不動産売却のノウハウ
築古物件を売却するとき、「このまま売っても買い手はつくのだろうか」と不安になります。そこで第一に考えられるのがリフォームです。リフォームをして資産価値を上げれば買い手はつきやすくなるでしょう。
しかし、不動産の売却前には基本的にリフォームは不要です。その理由と築古物件の有効な売却方法について解説します。
不動産売却 基礎知識2023年11月15日
不動産を売却するにあたって、基本的にリフォームは不要です。売る前にリフォームをする必要がない理由を3つ紹介します。
不動産の売却前にリフォームが不要な理由のひとつは、リフォーム費用を売却代金で回収できない可能性が高いことです。
築古物件は、リフォームをしてきれいになったというだけでは売却できません。そのエリアの相場に合っていなかったり、築年数相応の価格でなければ売れる可能性は低いのです。
たとえば、リフォームに500万円かかったとしても、その分をそのまま物件価格に上乗せした価格で売れるわけではありません。単にリフォーム費用を上乗せしてしまうと、近隣の競合物件より数百万円も高い金額になってしまい、売れにくくなってしまうのです。
とくにマンション場合は、リフォーム代金を上乗せして販売すると、同じマンションで売り出されている物件と比較して割高に映ってしまい、売れ残る可能性が高くなります。もし売れたとしてもリフォーム代金を回収できない金額でしか売れなくなり、結果マイナスで着地してしまうのです。
つまり、リフォーム費用を回収しづらいため、売却前のリフォームは不要だといえます。
売却前に物件をリフォームすることで、売主の趣味やセンスがあらわれます。そして、それが買い手の好みに合わなければ売れることがありません。長く住みたい人は、自分の趣味に合った不動産を購入したいと考えているのです。
また、施工技術が上がったことにより、買い手のリフォームへのこだわりや流行りが多様化しています。築古物件を購入しようとする人の多くは、安い物件を自分好みにリフォームしたいという考えを持っているため、売主が先にリフォームをしてしまうとかえってマイナスポイントになってしまうのです。
しかも、市場には不動産会社がリノベーションして売り出されている物件が多く売り出されており、その中でリフォームされていない不動産は、ある種の掘り出し物としての需要が見込まれるのです。
したがって、自分の好みに合ったリフォームをしたい買い手が多いことから、売却前のリフォームは不要だといえるでしょう。
不動産売却はスピードが非常に重要です。しかし、売却前にリフォームをすることでタイミングを逃し、高値で売却することができなくなってしまうおそれがあります。
具体的には、リフォームが完了するまでの期間に販売活動ができないことです。リフォームは長いと1カ月以上の期間を要します。その間に室内の写真撮影や現地案内ができないことは、売却活動において大きな損失につながります。
買い手は、インターネットで物件写真を見て気に入った物件を内覧します。しかし、その写真が工事中のものでは内覧までつながりにくく、他の競合物件に先を越されてしまいます。その結果、売却のタイミングを逃してしまい、適切な金額で売ることができなくなってしまいます。
売却前のリフォームが不要な理由について述べましたが、売却価格に影響が出にくい小規模のリフォームであれば検討の余地はあります。ここでは、小規模リフォームが有効な理由と修繕箇所について解説します。
壁紙は室内の中でも大きな割合を占めるため、売却前に壁紙を張り替えることで買い手がつきやすくなるでしょう。視界のほとんどを占める壁紙がきれいになることで清潔感を感じられ、購入意欲が湧くようになるのです。
具体的には、壁紙はペットの飼育や喫煙などによって大きなダメージを受けます。室内でタバコを吸っていた場合は、ヤニが原因で壁紙が黄ばんだり、匂いがこびりつきます。また、ペットを室内で飼っていた場合も動物特有の匂いがつき、嫌悪感を抱く人が増えるのです。
壁紙の張替えは比較的安価で行えるので、コスパよく物件の印象をよくすることができます。
