不動産売却のノウハウ
不動産は売却するときにも税金がかかります。どういった取引でもかかるものから、高く売却できたときにかかる税金まで、不動産売却に関する税金にはさまざまなものがあります。
特例を利用すれば節税できるものもあるため、不動産を売却するときは、あらかじめ税金について調べておきましょう。
不動産売却 費用・税金2023年8月25日
不動産を売却するときには、さまざまな税金がかかります。売却で得たお金が、すべて自分のものになるわけではないため注意しましょう。もっとも高額な税金は翌年の確定申告で支払うことになるため、高く不動産が売れたときほど注意が必要です。
この記事では、はじめての人でもわかるように、不動産売却でかかる税金について解説します。
不動産を売却するときには、次の税金がかかります。
税金の種類 | 税金の概要 | |
---|---|---|
登録免許税 | 抵当権抹消、不動産名義変更などにかかる | |
印紙税 | 売買契約締結時に、印紙を購入して納付する | |
譲渡所得税 | 所得税 | 不動産売却で得た利益に対してかかる |
住民税 |
それぞれの税金について詳しく説明します。
登録免許税は、不動産を売却して名義の変更をするときに必要になる税金です。土地や建物の売買で持ち主が変わるときは、「所有権移転登記」という登記の書き換えを行わなければなりません。また、売主が不動産を売却したときに、住宅ローンの返済が残っている場合は、「抵当権抹消登記」が必要です。
登録免許税の納税額は、登記の種類によって異なります。なお、不動産登記は専門的な知識が必要になるため、土地家屋調査士、司法書士など専門的な知識を持った第三者に依頼するのが一般的です。
印紙税は不動産を売買したときに、売買契約書や請負契約書などの課税文書と呼ばれる書面に貼付し納税します。印紙税の額は、課税文書に記載されている契約金額によって異なります。
納税金額は以下の表をご確認ください。なお、不動産売買契約や建築請負契約は、特例として2024年3月31日までは軽減措置が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 | |
---|---|---|---|
10万円を超え50万以下のもの | 400円 | 200円 | |
50万を超え100万以下のもの | 1,000円 | 500円 | |
100万を超え500万以下のもの | 2,000円 | 1,000円 | |
500万を超え1,000万以下のもの | 1万円 | 5,000円 | |
1,000万を超え5,000万以下のもの | 2万円 | 1万円 | |
5,000万を超え1億以下のもの | 6万円 | 3万円 | |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
不動産売却で得た利益には、所得税と住民税の支払い義務が発生し、この2つをあわせて譲渡所得税と呼びます。ちなみに、不動産を売却しても利益が発生していなければ、譲渡所得はかかりません。
譲渡所得にかかる税率は、売却する不動産の所有期間によって異なります。不動産を売却した年の1月1日時点で不動産所有が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、不動産の所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」の税率が適用されます。
譲渡所得の種類 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得(5年以下) | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得(5年以上) | 15.315% | 5% | 20.315% |
大事な資産を売却したものの、「思っていた以上に税金がかかってしまった」ということがないように、あらかじめ税金の金額を把握しておくことは非常に重要です。
ここからは、登録免許税と譲渡所得税の具体的な計算方法を解説します。
不動産の売買では所有権移転登記などで登録免許税がかかります。ただし、所有権移転登記にかかる登録免許税は、一般的に買主が負担することになっています。そのため、売主は支払う必要がありません。
売主が負担する登録免許税としては、抵当権抹消登記があります。これは住宅ローン返済中だった場合に、金融機関に設定された抵当権を抹消するために必要です。住宅ローンを完済しても自動的に抵当権は抹消されず、売主で手続きを行わなくてはなりません。
抵当権抹消の登録免許税は、不動産ひとつにつき1,000円です。マンションを売却したときは、土地と建物で1,000円ずつかかります。また、土地だけでも1筆に対して1,000円かかるため、3筆になっている場合は3,000円です。
