不動産売却のノウハウ

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生産緑地の納税猶予を解説。
条件や申請方法をわかりやすくご紹介

生産緑地は固定資産税を大幅に減税でき、さらには相続税や贈与税の納税を猶予される仕組みもあります。

特に相続税の納税猶予は非常にメリットがあり、相続税が払えないことが原因で、農地を手放すということも減ります。

一方、生産緑地の納税猶予を受けるためには条件があり、条件を満たさないまま相続した場合は相続税に加え利子税も支払う必要があります。

この記事では、生産緑地の納税猶予を受けるための条件と申請方法について解説します。これから生産緑地を相続する可能性のある方は、ぜひ参考にしてみてください。

2022年9月9日

目次

相続した生産緑地が納税猶予できる理由や条件

生産緑地は相続時に指定を解除するかどうかを選択でき、指定を継続することで納税猶予を受けられます。

どのような条件が必要になるのかを、生産緑地の納税猶予が生まれた背景を含め解説します。

納税猶予の背景

そもそも生産緑地とはどのような土地なのでしょうか。生産緑地を一言で言うと、町の災害対策に不可欠な土地です。

日本では高度成長期以降、急速な都市化が進み、人口密度の上昇とともに都市部の農地減少が加速しました。その結果、雨水を貯水できる土地がなくなり、都市部ほど大きな災害が起きるようになっています。

こうした現状を改善するべく都市部の農地については生産緑地として指定し、都市部の災害対策としています。

これに伴い、農地を維持するための固定資産税を大幅に減額し、相続税も納税猶予が設けられるようになりました

納税猶予がなければどうなる?

固定資産税の優遇措置や相続税の納税猶予がない場合、所有者や相続人にとっては大きな税負担となります。

生産緑地は最低でも300㎡の面積となり、特に相続税が高額で支払うことができないケースが多いです。

支払うことができず、維持することもできなければ売却もしくは税金の代わりに物納することになります。どちらにせよ本来の生産緑地の目的を達成することができず、利用できない空き地が多く発生してしまいます。

このような事態を避けるため、生産緑地を維持することを条件に大幅な節税措置を受けられるようになりました。

平成30年に納税猶予制度が変更

生産緑地は平成30年に制度変更となりました。

変更の多くは生産緑地を継続してもらうことを目的とした、以下の内容になっています。

最低敷地面積の変更

これまでは500㎡だった最低敷地面積が300㎡に変更されました。これによって、生産緑地に指定できる条件が緩和されました。

買取申出時期の延長

生産緑地の指定を受けた土地は、30年間農業を継続する営業義務があります。この30年を超えると指定が解除されますが、生産緑地の買取申出が可能になります。

生産緑地の買取申出とは、生産緑地の指定後30年を経過したときに、市長に対して生産緑地を買取るよう申出ができる制度です。

しかし、30年経過する前に買取申出時期の延長を申請した場合は、これまで通り納税猶予を受けられます。

延長期間は10年となり、延長された生産緑地は特定生産緑地と呼ばれます。

特定生産緑地の指定をしないこともできる

30年経過した時点で指定解除し、特定生産緑地としないこともできます。

その場合はいつでも買取申出ができる一方、段階的に固定資産税が増額されます。最終的には税制優遇が撤廃され、市街化区域の宅地と同等の固定資産税評価額となるため注意が必要です。

相続税の納税猶予ができる条件

相続税の納税猶予を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。

被相続人と相続人のそれぞれ主な条件を紹介します。詳細は国税庁の「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」にて確認ができます。

