不動産売却のノウハウ
所有している家が水害に遭ってしまっても、売却することはできます。災害に遭っていない家と比べると売れにくいという欠点はありますが、まったく売れないわけではありません。
水害に遭った家を売るときに、少しでも早く・高く売るため、どういったことをすればよいのか解説します。売れないかも…と悩む前に、まずはチェックしてください。
不動産お役立ちコラム 基礎知識2023年7月7日
水害に遭った家は売却できないと思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。豪雨や台風による、水害に遭った家でも売却はできます。
ただし、一度被害に遭った家は「また同様の災害に見舞われるのでは?」という懸念から、なかなか買主が見つからないのも事実です。買主の心理的影響から相場価格で売却することは難しく、売却価格はもともとの相場より2~3割程度下がる傾向にあります。
水害による被害を受けた家は人気が低く、購入希望者があらわれにくいです。しかし、被害に遭った住宅であっても一定条件を満たせば、スムーズに売却できることがあります。好条件で売却できるケースには、次のものがあります。
それぞれについて解説します。
駅から近い住宅や周辺にスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの生活利便施設がある住宅は物件価値が高く、売れやすくなります。
また、近隣に教育施設や医療機関が充実している物件も人気があり、需要が高いです。こうした立地条件のよい物件や周辺環境に恵まれている物件なら、たとえ水害を受けていても早期に売却できるでしょう。
水害を受けた地域であっても、再発防止策を徹底している場所なら売却先を見つけやすくなります。
物件を購入する前に、水害対策がきちんと講じられているのがわかることは、買主にとって大きなメリットです。水害に強い街づくりが推進されているなら、安心して購入を決断できるためスムーズな売却を期待できます。
次に水害に遭った家を売却するときは、浸水被害を受けたことを告知する義務があります。
「少しの浸水被害なら買主に伝える必要はない」と考える方もいるかもしれませんが、浸水被害は契約を結ぶ前の告知事項です。多少の被害であっても、必ず買主に知らせなくてはなりません。
もし、被害を受けているのに購入希望者へ告知しないと、売主は契約不適合責任に問われるおそれがあります。
告知義務とは売却に出す不動産に関して、生活に支障をきたすほどの不具合がある場合、契約を結ぶ前に伝えなければならないとするものです。
宅地建物取引業法では、取り引きする相手の判断に重要な影響をおよぼす事柄についてわざと伝えないことや、嘘をいうことを禁止しています。告知事項を伝えず契約を締結してしまうと、不適合責任を問われるため注意しましょう。
契約不適合責任とは、引き渡された目的物の種類や数、品質について契約時の内容と適合しないときに売主が問われる責任のことです。責任を問われた場合、契約解除や損害賠償請求などに発展します。
少しでもお得に取り引きしようと浸水被害の事実を隠して契約を進めると、反対に大きな損失を招く場合があります。浸水被害はもちろんのこと、そのほかの告知事項があれば必ずすべて伝えましょう。
水害に遭ったエリアは住宅需要が下がることから、家だけでなく地価も下がる傾向にあります。
一度災害が起きたエリアに、わざわざ住みたいと思う人は少ないでしょう。また、同様の災害に備えて引っ越す人もいるかもしれません。人口減少にともなう人気の低さも相まって、水害が起きたエリアは地価に影響が出るおそれが高いです。
水害に遭った家を売却するときのポイントを6つ紹介します。購入希望者がなかなか見つからない場合は、次に紹介するポイントを検討してください。
それぞれのポイントを詳しく解説します。
ホームインスペクションを実施することで家の現況を把握でき、買主も安心して取り引きを進められます。
ホームインスペクションとは第三者の調査機関へ依頼し、客観的に住宅の調査・診断をすることをいいます。ホームインスペクションを行うことで、水害を受けた家の状態を知れる点がメリットです。ホームインスペクションの実施後、特に不具合がなければ問題なく売却できます。
ただし、診断に費用がかかる点や依頼する会社によって診断の精度が変わる点はデメリットです。会社ごとに診断範囲や内容が変わるため、依頼するときは事前によく打ち合わせをしましょう。
地盤調査を行って土地の強度を確かめるのも、買主の安心感を高めるのに効果的です。水害に遭った土地は土地が柔らかくなってしまったり、コンクリートが傷んでしまったりすることがあります。地盤調査をすることで土地の状態がわかり、売主は地盤沈下のリスクがあるかどうかを判断できます。
地盤調査には費用がかかるのが欠点です。また、調査結果によっては地盤の強化などに多額の費用が必要になります。
浸水した家は外壁のひび割れや玄関扉のずれ、床の傷み、壁の汚れなど家の内外にさまざまな不具合が生じています。
不具合が残ったまま売りに出すこともできますが、できれば補修するのがおすすめです。不具合を残したままだと物件価値が低く、安い価格でしか売却できないおそれが高いです。
ただし、補修箇所が多い場合は、それだけ費用がかかるため注意しましょう。床下浸水ならそれほど大規模な補修は必要ありませんが、床上浸水だとそうはいきません。床や壁をすべて取り払って新しいものに交換するなど、大きな工事になることがあります。補修にかかる費用や売却できる価格のバランスをよく検討しましょう。
国土交通省は戸建て住宅における浸水について、宅地基礎から50cmまでを「床下浸水」、50cmより上が水に浸かる状態を「床上浸水」と定義しています。
床上浸水の被害を受けた場合、床や壁の張り替えだけでなく、災害ゴミの発生や電化製品の浸水など大きな被害が生じます。床上浸水の被害に遭うと、ゴミの処理や家財道具の処分、家屋内の消毒など売却するまで非常に手間がかかります。
床下浸水であっても油断は禁物です。そのまま放置すると住宅の基礎部分が大きなダメージを負うため、十分に乾燥させて建物の劣化や害虫の発生を食い止めなくてはなりません。
水害に遭った家を補修するだけでなく、間取りや設備などもいまの需要に合わせてリノベーションを行い、物件価値を高めることで早期の高値売却ができる可能性があります。
リノベーションの注意点は、売主目線で行わないことです。売主目線で間取りを変更したり、設備を取り替えたりすると、逆に購入希望者が見つかりにくくなることがあります。
いまの家の持ち主は売主ですが、これから生活するのは買主です。リノベーションを検討しているのであれば、不動産会社に相談していまの市場のニーズに合ったリノベーションを行いましょう。
被害状況によっては補修工事をするより、更地にしたほうが安く済む場合があります。
買主にとっても更地は、購入後の自由度が高いことがメリットです。新たに住まいを建てたり、駐車場にしたりさまざまな用途に活用できます。
更地にするには解体費用がかかるのがデメリットです。また、水害に遭った土地のため、更地でも購入したい人は少ないかもしれません。不動産会社に相談のうえで、更地にするかどうかを検討しましょう。
買主を探すことなく、不動産会社に買い取ってもらうこともできます。一般的な不動産売買は不動産会社が買主を探す「仲介」ですが、不動産会社が買主となって不動産を買い取る「買取」という方法もあります。
買取は買主を探す必要がないため、時間をかけずに現金化できるのがメリットです。また、不動産会社が買主になるため、売れやすくなるように対策を講じる必要もありません。
しかし、買取には仲介に比べて売却価格が低いというデメリットがあります。不動産会社は買い取ったあと、リフォームやリノベーションして再販売することを目的にしているため、その費用があらかじめ差し引かれているのです。
しかし、売れにくい水害に遭った家をスムーズに売却するのであれば、短期間で手放せる買取を検討するのもおすすめです。