不動産売却のノウハウ
戸建てを売却するとき、築年数が価格に大きく影響します。これは戸建て住宅の多くが木造で、耐用年数が短いことが原因です。だからといって、築古の戸建てが売れないとは限りません。いま住宅価格が高騰しているからこそ、安く買える中古住宅に売却のチャンスがあるのです。
戸建てを売却するときの築年数の関係について解説します。
不動産売却 基礎知識2023年7月10日
戸建ての築年数は、マンションなどの集合住宅に比べると売却価格に大きな影響をもたらします。戸建ての売却価格が築年数に左右されるのは、一般的な戸建ての構造と建物の評価額を決めるときに使う耐用年数が原因です。
戸建て住宅は木造、マンションは鉄筋コンクリート造が一般的です。木造住宅の耐用年数は22年、鉄筋コンクリート造は47年と木造は鉄筋コンクリート造の半分ほどの期間しかありません。耐用年数は税金や資産性を計るための目安であるため、耐用年数が過ぎた建物でも住むことは可能です。
しかし、建物は耐用年数を過ぎると資産価値を失ってしまうことから、期間が短い戸建ての築年数は売却価格に多大な影響を与えます。とはいえ、耐用年数が過ぎていても売却できないわけではありません。ただし、建物の価値は査定価格に反映されにくく、土地の価値のみで計算することとなります。
築年数の古い戸建ては、耐用年数が経過していることや建物に劣化が見られることなどを理由に、高値で取引できないのが一般的です。首都圏における中古戸建て住宅の築年数と成約価格の関係は次のグラフのとおりです。
参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」
グラフから築5年以内と築20年以上の戸建てでは、成約価格に約1,000万円の大きな差が生じていることがわかります。
戸建て住宅は、築20年を迎えると耐用年数の残りが少なくなることから資産価値はほとんどなくなります。また、国土交通省の発表資料でも、住宅の価値は年月が経つとともに減少し、戸建てでは築20年で価値がほぼゼロになるとされています。
参考:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
築5年以内の戸建ては、築浅として人気のある物件です。新築さながらの姿なら購入時と変わらない価格で取引できるでしょう。
ただし、短い入居期間で売りに出すときは、売却に至った理由を正直に買主に伝えるべきです。購入希望者から売却理由を質問されたとき、あいまいに答えてしまうと「訳アリ物件かもしれない…」と敬遠されるおそれがあります。
また、不動産を売却して利益が生まれた場合に発生する譲渡所得税は、売却した年の1月1日時点でその不動産の所有期間が5年以下だった場合は、短期譲渡所得と呼ばれ、通常よりも高い税率になってしまうため注意が必要です。
築6~10年の戸建て住宅も購入需要が高く、スムーズに売りやすい物件です。とはいえ、築10年を迎えると耐用年数の減少にともない、資産価値も半分ほどになります。売却を前向きに検討しているなら、築10年になる前に決断するとよいでしょう。
築11年~20年の戸建ては、やや資産価値は落ちるものの売却できる物件です。特に築11~14年の戸建て住宅なら、時間をかけることなく買主を見つけられるでしょう。
しかし、築15年以上の戸建てとなると、そう簡単にはいきません。購入希望者があらわれるまで時間を要する場合もあるため、余裕を持った売却計画を練ることをおすすめします。
築21年以上の戸建ては、建物価値がほぼゼロとなり、土地の価値のみで売却することになるのが一般的です。築後かなり月日が経過している物件なら、古家つきの土地として売り出されます。
ただし、築後21年以上経過しているからといって、必ずしも売却が難しくなるわけではありません。昨今、古民家を活用したビジネスが普及していることから、スムーズに売却に至るケースもあります。特に、立地に恵まれている戸建てなら、価格は下がらずすぐに購入希望者があらわれるかもしれません。
