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生産緑地における相続税評価額の計算方法!
納税猶予を受ける条件や手続きは?

生産緑地とは、都市計画法で指定された市街化区域内の農地のことです。生産緑地の指定を受けると、大幅に固定資産税が軽減されるメリットがあります。

また、生産緑地を相続した場合は、農地として評価されるため、固定資産税が減税されます。さらに、相続税の納税猶予の特例を受けられます。

本記事では、生産緑地の相続税の概要や相続税評価額の計算方法について詳しく解説します。また、相続時の手続きについても併せて紹介します。

2022年9月9日

目次

生産緑地における相続税について

生産緑地は、相続税の納税猶予が適用されます。
ここでは、納税猶予を受けられる条件や手続きの方法を詳しく解説します。

相続税の納税猶予

納税猶予の納税猶予を受けるには、被相続人と相続人が、それぞれ以下の要件のいずれかに該当しなくてはなりません。

対象 要件
被相続人 死亡の日まで農業を営んでいた
  • 農地などを生前に一括贈与した
  • 死亡の日まで受贈者が贈与税の納税猶予または納付期限延長の特例を適用されていた
  • 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人、または農地などの生前一括贈与の適用を受けていた人
  • 障害や疾病などによって自分で農業ができなくなったため、賃借権などの設定による貸付けをし、税務署長に届出をした
死亡の日まで、農業経営基盤強化促進法または都市農地の賃借の円滑化に関する法律の規定による特定貸付けなどをしていた
相続人
  • 相続税の申告期限までに農業経営を開始した
  • 引き続き農業経営を行う
  • 農地などの生前一括贈与の特例の適用を受けた
  • 特例付加年金または経営移譲年金の支給を受けるため、その推定相続人のひとりに対して農業経営を移譲し、税務署長に届出をした
  • 引き継いで農業経営を行う
  • 農地などの生前一括贈与の特例の適用を受けた
  • 営農困難時に貸付けをし、税務署長に届出をした
  • 被相続人の亡くなった後も継続して貸し付けを行う
  • 相続税の申告期限までに特定貸付けなどを行った
  • 農地などの生前一括贈与の特例の適用を受けた人の場合は、相続税の申告期限において特定貸付けなどを行っている

参考:国税庁「No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例

納税猶予の手続きの流れ

納税猶予を受けるには、税務署で手続きが必要です。相続税の申告書類に納税猶予の書類を添付して申請するため、相続税申告期限に間に合うように準備しましょう。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月です。

実際の手続きの流れは以下のとおりです。

納税猶予に必要な書類

必要書類 どこで取得できるのか
相続税納税猶予に関する適格者証明書 生産緑地を管轄する農業委員会
特例適用農地の明細書 生産緑地を管轄する農業委員会
相続税納税猶予の特例適用の農地等該当証明書 生産緑地を管轄する市役所
担保提供書 国税庁ホームページからダウンロード
抵当権設定登記申請書 法務局

そして、納税猶予された相続税額と利子額を合計した金額相当の担保を用意する必要があります。

また、納税猶予を継続するには、相続税の申告期限から3年ごとに税務署へ継続届出書を提出します。

生産緑地の相続税評価額の計算方法

写真

生産緑地の相続税評価額の計算方法を紹介します。

生産緑地の控除率

生産緑地の相続税評価額は、市町村が買取の申し出ができるかできないかによって、異なります。

相続税評価額 = その土地が生産緑地でないものとして評価した価額 × {1-(①または②の割合)}

① 課税時期(被相続人が亡くなった日)に市町村が買取りの申出できない生産緑地

課税時期から買取申出ができる日までの期間 割合
5年以下のもの 0.1
5年を超え10年以下のもの 0.15
10年を超え15年以下のもの 0.2
15年を超え20年以下のもの 0.25
20年を超え25年以下のもの 0.3
25年を超え30年以下のもの 0.35

