不動産売却のノウハウ
不動産を売却するときには、売買を成立させた不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限は法律で定められていて、売却価格によって変動します。仲介手数料を算出する方法や、支払いをするタイミングなど、不動産を売却したときの仲介手数料の疑問をわかりやすく解説します。
不動産売却 費用・税金2023年11月15日
2024年8月23日
不動産売却時にかかる仲介手数料とは、不動産会社に買主を見つけてもらう「仲介」により売買を進め、契約が成立したときに支払う報酬です。成功型報酬のため、契約期間中に物件を売却できなければ支払うことはありません。
また、複数の不動産会社と契約していた場合であっても、売買を成立させた不動産会社だけに支払います。そのほか、査定依頼した会社や、売却相談した会社に支払う必要もありません。
不動産会社に売却を依頼し、無事成約できた際に支払う報酬を仲介手数料といいます。一般的に売買契約が成立したときに半額、物件の引渡しのときに残りの半額を支払います。
仲介手数料の上限の計算式は下記のとおりです。
仲介手数料は法律で上限額が決まっており、不動産の売却価格により異なります。売却価格が200万円以下なら価格の5%、200万超から400万円以下なら価格の4%、400万円超なら価格の3%に消費税を足した金額が上限額です。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
売却価格が200万円以下 | 売却価格の5% |
売却価格の200万円超から400万円以下の部分 | 売却価格の4% |
売却価格の400万円を超えた部分 | 売却価格の3% |
なお、2024年7月1日から不動産市場で流通しづらい空き家・空き地の流通を促すため、仲介報酬の特例規定が拡充されました。物件価格800万円以下の売買の媒介(仲介)取引において、売主様および買主様 の双方から最大で33万円(税込)の報酬受領が認められるかたちとなりました。ただし、原則の料率を超える報酬を得る場合には、媒介契約の締結に際して予め特例に定める上限の範囲内で、報酬額について依頼者に対し説明し合意を得ることが必要となっております。
売却価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
売却価格が800万円以下 | 30万円 |
売却価格の800万円を超えた部分 | 売却価格の3% |
たとえば、自宅を1,000万円で売却した場合、売却価格である1,000万円を200万円以下、200万円超から400万円以下、400万円以下の3つに分類して仲介手数料を計算します。
まず、200万円以下の部分から計算すると「200万円×5%=10万円」になりました。次に、200万円超から400万円以下の部分を求めると「200万円×4%=8万円」となります。
最後に、400万円超の部分を式に当てはめると「600万円×3%=18万円」と計算できました。それぞれの計算結果を合計し消費税を加えた39.6万円が、このケースにおける仲介手数料の上限額となります。
仲介手数料の計算は、成約価格を3つに分類し、ひとつずつ計算していくと上限額を算出できますが、計算に時間がかかります。
そこで、「速算式」と呼ばれる計算式を用いて計算することで、簡単に上限額を算出できます。速算式の計算方法は次のとおりです。
売却価格(税抜き) | 上限額 |
---|---|
800万円以下(特例適用) | 30万円 |
800万円超 | 売却価格×3%+6万円 |
実際に速算式を使って仲介手数料を計算してみましょう。たとえば、自宅を1,000万円で売却した場合「1,000万円×3%+6万円=36万円」と計算できます。
算出結果に消費税を加えた39.6万円が仲介手数料の上限額で、通常の計算と同じ結果になります。
以下に、不動産の売却価格別に仲介手数料の上限額をまとめました。不動産を売却する際にぜひお役立てください。
売却価格 | 仲介手数料(税込み) |
---|---|
800万円(特例適用) | 33万円 |
1,000万円 | 39.6万円 |
2,000万円 | 72.6万円 |
2,500万円 | 89.1万円 |
3,000万円 | 105.6万円 |
4,000万円 | 138.6万円 |
5,000万円 | 171.6万円 |
1億円 | 336.6万円 |
ここでは、仲介手数料の支払いで気をつけるべき点を紹介します。詳細な情報を把握し悪質な被害に遭わないよう注意しましょう。