被相続人

被相続人は亡くなった、その日まで農業をしている必要があります。途中で農業を止めていた場合は猶予を受けられません。

ただし、障害や病気などで農業ができないため生産緑地を貸付し、その旨を税務署長に届け出していた場合は猶予を受けられます。

その場合は、賃借権登記をしておく必要があるため、必ず司法書士に依頼し登記をしておくようにしましょう。

被相続人

相続人が納税猶予を受けるためには、上記の被相続人の条件がクリアされていることが前提条件です。

その上で相続税の申告期日までに農業を開始し、その後も農業を継続できることが認められる必要があります。

その他にも、生前一括贈与を受けた人が農地の運営を譲渡し、その旨を税務署長に届け出た場合も納税猶予を受けられます。

ただし、その場合は特例付加年金または経営移譲年金の支給を受けることを目的としており、譲渡人が相続人限定である他、使用賃借権の設定なども必要です。

非常に複雑なルールとなっており、該当しているかどうかは税務署もしくは最寄りの不動産会社に相談するようにしましょう。

申請方法や必要書類

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納税猶予を受けるためには農業委員会と税務署へ届出をする必要があります。

申請方法や必要書類が定められているため、正しい手続きを行う必要があります。

納税猶予を受けるための、申請方法や必要書類について紹介します。

農業委員会に依頼する

まずは農地がある地域の農業委員会に相続税の納税猶予に関する、適格者証明願を提出します。

この書類は、被相続人が死亡の日まで農業を営んでいたこと、農業相続人が農業経営を継続することを証明する書類です。

適格者証明願が承諾された場合は、適格者証明書が発行されます。

税務署に必要書類を提出する

適格者証明書が発行されると税務署に提出します。その際には生産緑地を担保として提供する手続きも必要です。

税務署に提出する際の主な必要書類は下記のとおりです。

  • 適格者証明書
  • 担保提供書
  • 抵当権設定登記申請書

3年ごとに継続届出書を提出する

一度納税猶予の承諾を得たら申請は終了ではありません。

納税猶予を継続するためには、3年ごとに継続届出書を税務署に提出する必要があります。

農業が継続できなくなった場合は生産緑地の指定は解除され、納税猶予も打ち切りになるためです。

納税猶予は打ち切られることがある

納税猶予の許可を得ることができたとしても、後から納税猶予が打ち切られるケースがあります。その場合は猶予がなくなるため、納税義務が発生します。

多額の税金を納めることにならないよう、ポイントを抑えておく必要があります。

生産緑地が解除となった

生産緑地の指定を受けることで納税猶予となるため、指定解除となった場合は当然納税猶予は打ち切りになります。

指定解除は農業経営を辞めた場合はもちろんですが、30年の指定期間が過ぎる前に特定生産緑地の申し出をしなかった場合でも打ち切りとなってしまいます。

継続した方がよいのかどうかはケースバイケースになるため、不動産のプロに相談しながら決めるようにしましょう。

農業継続ができなくなった

相続時点では農業を継続する意思があったものの、病気やケガで継続ができなくなり貸付もできなければ納税猶予は打ち切りになります。

生産緑地の指定は30年と長期間になるため、どのようなことが起きるか分かりません。そのため、万が一継続ができなかった場合の貸付先や後継者は用意しておくとよいでしょう。

相続時にまで遡って課税される

納税猶予が打ち切りになった場合、相続時まで遡及し税金が発生します。さらには利子税も追加で納税義務となるため、結果的に相続税は増額することになります。

打ち切りには、一部確定と全部確定の2つがあります。

一部確定は、適用対象外となった部分に対応する相続税と利子税のみを納める必要があります。全部確定は、猶予されている相続税全額と利子税を納めなくてはいけません。

生産緑地の相続はプロに相談しよう

生産緑地は都市部を災害から守る事を目的とした仕組みのため、他の土地のように簡単に処分することができません。さらに農業を継続する必要もあります。

その一方で相続税の納税猶予や固定資産税の大幅な減額といった節税措置があり、メリットも大きいです。

しかし、このメリットを受け続けるためには生産緑地もしくは特別生産緑地の指定を継続する必要があります。継続できなかった場合は相続時まで遡及して納税義務が発生し、利子税も合わせて支払うことになります。

このため、生産緑地の相続を受ける前に指定継続するかどうかはしっかりと検討する必要があります。

とはいえ、生産緑地の継続方法や猶予される税金などは非常に複雑です。そのため、必ず土地のプロである不動産会社に相談し、失敗しない選択をするようにしましょう。

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