不動産売却のノウハウ

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特定生産緑地のデメリットは?
2022年以降も生産緑地の指定を延長する選択肢

2022年以降、生産緑地制度の指定を解除される土地が増加して、大量の宅地が市場にでると予想がありました。土地が供給過多となり、不動産市場に混乱を招くおそれがあると指摘がなされました。これは、生産緑地の2022年問題と呼ばれ、しばしば議論の対象となりました。

「特定生産緑地制度」はこのような急激な変化を防ぐために、2017年に生産緑地法が改正されて生まれた制度です

特定生産緑地に指定されると税金の優遇が適用されますが、デメリットはあるのでしょうか

本記事では、特定生産緑地の概要とデメリットを紹介します。また、特定生産緑地は自分で申請することも可能です。具体的なケースごとに、この制度の適用を申請するべきかどうかも紹介します。

2022年9月9日

目次

生産緑地と特定生産緑地

生産緑地と特定生産緑地の概要をそれぞれ説明します。

生産緑地制度の概要

市街化区域にある農地を生産緑地として指定する生産緑地制度は、生産緑地法に基づき1992年に始まった制度です。

生産緑地に指定されると、30年間農地や緑地として維持することを条件に、税の軽減措置が受けられます。

市街化区域内の農地が生産緑地に指定されると、固定資産税が農地と同様の課税となり、大幅に軽減されます。さらに、相続税の納税猶予制度も適用されます。

また、生産緑地の指定は30年間と決まっています。しかし、以下の場合は、市町村に対して生産緑地を買い取るよう、申出ができます。

  • 農業に従事する人が亡くなる
  • 身体的故障により農業を継続できない

生産緑地の2022年問題とは?

生産緑地の指定は30年間です。2022年は制度開始から30年を経過する年であり、今後は多くの生産緑地が指定を解除されます。

それにより、これまで農地だった土地は、宅地並みの税金が課されるようになります。そのため、税負担を免れるために、大量の土地が宅地として供給されると予想できます。

結果として、不動産市場に大きな混乱が生じると懸念されています。

この2022年問題を避けるために生まれたのが、特定生産緑地制度です。

特定生産緑地制度とは?

特定生産緑地制度は、30年が経過して指定が解除される生産緑地を、さらに10年間生産緑地として延長する制度です。所有者の同意を得ると、その後もくり返し10年の延長ができます。

三大都市圏にある市街化区域内の農地は、約半数が生産緑地です。そのうち約8割が2022年に指定から30年を迎え、生産緑地指定が終了する予定です。

すでに日本は人口減少社会となっており、生産緑地が終了し市町村に対して買取を申し出たとしても、買い取ってもらえる可能性は低いでしょう。

特定生産緑地に指定されると、以下のメリットがあります。

  • 固定資産税の負担が軽減される
  • 相続した生産緑地の場合は相続税の納税猶予が受けられる

しかしデメリットもあり、制度の適用申請は慎重に判断する必要があります。

なお、特定生産緑地として指定されるには、以下のような条件があります。

  • 市街化区域内の農地で面積は500㎡以上(ただし市町村により300㎡まで引き下げられる)
  • 公共施設の敷地として適している
  • 農林漁業の継続が可能

特定生産緑地のデメリットはある?

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ここでは、特定生産緑地制度のデメリットを解説します。制度の適用申請を検討するときの参考にしましょう。

デメリット①期限が決まっている

特定生産緑地として指定を受けるには、30年が経過する前に申請する必要があります。30年経過してしまうと適用できなくなるので注意が必要です。

特定生産緑地に指定されないと、どのようになるのかについても押さえておく必要があります。

生産緑地でなくなった土地は宅地並みの課税を受けますが、一定の地域では急激な税負担を防ぐため、激変緩和措置が適用されます。激変緩和措置とは、課税標準額に軽減率をかけて税額を抑える措置です。