不動産売却でかかる税金のなかで、もっとも高額になるのが譲渡所得税です。譲渡所得税は不動産を売却したときの売却金額から、不動産を購入したときの代金(取得費)と売却時にかかった費用(譲渡費用)を引いて出た利益にかかる税金のことをいいます。
譲渡所得=売却価格-(取得費用+譲渡費用)
売却価格 | 土地・建物の売却費用と固定資産税・都市計画税の精算金をあわせた金額のこと |
---|---|
取得費用 | 不動産購入にかかった費用のこと。物件の購入代金や建築費用、購入時にかかった税金、仲介手数料、測量費、設備費など |
譲渡費用 | 不動産売却にかかった費用のこと。仲介手数料、印紙税、建物解体費など |
さらに建物を売却する場合は、取得費用から「減価償却費」を引いて計算する必要があります。
減価償却費=取得費用×0.9×償却率×経過年数
建物は時間の経過とともに価値が減少しますが、これを「減価」といいます。譲渡取得費用を計算する際は、取得費から減価償却費を差し引く必要があります。居住用の耐用年数と償却率は以下の通りです。
建物構造 | 耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
木造 | 33年 | 0.031 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 |
それでは、実際に譲渡所得税を計算してみましょう。例に挙げている不動産を売却するときは、所有期間が10年を経過しているため、譲渡所得税の税率は20.315%になります。
売却物件:築18年の木造2階建て
取得諸費用:200万円
売却価格:4,500万円
譲渡費用:200万円
まずは減価償却費用を算出します。
建物取得費用2,000万円×0.9×木造の償却率0.031×18年=1,004.4 万円
取得費用から減価償却費用を引きます。
取得費用5,000万円+取得諸費用200万円-減価償却費1,004.4万円=4,195.6万円
最後に譲渡所得を算出します。
売却価格4,500万円-(取得費用4,195.6万円+譲渡費用200万円)=104.4万円
この例では、譲渡所得の104.4万円に譲渡所得税がかかります。しかし、居住用不動産を売却する場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用できます。
譲渡所得104.4万円-特別控除3,000万円=-2,895.6万円
特例が適用されると譲渡所得がマイナスになるため、譲渡所得税はかかりません。
不動産売却では節税につながる特例を利用すると、税金の発生するケースはそれほど多くはありません。どのような特例があるのが、不動産売却をするときはチェックしておきましょう。
特定を利用するには条件がありますので、自身のケースに当てはまるか確認してください。
マイホームを売却するときに、譲渡所得から3,000万円を差し引ける特例です。この特例を利用すると、譲渡所得から3,000万円が控除されるため、3,000万円以下であれば譲渡所得税がかかりません。3,000万円を超えるケースでも、大幅な節税になります。
ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を利用するには、主に次の条件に当てはまる必要があります。
これらの条件だけでなく、そのほかの特例の適用を受けていると特例を利用できないこともあります。
また、家を売却して新しい家を購入するときに、この特例の適用を受けていると住宅ローン控除を受けられなくなります。買い換えで売却を検討している場合は注意が必要です。
詳しくは「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご確認ください。
所有期間が10年を超えるマイホームを売却するときに、譲渡所得税の税率が軽減されます。5年を超えて所有していた住居には、税率20.315%の長期譲渡所得が適用されますが、10年以上所有している場合は14.21%に軽減されます。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例との併用が可能です。そのため、マイホームの売却であれば、さらに大きく税率を抑えられるでしょう。
利用にあたっては、次の主な条件に当てはまる必要があります。
詳しくは「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご確認ください。
これまで紹介した特例は、自分が住んでいたマイホームを売却するときに受けられる特例です。相続した空き家の3000万円特別控除は、相続した家が空き家になっているときに利用できる特例です。
相続した空き家を売却して利益が出たときに、譲渡所得を3,000万円まで控除できます。適用にあたって、主に次の条件に当てはまる必要があります。
条件の見落としがないように、あらかじめ確認しておきましょう。
詳しくは「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご確認ください。