②課税時期に市町村が買取りの申出が行われていた生産緑地、または買取申出ができる生産緑地 :0.05

また、生産緑地でない農地の相続税評価額を求める方法は、以下の4区分によってそれぞれ異なります。

  • 純農地
  • 中間農地
  • 市街地農地
  • 市街地周辺農地

農地の区分を確認するには、市役所などのホームページを閲覧するか、市役所の農政企画課などの担当部署に照会して調べます。

2つの計算方式

農地の相続税評価額を求める方法に使われるのは、倍率方式と宅地比準方式の2つです。まずは、2つの計算方式の概要を確認しましょう。

倍率方式

倍率方式とは、国税庁が公開している倍率を、固定資産税評価額に乗じて計算する方式です。

固定資産税評価額は、以下いずれかの方法で確認できます。

  • 毎年春ごろに土地の所有者に届く固定資産税の納税通知書
  • 役所や都税事務所にある固定資産課税台帳
  • 固定資産評価証明書を取り寄せる

倍率は、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から調べられます。

宅地比準方式

宅地比準方式とは、その土地が宅地と仮定した場合の価額から造成費の金額を引いて計算する方式です。

造成費とは、現在宅地ではない土地を宅地化する場合に発生する費用を指します。

造成費は、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

生産緑地の相続税評価は、農地の計算方式で求めた評価額から一定の割合を控除して計算します。

4つの区画の計算方式

農地の区画による計算方式と控除率を、実際に計算する順番でご説明します。

宅地比準方式

倍率方式で計算します。計算式は以下のとおりです。

相続税評価額=固定資産税評価額 × 倍率

宅地比準方式

倍率方式か宅地比準方式を使用します。

宅地比準方式の場合は、以下の式で算出できます。

相続税評価額=農地が宅地であるとした場合の価額-宅地造成費

農地が宅地であるとした場合の価額を求める計算式は、以下のとおりです。

農地が宅地であるとした場合の価額=宅地としての固定資産税評価額 × 宅地としての評価倍率

市街地周辺農地

以下の計算式で求めます。

相続税評価額=市街地農地 × 0.8

2つの計算方式

生産緑地でないものとすると、純農地に該当する土地を仮定して計算してみます。固定資産税評価額を500万円、倍率を30と考えます。

まず、生産緑地でないものとして相続税評価額を計算すると、以下のとおりです。

純農地とした場合の相続税評価額=500万円 × 30=1億5,000万円

また、課税時期に市町村が買取りの申出できない生産緑地で、課税時期から買取申出ができる日までの期間を5年以下とした場合で計算します。

相続税評価額=1億5,000万円 × (1-0.1)=1億3,500万円

つまり、生産緑地の相続税評価額は1億3,500万円です。

なお、土地の形状にあった正確な評価額を出すことは簡単ではありません。なぜなら、専門家によって意見が分かれるほど複雑なケースが存在するからです。

たとえば、間口や形状、奥行、崖にある土地などさまざまな条件を組み合わせて計算します。評価額の計算を間違えると、必要以上の税金を支払ってしまうかもしれません。また税務署と申告者の計算が合わない場合、追加納税の他に延滞税や過少申告加算税を納めることもあり得ます。

上記の計算方式はおおよその金額を計算する上では便利ですが、詳しい金額は相続に詳しい専門家に相談しましょう。

生産緑地を相続するときの手続き

相続税の申告以外にも、生産緑地を相続したときは、不動産の所有権移転登記をしたあとに手続きが必要です。

農業委員会への届け出

生産緑地を相続すると、農業委員会に届出書を提出する必要があります。

提出期限は、10ヵ月以内と決められています。届出を怠った場合は10万円以下の過料が科せられるので注意が必要です。

必要書類は、届出書と登記簿謄本などです。管轄の農業委員会によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

市町村役場に生産緑地の変更届

相続して所有者が変わったことを示す生産緑地変更届を、市役所に提出します。

そのとき生産緑地変更届以外に、登記事項証明書や地積測量図などの書類が必要です。管轄する市役所や変更内容によって必要書類が異なりますので、事前にチェックしましょう。

売却したいときは?

生産緑地は、自由に建物を建てることや売却することが禁止されています。

そのため、相続した生産緑地を売却したいときは、まず生産緑地の指定を解除する必要があります。

生産緑地の指定を解除するには、市町村に買取の申請が必要です。申請から約1カ月で回答通知が届きます。買取されないと、市町村が2カ月間、農林希望者にあっせんします。

ここでも買取希望者が現れない場合に、生産緑地の指定が解除され、売却可能になります。

生産緑地の相続や売却は、複雑な手続きばかりです。そのため、生産緑地の取り扱いに長けている不動産会社にまずは相談しましょう。

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