不動産売却のノウハウ
不動産を売却するときは不動産会社への連絡や査定、契約など、やらなくてはいけない手続きがたくさんあるように感じます。
しかし、不動産売却はやることを整理できれば、それほど難しくはありません。不動産売却で必要な手続きを、ひとつずつ流れを追ってみていきましょう。
不動産売却 基礎知識2023年11月15日
不動産の売買は人生で何度も経験するものではありません。そのため、不動産売却を検討している人のなかには「どうすればいいのかわからない」と不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
そこで、不動産売却を検討している人や、売却手続きが間近に迫る人に向けて、「不動産売却の基本的な流れ」についてご紹介します。ぜひ、今後の参考にお役立てください。
最初に不動産会社へ査定の依頼をします。査定とは、築年数、立地、間取り、相場などを参考に、物件にどれくらいの価値があるのか調査することです。早期に売却するためには、査定額は非常に重要です。査定額が極端に高い場合や、極端に安い場合は、査定額の根拠を不動産会社に確認しましょう。
依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。媒介契約のそれぞれの特徴は以下のとおりです。ご自身の希望に合わせて、契約方法を決めましょう。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
他社契約 | 〇 | × | × |
自己発見取引 | 〇 | 〇 | × |
状況報告 | × | 〇 (2週間に1回) |
〇 (1週間に1回) |
レインズへの登録 | × (任意) |
〇 | 〇 |
媒介契約を締結後、不動産会社は売却活動を行います。売却活動の方法は、不動産流通システム(レインズ)への登録、自社のWebサイト、SUUMOなどの大手不動産サイトへ掲載し、そこから購入希望者を募ります。
また、一般媒介契約や専任媒介契約であれば、知人や友人のなかから購入希望者を見つけて契約すること(自己発見取引)も可能です。問い合わせが少ない場合は、販売戦略の見直しや不動産会社の見直しを検討しましょう。
購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。売買契約には2~3時間かかるため、前後のスケジュールには余裕を持っておきましょう。契約に必要な書類をあらかじめ準備しておくことで契約がスムーズに行えます。
以下に売買契約時に必要な書類をまとめました。参考にご確認ください。
必要書類 | 内容 |
---|---|
身分証明書 | 本人確認書類(免許証・パスポート・保険証) |
印鑑証明書 | 発行3カ月以内のもの |
実印 | 売主本人の実印 |
住民票 | 発行3カ月以内のもの |
登記済権利書、または登記識別情報 | 物件の内容確認や登記で必要になる |
固定資産税納税通知書 | 税額確認のため必要 |
ローン残高証明書、または返済予定表 | ローン返済中の場合に必要。残債がわかる書類を準備しておく |
銀行口座 | 売買代金の振込先となる銀行口座 |
土地測量図・境界確認書 | 土地・戸建売却時に必要。 |
建築確認済証、検査済証 | 建築基準法に適合しているかの確認 |
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書 | 耐震性の証明やアスベスト使用の有無を確認する |
その他書類 | 物件に関する資料があれば提示する |
契約締結後に決済・引き渡しを行います。決済とは、売買契約に基づいて取引を完了させる最終段階のことです。主な内容は、鍵の引き渡し、金銭の授受、書類の確認作業などです。決済にかかる時間は、長くても2時間程度です。
土地を売却して出た利益は、譲渡所得に分類されます。譲渡所得とは、給与と別に個人が不動産、ゴルフ会員権、株式などを売って得た所得のことです。
土地を売却して損失が出た場合は、確定申告の必要はありません。しかし、土地を売却して利益を得た場合は、課税対象になるため、金額に応じた所得税と住民税を納める必要があります。譲渡所得は下記の計算式で算出されます。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
