどれくらいで売れるのかを確認しておくのがよいでしょう。
また、相続では、不動産に関わるトラブルや手続きが多く発生します。専門的な知識がなければ扱いが難しいでしょう。
そのため、まずは信頼できる不動産会社を探して、不動産が売れる価格を確認するのと併せて、手続きについても相談してみましょう。