不動産売却のノウハウ
土地や住宅などの不動産を売却すると、売却益に対して税金がかかる場合があります。
そのため、これから不動産の売却を検討している人は、不動産売却益にかかる税金について、いまのうちから理解を深めておいたほうがよいでしょう。
利用できる控除とともに、不動産の売却益にかかる税金について解説します。
不動産売却 費用・税金2023年11月15日
まずは、不動産売却益にかかる税金について、基本的なことから丁寧に解説していきます。
不動産売却益とは、不動産を売却した際に得られる利益のことです。
具体的に説明すると、実際の売却価格から、取得費や売却するためにかかった費用を差し引いた金額が、不動産売却益として扱われます。
そのため、単純に売却時に受け取った金額がそのまま不動産売却益となるわけではないという点に注意が必要です。あくまで経費を差し引いたうえでの利益分が売却益となるので、正しく把握しておきましょう。
不動産売却益には、譲渡所得税と呼ばれる税金が課税されます。
譲渡所得税とは、所得税と住民税、復興特別所得税のすべてが合わさった税金であり、一般的な給与所得などとは別として算出されるものです。
そのため、売却した本人の収入などによって納税額が左右されることはありません。それぞれの売却益に応じて納税額が決められるということを、正しく理解しておきましょう。
譲渡所得税を計算するためには、まず不動産売却益を算出しておかなければなりません。不動産売却益の計算方法は、以下のとおりです。
不動産売却益=不動産売却価格-(取得費+譲渡費用)
なお、上記の計算における取得費とは、売却する不動産を購入した際の費用のことです。また、譲渡費用とは、不動産を売却するために要した費用のことで、売却を依頼した不動産会社への仲介手数料や、売却しやすくするために行ったリフォーム工事費用などが含まれます。
具体的な数字を用いた例を示します。1,000万円で購入した土地を1,500万円で売却したとします。譲渡費用が100万円だった場合の不動産売却益は以下のように計算できます。
1,500万円-(1,000万円+100万円)=400万円
譲渡所得税は、以上のようにして算出した不動産売却益を用いて、次のように計算することができます。
譲渡所得税=不動産売却益×税率
上記の計算における税率は、売却する不動産の所有期間によって異なります。5年以内の所有期間であれば税率39.63%、5年を超える所有期間であれば税率20.315%です。
つまり、売却する時点での所有期間が5年を超えていると、譲渡所得税は比較的安くなるということになります。
不動産の売却益が出た場合に課税される譲渡所得税の支払いは、不動産を売却した人にとって大きな負担となってしまうことがあります。そこで、課税される譲渡所得税の負担を抑えられる控除の制度がいくつか設けられています。
控除が適用されるための条件を満たしていれば、譲渡所得税は大幅に抑えられ、場合によっては全額免除となる可能性もあります。
ここでは、売却益による譲渡所得税の負担を抑えられる控除について、5つの制度を紹介します。
自らが居住していた住宅を売却する場合、不動産売却益から3,000万円を控除することができる特例があります。
つまり、もとの不動産売却益が3,000万円以下であった場合にこの特例が適用されると、譲渡所得税は課税されません。
3,000万円特別控除が適用されるための主な条件としては、売却する本人が自ら居住していた住宅であることや、売却する相手が親族ではないこと、前年もしくは前々年にすでに特例を利用していないことなどが定められていて、すべての条件を満たしていることが必要です。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
不動産を売却する時点において、対象となる不動産の所有期間が10年を超えている場合、譲渡所得税を計算する際に用いる税率が軽減されるという制度があります。
具体的な税率としては、不動産売却益6,000万円以下の部分についてのみ、14.21%に軽減されることとして定められています。
この軽減税率の適用条件は、不動産を売却する年の1月1日時点で10年を超える所有期間があることや、売却する相手が親族ではないこと、前年もしくは前々年にすでに同様の軽減税率を受けていないことなどがあり、すべてを満たしていなければなりません。
なお、3,000万円特別控除と併用することも認められているので、両方適用されるとさらに大きな節税効果が得られるでしょう。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
自ら居住していた不動産を売却すると同時に新たな住居を購入するといった買換えをする場合、本来なら不動産売却益が生じた際に課税されるべき譲渡所得税が、新たな住居の売却時まで繰り延べされるという特例があります。
ただし、この特例はあくまで課税が繰り延べされるというだけであり、譲渡所得税そのものが免除されたり減額されたりするものではありません。
また、3,000万円特別控除や、軽減税率の制度との併用も認められていない点にも注意が必要です。
参考:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
相続によって取得した空き家を売却した場合、譲渡所得税が3,000万円分控除されるという特例があります。
特例の内容としては、前述の3,000万円特別控除と類似していますが、詳しい適用条件はより厳しいものとなっているので、注意が必要です。
たとえば、不動産を相続する直前まで被相続人のみが居住していた事実があることや、対象となる不動産がマンションなどの区分所有建物ではないこと、建物が建築された日が1981年5月31日以前であることなどが条件として定められています。
参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
相続によって取得した不動産を売却した場合、すでに支払っている相続税の一部を取得費として加算できるという特例もあります。
これにより、不動産売却益を計算する際に差し引く取得費の額が大きくなるため、結果として譲渡所得税が抑えられることになります。
なお、この特例が適用されるためには、財産を取得した人が相続税を課税していることや相続してから3年以内に売却している必要があります。
参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
不動産を売却して利益が出た場合は、確定申告をしなければなりません。不動産売却益が出た場合の確定申告に関するポイントを抑えておきましょう。
不動産売却益が出た場合の確定申告は、翌年の2月16日から3月15日までの期間内に行う必要があります。
そのため、不動産売却益が出たら、翌年の確定申告の時期に向けて必要書類の準備を進めていきましょう。主な必要書類は、以下のとおりです。そのため、不動産売却益が出たら、翌年の確定申告の時期に向けて必要書類の準備を進めていきましょう。主な必要書類は、以下のとおりです。
必要書類は、国税庁のホームページから取得可能なものが多くありますが、記入方法などが難しく感じる場合は税務署に足を運ぶとよいでしょう。
これから不動産を売却する人は、不動産を売却したら確定申告に必要な書類を揃え、翌年の特定期間中に確定申告を行うといった一連の流れを把握しておくことが大切です。
前述したように、不動産売却益が出た場合に確定申告を行うためには、揃えなければならない必要書類が多々あります。そのため、できるだけ早めの準備を心がけるようにしましょう。
とくに、年末に近い時期に不動産を売却した場合は、確定申告までの期間が短くなるため、計画的に準備を進めていくことが重要になります。
準備が遅れてしまうと、実際に確定申告を行う時期になって慌ててしまったり、特定の期間内に間に合わなかったりするおそれがあることを、きちんと理解しておきましょう。