戸建ての売却価格は、築年数だけでなく日照や周辺環境といったさまざまな条件により決まります。そのため、似たような戸建てであっても、まったく同じ価格がつくことはありません。
戸建ての売却相場の調べ方を3つ紹介しますので、可能であればすべての方法を試し、自宅がどれくらいの価格で売れるのか把握しましょう。
レインズ・マーケット・インフォメーションとは、不動産流通機構が管理運営するサイトです。売り出したい戸建てのある地域や最寄り駅、間取りなどの情報を入力することで、似ている条件の物件の成約価格をチェックできます。
参考:不動産流通機構「レインズ・マーケット・インフォメーション」
戸建てに限られたことではありませんが、不動産を売却するなら過去の取引事例とあわせていまの市場を把握することも大切です。
いまの市場の状況を押さえるには、不動産流通機構が管理運営する月例マーケットウォッチの活用をおすすめします。月例マーケットウォッチでは、現在における中古戸建て住宅の価格を確かめられます。
参考:東日本不動産流通機構「マーケットデータ」
自宅の状態から売却価格を調べるなら、不動産会社に査定依頼しましょう。不動産取引のプロの目線から物件を見てもらうことで、適正な売却価格を把握できます。
不動産会社に査定依頼するときは、必ず複数社に依頼しましょう。不動産査定には明確な基準が設けられていないため、会社ごとに査定結果が異なります。最低でも2~3社に依頼し、結果を比較してから売却を頼む会社を決めましょう。
また、査定依頼前に売主自身が大まかな相場価格を知っておくことも大切なポイントです。相場価格を把握していなければ査定額が高値なのか、安値なのか判断できません。
レインズ・マーケット・インフォメーションや月例マーケットウォッチなどのサイトを活用し、相場価格を押さえてから査定依頼するのがおすすめです。
最後に、築20年以上の戸建てを高く、早く売る方法を5つ紹介します。ぜひ、所有している物件に適した方法を取り入れてみてください。
ホームインスペクションを実施して、物件の安全性を証明できます。ホームインスペクションでは、物件の不具合や劣化状況、修繕が必要な時期といった建物の現況を把握できます。
築古物件は経年劣化による建物の不具合が懸念されますが、ホームインスペクションで安全性が証明されていたら買主は安心して物件購入に踏み切れます。
土地を売却するとき、売主は隣地との境界線を明らかにする必要があります。
隣地との境界線がわからない土地は、購入後隣地の所有者とトラブルになるおそれがあることから敬遠されがちです。また、売り出す土地の正確な面積がわからなければ適正な売却価格をつられなくなります。
壁の小さな穴や浴室のタイルの欠けなど小さな破損なら、売り出し前に修繕するとよいでしょう。
ただし、大規模な工事になるほど破損箇所がある場合、売却前の修繕はおすすめしません。多額な費用をかけて修繕しても必ず売却できるとは限らないため、大きなお金が動くような工事は避けたほうが賢明です。
ハウスクリーニングでは、掃除のプロが一般人ではなかなか手が届きにくい箇所まで、きれいに清掃してくれます。
ハウスクリーニングのメリットは、掃除にかかる手間と時間を節約できることです。床やキッチン、水回りなど部分ごとに合わせた掃除グッズを購入することなく、清掃の時間を取られることもありません。
リノベーションすることで古く年季の入った空間も、現代の需要に合った姿に生まれ変わります。
とはいえ、売り出し前に売主目線で施工するのは避けるべきです。売主側と買主側の求める姿が合わず、売却期間が長引くおそれがあります。
国土交通省の調査によると、戸建て住宅の価格は年々上昇傾向にあることがわかっています。新築戸建ての価格が高騰しているからこそ、新築より安価で購入できる中古戸建ての需要も高く、いま売りに出せば高値での取引が期待できるでしょう。
また、近年古民家再生の動きが活発であることから、築年数が古い建物もスムーズに買主が決まる可能性があります。築古戸建ての売却を検討しているなら、いまがチャンスです。
参考:国土交通省「不動産価格指数(令和5年1月・令和4年第4四半期分)」