壁紙のグレードや室内状況によって異なりますが、相場は1㎡あたり1,000円程度で、6畳の部屋で約5万円、12畳の部屋なら約8万円で張り替えられます。また、物件全体であれば50万円程度で張り替えられるため、フルリフォームに比べると、いかに安価であるかがわかります。
よって、売却前に壁紙を張り替えることは効果的だといえます。
和室がある物件では、畳の新調も有効な対策です。和室は畳が綺麗だと清潔感が増すので、買い手にとって印象がよくなります。
畳の新調は、1畳あたり約1万円から行えます。また、畳の新調は業者が採寸をしたうえで、新しい畳を持ってきて入れ替えるという流れなので、畳がない期間がありません。そのため、生活に支障が出ない工事ができる点がメリットです。
また、畳の状態が悪くない場合は、畳の表替えを検討しましょう。表替えとは、畳表と畳縁を新しくする方法で、畳床は既存の物をそのまま利用する方法です。表替えは1畳あたり約6,000円から行えるので、新調に比べると安価です。
このように、和室の清潔感が増す畳の新調も売却前に検討するべき修繕です。
室内の建具が壊れていると、買い手の印象が悪くなります。そこで、ドアや窓などの修繕も売却前に検討しましょう。
建具は利用頻度や使い方によって、ズレたり穴が空いたりもします。もしそれを買い手が発見した場合、「売主が物件を丁寧に使っていないのでは」と心配し、購入意欲が削がれることがあります。
そのようなことを防ぐために、できるだけ目につく建具は修繕しておくようにしましょう。
ドアは1箇所あたり約1万〜5万円ほど、ふすまは1枚あたり約5,000円、障子は1枚あたり約3,000円程度で修繕できます。もしDIYで修繕できるのであれば、ホームセンターで材料や器具を購入してチャレンジしてみるのもよいでしょう。
小規模なリフォームを行わなくても、ちょっとした対策で売却ができるようになります。ここからは、築古物件で買い手がつくかどうかが心配な方に向けて、有効な対策を紹介します。
築古物件は、ホームステージングを行うことで売却をスムーズにできます。ホームステージングとは、販売中の物件の室内を家具や照明、小物などを使ってモデルルームのように演出することです。
ホームステージングによって、内覧にきた人が購入後の生活をイメージすることができ、ここに住みたいと思ってもらえます。つまり、何も演出をしていない物件に比べて、よい印象を与えることができ、築古物件でも早期売却や高値での売却が可能になるのです。
ホームステージングは個人でもできますが、専門で行っている会社もありますので、積極的に相談してみましょう。
築年数が古く、買い手が付きそうにないと判断した場合は、不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましょう。
買い取りの場合、仲介会社が入らないので仲介手数料がかかりません。仲介手数料は最大で「物件価格 × 3% + 6万円+消費税」がかかるので、それだけで大きな経費削減につながります。
また、買い取りは買い手が不動産会社のため、売ったあとの不具合や欠陥などの責任を問われる「契約不適合責任」を免除することができます。そのため、安心して売却を進められます。
しかし買い取りは、不動産会社が再販売を目的とするものです。そのため、相場の6〜7割程度の金額でしか不動産を買い取ってもらえません。メリット・デメリットを十分に考慮して検討しましょう。
戸建てで、使用できない状態にまで陥っている場合は「古家つき土地」として販売する方法もあります。
家がメインとして売り出す中古住宅ではなく、あくまで土地に古家が建っていますというスタンスで売り出すことで、新築用地を探している人もターゲットになります。
さらに、資金に余裕がある場合は、建物を解体して更地状態で販売する方法もおすすめです。更地のほうが、買い手にとっては解体費用が不要で購入しやすいのです。
このように、築古物件を売却する際は、建物の状態によってさまざまな対策を講じることができます。しかし、個人だけではどの対策がよいのかの判断がつきにくいものです。そのため、物件を少しでも早く高値で売るために、プロである不動産会社へ積極的に相談しましょう。