また、譲渡所得は、不動産を所有していた期間によって税率が変わってきます。不動産を所有していた期間が5年以下の場合は短期譲渡税取得、所有していた期間が5年超の場合は長期譲渡税取得となります。詳細は以下の表のとおりです。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | |
---|---|---|---|
短期譲渡税取得 | 5年以下 | 30.63% | 9% |
長期譲渡税取得 | 5年超 | 15.315% | 5% |
譲渡所得は、「3000万円特別控除」のような特例制度を利用することで、納税額を減らせる場合があります。詳しくは国税庁のWebサイトをご確認ください。
参考:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
不動産売却は、査定を受けることからはじまります。査定は媒介契約を締結する不動産会社選びに影響するため、とても重要です。
また査定は、ちょっとした工夫と注意点を理解しておくことで、早期売却や高値売却ができる可能性があります。ここからは、査定を依頼する前に行う準備や、確認、注意点などについて解説します。
査定には、机上査定と訪問査定の2種類があります。机上査定は物件資料や登記情報など、書類の情報だけで不動産価格を算出する方法です。
早ければ1日で査定結果を知れるため、おおよその相場価格を知るにはよい方法です。しかし、実際に現地を見ていないため、査定の精度は低いと考えておきましょう。
一方、訪問査定は机上査定を行ったあとに、実際に現地を訪れて査定する方法です。現地を見学したり、査定結果をまとめたりする必要があるため、査定結果がわかるまでには1週間程度かかります。しかし、机上査定より精度の高い結果が期待できます。机上査定を受けてから、訪問査定を受けるとよいでしょう。
査定額は地域相場、建物の状況、立地、市況などをもとに査定額を判断します。しかし、査定額に絶対的な根拠はありません。最終的には、不動産会社の経験や知識、類似物件の売却実績などを参考に「これくらいで売れるだろう」と判断して査定額が決まります。
そのため、最初に提示された査定額で、必ず売却できるとは限りません。問い合わせ状況や類似物件の価格、市況などに応じて、売却価格を下げる必要があることを覚えておきましょう。
査定額が高ければ「高値で売却できる」と喜ぶ売主も多いでしょう。しかし、査定額だけで判断するのは注意が必要です。なぜなら、不動産会社のなかには競合他社を出し抜くために、市場より高い査定額を提示する不動産会社もあるためです。
こういった不正な行為をする不動産会社は自社だけで取り引きしようと、囲い込みなどの悪質な行為をするおそれがあります。売却の機会を逃したり、売却価格を下げたりするデメリットが発生するため、査定額が高すぎる場合は、必ず不動産会社に査定の根拠を確認してください。
売却を進めていくうえで、不動産会社選びは非常に重要です。不動産会社を選ぶポイントは以下のとおりです。
また、不動産会社を1社に決められない場合は、一般媒介契約で売却を進めていく方法もあります。以下で詳しく解説しますので、今後の参考にご覧ください。
不動産会社の担当者は、売却におけるすべての窓口となります。媒介契約の方法にもよりますが、専属専任媒介契約で依頼した場合は、毎週、販売状況の報告を受けます。また、売却には平均で3~6カ月かかります。その期間中に安心して売却を進めていくためにも、担当者の言葉遣い、態度、知識、売却に対する熱量、価値観などは必ずチェックしましょう。
不動産会社といっても、賃貸に強い会社、売買に強い会社、建築に強い会社など、会社によって得意分野はさまざまです。売却に慣れていない不動産会社に依頼した場合、売り逃しにつながることもあるため注意が必要です。
近年は、Webサイトで会社の強みや特色を確認できます。不動産を売却するときは、売却実績や会社の強みを確認してから依頼しましょう。
不動産売却では、3種類ある媒介契約から、売主の希望に応じて契約できます。初めて不動産売却を行う方は、不動産会社を1社に決めきれないという人も多いでしょう。そんな方におすすめなのが、一般媒介契約です。
一般媒介契約は、3種類ある媒介契約のなかでもっとも自由度が高く、複数の不動産会社と契約ができます。まずは一般媒介契約で進めて、なかなか売却できない場合は、契約方法を見直すというのもひとつの有効な方法です。