不動産売却のノウハウ
所有する土地が生産緑地に指定されているなら、大きなメリットがあります。たとえば、その土地の固定資産税や贈与税、相続税などの税負担が少なくなります。
一方でデメリットもあります。生産緑地に指定されている土地は、農地として継続的に利用しなくてはいけません。一戸建てやマンションなどの建物を建てる場合は、各市町村の許可が必要です。
最近では、土地所有者の健康状態や農業不振などさまざまな状況を理由に、生産緑地の指定を解除して、宅地転用や売却を希望する方が増えてきています。
しかし、生産緑地の指定を解除するには、大きな制限が設けられています。
本記事では、生産緑地の指定を途中で解除する手続きなどを詳しく解説します。また、解除後の対応についても紹介します。
2022年9月9日
土地が生産緑地に指定されていると、その指定を解除するには手続きが必要です。
ただし手続きをすれば、どのような場合でも解除されるというわけではなく、解除のための条件が決まっています。
生産緑地の指定を途中で解除するには、以下の条件が必要です。
後者は、簡潔にいえばその土地で農業を営む人が死亡、または病気や事故などで農業を営むことができなくなった場合ということです。
つまり、農業従事者が健康な場合は、30年を経過しなければ指定を解除できません。
もともと生産緑地法は、制定された1974年当時の日本における人口増加に対応するために制定された法律です。具体的には、農地から宅地に転用することを目的としていました。
その結果、反対に農地不足によって生産力の低下が深刻化したため、1992年に農地を守るための生産緑地法へと改正されました。
そのため、指定を解除するための条件が厳しくなったといえます。
条件を満たした生産緑地の指定を解除するには、まず市町村に買取請求をする必要があります。
市町村および市町村があっせんした農業従事者が購入するケースは、めったにありません。
買取請求の申出日から3ヵ月以内に購入者が現れないと、生産緑地の指定が解除されます。農業を営む義務がなくなり、一般の土地と同じように扱うことが可能となります。
そのため、買取請求を実施してから3ヵ月後に、宅地転用が可能になると考えて問題ありません。
生産緑地は、2022年問題と呼ばれる懸念点を抱えています。
それは生産緑地法が改正された1992年に指定された生産緑地が、指定解除の条件である30年目を2022年に一斉に迎えることが原因です。
具体的に何月何日から指定解除になるかは、市町村により異なりますが、おおむね2022年4月1日からと見られています。
指定が解除されると、昨今の農業不振による影響から農業を継続しない土地所有者が多いと考えられています。そのため、多くの農地が宅地転用されて、一戸建てやマンション、アパートに姿を変えるといわれています。
その結果、不動産価格の暴落と農地不足を一気に引き起こすおそれが考えられます。この問題が、生産緑地の2022年問題といわれています。
特に都心部にある生産緑地はその傾向が顕著で、経済に対する大きな影響が懸念されます。
生産緑地の指定が解除されると、適用されていた税金などの優遇が受けられなくなります。
ここでは、生産緑地の指定解除による土地所有者への影響などを説明します。
最も影響を受けるのが、生産緑地の農地として軽減されていた固定資産でしょう。指定解除により優遇がなくなるため、その土地本来の固定資産税を納めることになります。
たとえば市街地でありながら農地として税金を納めていた場合、固定資産税は数10倍から数100倍に跳ね上がります。今までのように土地を保有すること自体が難しくなるかもしれません。
生産緑地の指定が30年を経過する前であれば、特定生産緑地の指定を申請できます。
生産緑地と特定生産緑地は似たような言葉ですが、内容は違います。特定生産緑地は、現状の生産緑地の仕組みを10年延長するものです。
宅地転用を実施せずに引き続き農地として活用する場合に、条件を満たせば申請ができます。
特定生産緑地に指定されると、引き続き固定資産税や相続税の優遇を受けられます。
生産緑地を相続する場合、相続税が猶予されます。
途中で指定が解除されると、本来払うべき相続税の残額、および未払い分の利子を納める必要があります。
そのため、生産緑地の土地を2代目、3代目と引き継いでいる場合は、相続税の扱いについて注意する必要があります。
生産緑地の指定が途中で解除されると、その土地の使い道を検討する必要があります。土地を使わなくても固定資産税などの負担があるため、放置することは避けるべきでしょう。
生産緑地の指定を受けている土地は、市街地の中にあるケースが多いです。
そのため、土地の一部または大部分の売却をして、マイホームの建設費用を捻出するのは有効な使い道といえます。費用の負担を抑えて、マイホームを手に入れられます。
また、土地の一部は引き続き特定生産緑地の指定を受けて農業を営みつつ、一部は売却し、そして一部はマイホームの建設という合わせ技もあります。
賃貸の住宅需要がある場合、マンションやアパートを建設して家賃収入を得るのはひとつの選択肢です。土地の大きさや利便性によっては、駐車場にして収入を得るケースも多いようです。
ただ前述したとおり、生産緑地は2022年問題を抱えています。特に周辺に同様の土地がある場合は、同じタイミングで同じ地域に新築マンションなどが建設される可能性があります。そうすると、入居者や利用者の奪い合いとなるかもしれません。
その結果、大量の空室が発生してしまい、賃料値下げの必要が出てきます。当初の計画から大きく相違が発生し、赤字になるおそれがあるので、気をつけましょう。
生産緑地は指定を解除するには、市町村へ買取請求が必要です。しかし、市町村が財政難の場合は、買い取ってくれることはあまり期待できないといわれています。これは、市町村があっせんするほかの農業従事者も同様でしょう。
多くの買取依頼が発生すると想定されるうえ、財政に余裕がある地方自治体は少ないです。
そのため、生産緑地の売却は、不動産会社に相談するのが一般的です。
まずは、自身が所有する土地の以下について算出しておきましょう。
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