不動産売却のノウハウ
消費税は、商品やサービスなどの価格に上乗せされて課税される税金です。では、不動産を売却する際には、どのような消費税がかかるのでしょうか。
不動産取引における、課税対象になるものと課税対象にならないものを詳しく紹介します。消費税の課税対象は「個人」「法人」などによって異なるため、しっかりと確認しておきましょう。
不動産売却 費用・税金2023年8月25日
消費税は不動産取引に関わらず、課税対象のものと課税対象にならないものがあります。以下の4点をすべて満たす取引が消費税の課税対象となります。
それぞれ詳しく解説していきます。
消費税の課税対象となる取引は国内で行われた取引に限られます。
とはいえ、取引の内容によっては国内と国外にわたって行われるものもあります。そのような取引の場合、国内取引に該当するか、国外取引に該当するか、判断が難しいと感じるでしょう。
この判断は取引の内容によって個別で判断されるため、一概にはいえません。そこで、国税庁が公開している判断基準を2つ紹介します。
1つ目は資産の譲渡や貸付の場合です。このような取引では、譲渡や貸付の対象となる資産の所在地によって国内取引か国外取引か判断されます。たとえば、日本にある不動産を国外の個人や法人に売却する場合は国内取引となります。
2つ目は役務の提供の場合です。役務の提供は、有償で行われる取引であり、不動産でいえば、仲介業務や土木工事などが該当します。役務の提供が行われた場所が国内の場合、国内取引とみなされます。役務の提供についての詳細は後述します。
ご自身で判断が難しい場合は税務署や税理士に相談してみてください。
事業者とは「法人」や「事業を行う個人」が該当します。
法人が行う取引は事業としてみなされます。一方で、個人の場合、事業者と消費者の両方の立場を兼ねているため、取引の内容によって変わります。たとえばプライベートで使っているパソコンを売却しても消費税は非課税ですが、個人事業主が事業で使用していたパソコンを売却した場合、売却代金は課税対象です。
プライベート用のものか、事業用のものか、という点が判断のポイントです。
対価を得て行う取引とは、反対給付として対価を得る取引のことです。
たとえば、消費者がコンビニやスーパーなどで商品を購入する行為は、お店側が商品を消費者に提供し、その対価として消費者から金銭を受け取る取引となっています。
このような「対価と引き換えに、相手に資産を譲渡する取引」は消費税の課税対象となります。対価が金銭以外、物々交換のようなケースでも、反対給付があれば課税対象です。
一方で、寄附金や補助金を受け取るケースのような、対価が発生しない場合は「対価を得て行う取引」に該当せず、消費税の課税対象となりません。
資産の譲渡・貸付け・役務の提供、それぞれの意味を簡単にまとめます。
資産の譲渡とは、保有している資産をそのままの状態で他人に渡すことをいいます。該当する取引は売買や交換などです。
資産の貸付とは、自動車のレンタルや事業所の賃貸借のような、賃料を受け取る取引です。
役務は他人のために行う労働やサービス、といった意味を持ちます。そのため、役務事態には対価が発生するかどうかは関係ありません。国税庁が示す役務の具体例には以下のようなものが挙げられています。
消費税の課税対象になる取引について理解したところで、不動産売却と消費税についてみていきましょう。
先述しましたが、消費税の課税対象となる取引は以下の4点をすべて満たす取引です。
では、不動産売却で消費税が発生するケース・消費税が発生しないケースについて解説していきます。
まずは不動産売却で消費税がかかる以下のケースについて解説していきます。
なお、上記のうち事業用の不動産(建物)の売却以外は、事業者が納税義務を負います。そのため、消費者が負担した消費税を事業者が代わりに納税してくれます。
事業用の不動産を売却した場合、売却代金は消費税の課税対象です。
法人はもちろん、個人が事業用として保有している建物を売却した際も消費税の課税対象となります。たとえば、家賃収入を目的に購入した投資用マンションなどを売却するケースです。
とはいえ、法人や個人事業主が課税事業者であった場合に消費税が課税されます。課税事業者とは、消費税の納付義務がある法人・個人事業主です。一定の基準を満たす法人・個人事業主は課税事業となります。
参照:国税庁「消費税のしくみ」
上記、どちらかを満たすと課税事業者となるため、不動産売却をした際の売却代金が消費税の課税対象となります。
不動産を売却する際、多くの人は不動産会社を利用します。仲介手数料は不動産会社に売却を手伝ってもらったお礼に支払う費用です。
