不動産売却のノウハウ
リースバックとは、持ち家を不動産会社に買取してもらったあともそのまま住み続ける契約形態のことです。
不動産所有者は不動産会社から買取代金の支払いを受け、そのまま賃貸借契約を締結します。そして、借家という形態で家賃を支払い、そのまま住み続けることになりますが、リースバックは家賃が高く設定される傾向にあります。リースバックでまとまった資金を得たものの、家賃が高くて生活が苦しくなっては本末転倒です。
そのため、リースバックを利用する前にリースバックの家賃相場と、家賃を抑える方法についてはしっかり理解しておきましょう。
不動産売却 リースバック2023年7月7日
リースバックは元々家の所有者だったという点を除けば通常の借家契約と同じですが、一般的な家賃相場よりも高くなる傾向にあります。
そのため、リースバック契約を締結する際の家賃に違和感を覚える賃借人も多いでしょう。リースバックの家賃相場と算出方法、高くなる理由について解説します。
そもそも家賃は周辺の相場を考慮し設定することが一般的です。
物件の所有者が収益を上げるためには家を借りてもらう必要がありますが、よほど魅力がなければ周辺相場よりも高くすることは難しいでしょう。そのため、築年数や建物面積、立地などの条件に差がなければほとんど同じ家賃となります。
しかし、リースバックを利用する人は「そのまま住み続けたい」という要望があります。つまり、借り手が固定されており、さらには退去する可能性が低いです。
これにより周辺相場ではなく、買取価格や再販価格をベースとした家賃設定となります。
リースバックを利用するときに、住宅ローン残債が多い場合は注意が必要です。
不動産会社が買取をするということは、所有権が変わるため抵当権の抹消が必要です。抵当権を抹消するには、残債を完済する必要があります。しかし、残債が1,200万円で買取価格が1,000万円のようなケースでは、買取価格が残債を下回ってしまうため完済ができません。
この場合は、不動産会社が買取価格を高くすることで完済できるようにします。しかし、買取価格を高くすれば、その分をほかから回収しなければいけません。基本的に回収は家賃からされるため、残債が多いときは家賃が高くなりやすいです。
リースバックの家賃は物件の影響を大きく受けるものの、一般的には買取価格の8〜10%程度になるケースが多いです。
価格の内訳例(戸建ての場合)は次のようになります。リースバックを利用する際の参考にしてください。
買取価格 | 1,800万円 |
固定資産税精算金 | 約10万円 |
合計‐① | 約1,810万円 |
売買諸費用(登記) | 約10万円 |
売買諸費用(手数料) | 66万円 |
合計‐② | 約76万円 |
賃借人諸費用(敷金、礼金) | 約50万円 |
賃借人諸費用(火災保険) | 約5万円 |
賃借人諸費用(家賃保証) | 約20万円 |
合計‐③ | 約75万円 |
合計①‐(合計②+合計③)(オーナーの手残り額) | 約1,659万円 |
設定家賃 | 月額15万円 |
年間家賃額/買取金額 | 約10% |
上記の例では約1,659万円の売却益を得る代わりに、月額15万円の家賃を支払うことになります。このように、リースバックの見積もりと内訳を確認することで具体的な金額のイメージをもつことができます。
リースバックの家賃は物件の所有者が計画した収益計画に基づき設定されるため、契約後の家賃減額交渉は非常に難しいです。
そのため、家賃の交渉は契約締結前にしておくことが重要です。リースバックの契約をする際には事前に以下で解説するポイントを押さえ、納得のいく内容で締結しましょう。
リースバックの家賃は買取価格の8〜10%となるため、買取価格を下げると家賃は安くなります。これは不動産会社からすれば家賃収入が減っても買取価格が安く済めば、トータルでマイナスにならないためです。
また、買取価格が下がると仲介手数料や印紙代が下がるケースもあるため、家賃減額に対し大きな効果があるでしょう。
ただし、この場合は当然手残り額も少なくなるため、価格の低減幅は慎重に判断する必要があります。
リースバックを提供する不動産会社のなかには、月々の家賃が少なくなるようなサービスを提供していることがあります。
既に紹介した買取価格を下げる以外にも、フリーレント期間が設定されていて数カ月は家賃が無料になったり、賃貸借契約時に必要な敷金・礼金を無料にすることで初期費用を大きく抑えられたりするサービスがあります。
リースバックに参入する不動産会社は増えているため、各不動産会社からさまざまなサービスが打ち出されています。情報収集を十分にしたうえで、取引する不動産会社を選ぶとよいでしょう。
リースバックは数年前から急激に市場が伸び、今や多くの不動産会社が参入しています。
不動産会社の提案内容に大きなバラつきがあり、なかにはノウハウがまったくなく見当違いの査定額を提示する不動産会社もいます。このような不動産会社とリースバック契約を締結した場合、長期間にわたって大きな損失をしてしまうこともあるでしょう。
こういったリスクを下げるためにも、リースバックは専門の事業者か実績数が多い不動産会社を選ぶことをおすすめします。
リースバック契約を締結し生活を継続していくなかで、家賃の支払いが難しくなるケースもあります。このような事態になった場合、どのような対処方法があるでしょうか。
リースバックで家賃の支払いが難しくなった場合について解説します。
保証人がいる場合は、家賃の支払いを頼んでみましょう。
保証人は賃借人が支払い困難となった場合に家賃を代わりに支払う義務があり、保証人がいることで保証会社への加入費用が抑えられます。
また、万が一賃借人が失踪した場合はどのみち保証人が債務を請け負うことになります。そのため、家賃が支払えない場合はなるべく早めに保証人へ相談することが重要です。
家賃の滞納が3カ月を経過すると、ほとんどの賃貸借契約は解除となります。
賃貸借契約が解除されると、最終的には強制退去させられます。強制退去の日が近くなってから転居先を探し始めても、そうすぐには見つかりません。家賃の支払いが難しくなる前に転居先を見つけておき、速やかに退去できる準備をしましょう。
リースバックは持ち家を売却し売却益を得られるものの、周辺相場よりも高い家賃を支払いながら住み続けることになります。
そのため、売却益や相続税対策といったメリットと支払いが継続するデメリットを十分に検討し、後悔のない選択をする必要があります。そのためにもリースバックを検討するタイミングでまずは不動産会社に相談し、家賃設定と売却益の見積もりを取ることをおすすめします。
今後の生活がどのように変わるのかをイメージしたうえでリースバック契約を締結することが重要です。