激変緩和措置の軽減率

軽減率
初年度 0.2
2年目 0.4
3年目 0.6
4年目 0.8

なお、緩和措置が適用されるのは、三大都市圏の特定市です。

デメリット②農業を継続しなければならない

特定生産緑地は農地並みの課税を受けられるメリットがありますが、農地として適正な管理をする義務があります。

さらに、特定生産緑地に指定されると建築行為や造成行為が制限され、自由な利活用ができません。

つまり、市街化区域でありながら農業に利用する土地としての利活用に限定されます。しかも、途中で取りやめることはできず、10年間継続させる必要があります。

デメリット③指定を継続しないと高額な相続税が発生するリスクがある

特定生産緑地における相続税の納税猶予を受けると、解除した時点で以下の3つを納付する必要があります。

  • 猶予された相続税
  • 猶予された期間の利子税

そのため次の相続が発生したときに、指定を継続して納税猶予を受けないと、高額な相続税がかかるおそれがあります。

相続税の納税猶予は一見するとメリットのようですが、高額な相続税が予想されるケースでは、特定生産緑地制度の適用を延長する必要があります。

造成費とは、現在宅地ではない土地を宅地化する場合に発生する費用を指します。

そのため、本来は自由であるはずの土地の利活用を図ることができません。

特定生産緑地の指定を申請すべきケースは?

特定生産緑地の指定は市町村の判断で決まるため、適用申請をすると必ず指定されるわけではありません。

また制度は、前述したようにデメリットもあり、将来を見通して長い時間軸で判断する必要があるでしょう。

ここでは今後、生産緑地の指定後30年を迎える土地の利活用を考えるにあたってのポイントを紹介します。

農業に従事するなら申請する

農業を継続するなら特定生産緑地として指定を受け、引き続き固定資産税の農地課税を適用させましょう。指定期間は10年間のため、10年経過後の予定をある程度考え、長期的な見通しに基づいて決断しましょう。

相続税の納税猶予が適用されている場合は、10年後に再び特定生産緑地の指定を受ける必要があります。農業に従事することが条件なので、10年後、20年後と将来の姿をある程度見通して、相続についても考慮して決断しましょう。

農地として貸付するなら申請する

自ら農業を継続しない場合でも、農地を貸し付けることで、固定資産税を農地課税として、相続税の納税猶予を継続できます。

具体的には、以下2つの方法があります。

  • 農業を営む人に農地を貸す
  • 市民農園を開設する人に貸す

このような、自ら農業を営むのではなく農業を行う人に農地を貸し付ける方法は、2018年9月から施行された都市農地貸借法により可能になりました。

選択肢は広がっており、特定生産緑地として継続させるほうが大きなメリットになると判断できるケースが増えると考えられます。

農業を継続しないなら申請はしない

自ら農業を営む予定もなく他人に農地を貸し付ける方法も選択できない場合は、特定生産緑地の指定は申請しないほうがよいでしょう。そもそも指定される要件に該当しないうえ、農業以外の利活用ができないからです。

万が一指定されると、10年間は利用方法に制限を受け、売却もできません。

指定されない場合は、固定資産税は宅地並みに変更されます。

激変緩和措置が適用されるため、4年間の猶予期間があるケースはあります。しかし地域によっては、固定資産税がすぐに上昇するおそれがあります。

売却を含めた利活用の計画を早急に立てる必要があります。

売却するなら実績が豊富な不動産会社に相談しよう

生産緑地の指定が終了したとき、市町村に土地を買い取るよう申出ることが可能です。しかし、市町村が買い取ってくれるケースは少ないでしょう。

そのため、所有者が買主を探して売却するか、市街化区域の宅地として有効活用する方法を見つける必要があります。

相続税の納税猶予制度を受けていた場合は、その効力がなくなるため、相続税の納税も課題です。

生産緑地の売却は、専門家に相談しながら納税資金を含めた今後の計画を立てましょう。

また、特定生産緑地の指定を受けるという選択肢もあります。そのメリットとデメリットを判断し、活用方法を検討するうえでも専門家にアドバイスをもらいましょう。

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