仲介手数料は売却価格によって上限が決まっており、計算式は以下のとおりです。
売却価格 | 仲介手数料の上限額 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円超〜400万円以下 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
不動産の売却は不動産の所有権の移転を伴う取引であるため、所有権移転登記が必要になります。
その際、一般的には司法書士に依頼して登記を行うため、司法書士への報酬が発生します。この司法書士への報酬も消費税の課税対象です。
人によっては売却代金でローンを返済しようと考えている人もいるかと思います。
その際、繰上げ返済することになりますが、金融機関によっては手数料が発生します。この手数料も消費税の課税対象です。
その他、金融機関を利用した際に発生する手数料には消費税が含まれている場合があります。不動産売却に際して金融機関とやりとりが必要な場合、別の手数料でも消費税を負担しているかもしれません。
不動産売却で消費税の課税対象とならないケースについて解説します。
個人の不動産(建物)を売却した際の売却代金は消費税の課税対象とはなりません。個人の不動産とは具体的にいうと、住居用の不動産、つまり自宅や別荘などです。
また、課税事業者であっても、自宅や別荘など、住居用の不動産を売却した場合の売却代金は非課税です
土地の売却代金は消費税の課税対象ではありません。土地は「消費されるもの」という性質を持たないとされているため、消費税の性質とは合わず非課税とされています。
そのため、不動産の売却代金が4,000万円で、内訳が建物2,500万円、土地1,500万円だった場合、消費税の課税対象となるのは建物の売却価格の2,500万円のみです。
個人事業主でも法人でも、免税事業者であれば、不動産を売却しても消費税は課税されません。
ただし、消費税が課税されないのは免税事業者である期間のみです。課税売上高が1,000万円を超えると、翌年あるいは翌々年は課税事業者となり、課税事業者の期間に不動産を売却すると、売却代金は消費税の課税対象となります。
不動産売却を考えている年に、課税事業者であるか、免税事業者であるかはしっかりと確認しましょう。
事業用の不動産を売却した場合、売却代金は消費税の課税対象です。この場合は、納税の手続きが必要です。ここでは、消費税の納税に必要な手続きについて解説します。
不動産の売却代金が消費税の課税対象となった場合、消費税の納税が必要です。納税方法は税務署への確定申告です。
期限は取引があった年の翌年の3月31日までになります。たとえば、令和5年に不動産を売却し、売却代金が消費税の課税対象となった場合、令和6年3月31日までに確定申告を行う必要があります。
確定申告書に必要事項を記入し、税務署の窓口に直接提出したり郵送で提出したりするほか、e-Taxを利用して確定申告をすることも可能です。
地方消費税を除く消費税額が48万円を超える場合、中間申告と納税が必要です。直前の課税期間の消費税額によって中間申告と納税の回数が異なります。
直前の課税期間の消費税額とは、その課税期間の直前の課税期間の確定申告書に記載すべき消費税額です。
直前の課税期間の消費税額 | 中間申告の回数 | 中間納付税額 |
---|---|---|
48万円以下 | 中間申告は不要 | 0円 |
48万円超〜400万円以下 | 年1回 | 直前の課税期間の消費税額の1/2 |
400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 | 直前の課税期間の消費税額の1/4 |
4,800万円超 | 年11回 | 直前の課税期間の消費税額の1/12 |
※地方消費税の納税額は含まない
参照:国税庁「中間申告の方法」
詳しくは「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご確認ください。
たとえば、不動産を売却し、直前の課税期間の消費税額が600万円だった場合、150万円ずつ4回に分けて納付します。消費税の確定申告や中間申告を忘れてしまうと、加算税や延滞税などが発生し、余計な税金を納めなければなりません。
これまで消費税を納める機会がなかった人の場合、消費税の課税対象となっている事実を知らずに期限を過ぎてしまうケースもあります。不動産売却を検討している方で、消費税について不安を覚えた方は専門家に相談してみてください。