不動産売却のノウハウ
離婚すると夫婦の共同生活が解消されるため、住まいの処分方法について話し合う必要があります。
夫婦が離婚する場合、不動産(持ち家)も財産分与の対象です。一般的には土地や建物を売却し、現金化してから分配するか、どちらか一方が離婚後も住み続けることになります。
しかし、土地や建物の分配をめぐり、当事者同士のトラブルに発展するケースも珍しくありません。
離婚時によくある不動産の財産分与のトラブルや、その対処法について解説します。
不動産お役立ちコラム 不動産売却2024年12月11日
財産分与とは、“夫婦が離婚したとき、相手方の請求に基づいて一方の人が相手方に財産を渡すこと※”を指します。
婚姻中に夫婦が住んでいた持ち家も、財産分与の対象となることが一般的です。たとえ夫婦いずれか一方の単独名義の不動産であっても、共同生活の実態(家事を分担して行うなど)がある場合は、夫婦の共有財産として分配しなければなりません。
不動産の財産分与を行う方法は主に2つあります。
※出典:国税庁「No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき」
1つ目は、土地や建物を売却し、現金化してから財産分与を行う方法です。
不動産のまま分配するよりも、現金のほうが清算しやすいため、公平な財産分与が可能です。また住宅ローンの残債が少ない場合は、売却によってまとまった資金が手に入り、離婚後の生活保障がなされるメリットもあります。
なお、財産分与の割合は、当事者間の協議によって決めることになります。協議がまとまらない場合や、そもそも協議を行うのが難しい場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることが可能です。
家庭裁判所による審判では、夫婦それぞれが働いているか否かにかかわらず、互いの財産が2分の1になるように分配を命じられることが一般的です。
2つ目は、当事者の一方が持ち家に住み続けるかわり、土地や建物の時価を参考とし、もう一方に財産分与の割合に応じた代償金を支払う方法です。夫婦のいずれかが住み慣れた家に愛着を持っている場合や、離婚後の生活基盤に不安を抱えている場合に適しています。
ただし、不動産の所有権を得る対価として、多額の現金が必要になるという問題点もあります。離婚後の生活保障の観点から、分割払いが提案されるケースも珍しくありません。
また夫婦のうち、土地や建物の名義人でないほうが財産分与を受ける場合は、不動産の名義を変更する「所有権移転登記」が必要です。
夫婦のいずれかが離婚後も持ち家に住む場合、以下のようなトラブルが想定されます。
住宅ローンの残債がある場合は、財産分与により持ち家の所有権を得た側が完済の義務を負うことが一般的です。
結婚しているときと異なり、離婚後は自分一人の収入で住宅ローンを返済しなければなりません。経済状況が悪化し、ローンを返済できなくなった場合、競売や差し押さえにより住まいを失う可能性もあるため注意が必要です。
住宅ローンの滞納から競売開始までの期間は、金融機関によって異なります。一般的には、ローンの返済が3~6カ月滞ると金融機関から督促状が届き、差し押さえに向けた手続きが始まるといわれています。
こうしたトラブルを避けるため、離婚協議の段階で住宅ローンのシミュレーションを行い、無理のない返済計画を立てておきましょう。また金利が低いローンへの借り換えによって、返済負担を減らす方法も効果的です。
離婚に伴い相手方に財産分与を行った場合、譲渡所得税が課される可能性があります。土地や建物を分与すると、実際にはお金のやりとりが発生していなくても、そのタイミングの時価で不動産を譲渡したものとみなされるからです。
譲渡所得税が発生するのは、分与を行った日の不動産の時価が、取得金額を上回るケースです。たとえば、不動産の時価が5,000万円、取得金額が3,000万円の場合、差額である2,000万円が課税譲渡所得金額となります。
譲渡所得税の負担を減らすには、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を活用するとよいでしょう。課税譲渡所得金額が3,000万円以下であれば、譲渡所得税がかかりません。
ただし、配偶者を含む親族に不動産を譲渡した場合、特別の適用を受けられません。離婚届が受理され、婚姻関係が解消されてから財産分与を行ってください。
なお、財産分与を受ける側が税金を負担することは原則としてありません。たとえば、一部の例外を除いて、分与された不動産に贈与税は課されません。国税庁によると、その不動産は“相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたもの”とみなされるからです※。
ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は贈与税が発生します。
※出典:国税庁「No.4414 離婚して財産をもらったとき」
離婚後の財産分与では、当事者間のトラブルを避けるため、持ち家を売却して現金化するのが一般的です。しかし、離婚後に不動産を売却する場合は、以下のようなトラブルが想定されます。
不動産を売却できるのは、不動産登記簿に権利者として記載された名義人のみです。夫婦いずれかの単独名義の不動産は、名義人の同意がなければ売却できません。また夫婦の共有名義になっている場合は、自分の持ち分のみを自由に売却できます。
名義人に売却の意思がない場合は、当事者同士でしっかりと話し合い、同意を得る必要があります。財産分与について話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てることが可能です。
家庭裁判所に申し立てを行うことができるのは、離婚した時点から2年以内です。離婚が成立してから2年経つと、財産分与の請求権が消滅してしまいます。
不動産を売却し、現金化してから分配する場合は、できるだけ早く売却手続きを進めましょう。なお、売却には通常3~6カ月かかるといわれています。売却期間が1年以上長引くケースもあるため、すみやかに手続きを進めることが大切です。
住宅ローンの残債が、不動産の売却金額を上回った状態を「オーバーローン」といいます。
オーバーローンの状態になると、不動産の売却金額のみで住宅ローンを完済できないため、不足分を夫婦の貯蓄などを用いて補填しなければなりません。ローンの負担額をどうするか、当事者同士でしっかりと話し合う必要があります。
オーバーローンの住まいは、財産分与の手続きが複雑になるため、まずは不動産会社に相談してみましょう。販売ネットワークが広く、売却ノウハウが豊富な不動産会社なら、住宅ローンを十分に完済できそうな条件の買主を探すことも可能です。