不動産売却のノウハウ
不動産の売却代金の用途が決まっている場合、いつ入金されるのかを知っておく必要があります。入金されるタイミングを調整の可否も含めて解説します。
また、売却代金はそのまま手元に残るわけではありません。諸費用や税金など、支払う必要があるお金についても確認しておきましょう。
不動産売却 費用・税金2023年11月15日
不動産を売却した際には「契約時」と「決済時」の2回に分けて入金されるのが一般的です。不動産売却の流れに触れながら、入金されるタイミングについて解説します。
不動産売却の大まかな流れは以下のとおりです。
不動産を売却するためには、まず不動産会社に販売を依頼する必要があります。
そのためには不動産会社を選定しますが、依頼する不動産会社に当てがない場合は、不動産のポータルサイトなどを利用し、複数の不動産会社に査定を依頼します。査定依頼後は査定価格や担当者の対応などを比較検討し、信頼できる不動産会社を選びます。
不動産会社が決まればインターネットや紙媒体を使って買主を募集し、納得する条件を提示する買主が見つかれば契約締結、引渡しとなります。
売買代金の支払いは契約時と決済時です。具体的には、契約時に手付金、決済時に残代金と固定資産税等の清算金が支払われます。
残代金は売買代金から手付金を差し引いた額となり、固定資産税等は決済後の日割り清算額となります。
手付金は契約時に支払われることになりますが、手付金は「解約手付」の扱いである点に注意が必要です。不動産の売買契約は相手が履行に着手(契約の履行行為の一部を行うこと)するまでは契約解除ができますが、これは手付金を放棄することでなされます。
一方、売主から解除する場合は手付金を買主に返還し、さらに手付金と同額を支払うことで売買契約の解除ができます。
手付金にはこのような特徴があるため、入金されたからといってすぐに使ってしまうことがないように注意が必要です。
売買代金から手付金を除く残代金は一括で支払われます。
残代金をさらに分割する「割賦販売」という方法は、不動産売買では原則行われません。なぜなら、多くのケースで買主は住宅ローンを組むからです。買主は金融機関から融資を受けると、一括で売主へ残代金の支払いをします。
金融機関は住宅ローンの実行と同時に抵当権を設定することから、所有権は完全に買主へ移転させる必要があります。このことからも、一括で残代金を支払い、所有権を買主に移転する必要があり、残代金を分割支払いできないことになります。
買主が決まり売買契約の締結が完了すれば、あとは決済と引渡しの準備を整えるだけです。
準備が整えば早く入金して欲しいと考える売主も多いですが、入金のタイミングは調整できるのでしょうか。
不動産の売買契約には決済期日とともに、「売主と買主の双方において引渡し準備が完了した場合、最短日を引渡し日とする」という特約が記載されることがあります。
たとえば、8月31日が決済期日であっても条件が整えば8月20日に前倒しすることが可能になります。
もし、入金日を少しでも早めたい事情があるなら、事前に不動産会社に打診し、契約書に特約を記載するとよいでしょう。
不動産買取は不動産会社が買主になるため、契約内容や入金タイミングなどの融通がききやすくなります。
不動産買取とは、不動産会社が直接買い取る方法であり、仲介とは異なり、買主を探す必要がありません。不動産買取の場合、査定価格に納得すれば、売買契約、引渡しまで、短期間で済ませることができます。
不動産買取のメリットとしては、売却期間が短く、内覧に対応する必要がないことや仲介手数料が不要であること、そして買主が不動産会社であるため契約内容に融通が利きやすいことです。そのため、入金を早めて欲しい理由があるなら、可能な限りで調整してくれることでしょう。
不動産売却は入金だけでなく、出金もあります。不動産の売却にかかる諸費用と税金は、「契約時」と「決済前」そして「決済後」のタイミングで支払うことになります。
契約時に支払う諸費用は、印紙代のみです。
不動産の売買契約を締結する際に印紙税を支払う必要があり、印紙を契約書に貼付し消印することで納税となります。印紙代は印紙にかかる代金となりますが、売買代金によって以下のように変動します。
売買代金 | 印紙代 |
---|---|
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円を超える | 48万円 |
国税庁:「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」より
ただし、売買契約を電子契約で行う場合は印紙代の支払いが不要です。
決済時には、仲介手数料と登録免許税が必要となります。
仲介手数料は売却を依頼した不動産会社に支払う報酬のことで、仲介手数料の額は国土交通省によって以下のように定められています。
売買代金 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
200万円以下 | 売買代金×5%+消費税 |
200万円超、400万円以下 | 売買代金×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買代金×3%+6万円+消費税 |
仲介手数料は上記の計算式によって算出できることから、売買代金が決まった時点であらかじめ計算しておくことをおすすめします。
たとえば、売買代金が3,000万円の場合は「3,000万円×3%+6万円+消費税」と計算でき、105万6,000円が仲介手数料となります。
所有権を移転したり抵当権設定を解除したりする場合、登録免許税がかかります。
抵当権抹消登記は売主が負担しますが、所有権移転登記は買主が負担することが一般的です。そのため、売主負担は抵当権抹消登記のみとなりますが、費用は不動産1つにつき、1,000円です。土地と建物の抵当権抹消登記であれば2,000円です。
しかし、登記は司法書士に依頼することが一般的で司法書士への報酬は1〜2万程度が相場です。
解体費や確定測量費、相続に関連する費用などは残代金から支払うのが一般的となるため、決済時に各業者へ振り込み対応することになります。
そのため、スムーズに支払うためにも振り込み先や振込手数料の取り扱いなどを不動産会社に確認しておくことが重要です。
不動産を売却し売却益が発生した場合、譲渡所得税が発生します。
譲渡所得税は売買代金から売却にかかった費用や購入時に支払った費用を差し引いた課税額に対し、以下の税率を掛け合わせることで算出されます。
居住用財産や空き家、相続で取得したケースでは控除を受けられる可能性があります。不動産売却で譲渡所得税が課されるケースは多くありません。事前に不動産会社に譲渡所得税が課される可能性があるかどうかを確認しておきましょう。