仲介手数料は「売買契約成立時」と「物件引き渡し時」の2回に分け、半額ずつ負担するのが通常です。とはいえ、明確なルールはないことから、不動産会社によって支払いタイミングが異なることもあります。
仲介手数料は、売却価格により高額になるためお金を準備する期間が必要です。支払うべきときに、お金の準備を間に合わせられるよう、担当者にタイミングを聞いておきましょう。
ほとんどの不動産会社は上限の仲介手数料を設定していますが、あくまでも「上限」であり、必ず支払わなければならない金額ではありません。もちろん、売主の判断で価格交渉することもできます。
しかし、交渉により値下げが実現するかどうかは別問題です。仲介手数料には、広告費や人件費、出張費などが含まれていることから、断られてしまうことが多いでしょう。
宅建業法により仲介手数料の上限額が決められているため、不動産会社は上限額を超えて手数料を受け取ることはできません。一方、次のようなケースでは手数料のほかに別途費用を請求することが認められています。
以下、それぞれ詳しく説明します。
特別な広告とは、テレビCMといった一般的な広告に比べてはるかに高額なものや、遠方に暮らす購入希望者との交渉により生じた出張費などが当てはまります。
なお、特別な広告費の請求は「売主の要望により実施されたこと」「あらかじめ売主に承諾を得ていること」が条件です。承諾していないものに支払い義務は生じません。
売却価格が400万円以下の低廉な空き家の売買では、前もって依頼者に説明し承諾を得ている場合に限って、現地調査に要した費用を請求できます。
ただし、現地調査費を含めた報酬額の上限は税込み19.8万円を超えてはならないと法律で定められています。現地調査費と称して多額な手数料を請求されたとしても、負担することはありません。
不動産売却では、仲介手数料以外にさまざまな費用がかかります。売却に要する費用には、必ずかかるものと条件次第でかかるものの2種類があるため、自分の状況と照らし合わせながら必要なものを整理してください。
成約価格 | 印紙税額 |
---|---|
100万円超過から500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円超過から1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円超過から5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円超過から1億円以下のもの | 3万円 |
1億円超過から5億以下のもの | 6万円 |
参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
不動産売買契約書における印紙税額は、成約価格が10万円を超えるもので平成26年4月1日から令和6年3月31日までに作成されたものであれば軽減措置が適用されます。なお、上記に記した金額は軽減措置適用後の税額です。
登録免許税は、不動産の所有権移転登記や住宅ローンを組んで購入した不動産の抵当権抹消手続きなど登記に関して課税されます。
所有権移転登記の税額は、土地や中古住宅なら「固定資産税評価額×2.0%」です。また、抵当権抹消手続きの税額には、ひとつの不動産につき1,000円かかり土地つきの戸建て住宅なら土地建物それぞれに課税され合計2,000円支払うことになります。ちなみに、土地は1筆ごとにかかるため、3筆の場合は3,000円かかります。
しかし、所有権移転登記にかかる登録免許税は、これから物件の持ち主になる買主が全額負担することが一般的です。
抵当権の抹消は、必要事項を申請書に記入し法務局に申請することで手続き完了となります。手続きは、売主だけでもできますが、司法書士に依頼するケースがほとんどです。特に、住宅ローンが残る物件の売却は手続きが複雑化することから、専門家に依頼することになります。
司法書士に抵当権抹消手続きを依頼した場合、登録免許税のほかに依頼料として別途1.5万円ほどかかります。
住宅ローンの残る物件を売却するなら、抵当権を外すためにローンの残債を一括で返済しなければなりません。一括で返済するときは、手数料の支払いが発生します。
一括返済にかかる手数料は、金融機関や返済方法によって変わるため詳しい情報を前もって担当者に聞いておくと安心です。
譲渡所得税とは、売却益が出たときのみに課税される税金のことです。不動産売却で利益が出れば「所得」とみなされて税金を課されます。
また、譲渡所得税は売却価格が高額だからといって課税されるわけではありません。売却価格から購入にかかった金額や諸費用を差し引いた譲渡所得がプラスになった場合に課されます。